Enterprise Watch
バックナンバー

米McDATA ケリーCEO、「SANベンダからテレコムベンダへ向け脱皮」


 米国コロラド州ブルームフィールドに本社を構えるMcDATA Corporation(以下、McDATA)は、“Multi-Capable Storage Networking Solutions”(多面的な機能をもつ)ストレージ・ネットワーキング・ソリューションの世界的リーダーを目指している。このためには高い可用性と拡張性、中央集中管理ができるSAN(Storage Area Network)を提供できなければならない。SANは周知のように、ストレージデバイスとサーバーを、ダイレクタやスイッチのほかファイバーチャネルやiSCSIなどでネットワーク化しAny-to-Any通信を可能とさせる技術だ。McDATAでは、さきごろNishan Systems(以下、Nishan)やSanera Systems(以下、Sanera)を買収し、これら両社の技術でSANをよりパフォーマンスよく利用可能なソリューションを投入、一段とユーザーの利便性を向上させるようにした。

 ここでは、米国本社の社長兼最高経営責任者であるJohn Kelley(ジョン・ケリー)氏をたずね、これまでのSANベンダからテレコムベンダに変貌しつつあるMcDATAの近況を聞いた。


多機能ストレージソリューションで固めてきたSAN市場の足場

社長兼最高経営責任者のジョン・ケリー氏
─McDATAは、もともと可用性に富み、オープンアーキテクチャに軸足をおいたSANソリューションのベンダとして知られています。とくに最近のようにデータ量が年率50~100%で増大してきますと、御社に対するユーザーの期待はますます大きくなりますね。

ケリー氏
 McDATAは1982年に設立しましたが、6年くらい前から多機能ストレージソリューションに特化したプロバイダとしてビジネスを展開、とくにお客様のコストやビジネスリスク軽減をはからせていただくべく取り組んでいます。代表的な製品には、12、24、32ポートで中・小規模のニーズをみたす「Sphereon(スフェリオン)4300/4500」スイッチや64ポート、140ポートでデータセンタープラットフォームなどのニーズを満たす「Intrepid(イントレピッド)6064/6140」ダイレクタのようなハードウェア、そしてエンド・トゥ・エンドでネットワーク管理を行う「SANavigator(サンナビゲータ)」や「EFCM(Enterprise Fabric Connectivity Manager)」などのソフトウェアがあります。これら製品により、各地に分散するSAN環境下で活用されるお客様のマルチベンダプラットフォームを統合可能にいたしました。日本などアジア太平洋地域向けにビジネスを始めたのは2000年5月からです。


─SANを使いこなしているのはどのようなユーザー層でしょうか。

ケリー氏
 McDATAのお客様は、24時間365日、安全なデータ利用が不可欠な環境にある方たちですね。たとえばOracleでは、当社のソリューションで世界40カ所のデータセンターを2カ所に集約しました。ここで、同社のERP(Enterprise Resource Planning)やCRM(Customer Relationship Management)、財務会計アプリケーションなどのストレス・テストやステージングが行える常時稼働の専用SANを完成させました。これにより、大幅なコスト削減やファームウェアのアップグレードもシャットダウンなくオンザフライで可能となったのです。また、アジア太平洋地域では、日本の大手銀行や自動車メーカーをはじめオーストラリアのNRMA(National Roads&Motorists Association)、香港のBank of China、HSBC Bank、インドのIndian Oil、韓国のKorea First Bank、シンガポールのCitibankやシンガポール航空、タイのThai Farmers Bankなどがあげられます。こうしたお客様に当社のハイレベルな技術による製品をお納めするには、多くのパートナとの協力関係が欠かせません。とくにストレージ・パートナとして、IBMをはじめDell、EMC、HP、HDS(Hitachi Data Systems)、StorageTek、Sun Microsystemsなどがあります。


─SAN接続のインフラとしてはファイバーチャネルが主流でしょうか。

ケリー氏
 McDATAは現在、ワールドワイドで約8,000のデータセンターにSANを導入・運用しています。実はこの8,000という数字は当社の長期戦略と密接に結びついた非常に重要なものです。これらSANのすべてがファイバーチャネル接続されており、おもにEMCやIBM、HDSのストレージを当社のIntrepidやSphereonで接続、SANavigatorで管理しています。現在これらデータセンターでは、ファイバーチャネルからIPへの移行も考えられています。これは先に買収いたしましたNishanの技術でより可能性が高まります。現在ファイバーチャネル市場が30~50億ドル、IP市場が40~50億ドルであり、今後はファイバーチャネルとIPがSANの柱となってくるでしょう。とくにIPによるストレージネットワーキングは、iSCSIはじめiFCIP、FCIPなどが主流になりつつあります。


McDATAのビジネス戦略にインパクトを与え加速させた企業買収と資本提携

─買収された企業は、McDATAにどのようなインパクトを与えたのでしょうか。

ケリー氏
 特に最近買収が完了し、今後のMcDATAのビジネス戦略に重要な影響を及ぼす企業に、NishanとSaneraがあります。現在、お客様のデータインフラは3軸方向に伸びています。それら3軸が、拡張性およびインテリジェンス、インターネットワーキングです。拡張性とは、より多くのポート数、より大きなファブリック、より多くのエンドデバイスなどが必要になってきたことを指します。またインテリジェンスは、より効率的な一元管理、プロセスの煩雑さをどう軽減するかが重要です。そしてインターネットワーキングは、データセンターであれ長距離サイトあるいはキャンパスであれ、個別のSANアイランドをどう論理的に統合させるか、がキーポイントです。Nishanはインターネットワーキングで、Saneraは拡張性で、そしてインテリジェンスではもう一つ資本提携したAarohi Communicationsの技術が、当社のビジネス戦略に対して非常に大きな貢献をいたしました。


