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サイベース早川社長、「新体制でソリューションカンパニーへの脱皮を図る」


 1月5日付けで、サイベース株式会社の社長に早川典之氏が就任した。1998年に、サイベースに入社、2001年には同社副社長に就任、そして、この2年間は、モバイルおよび組込型データベース事業を担当するアイエニウェア・ソリューションズ株式会社の日本法人社長として手腕を発揮。この1月に、同社社長を兼務しながら、サイベース社長に就任した。この経歴からも、いよいよ真打ち登場との期待感を持つのは多くの業界関係者に共通した見方だろう。早川社長に、今後のサイベースの取り組みについて聞いた。


代表取締役社長 早川典之氏
─なぜ、この時期に早川氏が社長に就任することになったのですか。

早川氏
 2003年2月のアイエニウェア・ソリューションズの日本法人設立とともに、私は、そちらの社長に就任し、モバイルおよびワイヤレス事業、組込型データベース事業を担当しました。サイベースとは対象顧客が違いますし、ビジネススタイルも違う。全世界的に見ても、アイエニウェアをサイベースから独立させた方がより戦略的に展開できるという判断からでした。もちろん、その点では大きな成果を収めることができたといえます。しかし、一方で、課題も出てきた。最も大きな課題は、米国本社が目指す考えと、日本におけるサイベースとアイエニウェアの実際の位置づけとの間に乖離(かいり)が出てきてしまったことでした。


─外から見ていても、サイベースが掲げた「Unwired Enterprise」と、アイエニウェアのモバイル、ワイヤレス事業の整合性をどう取るのかというのがわかりにくかったですね。

早川氏
 米国では、別組織となっていてもそのあたりのコンセプトがひとつになって伝わっていたのですが、日本では、残念ながら多くのユーザーが混乱していたかもしれません。それは、アイエニウェアの独立性が強くなってしまったことが原因だともいえます。日本では、モバイルに関連する主要なメーカーが多く、そうした企業とのパートナーシップを重視しがちです。だが、その裏返しとして、限られたリソースのなかでは、エンベデッド型の企業とのパイプを強くするあまりに、一般企業ユーザーに、サイベース製品とアイエニウェアが持つ製品との融合提案ができていなかった。サイベースの米国本社がいくつかの企業を買収して、新たなソフトや機能との連携ソリューションを発表しても、アイエニウェアの独立色が強いとそれを生かすことができない。いまや、ひとつのプロダクトだけで勝負する時代ではなく、さまざまなプロダクトとの連携のなかで、ユーザーへの提案を行い、そこで、ベンダーとしての強みを発揮しなくてはならない。そうなると、ますますサイベースとアイエニウェアの連携が必要になる。今回の私の社長就任は、この2つの組織を、日本において、うまく融合させ、サイベースとしての強みを発揮するというところにあります。そのために、サイベースと、アイエニウェアをよく知る私が社長をするのが適任であろうということです。


─法人は別々のままですね。

早川氏
 もともとは同じ組織とはいえ、2年も別々に育ってきたわけですから、文化の違いもある。また、融合提案が必要だといっても、あくまでもビジネスモデルやターゲットが異なるという側面もある。ですから、組織は別々のままにしています。しかし、プロジェクトベースの連携はどんどんやっていこうと思っています。サイベースからもアイエニウェアの方に強力なプッシュができるようにしますし、逆にアイエニウェアからもサイベースに仕掛ける。これからは、サイベースとアイエニウェアの相乗効果がより発揮されるようになりますし、サイベースがソリューション会社であるということがもっと認識されるようになると思います。


─融合した成果はいつ頃までに出しますか。

早川氏
 1年ではなかなか出てこないと思います。というのも、私が目指したいのは、サイベースはデータベースカンパニーではなく、ソリューションカンパニーであるというイメージを、市場にしっかりと定着させたいと考えているからです。そのゴールを達成するには少なくとも2年はかかると思います。両社が融合してシナジーを発揮できるようになったときに、ようやくソリューションカンパニーとしてのサイベースといわれるようになるのではないでしょうか。


