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オートデスク志賀社長、「2005年はデータマネジメントビジネス元年に」


 オートデスクが好調な業績をあげている。2004年の業績は、日本法人だけで100億円の売上高を初めて突破。対前年成長率も32%増と高い伸びを示している。国内の製造業の設備投資が回復基調にあるとはいえ、まだ景気の不透明感が完全に払拭できないなかでの高い成長率には、業界内でも注目が集まっている。果たして急成長の要因はなにか。そして、3月には、AutoCAD 2006をはじめ19製品を投入し、さらに攻めの経営を見せるオートデスクは、ロゴの変更や、新たなスローガンを掲げ、さらに旋風を巻き起こす考えだ。志賀徹也社長に、オートデスク躍進の秘密、そして今後の取り組みを聞いた。


日本のユーザーの声を製品に反映

代表取締役社長 志賀徹也氏
─各社が厳しい業績のなか、前年比32%増と好調な業績をあげていますが、その理由はなんでしょうか。

志賀氏
 3つの要素があるといえます。ひとつは、ここ2年ぐらいの間に、オートデスクが投入するすべてのプロダクトがエンハンスメントされたという点です。機械、製造、土木とあらゆる分野に向けた強力な製品が出揃い、さらに全体がハーモナイズされた提案が行えるようになった。プロダクトの強化は大きなポイントです。

 主力となるAutoCADは、2次元CADとして圧倒的な強みを発揮し、さらにシェアが高まっている。さらに、ほかの分野にもビジネスの幅が広がっている。オートデスクというと、これまではAutoCADのイメージが強すぎて、2次元CADはいいが、3次元CADでは出遅れているという印象があった。だが、これもこの数年で大きく変化してきた。建築系の3次元も本当の意味で強い製品が品揃えできた。この分野での伸びも大きなポイントです。

 それと見逃せないのは、日本のユーザーの意見が製品にどんどん反映されるようになっている点です。出荷を開始したばかりのAutoCAD 2006でも、日本のユーザーグループであるAUGI-JAPANから出された要求トップ10のうち、4つの機能を新製品に追加しました。例えば、日本のユーザーは、図面上にタイトルなどのテキストを入力することが多いことから、これらのテキストのレイアウトが柔軟に行えるマルチテキスト機能を新たに搭載しましたし、JISで定められている円弧寸法の表記機能の追加などもそのひとつです。それと、日本のユーザーはドローイングの機能を多用しますから、その点での強化も日本からの要求を強く反映したものだといえます。これは口で説明するよりも、実際に見てもらえれば、日本のユーザーがどれだけ使いやすくなったかが直感的にわかりますよ。

 いまは、日本法人の貢献度が高いですから、それだけ日本のユーザーの声が製品化に反映できる。常に、米国本社よりも高い成長率を日本法人が遂げるというのは、私の重要なミッションですよ(笑)。それと、データデザインだけでなく、データマネジメントの分野にまで製品群が広がってきたこともビシネス拡大の大きな要素となっていますね。


─日本では、データマネジメント分野への進出が遅れましたが。

志賀氏
 日本での体制が整っていなかったのが出遅れた原因です。体制が整っていないのに、製品を提供しても、ユーザーには迷惑をかけるだけです。ただ、徐々に体制が整い始め、昨年からデータマネジメント系の製品を投入できるようになってきた。これが高い評価を得ています。従来のPDM(プロダクトデータマネジメント)製品は、何千万円、何億円という投資を行い、長い時間をかけて導入される例が多かった。だが、これでは、実際に稼働する時には状況が大きく変化し、ユーザーのニーズに合致したようなデータマネジメントができなかったのが実態だった。オートデスクが提供するプロダクトストリームは、こうした点を解決できる。その点での評価が高い。また、オンラインコラボレーションサービスのBuzzsawによって、プロジェクト情報を効果的に伝達、共有、追跡し、プロジェクト管理が行える製品も高い評価を得ています。今年は本格的にデータマネジメントの分野に乗り出します。


─2つめのポイントはなんですか。

志賀氏
 2つめは、その製品の出し方、あるいはサポートの仕方が変わってきた点です。これは制度や仕組みという側面もありますが、むしろ、組織そのものが大きく変わったことが要因だといえます。

