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マイクロソフト・平井常務、「2005年はITイコールビジネスを実現する」


 「マイクロソフトのイメージを変えていかなければならない」-マイクロソフトのエンタープライズ事業を統括する平井康文執行役常務は、ユーザーの持つマイクロソフトのイメージを変える必要があることを強調する。積極的にミッションクリティカル分野での成功事例を増やし、技術面での信頼性を高めていくと同時に、「製品ではなく、お客様の要件を解決する」として業種別の営業チームを編成。ユーザーの抱える問題点を解決する体制を作ることでエンタープライズ事業の伸張を目指す平井常務に、2005年のマイクロソフトのエンタープライズ事業のポイントを聞いた。


挑戦者は積極的な成長を目指す

マイクロソフト株式会社 執行役常務 エンタープライズビジネス担当の平井康文氏
─マイクロソフトのエンタープライズビジネスは大変好調に伸張しているそうですが。

平井氏
 エンタープライズ分野については、我々はまだまだ挑戦者です。追う立場にある企業としては、「景気のせいでビジネスの調子が悪くて」なんて行っていられません。

 もちろんお客様のIT投資がシビアになっている時期ではありますが、そういう状況も踏まえてどんどんビジネスを伸ばしていかなければなりません。


─4月に入り、多くの日本企業が新年度となりました。ずばり、エンタープライズ分野の今年度のキーメッセージとはどんなものになりますか。

平井氏
 「IT=ビジネス」が今年度のキーメッセージです。ITを管理のために利用していくのではなく、ビジネスを生み出すためのものとして利用していってほしいという意味を込めています。そういう意味では、「IT=マネージメントではなく、IT=ビジネスです」というべきなのかもしれません。

 言い古されたことばではありますが、マイクロソフトがこのメッセージを送ることに意味があると思っています。というのも、いまだに、「マイクロソフトってパソコンのソフトの会社でしょ?」という認識の方がたくさんいらっしゃるんです。

 確かにパソコンの中に入っているWindows XPもOfficeも当社の製品です。でも、これらデスクトップ製品とWindows Server 2003が実現できることはまったく違います。

 マイクロソフト製のサーバーを使っていらっしゃるお客様の中にも、いまだにサーバーのことを「NT」と呼ばれる方もたくさんいます。この「NT」という呼び名には、象徴的な意味合いも込められているとは思うんですが、サーバーとしての機能もNTの頃と、現在のWindows Server 2003では大きな違いがあります。これをもっと多くの方に認識してもらえば、マイクロソフトに対するイメージも大きく変わっていくと思うんです。それだけ自信をもってアピールできる製品群ですから、どうぞ使って、確認してくださいといいたいですね。


ミッションクリティカル分野での成功事例が信用につながる

─具体的に、Windows Sever 2003はこれまでのものとどんな部分が、どのように変わってきているのでしょうか。

平井氏
 「ミッションクリティカル分野でもWindows Serverは使えるのか?」と疑問をもっている方がまだ大勢いらっしゃると思います。その認識を変えてもらうためには、実稼働している事例を見ていただくことでご理解いただけるのではないでしょうか。

 具体的には、2007年にサービス・イン予定の百五銀行様の次期基幹系プロジェクトです。高い可用性が求められるシステムのサーバーとしてWindows Server 2003が選ばれたのは、ミッションクリティカルな用途での性能が評価されてのことと考えています。

 同じようにミッションクリティカル分野で進行中のプロジェクトとしては、アイワイバンク銀行様の事例もあります。

 社内に、「MC事業推進部」という組織があります。ミッションクリティカルプロジェクトを担当する部署ですが、かかわっている案件がいろいろあるので、「IT=ビジネス」を実証するためにも、ミッションクリティカル分野での成功事例を、パートナー企業様と共にひとつ、ひとつ成功させていかなければなりません。あるお客様から、「あれがこけたら、次はないからね!」と期待を込めた厳しいお言葉もいただきました。まさにその言葉通りで、マイクロソフトとしても、「できます」といったものができなかったら、本当に「次」はないと肝に銘じています。


─責任は重いですね。

平井氏
 責任の重さでいえば、基幹系システムと同じ位置付けで、コラボレーション&コミュニケーションプラットホームソリューションをあげることができると思っています。例えば、社内のメールシステムが1時間使えないとなったら・・・


