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大塚商会・大塚社長、「ワンストップソリューションをさらに加速する2005年に」


 取引会社数60万社、取引件数にして年間400万件を誇る大塚商会。大手企業から中堅/中小企業に至るまで幅広い顧客層を持つのが同社の特徴だ。その同社の2004年実績は、上期だけで年間利益目標を達成。2度にわたって年間計画を上方修正するという好調ぶりをみせた。同社の好業績を支えたのが、SPR(Sales Process Re-engineering)と呼ばれる同社のITインフラだ。そして、2005年は、このSPRを進化させるとともに、さらに大きな成長を目指す。ワンストップソリューションを提供する複合型サービスカンパニーを目指す大塚商会の大塚裕司社長に、同社の2005年の取り組みについて聞いた。


代表取締役社長 大塚裕司氏
─2004年を振り返ると、どんな1年でしたか。

大塚氏
 外部要因としては、2004年の1-3月で、2年ぶりに企業の期末需要が戻ってきたというプラス要素があるなど、徐々に回復基調になってきたという実感があります。一方、社内的には、社長に就任して3年を経過し、これまで打ってきたさまざまな施策が、成果として形になった1年だったといえます。93年からスタートした大戦略プロジェクトでは8年間をかけ、借り入れ金を返済し、基幹系システムを再構築し、上場というところにまで至った。これを受けて第2フェーズとして、SPRをカットオーバーしたのが3年前。この取り組みが2004年になっていよいよ全社的な成果になって表れてきたといえます。また、新社屋に本社を移転してから1年を経過し、各部門が物理的に1カ所に集中した相乗効果も出てきたといえます。通信、コンピュータ、事務機といった複合提案が一気に加速してきたことも見逃せないポイントです。


─企業におけるIT投資は回復基調にあるというものの、それ以上に大塚商会の好調ぶりが際立っていますね。

大塚氏
 振り返れば、2003年12月は、予算達成のために、かなり目一杯商売をした。本来ならば、その次の1月はどうしても落ち込む。ところが、1月も予算を達成した。同じように、6月は上期の締めですから、その反動が7月にくる。ところがこれも達成してしまった。9月までは予算突破の連続記録を更新中です。まだ、10-12月の業績については情報開示できませんが、この記録はどんどん伸ばしていきたいと思っていますよ。利益でも、上期に年間予算を達成してしまいましたからね。これには私も驚いた。このままだと下期はなにもしないでいいのか、という話になるので(笑)、上期の決算発表時に上方修正したら、今度は第3四半期決算でも上方修正しなくてはならくなった。アナリストの方には怒られっぱなしです。では、なぜこんなに好調だったのか。それは、SPRを全社員が使いこなせるようになったことが大きいといえます。


─SPRの効果はどんなところに表れていますか。

大塚氏
 SPRでは、当社と取り引きがあるすべての顧客の受注履歴と、営業実績、サポート実績がデータベース化されています。また、未取引企業を含めると110万件にのぼるターゲットデータがある。これをもとに、潜在ニーズの掘り起こしができる。つまり、行き当たりばったりの営業や、精神論だけの営業ではなく、科学的手法を用いた営業戦略を立てることができるのです。的確なターゲットユーザーに対して、的確な提案を行うためには、SPR無しには成り立ちません。さらにSPRによって、通信とコンピュータ、事務機などの複合提案も行えるようになってきた。これまで営業がバラバラに売っていたものが、SPRによって一緒に攻められるようになった。この3つを1社がカバーしている企業はありませんから、この点でも顧客が安心して大塚商会に任せてくれる。通信、コンピュータと事務機が相互につながるようになったことで、ひとつの会社がこれらすべてをサポートするというメリットが大きくなったのです。安心感という意味でも、手間やコストメリットの点でも、顧客にベネフィットを与えることができるのです。


