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デル浜田社長、「2005年もエンタープライズ事業が重点事業に」


 2004年を振り返ると、デルにとっては、国内におけるエンタープライズ事業の地盤づくりができた1年であったといえよう。浜田宏社長も、「2004年は、エンタープライズ事業の足腰を鍛えた1年だった」と表現する。サーバーではトップシェアを争う位置へとポジションを引き上げ、DPS(デル・プロフェッショナル・サービス)では、大型システム案件のコンサルティングの実績も相次いだ。そして、スケールアウト戦略も着実に定着しはじめた。2005年には、これをどう成長へとつなげるのか。浜田社長に、2005年のデルのエンタープライズ戦略について聞いた。


代表取締役社長 浜田宏氏
─2004年のエンタープライズ事業への取り組みをどう自己評価しますか。

浜田氏
 2004年1-3月には、国内のIAサーバー市場で初めてトップシェアを獲得しました。第2四半期以降は2位に甘んじていますが、トップシェアを争えるところまで事業が成長したことに対しては、合格点に達していると判断しています。無理にシェアを取りに行っているのではないにも関わらず、これだけの実績を維持しているのは、国内市場にデルのサーバーが着実に浸透しはじめていることの証しです。一方、DPSが、大手企業をはじめ、国内の先進的企業に高い評価を受けていることを実証した1年であったともいえます。数億円規模のシステム案件のコンサルティング実績も出ていますし、UNIXからIAサーバーに移行する案件も急激に増加している。こうしてみると、大型システムの構築に、デルのDPS、サーバー、ストレージ、クライアントを使う企業が増えているのがわかる。マイクロソフトやSAP、オラクルといったパートナーとの連携による商談も増えている。品揃え、品質、パートナーシップ、ユーザー評価という面から見ても、国内におけるエンタープライズ事業の足腰を強くすることができた1年だったといえます。ただ、ひとつ反省があります。


─反省とはなんですか。

浜田氏
 これだけの実績があるにも関わらず、それを知らないユーザーがまだまだ多いということです。デルに対して多くの人が持つ印象は、低価格のパソコンをネットを通じて個人に販売する外資系メーカーというものでしょう。しかし、個人向けの比率は約2割ですし、IAサーバーではすでにトップシェアを争うポジションにある。我々のコミュニケーションが不足していたという反省があります。2004年12月8日に、東京・品川の品川プリンスホテルにおいて、「Dell Enterprise Showcase - デルのエンタープライズ・ソリューションで実現するスピード経営」と題したセミナーを開催しました。これは、デル自身がITを利用して、世界最大のオンラインショップをどう運営しているのか、企業経営そのものにどうITを活用しているのか、あるいは、デル製品を導入した先進的ユーザーの方々に講師になっていただき、デルを利用することでどう成功したのか、といったことを、一日かけてご紹介するセミナーです。約700人のユーザーの方々に来場していただきましたが、「デルはこんなことをやっていたのか」、「ここまでやるのか」という声が数多くあがっていた。その場で商談が決まってしまったものもあったほどです。2005年は、こうした機会を、もっと増やしていこうと思っています。デル自身が、エンタープライズユーザーと、より緊密にコミュニケーションを図っていかなくてはならないと考えています。


─コミュニケーション強化としてはどんなことを考えていますか。

浜田氏
 2004年にマーケティングチームを強化しました。社内ではセグメントマーケティングという呼び方をしているのですが、いわゆる大手企業や中堅企業に対して、営業チームと一体となってプロモーションなどを行うチャネルマーケティングの役割を持ったチームです。このチームに今年はいろいろなことを考えてもらう。大規模なセミナーも年3回程度はやってみたいですし、ラウンドテーブル方式のセッションやオンラインペーパーによる啓もうもやりたい。もちろん、広告、広報、営業など各部門との連動による手を打ちたいと考えている。当社のCIOも、どんどんユーザーのもとに出向いてもらっています。そこで、デルの成功事例、失敗体験を聞いていただき、ユーザーの参考にしていただく。なにしろ、これまではエンタープライズ事業に関して、ユーザーとのコミュニケーションが謙虚すぎた(笑)。そのことを深く反省して、2005年はエンタープライズにおける強みを積極的に訴えていくつもりです。


