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ファウンドリー・ジョンソンCEO、「テラビット級スイッチ/ルータのソリューションを旗頭に業界制覇をねらう」


 厳しいIT業界にあって、前年比プラスの実績を生み出すことは決して容易ではない。こんな中、ファウンドリーネットワークスでは、2003年、同社過去最高という売上4億ドルを達成した。この背景には、主力製品である1/10Gbpsレイヤ3スイッチ、レイヤ4-7WebスイッチなどでシェアNo.1であった点、そしてこれら製品を業界に先駆けて一番乗りで市場投入した点などを見逃せない。また当初、こうした製品は本家米国よりも日本からまず投入していったという他の外資系ベンダにはみられない市場戦略もそこにはある。個別の製品ではNo.1シェアであるものの、ネットワーク製品全体では現在のところ1位ではない、と同社社長兼CEOのボビー・ジョンソン氏は認める。しかし、その裏で、テラビットアーキテクチャの製品「BigIron MG8」や「NetIron 40G」そしてこれら製品のGigabitおよび10Gigabitモジュール追加などでさらなるパワーアップをはかり、高速バックボーンをもつ企業、あるいはサービスプロバイダに光明をもたらすべく、同時に業界での名実ともにリーダーたらんと、ジョンソン氏は鋭く目を光らせている。


減収減益が相次ぐIT業界にあって過去最高の収益を達成

社長兼CEO ボビー・ジョンソン氏
─ファウンドリー社の売上実績は、実に好調のようですね。

ジョンソン氏
 ファウンドリーは5年連続で収益を上げ続け、昨年は売上4億ドルとこれまでの最高記録を達成しました。もちろん負債もなく、まわりのIT関連企業が軒並み減収・減益だったことをみますと、これは好調そのものといえます。またIPO(株式公開)効果やその他の活動も手伝い、利益として1億8000万ドルの現金を得、トータルでのキャッシュフローは4億5000万ドル以上になりました。


─なぜこの時期にそのようなしっかりとした財務基盤を維持できるのですか。

ジョンソン氏
 現在ファウンドリーの製品では、レイヤ2/3スイッチやレイヤ4-7Webスイッチ、それにメトロ・ルータ関連が主力です。1/10Gbpsレイヤ3スイッチは市場No.1のシェアですし、レイヤ4-7Webスイッチもモジュラー市場ではNo.1です。とくに、レイヤ3の10Gigabit Ethernet市場では2003年第3四半期の売上ベースで65%、レイヤ2/3あわせた10Gigabit Ethernet市場全体でも41%というシェアでいずれもNo.1です(デローロ・グループ調査)。この背景として、とくにこれら製品を業界に先駆け一番乗りで市場投入した、ということがシェア確保に大きく効いています。具体的な製品は、LAN/MAN用レイヤ3Ethernetスイッチとして「BigIron 4000/8000/15000/MG8」があります。他にもエンタープライズ専用高ポート密度レイヤ2/3スイッチ「FastIronシリーズ」、メトロ・ISP向けルータ「NetIronシリーズ」、ロードバランシングおよびトラフィック管理用レイヤ4-7Webスイッチ「ServerIronシリーズ」、ミッドレンジ用レイヤ2スイッチ「EdgeIronシリーズ」などがあります。


