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サン・ミラー社長、「あくまでイノベーションを追求することで道は開ける」
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サン・マイクロシステムズが、まさかの不振にあえいでいる。積極的な研究開発投資を繰り返し、“ウインテル”に正面から立ち向かって来たハイテク・ベンチャーの雄に、昔日の勢いがない。特に日本の業績悪化が、サン全体の足を引っ張っていると指摘されてきた。そこで、本社が日本法人の社長にと送り込んできたのが、米本社において15年以上にわたり営業の最前線にいたダン・ミラー氏だ。7月1日に代表取締役社長に就任すると、すぐさま顧客、パートナー、社員へのインタビューを行い、やはり「イノベーションの追求こそが重要」との感を改めて強くしたという。
■ イノベーションの継続が重要
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代表取締役社長 ダン・ミラー氏
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―なんといっても最初にお聞きしたいのが、サンがいま置かれている現状についてです。御社は2001年をピークに業績悪化を招いていますが、こうした現状をどう認識していますか。
ミラー氏
サンの置かれている状況については、アナリストやプレスの方々だけでなく、競合他社も含めて厳しい見方をされているようです。かつてのドットコムの時代に比べてそうした見方が出ているのでしょうが、しかし現状を冷静に見ればそれほど厳しいという状況ではありません。こうした状況の中では、とにかくサンができるかぎりの力を発揮し、お客様を成功に導くことができれば、おのずと道は開けると思っています。
―そのためには、何がポイントになると思いますか。
ミラー氏
当社が持っているもっとも重要な資源は、なんといっても社員です。この人材がお客様をハッピーにすることができると思っています。そのため私は、社員に対してやる気を起こさせることがもっとも重要だと思っています。
―社員のやる気ということですが、創業者の一人であるビル・ジョイ氏が退社するなど、いろいろ厳しい状況がありますね。
ミラー氏
しかし、お客様に満足を感じていただくと同時に、社員に対しても喜びを感じてもらえるようにするためには、継続してイノベーションを追求していくことが重要だと考えています。そのためには、新しい創造的なアイデアに対して投資を惜しまないということです。それによってお客様に満足を与えることができますし、社員に対してはなぜサンのメンバーとして継続して仕事をするかという大きな意義になってくると思うわけです。これまでのOSやCPU、マルチスレッディングの技術、ミドルウェア、Java Desktopの開発などを振り返ると明らかにサンはイノベーションを作り上げてきたし、お客様もそれを望んできました。それがお客様はもちろん、社員に対してもやる気を起こさせるものであり、そこに焦点を絞り込んでいくというのが私の役目だと思っています。継続してイノベーションを作り上げていき、それをお客様に提供していくということが重要だと考えています。
■ 自動車メーカーのようにシステムを売る
―サンは、IBMやHPと並んで、CPUからOS、ミドルウェアまでをすべて提供しようとしていますね。それに対して、自社では何も開発しないというデルのビジネスモデルがあり、これが急成長しています。こうした状況の中で、御社のようなビジネスモデルをいつまでも継続するのは不可能なのではと思うのですが。
ミラー氏
デルは確かにイノベーションの会社ではないですね。デルは他社が開発したイノベーションを組み立てて提供する会社です。しかしそれはデルのビジネスモデルであって、私たちのビジネスモデルではないということです。サンが業界から、お客様から、そして社員から期待されていることはイノベーターであるということだと思っています。Solarisがあり、ネットワーク・ファイル・システムがあり、JavaがありSPARCがあり、マイクロソフトに対抗するJavaのデスクトップ・システムも開発しています。こうした豊富なメニューによってお客様に選択肢を提供できるわけです。
私たちがこうした選択肢を提供しなければ、お客様はIBMを選ぶのかマイクロソフトを選ぶのか、もしくはディストリビューターであるデルを選ぶのか。つまり、非常に狭い選択肢しか与えられないことになってしまいます。ですから、私たちには技術をイノベートするという重要な任務があるわけです。それを忘れることはできません。
―選択肢を提供するということですが、自社ですべてを提供することの意味はどこにあるのでしょうか。ある部分は他社の製品にゆだねるという姿勢も必要なのではないでしょうか。
ミラー氏
車を購入することをちょっと思い起こしてほしいと思うのです。車を購入する場合、タイヤはあのメーカーのもの、ハンドルは別のメーカーのもの、そしてエンジンはまた別のメーカーのものという選択をするでしょうか。そうではありませんね。個々の部品ではなく、トヨタとか日産、BMWというように、それぞれの自動車メーカーの車を選ばれたはずです。
■ 部品ではなく、完成品を提供