 日本法人では、3年前から各業界ごとに社内組織を再編し、それぞれの分野のスペシャリストが提案できる仕組みを作った。また、社員も積極的に増員しています。2年前には約90人の体制だったものが、現在は120人にまで増加させ、とくに、メジャーアカウント向け営業体制を強化してきた。ここの人員を2倍に増やして、大手企業に対して、しっかりとした提案が行える体制づくりに取り組んできました。これらが成果につながっています。さきほど、データマネジメント分野に対する取り組みにも触れましたが、今後、データマネジメント、データシェアリングといった領域での商談が増えますから、データベースに強い技術者を獲得しはじめました。これまでのデータクリエイションの分野にはなかった要素が求められていますから、この点では新たな人材を積極的に確保しています。


─仕組みという点では、インストールから保守までのサポートをWebで受けることができ、最新バージョンへの強化も行えるサブスクリプションモデルの導入がありますね。

志賀氏
 サブスクリプションモデルは、米国本社から約2年遅れとなる2003年11月から開始していますが、これまでに10数%のユーザーが導入しています。年々、このモデルの良さが浸透してきていますし、予算計画やライセンス契約の点で、契約内容および予算管理が明確になるということで公共機関などからも注目を集めています。


─3つめの要素は。

志賀氏
 3つめは、リセラーがオートデスク製品の取り扱いに関して、積極的な投資を行い、ビジネスを成長させてきた点です。オートデスクはリセラーを通じた販売が主力ですから、ここを強化することは大変重要な施策です。当社では、数年前からトレーニング制度の実施とともに、セールスツールキットなどを用意してきましたが、この成果が出るまでには少し時間がかかる。それがここにきて具体的な成果となってきたといえます。リセラーも継続的にオートデスクに対して投資を続けてくれたことが大きいですね。製品そのものも強力になっていますから、その点でも、リセラーが売りやすい環境が整ってきたということも大きな要素だといえます。


データクリエイションから、データシェアリング・データマネジメントに本格的に乗り出す

─全社的にロゴの変更を行いましたね。

志賀氏
 ロゴの変更は、今回で3回目です。もともとコンパスをイメージしたAの文字をデザインしたロゴを採用していましたが、これはまさにデザインデータをクリエイトするというAutoCADの原点といえるものです。その後、インターネットの浸透とともに、小文字のaで始まるロゴにした。そして今回は、シャープなデザインへと変更しました。大人のイメージを出した感じでしょうか(笑)。データマネジメントという領域にまで入っていく上で、ロゴの面からも、洗練された印象を持たせようというわけです。また、ロゴの変更とともに、名刺の色を選べるようにしようという案も一時はあったんですよ。オレンジやグリーン、ピンク、パープルなど、自由に選択して、その日の気分で相手に手渡す。だけど、これは途中で却下されちゃいましたね。そこまではやりすぎだと(笑)。でも、こういうことまで議論できる風土が、社内にはあるんですよ。


─新たな全社スローガンとして、「ideas Realized」を掲げましたが。

志賀氏
 日本では、これを「アイデアをかたちに」という言い方にしています。オートデスクは、デザインソフトを売っているが、それはユーザーのアイデアを、実際の形にするためのお手伝いでもある。設計者のアイデアを形にするための支援を徹底していこうというわけです。日本の建築関係の設計者は、工学系の出身者が多いですが、欧米では文化系、芸術系の建築デザイナーが活躍している。こうした芸術系出身のデザイナーが、当社の製品を使って、日本でも活躍できるような風土も作っていけるといいですね。


─日本における今年の重点課題とはなんでしょうか。

志賀氏
 データマネジメントビジネスの元年と位置づけた取り組みになります。過去20年間にわたって、オートデスクは、データクリエイションの分野を徹底的にやってきた。ここからデータシェアリング、データマネジメントといった分野に本格的に乗り出します。プロダクトストリームの新版も初夏には市場投入できますし、これにあわせて、パートナーとの協力体制も強化します。これまでオートデスクの製品は、CADに詳しいパートナーしか販売できなかったが、これからはデータベースマネジメントに強いシステムインテグレータなどとも連携する必要もある。また、コンサルティングをはじめ、サービス事業を強化する必要も出てきています。まだサービス事業のウエイトは5%程度ですが、これを将来的には2割程度にまで高めていきたい。これまでのデータクリエイションに特化した展開とは異なる体制づくりが、これからの課題といえます。


─2005年も2けた増を目指しますか。

志賀氏
 いま、社内では前年比20%増の売り上げ目標を掲げています。これだけ強い製品が揃ってきましたから、これを上回る実績にもっていきたいですね。



URL
  オートデスク株式会社
  http://www.autodesk.co.jp/


( 大河原 克行 )
2005/05/13 00:00

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