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CA三ッ森社長、「マネジメントソフトウェア普及の牽引車として」


 いま元気がいいソフトウェアベンダとして、コンピュータ・アソシエイツ(以下、CA)の名が真っ先にあがる。この会社、創設以来これまでに買収に次ぐ買収を繰り返し、とうとうその製品数も1200種類をオーバーしてしまった。だからこそ、もともとのお家芸たるメインフレームから、最近のモバイルまでのトータルソリューション提供をコアコンピタンスとして掲げることができる、唯一のベンダといっても過言ではないところにまでのぼりつめたのである。

 2004年、日本のCAは新たな第一歩を踏み出した。それは、“マネジメントソフトウェア普及の年”とすべく、業界で牽引車的な役割りを担うため全社一丸の体制固めで臨むからである。とくに外資系企業における日本法人いずれもが最大の目標に掲げる、ワールドワイドで10%の売上確保を、CA日本法人ではBrightStorブランドでは、すでにクリアしている。その他のブランドも含めた大きな目標めざして、CAは“マネジメントソフトウェア”を旗頭にさらなるチャレンジを行う。


マネジメントソフトウェア戦略誕生の背景

代表取締役社長 三ッ森隆司氏
─企業の勢いを示す一つの指標として新製品の投入度合があげられると思います。CAはまだまだ厳しいIT業界の中で、最近の新製品発表件数の多さには、かなり顕著なものをお見受けします。

三ッ森氏
 それは、CA自体が変わってきた点があげられると思います。CAは、チャールズ B.ウォンが25年間、買収等繰り返しながら苦労してつくりあげてきた会社です。彼は、企業は安定していてはダメで常に変化をさせながら早く走って活性化していなければならない、というポリシーをもっていました。こうした時期を経て現CEOであるサンジェイ・クマーの時代に入り、このあたりで一度落ち着かせて、新生CAとしてスタートする、という空気がいまできたところです。当社製品も、もともとIBMメインフレームのユーティリティをコアとした大きな蓄積があり、現在のCAを支えています。この大きな収入をベースにできるからこそ、新しい研究や新規事業への投資も可能なのです。こうした数年にわたる余裕があり、かつ人材投入もでき、そして新しいものにチャレンジしようという社内の雰囲気も盛り上がっているから、いいペースで新製品が投入できるんでしょうね。まさにこの数年、いつも新しい会社を立ち上げている、といった感じでしょうか。


─CAはもともと、その数実に1200に及ぶ大変な製品数をお持ちで、それらを2000年に現在の6ブランドに整理されました。これはその後、ユーザーやパートナーからかなり理解が得られてきたのでしょうか。

三ッ森氏
 当社はさきほどもふれましたように、買収の繰り返しで会社規模が拡大していきました。しかも買収のスピードもかなり早く、結果、抱える製品数も急速に増えていったのです。特に私が就任しました2000年は、プラチナム社(PLATINUM Technology International、Inc.)やスターリングソフトウェア社(Staring Software Inc.)など2年連続で大きなソフトベンダを買収しており、一段と製品数が増大、それらの整理に迫られていました。それが、Unicenter(エンタープライズマネジメント)をはじめ、eTrust(セキュリティ)、BrightStor(ストレージ)など6ブランドに整理統合したことであり、かつ各ブランド担当者が製品戦略を明確にしましたので、皆様から好評を博し、大きな信頼を得ることができたと思います。


─そうしますと、営業戦略が一段と立てやすくなったといえますね。

三ッ森氏
 実はこれら6ブランドでも、営業担当者の立場からしますとセールスしにくい面があります。CAはこれが得意、と明確にいえることがビジネス上重要なのです。もっとも理想的なことは、会社名、製品名、ブランド名が同じということでしょうね。いい例がコカコーラさんです。とくに日本のCAの場合は、限られた営業担当者数で、パートナーさんにもきちっとした戦略をお示ししなければならないという厳しさがあります。そこで、とくにUnicenter、eTrust、BrightStorの3つにフォーカスするようにしました。しかし現実的にはこの3つでもまだ多いのです。実は米国本社でも同様な悩みを抱えていました。サンジェイ・クマーは、2003年後半にOracleからマーク・バレンシヤを獲得、6つの各ブランド・オーナーの上につけました。この結果、「マネジメントソフトウェア」という当社のコアができあがったのです。これでかなりわかりやすくなったと思います。このとき、日本側でも、マネジメントソフトウェアというコーポレートイメージを前面に押し出したいと私自身が考えておりましたので、日米双方で一致、迫力のある納得ずくのビジネス展開をめざせることになりました。


─まさに日米双方によるビジネス戦略がシンクロしたということですね。

三ッ森氏
 そうです。実は米国では昨年9月からOne CAと呼ぶ広告キャンペーンに取り組んでいます。これは、“マネジメントソフトウェアのエキスパートとしてCAがもつ使命”を全世界に伝えるためのグローバルな広告展開で、数百万ドルをかけて世界30カ国以上をカバーしようというものです。日本のCAでは昨年11月に取り組み、地下鉄の車内広告に“マネジメントソフトウェアを変えよう”とアピールしました。ご覧いただけた方もおありになると思いますが、“ソフトウェア”という言葉は“マネジメント”と“変えよう”の間にわざわざ赤字で補足したような表現としたのです。これは日本独自の広告です。日本では、海外よりも“マネジメントソフトウェア”の普及や認識・意識が低いので啓蒙活動も必要です。弊社の使命をよりわかりやすくご理解いただけるようにと思い、One CA広告キャンペーンの前に、日本CA独自の広告をうったのです。そして2004年2月からは、「マネジメントソフトウェア普及の年へ」をキーワードとした事業戦略推進の一環として、新しいOne CA広告を開始しました。これにより当社の製品戦略は極めて明確になり、CAといえば“マネジメントソフトウェアの会社”、と皆様にさらに思っていただけるようになると思います。