―つまり、サンはあくまで完成品の提供を目指すということですか。
ミラー氏
自動車を購入される方はもちろん完成品を購入されているわけで、コンピュータについても同じことがいえると思います。サンも部品ではなく、コンピュータというシステムを提供しているわけです。これがサンのアプローチです。私たちはOSにしてもインフラのソフトにしても、いろいろなサービスにしても高品質な部品を手がけていると自負しています。しかもそれを組立て、コンピュータというひとつのシステムとして提供できるわけです。そうすれば、お客様は最良の車、つまりコンピュータをシステムとして受け取ってもらえることになるわけです。
―サンのビジネスモデルは、デルのモデルとは異なるということですね。
ミラー氏
しかし、申し上げたいのは、デルのビジネスモデルが悪いということをいっているわけではありません。デルモデルはそれなりに素晴らしいものだと思うのですが、私たちはそうではないということです。
―自動車と同じように、サンはひとつの選択肢を提供しているということですか。
ミラー氏
まあ、システムという完成品としてコンピュータを提供しているのはわずかな会社しかないと思います。IBMか、インテルとマイクロソフトの連合か、それともHPかデルかということですね。つきつめていけば、IBMかウインテルかという2つの選択肢しかないと思うのですが、その中でサンは新たな、つまり33%の選択肢を提供できると思うのです。IBMかウインテルか、どちらかを選ばなくてはならないというのは、本当につまらない世界ですので、そこでサンの存在意義を感じてもらえると思います。
―やはり、イノベーションが重要ということでしょうか。
ミラー氏
イノベーションは、私たちにとって生命そのもの、つまりLife of Bloodなのですね。最近、サンの置かれた状況には確かに厳しい見方がありましたので、その中でサンもいろいろな改革をしてきました。リストラも行いましたしビジネスの方法を変えたこともありました。しかしその中で、まったく変えていないのが研究開発投資なのです。投資額はまったく削減していませんし、変わらす積極的に投資を行っています。これがやはり私たちの生命線なのです。
■ 水平、垂直の両市場でパートナー戦略を推進
―ところで、サン日本法人の場合、特にパートナー戦略が重要になると思うのですね。多くの製品がOEMをはじめとして、SIerやディストリビューターを経由して提供されています。こうしたパートナーに対してはどのような取り組みを進める計画ですか。
ミラー氏
サン日本法人において、事業のすべての側面においてパートナー戦略はバイタルな要素だと考えています。その中でも、特にソリューションを水平展開する分野では、サンとしてデータセンターの最適化、ストレージ管理の効率化、低価格なボリュームエッジ・ソリューションの展開、そしてソフトウェア・ソリューションの展開という主に4つの分野にフォーカスしていますが、特に日本においてはパートナーの方々と良好に事業を推進させていただいております。
一方、垂直展開の分野は、まだまだ今後の投資が必要だと考えています。さまざまな経験を積み立てることで事業を開発していきたいと思いますが、特にテレコミ、電子政府、製造、教育、金融サービスの5つの分野にフォーカスし、パートナーと事業を展開していく計画です。
―垂直展開の分野は今後の課題ということですが、具体的にはどのようなパートナーを考えていますか。
ミラー氏
垂直展開の分野ではいろいろな会社が活躍していますので、そのどこと組むのがいいのかを考えています。たとえば、政府・自治体関係では以前より協業関係にある富士通さんが豊富な実績をお持ちであり、私たちもこの分野に注力をしているということで、お互いに良好な関係を維持しています。また、テレコミ分野ではCTCさんやNECさんが強力な地盤をお持ちですので、自然発生的に協業するということになります。しかしいずれにしても、パートナーとの関係は、過去の実績にこだわることなく、将来的な展望を持ちながら進めていきたいと考えています。
―おっしゃるように、水平、垂直市場で焦点を絞って事業を推進することで、かつてのような勢いを取り戻せるということですね。
ミラー氏
かつての年率40%、50%というような勢いが取り戻せるかは分かりませんが、今申し上げた水平市場で4つ、垂直市場で5つの分野にフォーカスして事業を展開すること以外に、私たちは企業として「3つの賭け(Bits)」ともいうべき分野があります。これはまず、データセンターのコストや複雑性を軽減するということ、2番目はエンタープライズ分野に向けたJava Webサービスの高速化、そしてセキュリティのある携帯性、移動性の提供ということです。
私たちのCEOであるスコット・マクニーリもいっているように、サンは過小評価されているときこそ一番力が発揮できると考えています。かつてのドットコム時代、サンはまわりからは邁進している企業のように見えたかもしれませんが、水面下ではいろいろな問題点もありました。それがこの時期に払拭できれば将来の見通しは開けると思っています。
■ URL
サン・マイクロシステムズ株式会社
http://jp.sun.com/
( 宍戸 周夫 )
2003/11/25 00:00
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