テラビット級のスイッチ/ルータ・ソリューションで勢いをつける

─最近、とくにBigIron MG8やNetIron 40Gなど上位機種にハイパワーなソリューションを追加されましたね。

ジョンソン氏
 実は「MG(ムーチョグランデ)」には、非常に大きいという意味があります。このBigIron MG8で初めて1.28Tbpsというテラビット(T)アーキテクチャを実現しました。これは1.28Tbpsのノンブロッキング・スイッチで、非常に高密度のGigabit Ethernetや、10Gbpsが必要な高速企業バックボーンに向けたものです。さらに、スーパーコンピュータのクラスタリングやグリッドコンピューティング、統合キャンパスネットワーク、SAN(Storage Area Netwowk)、ディザスタリカバリなどの企業ニーズにも最適です。またNetIron 40Gは1.28Tbpsのノンブロッキング・ルータであり、BGP(Border Gateway Protocol)4やOSPF(Open Shortest Path First)、IS-IS(Intermediate System-Intermediate System)など極めて堅牢なIPルーティング・プロトコルすべてが必要なサービスプロバイダ向けです。このたびこれら2機種に対して、40ポートのGigabit Ethernetモジュール(SFPオプティック)、40ポートの10/100/1000MbpsGigabit Ethernetオーバーカッパ(RJ45インターフェイス装備)、2ポートの10Gigabit Ethernetモジュール(XENPAKオプティック)といったモジュールを追加しました。これにより、Gigabit Ethernetと10Gigabit Ethernetのポート構成においてスケーラブルで柔軟性が高く費用対効果にすぐれた組み合わせの選択が可能になります。


─これほどBigIron MG8などハイパワーな機種をお使いになるのは、どのようなユーザーなのでしょうか。

ジョンソン氏
 世界中で大手の顧客にご採用いただいています。導入台数からみますと、2~3台から20台近くまで導入されるケースがあります。米国のある研究機関では13台購入いただき、トータルで13テラビットを超えるパフォーマンスを実現されているといったお客様もおられます。日本では、ほとんどが10Gbpsバックボーンをおもちのようなサービスプロバイダでお使いいただいています。


─先に発表されましたワイヤレスソリューションも御社の一貫したコンセプトが反映されていますね。

ジョンソン氏
 ワイヤレスアクセス製品も2003年第4四半期に投入しています。これは既存の環境に極めてうまくマッチング可能なものです。つまりIEEE 802.11a/b/gに準拠したアクセスポイント「IronPoint 200」のほか、レイヤ2/3スイッチ「FastIron」にソフトウェアでアップグレードすれば無線LAN統合機能を実現できるというものです。これにより、既存システムからワイヤレスへの展開規模にあわせてスムーズなアップグレードが可能となります。


─IPv6への取組みはいかがでしょうか。

ジョンソン氏
 もちろんIPv6もリーダー的役割を果たしていると自負しています。「NetIron 4802」では、1年以上前からIPv6に対応していますが、今後出荷するものにつきましてはハードウェアにIPv6を搭載するようになりました。また、既存の製品につきましてはソフトウェアのサポートが受けられるようになりました。さらに今年6月頃からは米国防総省との間で、過酷な負荷条件下におけるプロトコルやシステムがどう働くかといったストレステストを中心にIPv6の試験を行う予定になっています。


─顧客へのサービスやサポート体制も強化されているのでしょうね。

ジョンソン氏
 販売拠点は世界で46ありますが、サービス/サポートのためにCOE(Center Of Excellence)と呼ぶサポートセンターをサンノゼをはじめニューヨーク、ボストン、ロンドン、東京など世界に11カ所擁しています。またパーツ関係のサポートには32拠点が、そして毎日24時間のサービスを行う拠点も、電話をはじめインターネット、ワールドワイドなWebサイトによるサポートなど世界で27あります。とくに製品のクオリティには念入りのチェックをかけています。たとえば日本のお客様に持ち込む場合、米国でチェックし日本に上陸させてさらにチェックするといった具合です。しかし、さらに大手のお客様の場合、米国で二重のチェックを行うようにしています。この結果、ワールドワイドでの顧客数は現在6500社以上にのぼっています。


世界に先駆けて、まず日本に新製品を投入

─日本市場での戦略はいかがですか。

ジョンソン氏
 実はレイヤ3スイッチなどGigabit関連の新製品が、最初にお客様の手に渡ったのは米国ではなく、日本でした。それほど私たちは日本市場を重視しているのです。この結果、現在日本での顧客数は1500社以上に達しました。販売拠点は東京と大阪にあり、市場パートナーの代表的なものとして、三井物産やネットワンシステムズなどがあります。