日本CAの新たなる発進

─マネジメントソフトウェアにおける日本での戦略は

三ッ森氏
 エンタープライズマネジメント(Unicenter)、セキュリティマネジメント(eTrust)、ストレージマネジメント(BrightStor)の三分野にわたる積極的な新製品の投入ですね。しかしエンタープライズマネジメントにつきましては、あまりUnicenterという製品名を表にはださず、サービスマネジメントにフォーカスさせたソリューションを強調します。またセキュリティマネジメントは、そのまま受け取りますとファイアウォールやウイルス対策だけに目が向けられがちですので、3AすなわちAuthentication(認証)、Authorization(許可)、Administration(管理)など内部セキュリティやセキュリティマネジメントにフォーカスするようにします。そしてストレージマネジメントは、もともと市場占有率70%以上というCAが強い分野であり、ここを中核にさらなる拡大をめざします。


─マネジメントソフトウェア市場における規模は、日本は米国の10分の1、全情報化投資におけるその投資比率は米国が0.9%、日本が0.32%であり今後市場規模拡大が見込まれるといいますが、現在がこれほど小さい数字ですとかなり厳しいのではないか、という感じがしますが。

三ッ森氏
 米国と比較してみますと、日本は明らかに10年は遅れているといわざるをえません。米国がネットワークを介してマネジメントを行っているのに対して、日本はいまだにフロッピーを入れまわっているのが実情でしょう。これは明らかに変わっていきますよ。また日本は、オペレータやエンジニアを派遣する、いわゆるボディショップが中心です。これは、実は米国でいいますと1970年代のことですね。たとえば警備システムをみますと明らかではないでしょうか。初期はガードマンを常駐させていましたが、現在はユーザーのところに各種センサを配置し、いざというときにガードマンがかけつけるようにITが進んでいます。これと同じようなことが必ず起こってきます。とくに日本のように先進国でもこのような実態ですから、時間はかかるかもしれませんが、マネジメントソフトウェアに投資する価値は十分ありますよ。


ワールドワイドの中にあって日本CAの目標はすべての部門で10%シェア確保

─三ッ森社長は、現アクセンチュアや電通国際システム、コンパックなどとこの分野のご経験が豊富でおられますが、現在のCAビジネスにどういかされているとお考えでしょうか。

三ッ森氏
 まずコンパックにおける経験がかなり役立ったのではないか、と思います。DECの買収が落着するまで在籍できたことと、チャネルビジネスを経験できたことですね。米国の人たちにとってビジネス上のキーはこういうところかな、といったようなインターナショナルビジネスの戦略上のことが得られるなど、かなり役立ったと思います。いずれにしてもグローバルな中でのビジネス展開はいまも、かつての経験も変わっていません。確かに日本独自の取り組みはありますが、これもグローバルな中での戦略が不可欠です。米国のソフトは明らかに進んでいます。米国で進んでいるものと、その考え方などを、日本向けにいかにローカライズして展開させるかが私たちの使命です。


─CAは、メインフレームからモバイルまでの統合的なマネジメントがコアコンピタンスですが、今後はどのようなスタンスで臨まれますか。

三ッ森氏
 これは決して楽なことではありません。CAの日本におけるチャレンジはエンジニアリングやコンサルティング、そして提案などの各能力を磨くことです。パートナーさんとの協調で取り組むにいたしましても、ベンダとして、さまざまな先進性をおみせできなくてはなりません。まずは、日本におけるお客様やパートナーさんとのインテグレーションワークが重要ですね。このためには、お客様がお持ちのハードウェアやソフトウェアに、CAのバックアップやモニタリングを融合できないといけません。さらにこのために、インテグレーション・ラボを組織化したり、エンジニアの20%増強などでマネジメントソフトウェア普及のための体制拡充を行います。


─グローバル企業としての目標は

三ッ森氏
 日本での優良なグローバル企業をめざします。やはりIBMさんやコカコーラさんのようにみんなが知っていて、グローバル企業でありながらも日本にきちっと根付いていて、かつ従業員が誇りをもって長く働けるような企業ですね。このためには、さらに日本での製品の認知度を向上させる、さらにローカライズさせなくてはならないでしょう。そしてCAの中でもワールドワイドにおける日本のシェアを少なくとも10%は確保させたいですね。実はBrightStorは10%をはるかに超えているのです。これを追っているのがeTrustです。かなり有名な外資系企業の日本法人でもこの数字は大きな壁で、2%程度で泣いたり、長くかかってやっとの思いでこの壁をクリアできた企業もあり、この10%を重くみているはずですよ。がんばります。



URL
  コンピュータ・アソシエイツ株式会社
  http://www.caj.co.jp/


( 真実井 宣崇 )
2004/02/20 00:00

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