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米McDATA ケリーCEO、「顧客志向のGEDI構想で統合ネットワーク環境を実現」


 米McDATAは今、GEDI(Global Enterprise Data Infrastructure)構想のもとで新戦略に挑んでいる。これは、先に同社が提唱したGEDC(Global Enterprise Data Center)構想をさらに推し進め、プロフェッショナルサービスの追加などで、より顧客に近づいた形でのビジネス強化をしようというものだ。こうした目的を達成させるための一環として先ごろCNT(Computer Network Technology Corporation)を買収し、同社の卓越したデータ伝送技術で、より技術指向に根ざしたソリューションを顧客に提供できるようになったという。今回は、来日したMcDATA CEOのジョン・ケリー氏およびプロダクトマネジメント担当副社長のダグ・イングラム氏に近況を聞いた。


ワールドワイドにフォーカスした新たな市場戦略を目指して

CEOのジョン・ケリー氏
―このたび来日されました目的を教えてください。

ケリー氏
 今年6月のCNT買収後、初めて来日しました。この機会に顧客の方たちをはじめビジネスパートナー、マスコミ関係、社員たちへ向け近況報告をしたりコミュニケーションを深めたいと思います。同時にビジネス急成長の折、自らの目で今後の投資規模や目指すビジネスのプライオリティ、フォーカスポイントなども見極めるつもりです。同行したイングラム副社長の口からは、より具体的かつ詳細に主力製品であるIntrepidダイレクタやSphereonスイッチなどの最新情報をお届けしています。


―McDATAは2004年、ワールドワイドでダイレクタクラスのSANスイッチでは約40%と競合を引き離し引き続きNo.1の座を固めていますが、日本でも先に確立されました新体制のもと好調のようですね。

ケリー氏
 1年半前に日本市場を任せた石本龍太郎代表取締役の手腕が功を奏し、パートナーとの良好な関係のもと販売チャネルを確保、売り上げも今年は一昨年と比較して200%を記録する見込みで、競合をさらに引き離すまでに実績を上げています。今後は、CNT買収効果によりOEMだけではなく、ローカルのディストリビュータがエクステンション製品を軸にしてダイレクタやスイッチの売上増を加速できるものと期待しています。


―日本ではエンドユーザーにマクデータが直接コールするといったサービスが注目されています。

ケリー氏
 日本ではまだSANの啓発活動が必要だと考えています。とりわけ決定権をもたれる上層部の方にアピールすることが必要でしょう。そのためにも石本は特にエンドユーザーに向けた直接コールに情熱を注いでおり、その成果も着々と表れています。たとえば、このたびエンドユーザーの方たちを対象にフォーラムをもたせていただきました。当初お集まりいただけるか否か不安でしたが、金融をはじめテレコム、サービスプロバイダ、自動車関係ほかから部長以上、取締役の方たちも含めて即満席となり、GEDIをはじめSANに大きな関心をお寄せいただけました。来年はさらに大規模に行います。


―イングラム副社長の来日におけます役目を具体的に教えてください。

イングラム氏
 いまグローバル化のもとMcDATAの業績は好調ですし、顧客もグローバル化しています。従って、単なる製品の提供だけで間に合いません。たとえばディザスタリカバリで顧客ビジネスを継続しうるようなトータルソリューションを提供するために、実際に顧客の環境も見て、最良のサービス提供や使い方を可能にするための条件を把握したいと思います。そのためには、(本社のある)コロラドにこもってばかりいるわけにはいきません。日本以外にはたとえば北京などへも訪れます。

ケリー氏
 実は北京の精華大学におけるプロジェクト向けに、当社から装置を提供させていただくほか、奨学金も出し、トレーニングなども行います。こうした良好な関係でMcDATAを理解いただき、卒業後は顧客になっていただいたり、あるいは同大学からの採用にも到ればと考えています。中国はもはや、単にローコストを求めての進出ではなく、本気でビジネスを行う相手としての戦略が重要です。きっと3年後は、北京だけではなく香港、上海なども含めて大きな変貌を遂げるものと期待できます。