─大騒ぎですね。「仕事ができない」と文句を言い出す人も出てくるでしょうし・・・

平井氏
 そうなんですよ。もはや、「たかが電子メール」なんて言えませんよね。情報系のシステムは基幹系システムのひとつといえるくらい定着していますし、必要不可欠なものです。まさに、「IT=ビジネス」を具現化したものとなっています。

 これまでは、情報系のシステムといえば「Exchange Server」や「SharePoint Portal Server」から話が始まりました。でも、今年はあえて違う観点からお話を始めたいと思います。

 今、私の方で、財団法人 社会経済生産性本部の経営品質協議会の幹事の仕事をさせていただいております。その中で自分達の経営品質をあらためて見直すと、情報システムと、それを使う人たちのスキルとワークスタイルというものがいかに重要なものであるのかという事実に、ハタと気がついたんです。

 日本の経営品質賞には8つの領域からなるフレームワークとアセスメントが定められています。しかし、それはあくまでもアセスメントでしかありません。アセスメントがどう進ちょくし、どういう状態にあるのかは、経営者だけでなく、社員もきちんと認識すべきことだと思います。当然のことながら、経営者と社員ではやるべき業務は違います。でも経営者だけが頑張っても、経営品質は向上しません。つまり、経営品質というのは経営者だけでなく、社員全員が考えるべき課題だと思ったんです。しかし、フレームワークの中には、それを具現化するものがありませんでした。

 そこで、登場するのがバランススコアカードです。フレームワークとバランススコアカードを組み合わせ、フレームワークの領域ごとに数字指標に落とし込んでいって、その進ちょく状況を社員も含めて認識できるようにすると効果が高いのではないかと思い至ったんです。

 で、そこまで話が進んで初めて、「経営者から社員まで含む、全社員で情報を共有するために、SharePoint Portal Serverを使うと効果的ですよ」とマイクロソフト製品が登場してくるわけです。


製品ありきでなくお客様の課題の解決が大前提

─なるほど。まず、ビジネス上の問題点があって、それをどう改善するのかという議論があって、それを解決するものとしてそれぞれの製品があると。

平井氏
 そうなんです。これまでのマイクロソフトは、まず製品の話ありきで、「経営品質の改善」というテーマに対しても、IT業界とシステム擁護で話を進めてきました。それはそういう語り口しか持っていなかったからです。


─それが大きく変わった要因はどこにあるのですか。

平井氏
 結局、経営改善に役立つ機能と品質をもった製品が揃ったからだと思います。「IT=ビジネスです」とアピールできるだけの要件を満たすWindows Server System 2003をはじめとした製品群が揃ったからこそ、これまでとは違う語り口でエンタープライズのお客様と話ができるようになったのだと思います。


─「IT=ビジネス」という視点でお客様と商談を進めていくためには、マイクロソフトのスタッフのスキルもこれまでとは違うパワーが必要になると思いますが。

平井氏
 営業部隊は、業種に特化した体制にしています。相当の投資を行い、担当業種・業務に対するトレーニングを行い、複雑化しているお客様の要求に応える体制を整えてきました。

 現在、進めているのが、スペシャリストの設置です。マイクロソフトのサーバー製品も種類が多くなりました。一人の営業マンが全製品を説明するには無理が出てきました。そこで、商談において個別製品に関する技術やノウハウが必要となったときに、その製品のスペシャリストが同行してピンポイントの要件に対応するのです。


─なるほど。先ほどは営業には製品面だけでなく、ユーザーの状況にあわせた提言が必要だということでしたが、同時に技術についてもより専門に特化したニーズが出てくることもある。どちらから商談が進んでも、カバーできる体制を作るということですね。

平井氏
 業種向けの営業と、製品ソリューション別技術支援体制が縦・横の二次元状になってお客様をカバーしていくことで、よりきめの細かいお客様へのフォロー体制ができるのではないかと思います。


─新たに設置する技術スペシャリストについては、いつ、どれくらいの人数を配置する計画ですか。

平井氏
 2005年7月の設置を予定しています。現人員体制からさらに30人から40人の追加になると想定しています。ただ、社内スタッフをいくら増やしてもすべてのお客様に対応できるわけではないですから、パートナー企業との連携も重要な課題です。新宿オフィスの11階にあるマイクロソフトテクノロジーセンター(MTC)では、パートナー企業とのソリューションブリーフィングやソリューションデザインセッションも開催していますが、パートナー企業からご提供いただいた製品も加えて協業できる体制を作り、お客様のシステム要件を満足させる必要十分条件となるべき部分をフォローする体制を取っています。



URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/


( 三浦 優子 )
2005/04/08 00:00

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