─このほど買収されました代表的なNishanのインターネットワーキングソリューションは、どのような活用法が考えられますか。

ケリー氏
 McDATAがSANを導入しました8,000のデータセンターには、すべて障害時の修復機能が付いており、そのうち30%がアメリカ国外のデータセンターです。この機能はNishanの技術です。実はNishanの技術には3つの大きな特徴があります。第一に長距離をサポート可能な点、第二にiSCSIによるサーバーの統合が可能な点です。とくにNishan技術による4ポートスイッチ「Eclipse1620」によれば1,000台のサーバーをIPおよびファイバーチャネル経由でMcDATAやBrocadeのSANにも接続できます。第三がSANルーティングです。たとえばMicrosoftではシアトルにかなりの数のSAN(McDATAおよびBrocade製)をもっています。ここでのSANルーティングをNishan製デバイスで行っています。実はNishanは、買収当時すでに133社のユーザーと500の稼動中のデバイスをもっていました。これに加えて最近6週間にMcDATAは、250万ドル分の受注を得ました。こうしたことから、Nishanの技術により今後もかなり高い成長率を期待できる、という感触を得ました。


─Saneraの拡張性についてはいかがでしょう。

ケリー氏
 Saneraのディレクタ技術によれば、512~1024ポートまで拡大可能です。現在OSを揃えるための作業とFICON部分における開発を進めているところです。Saneraの製品は速度が10Gbps、ノンブロッキングです。これによりポートの柔軟な拡張が容易で、256ポートのオープンシステムにおけるファイバーチャネルとすることも可能ですし、256ポートのFICONデバイスとしても使用することも可能です。しかしなんといっても最大の特徴は、あたかもミニスイッチがあるかのようにパーティショニング可能なことです。これは、ダイナミック(フレキシブル)パーティショニングと呼びます。したがって、あたかも4つのミニスイッチが一つのスイッチに含まれているかのようなセグメント化が可能なのです。これにより、複数SANでそれぞれ異なるERPを使用しているような環境でも統合が可能です。最近、東京の重要な客先数カ所をまわりましたが、金融業界によりこの技術が適しているという感触を得ました。この結果、ポイント・トゥ・ポイントで2700kmにわたり1Gbpsの速度を維持できます。なおSaneraの実際の製品化は2004年第2四半期で、これにNishanで対応可能な業務分野やMcDATA特有の環境管理ツールなどをあわせて考えますと、かなりの市場拡大を見込むことができ、McDATAの技術はかなり高い将来性があると確信いたしました。


テレコムベンダへの挑戦

─フレックスポート技術に基づいたSphereon4500などの投入により今後、中・小規模ユーザーにもSAN導入が進むという期待がもてそうですね。

ケリー氏
 そのとおりで、Sphereon4500はコネクティビティ・オンデマンド、すなわち最初に必要なポート数のみをお客様にご購入いただき、その後必要に応じてポート数を拡張していただけるようになっています。このとき24ポートから始まって、ポート追加はシステムの中断なく順次行えます。この技術によりお客様はSANへの初期投資を最小限に抑えることが可能なのです。実は、ある調査会社のリサーチによりましても、既にSAN導入企業のうち小規模が14%、中規模が25%、また今後2年間に導入の計画をしている企業は小規模が48%、中規模が34%という結果報告もあり、この規模の市場はかなり期待がもてそうな気配です。


─買収によって得られた新技術などで、今後のMcDATAのビジネス戦略のネタはそろった、という判断をしてもいいのではありませんか。

ケリー氏
 経営者的立場からしますと、現在McDATAのスイッチやダイレクタのほかにSANnavigatorあり、Nishanのソリューションあり、Saneraのソリューションありなどで、すでにお皿の上にはたくさんの食材がのせられていると思います。あとは、これらをどう料理するかにかかっていますね。


─そのように着実に整備が行き届く姿をみますと、御社はSANのベンダから、データネットワーキングのベンダに移り変わりつつあるといってもいいですね。

ケリー氏
 そのとおりです。McDATAのゴールは、あくまでエンタープライズでリアルタイムのストレージをサポートすることにかかっています。今後データネットワーキング分野をめざすことでよりゴールに近づくことができ、医療や音楽、動画、そして災害時の修復などに対するソリューションまでもたらすことができます。一例をあげますと、これは東京で進めている話ですが、医療関係でMRI(Magnetic Resonance Imaging)で収集した磁気ファイルをクリニックごとに、あるいは病院関係者ごとに共有して送信することができるなど、無限の可能性をもつことになります。なかでも日本や韓国、シンガポールなどアジア太平洋地域では、すでに通信インフラが大容量であり必要帯域を確保しているなど、かなり期待がもてそうですね。とくに日本の市場は技術が大変進んでいる上に、品質などお客様の要件も大変厳しいものがあります。最近、日本の某キャリアのお客様に他社製品と比較の結果、当社製品をご評価いただき導入をお決めいただいたようなケースもございました。McDATAは今後とも、こうしたお客様のご期待を裏切ることなく、ニーズにマッチしたソリューションをご提供させていただきます。



URL
  McDATA Corporation
  http://www.mcdata.com/


( 真実井 宣崇 )
2003/12/12 00:00

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2003 Impress Corporation All rights reserved.