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インテル町田取締役、「エンタープライズにおけるプラットフォーム指向を加速」


 インテルが、エンタープライズ事業を加速させている。プラットフォーム指向を打ち出し、エンタープライズ全体の最適化を推進するとともに、今後急拡大する64ビット市場に向けた展開にも余念がない。日本法人でエンタープライズ事業を担当するエンタープライズ&ネットワークソリューションズ本部長の町田栄作取締役に話を聞いた。


プラットフォームによってエンドユーザーの課題を解決

インテル株式会社 取締役 エンタープライズ&ネットワークソリューションズ本部長の町田栄作氏
─ここにきて、インテルはエンタープライズ分野におけるプラットフォーム指向を強く打ち出していますね。

町田氏
 今年1月に、インテルは全社規模での大々的な組織変更を行いました。マーケットごとのセグメントを見据えて取り組んでいく体制へとシフトしたわけです。これは、いわば、プラットフォーム指向を前面に打ち出した展開を行いやすくしたともいえます。また、ムーアの法則にのっとった革新を、プラットフォームの上でも提供できる基盤を確立したともいえます。デジタルエンタープライズの世界を考えたときに、インテルとして、なにを提供できるか。バックエンドサーバー、ストレージ、ネットワーク、ルータを含めて企業の基幹システム構築にどんな支援ができるか。ユーザーが課題としているTCO削減や、セキュリティ対策といった問題を解決するという観点でも、単にCPUを提供するだけでは解決は無理です。エンド・トゥ・エンドでとらえた提案が必要になる。だからこそ、プラットフォームとして物事をとらえる必要があるのです。

 インテルには、物を売らない営業がいる。インテルから見たユーザーとは、ハードベンダーですが、その先には、実際にPCやサーバーを利用するユーザーがいる。ユーザーの先のユーザーを見た解決策を提示するのがプラットフォーム指向というわけです。この考え方は、デジタルエンタープライズだけでなく、Centrinoによってプラットフォーム指向を先行してきたモビリティでも、今後広がりを見せるデジタルホームでも一緒です。


─デジタルエンタープライズ分野において、プラットフォーム指向が目指すゴールとは。

町田氏
 最終的なゴールは、企業のビジネストランスフォーメーションを変えるということです。ユーザーにとって、ITを導入するというのは手段であって、目的ではない。ITを導入してビジネスをどう変えることができたかが重要です。たとえば、新たなサービスを創出できたとか、顧客に接する時間が拡大したというように、ビジネスに変化をもたらさなくてはならない。TCOを削減し、競争力を持つ経営体質へのシフトを支援する。ビジネスチャンスも拡大できる。

 繰り返しになりますが、これを実現するためには、やはりCPUの提供だけでは限界がある。当社と、ハードベンダー、ソフトベンダーが一緒に提案できるプラットフォームが必要なのです。モビリティにおけるプラットフォーム提案であるCentrinoでは、CPUの高性能化、低消費電力化、小型化だけでなく、ブロードバンドの進展とともに増加したリッチメディアを、いかにモビリティ環境で快適に利用できるかを考えたものです。また、モビリティ環境において、セキュリティに対しても万全な体制でなくてはならない。グローバルな利用もできる環境の提案も必要です。そして、モビリティにおけるプラットフォーム指向とデジタルエンタープライズにおけるプラットフォーム指向がそれぞれに発展し、デジタルシティというインテルが目指す世界が実現する。企業、官公庁、そしてエンドユーザーがどんな場所にいても、ITを意識せずに、自然とITを利用し、その利便性を知らないうちに享受されているという世界が生まれるのです。


─物を売らない営業としての役割はなんですか。

町田氏
 インテルの考え方、目指すゴールをユーザーに対して、アピールすることです。私の場合であれば、直接、ハードベンダーのもとに出向いて話をしたり、セミナーを開催してインテルの考え方を示したりといったことをしています。ホワイトペーパーやブループリントの提供、ケーススタディや各種ビデオなどを用いて、インテルが描く世界を提示する。ビデオのなかには、日本で作成したものが英訳されて、全世界で利用されているという例もあります。いま、仕事に割いている時間の約70%が、こうした仕事ですね。私の上司である米Intelのジョン・デイビスの場合は、365日のうち約200日は全世界を飛び回っていますから、生活の6割から7割が外にいるという計算になります。


64ビット化に向けプラットフォーム全体での支援体制を整える

─64ビットの世界がいよいよ到来しています。エンタープライズ事業としてとらえた場合の進ちょく状況はどうですか。

町田氏
 Itanium 2の採用は極めて順調に推移しています。しかも、実績が出てきている。先ごろ発表されたHPCのパフォーマンスランキングの世界トップ500のうち、333システムがIAサーバーによるものです。また、日本においても、今年の終わりには、ベンダーから出荷されるサーバー製品のほぼ100%が64ビット化されることになると予測しています。富士通のPRIMEQUESTの投入に代表されるように、ミッションクリティカル分野での利用を想定したサーバーも登場してきていますから、インテルとしてもこの分野にフルスイングで挑まなくてはならない。レガシーシステムは、日本ではまだまだ数多い。もうTCO削減の限界に到達しているシステムも少なくない。そうしたユーザーに対して、インテルとしてTCOの削減、可用性をいかに提供できるかが鍵だといえます。

 一方、EM64Tに関しては、昨年から少しずつ製品として市場に投入されていますが、これもほぼ予定通りに進ちょくしている。企業向けクライアントPCでは、年末には約6割が64ビット化するでしょう。今年下期は、エンタープライズ事業においても、64ビット化の推進が最重点課題となります。上期はそれに向けて準備をしてきた期間だといえます。


─具体的には、どんな手を。

町田氏
 64ビットを利用するための基盤となる環境づくりです。例えば、今年4月には、64ビットプラットフォームの導入を加速させることを目的としたインテル・ソリューション・センターを東京本社内に開設しました。64ビットプラットフォームへの移行促進とともに、仮想化技術やマネージャビリティなどのプロセッサ以外の技術も視野に入れ、プラットフォーム全体としての価値を高めることを目的としています。また、6月に出荷を開始したインテルコンパイラバージョン9.0も、マルチコアプラットフォーム上での性能を最大限に引き出すソフトウェア開発ツールとして市場投入したものです。これによって、デスクトップ、ノートPC、サーバー、スーパーコンピュータに至るまで、インテルプラットフォーム上におけるアプリケーションの性能向上が図れます。こうしたツールの提供とともに、5月からはインテル・ソフトウェア・カレッジの名称で、教育支援も行っています。この点でも、プラットフォーム全体での支援体制が整っているといえます。

 64ビットの普及戦略のなかで、もっとも重要なのがエコシステムです。EM64Tを例にあげれば、過去20年間にわたって蓄積された膨大なソフトウェア資産がある。この資産をより高い性能のなかで利用できる環境を提示する。64ビットのメリットは何か、それによってどう変化するのか、ということを徹底して訴えていきたいと考えています。

 とにもかくにも、64ビットの普及に向けた下期は積極化していくことになります。



URL
  インテル株式会社
  http://www.intel.co.jp/


( 大河原 克行 )
2005/07/29 00:00

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