─日本市場における1500社以上というユーザー層はどのような企業ですか。

ジョンソン氏
 サービスプロバイダとしてはNTTコミュニケーションズやNEC BIGLOBE、企業としては楽天や野村證券、共同通信社などがあります。最近発表しました例として、NTTドコモのiモードゲートウェイシステム「CiRCUS」にServerIronレイヤ4-7Webスイッチが採用されたことがあげられます。これは、4000万人を超えるiモード加入者に対して電子メールやWebアクセスなどのモバイルインターネットサービスを高機能かつ安定して提供するためのものです。とくにこのサービスでは、加入者増に対する信頼性やスケーラビリティ、パフォーマンスなどにご評価いただけた結果、ServerIronレイヤ4-7スイッチを負荷分散装置としてご採用いただきました。米国では大手企業や政府関係がビジネスの対象となりますが、日本ではISPがビジネス対象となります。


─日本における売上比率と今後の目標は?

ジョンソン氏
 ファウンドリー全体の売上に占める日本の割合はおおよそこれまで8~15%程度でした。2003年は12%程度でした。今後は、ぜひ12~15%程度を維持できるように取り組みたいと思います。


勝利者をめざして

─ジョンソンさんはかつてSNA(Systems Netwoerk Architecture)の開発に携わっておられました。今日に至るまで、OSI(Open Systems Interconnection)を経て、TCP/IP主流の時代にはいってきました。かつてのこうしたご経験は、現在のビジネス戦略上、どのように役立てておられますか。

ジョンソン氏
 1970年代、SNAは当時としては最高のプロトコルでした。大型メインフレーム、あるいは分散システム環境の接続では、さまざまなソリューションをうみだしました。しかしSNAはプライベート型ネットワークかつセントラルネットワーク向けのプロトコルです。その後1982年、私はTCP/IPにかかわることができました。そして1985年まではOSIの標準化にも取り組んできました。おかげさまで、こうしたSNA、OSI、TCP/IPすべての知識をもってネットワークの全体像をながめることができますので、何が真によいものか、またどのようなときどのようなソリューションが最適解をあたえてくれるのか、よく理解できるようになったと思っています。


─これからの製品目標は?

ジョンソン氏
 LANスイッチング分野では、当社は2~3年に一度は大きな飛躍をとげています。たとえば現在2つのプログラムがあります。その第一はBigIron MG8をこの年末までに大きくプライスダウン、すなわち現在の3分の1程度にまでもっていきます。もう一つは、BigIron MG8の次世代に相当するアーキテクチャをつくっていきます。ここでのねらいが100Gbps Ethernetです。このためには多額の投資をするつもりですが、実現までに今後2年をめどとしています。


─今後、ネットワークすべての分野で名実ともにトップになるための抱負をお聞かせください。

ジョンソン氏
 現在ファウンドリーは、個別製品の代表的なものはトップシェアですが、総合力では残念ながらいまは第1位の座をあけわたしている、といわざるをえません。しかし今年の後半、レイヤ4-7Webスイッチ「ServerIron」で10Gigabitをサポート可能となります。これもファウンドリーが一番乗りで投入できます。この業界に先駆けて市場投入可能なのは、当社が高い価値で、かつ差別化をもたせた製品開発ができるからです。これは今後業界のトップとして輝ける力を保持できることである、ということにほかなりません。いま財務基盤も非常に堅固です。したがってR&D、販売、サービス・サポートとこれから重要な分野への投資も増強します。確かに安心感を重視したソリューションを求められるお客様もいらっしゃるでしょう。しかし私達は最前線テクノロジーを低価格でご提供できる体制が整っています。こうしたニーズをおもちのお客様にはファウンドリーにお任せください、と自信をもっていえます。



URL
  ファウンドリーネットワークス株式会社
  http://www.foundrynetworks.co.jp/


( 真実井 宣崇 )
2004/03/19 00:00

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