─経営者としてもっとも重視することは。

早川氏
 迅速で正確なディシジョン、会社としてのトータルベストバリューを発揮すること、そして、シンプルなコミュニケーションの3点です。ただ、その一方で、日本法人が日本の市場にきちっとフォーカスした戦略をとることに改めて取り組みたいと思っています。なぜ、こんな基本的なことを言っているかといいますと、ここ数年、米国本社での取り扱い製品が拡大し、日本にも新しい製品がどんどん紹介されてきた。しかし、なかには、日本の市場環境を考えると売れないと思われるものもあるし、米国本社の規模だからこそ売ることができるというものもある。ここ数年には、そうしたことに構わず、なんでもかんでも紹介してきた傾向が強かった。日本で売れるというものを吟味して、それを日本市場にキチッとフォーカスした形でローカライズし、日本の市場に紹介するということが必要なのです。サイベースは日本の市場でどんなソリューションを提供するか、という点をきちんとフォーカスして、この製品は日本で売らなくてはいけないというものを投入していく考えです。そのためには、テクノロジーソリューションの会社に留まらず、ビジネスソリューションまでをカバーできる企業へと脱皮しなくてはならないとも思っています。


─ビジネスソリューションにフォーカスすると、パートナー戦略も変わってきますね。

早川氏
 確かにそうです。ビジネスコンサルティングに強い会社とどう組むかということも焦点になってくると思います。この点では新たなビジネスプログラムを発表することも考えなくてはならないでしょうね。


─主力製品となるRDBMSの「Adaptive Server Enterprise(ASE) 15」が、年内にも投入される予定ですね。

早川氏
 第3四半期(7~9月)には日本市場に投入できると考えています。とくに、セキュリティの機能を強化していますから、現行製品を使っていただいているユーザーには、いち早く実装していただき、その大きな進化を体験していただきたい。


─現行のASE12.5.Xは、予定通りの実績となったのですか。

早川氏
 実は、ASE11.0.3以降、新たなバージョンへの移行が鈍化している傾向にあります。というのも、基幹系の大規模ユーザーが増加し、なかなか新バージョンへの移行が難しいという環境が増えてきたことに起因しています。12.5.Xに移行してほしいというユーザーはいるのですが、ユーザー自身が踏み出すタイミングに悩んでいたといえます。その点では、もう少し移行が促進できる施策を打つべきだったという反省があります。新たなバージョンに移行することでどんなベネフィットがあるのかを的確に示すことも必要です。ASE15では、その点を明確に示したい。一方、新規ユーザーという観点で見ると、デジタルコンテンツを取り扱ったり、マルチメディアサービスを提供するような企業が数多くASE12.5.Xを導入していただき、こちらは一応の成果があった。ASEは、他社のRDBMSとは異なり、カバーレンジが幅広く、親和性も高い。顧客の選択肢が広いともいえます。その点での強みが発揮されたといえるでしょう。引き続き、ASE15でも、新規顧客獲得に力を注ぎます。


─今年、力を入れたいソリューションはなんですか。

早川氏
 もっとも力を注ぎたいのはRFIDですね。とくに日本では、これから大変な注目を集めることになるし、デバイスやリーダーといった分野の参入企業も数多い。組み込み型の分野には、RFID Anywareを用意して、ここにサイベースのプロフェッショナルサービスを提供する。一方、分析専用にデザインされたカラムベースのリレーショナルデータベースであるサイベースIQと、RFIDとの組み合わせによる提案もできると思います。4月以降、UHF帯が使えるようになると、RFIDは一気に広がることになる。ここに、サイベースとアイエニウェアの双方が培ってきた強みを発揮したい。とにかく、ケーススタディを数多く取り揃えて、顧客への提案を加速していきたい。そのためにはパートナー企業との連携もより緊密にする必要がある。データベースを売るノウハウを持ったパートナーではなく、ソリューションを売るノウハウを持ったパートナーと、新たなビジネスを開拓していきたいと考えています。



URL
  サイベース株式会社
  http://www.sybase.co.jp/


( 大河原 克行 )
2005/02/14 11:14

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