─デルでは、「スケールアウト」という手法を打ち出していますが、これが国内のユーザーの間に浸透したという手応えはありますか。

浜田氏
 これも、もっともっと訴えていく必要があります。スケールアウトは、必要なサーバーやストレージを必要に応じて追加していくものであるのに対して、他社がとっているスケールアップは、最初からある程度余裕があるものを導入してビジネスの拡大に備えていくというものです。大型のメインフレームや、UNIXサーバーがスケールアップの手法で、これだとユーザーは、余計な投資を迫られたり、有効にリソースを利用していないということに陥りやすい。これがスケールアウトであれば、必要な時に必要なものだけを追加すればいいので、最新のものをもっとも低コストで導入できる。これに気がついているユーザーがまだ少ない。この話をすると「目からウロコ」というユーザーも多いのです。

 ただ、ユーザーの間では、次期システムを検討する際に、本当にメインフレームが必要なのか、UNIXサーバーでなければいけないのか、IAサーバーによるスケールアウトでもいいのではないか、ということを真剣に考えはじめた。これまでオープン化には慎重だったユーザーがIAサーバーに注目しはじめているのです。こうなるとデルの優位性が発揮できるようになる。というのも、先にも触れたように、デル自身が、IAサーバーを活用したスケールアウトによって、成功した最大の事例だからです。創業から20年という短期間で、年間売上高5兆円という経済史上過去に例を見ない成長を誇り、世界最大のオンラインストアの運営と、全世界170カ国を結んだグローバル経営、最先端のサプライチェーンのすべてをデル製品だけで支えている。この実績は、他社にはまねができないものです。また、デルはIAサーバー専業であり、他社のように兼業ではないことも大きなポイントです。IAサーバーに本気で取り組み、そのメリットを知り尽くしている。商談の途中で、ほかのプラットフォームによるシステム提案が出てくるなんてことはありません。

 デルは、ITの民主化を支援するベンダーでありたいと思っています。これまでは、ベンダー主導のシステム構築が主流で、ベンダーの言いなりになってシステムを構築してきた。これがコストを引き上げ、硬直化したシステムとなり、企業の成長を阻むという問題すら引き起こしていた。しかし、オープンスタンダードの世界になれば、選択の幅が広がり、低コストで、ユーザー主導のシステム構築ができるようになる。会社の成長をITが阻むことなく、柔軟に拡張したり、変更したりできる。これを実現するのがスケールアウトの考え方なのです。


─一方で、コンサルティングサービスのDPSの強化も2005年の課題なのでは。

浜田氏
 DPSのチームは現在約70人のメンバーで構成されていますが、質を落とさずに、さらに拡充していかなくてはならないですね。DPSのチームは、IAサーバーまわりのコンサルティングでは、国内トップチームであるとの評価が社外からも寄せられていますから、この評価をさらに高めていきたい。また、メニューも拡充していく予定です。


─サポート体制に関してはどんなことを考えていますか。

浜田氏
 ユーザー企業のコスト削減に寄与できるようなサポートメニューを考えています。サポート価格を引き下げるというのもひとつの手段だと考えています。その一方で、エンタープライズユーザーに対する上級サポートメニューも新たに追加したいと考えています。米国では、ECC(エンタープライズ・コマンド・センター)という24時間365日の監視体制を実現していますが、これを2005年の早いうちに日本でも立ち上げたいと考えています。

 いずれにしろ、エンタープライズ事業は、2005年も最重点事業であることに変わりはありません。今年は、それに向けた施策を、2004年以上に積極的に打っていく考えです。



URL
  デル株式会社
  http://www.dell.com/jp/


( 大河原 克行 )
2005/01/07 00:00

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