─全社がSPRを使いこなすようになるには、3年かかったということでしょうか。

大塚氏
 1年目は、いろいろとやってみたのですが、なかなか浸透しませんでしたね。顧客情報や営業報告を入力してくれといっても、そういった慣習がそれまでなかったわけですから、みんな不機嫌そうでしたよ(笑)。しかし、ここはルールづくりをして徹底しましたね。それと、回線速度が遅いといったインフラ面での問題も、SPRが効果を発揮しにくかった要素のひとつでした。

 SPRの効果を社員が認識しはじめたのは2年目からです。ある支店の業績が急に伸び始めたのです。なんでここが伸びるんだというような支店が伸びたのだからまわりが注目しはじめた。その支店の営業方法を分析してみたら、なんとSPRを徹底的に活用していることがわかった。営業の「打率」が違うんです。これでSPRが、売り上げ、受注を伸ばすのに大きな効果があるということが社内に一気に浸透した。また、新社屋に移転して、ネットワークインフラも一新して、ストレスなく使える環境が整った。これも、SPRの浸透に一役買っている。そして、3年目の2004年になって、すべての支店が積極的に使い始めた。夏場の苦しい時も、無理をしないで予算をクリアできたというのは、このSPRを活用した営業担当者が懸命に努力してくれた結果だと思っています。


─振り返れば、かなり、いい評価となる1年のようですね。

大塚氏
 いやまだまだです。当社が掲げるミッションステイトメントに対しては60点。社員の努力という点を考えるとそれに花丸がつくという感じですね。それでも、通信、コンピュータ、事務機を総合的に扱うサービスカンパニーとしてのまとまりが出てきたとは思っています。SPRの活用度という点では、65点。まだまだSPRは進化しますから、この程度で満足してはいけない、という意味をこめて、点数もこのぐらいにしておきます(笑)。


─2005年はどんな1年になりそうですか。

大塚氏
 事業の基本方針は変えません。ただ、これまでは「お客様の目線で物事を考える」ということを掲げてきましたが、今年はもう一歩踏み込んで、「お客様とともに成長し、お客様の信頼に応える」ということに焦点を当てて取り組みたい。これはミッションステイトメントのレイヤーに入っていくということでもあります。具体的には、顧客ごとに、販売からサポートに至るまで、ワンストップソリューションで対応できるようなメニュー体系を整えたい。夏頃には、そのメニュー体系を明らかにできるのではないでしょうか。当然、SPRも進化させていき、より深い提案を行えるようにしたい。


─事務用品や文具、消耗品などを電話やメールで注文でき、短期間で配送する「たのめーる」の事業も拡大しているようですね。最近では、取り扱い製品があらゆる分野にまで広がっているようですが。

大塚氏
 この事業も2005年には大きく伸ばしたいですね。2004年には、竹中工務店が、直接材の調達の一部を「たのめーる」を利用して構築するという実績がでました。これまでとは違ったこうした形態での「たのめーる」の導入、活用も今後は増えていくでしょうね。また、個人ユーザーを対象にした「ぱーそなるたのめーる」も品揃えが充実してきました。最新のカタログができたのですが、これを見ると、大塚商会が作ったとは思えないものになっていますよ(笑)。この分野では、さらなる取り扱い商品の拡大と、マーチャンダイザーの強化が2005年の課題ですね。


─業務ソフトであるSMILEシリーズに関してはどうですか。

大塚氏
 SMILEシリーズは、オフコン時代から長年の歴史を持つ当社独自のアプリケーションですが、製品そのものに対する評価に加えて、オプションの広がりなどが顧客に高い評価を得ています。最近では、CTIやデジタルコピーとの連動といった使い方も出てきており、これが大塚商会ならではのSMILEシリーズの強みとなっています。また、サポートについても他社にはない体制をとっており、安心して利用していただける。たのめーるやSMILEを含めると、まさに10数社分のビジネスを3500億円という売り上げ規模の会社のなかに凝縮して、顧客に対してワンストップソリューションで提供できる。これが大塚商会の強みです。この点については、2005年は、さらに伸ばしていきます。



URL
  株式会社大塚商会
  http://www.otsuka-shokai.co.jp/


( 大河原 克行 )
2005/01/14 00:00

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