CNTを買収し、GEDCからGEDIへ戦略をステップアップ

プロダクトマネジメント担当副社長のダグ・イングラム氏
―最近、GEDCからGEDIへ戦略を移行されましたが、その背景をお聞かせください。

ケリー氏
 McDATAは、データや情報はオンデマンドでアクセスすべきという理念をもっています。ここでいうデータとは、単に技術や財務情報にとどまらず個人情報までをも含ませています。こうしたことを実現させうるインフラの構築が最重点課題ですね。これはメインフレームシステムであれクライアント/サーバーシステムであれ同様です。またグローバルなビジネス展開をめざすのであれば、大企業であれ中堅・中小企業であれ必要な条件です。

 今、通信技術の進歩がコストを低減化させていますが、その次の段階ではSANやLAN、MAN、WANを統合させなければなりません。これがMcDATAが標ぼうするGEDCでありGEDIなのです。このあたりはCNTのもっとも得意なところであり、かつMcDATAも本腰で取り組んでいますから、両社の合併により一段とパワーアップすると見ています。

イングラム氏
 GEDCは、従来のコア・トゥ・エッジにとどまらず、ローカルあるいは距離を隔てた環境にあるコンポーネントをネットワークでまとめるという階層型インフラ構想でした。これは、先に買収しましたSanera SystemsやNishan Systemsの技術をベースに、特にデータセンターを意識して作り上げたものです。一方、最近移行したGEDIは、このたび買収しましたCNTの技術を付加したものです。こうなりますとデータセンターだけにはとどまらず、もっと大きな本格的なインフラとして定着させなければならないのです。

 そして当社ではGEDIに、2つの主要なコンポーネントを追加しました。第1は、私どもがカスタマーサイドのデータやビジネスプロセスを理解したり分析したり、あるいはMcDATAのソリューションを購入後、運用してきちんと稼働し続けるまで見届けさせていただくようなプロフェッショナルなサービスです。これに管理ソフトウェアであるSANavigatorや先に買収しましたSaneraのスイッチング技術などを併せますとより効果的となります。

 第2は、より顧客にフォーカスした点です。つまり顧客はオラクルやSAPなどビジネスアプリケーションを重視しておりますから、これらのネットワーク環境における活用にスムーズに対応できなくてはなりません。これまで50回以上カスタマー向けにプレゼンさせていただきましたが、GEDIがもたらすネットワークとストレージの統合におけるビジネスアプリケーション活用を、より信頼感と安心感をもってご理解いただけるようになったと確信しています。

ケリー氏
 GEDIの登場で、McDATAは一層カスタマーおよびパートナーに接近することができました。たとえば、顧客サイドでデータ伝送を考えたとき、これまではハードウェアの提供にとどまっていたかもしれません。しかしCNT買収以後、同社の優れたスキルセットによりネットワークの帯域や圧縮率、ファイル、伝送タイミング、バックアップ、階層型ストレージおよびアプリケーションまで、より専門性を高めた提案ができるようになりました。


―改めてCNTがもたらすソリューションの魅力をお聞かせください。

ケリー氏
 第1がCNTの20年の歴史ですね。データ伝送において、メインフレームからネットワークまで信じられないほどデータのリライアビリティを保有していましたし、圧縮方式や伝送速度などで最適なコストにもっていけました。第2が、McDATAのハードウェアにCNTのコンサルティングをはじめとした上記プロフェッショナルサービスを加えられたことです。とくにプロフェッショナルサービスは、アジア太平洋地域においては、まず日本からモデルケースとして始め、人材投入も含めて強化させていきます。

イングラム氏
 CNTは、距離を超えてのデータ移動にかけては世界的リーダーといえます。その間に、たとえ品質の悪いネットワークが介在していても、スムーズなデータ伝送が可能で、ディスクドライブやテープドライブがリモートでも、あたかもローカルのごとく扱えます。20年の歴史には、どこかの標準化団体でまとめたものとは異なり、あくまで顧客とのパートナーシップの中で培われたものがあります。この蓄積されたコンセプトは、UltraNet Storage Director-eXtendedやUltraNet Edge Storage Routerなどの製品に生かされており、最近参入の企業には到底まねのできるものではありません。

 またこの20年間に技術者が開発したネットワーク解析ツールもあり、これをプロフェッショナルサービス組織のツールセットで活用できます。これにより、問題発生後に分析するような受け身ではなく、ネットワークパフォーマンスやリダンダンシーなどの調査や改善に使用するような前向き型対応が可能となります。


買収に伴う試練と確信した今後の針路

小型スイッチであるSphereon 4400(上)と同4700(下)
―この数年、業界では企業の買収が頻繁に繰り返されてきましたが、これほどうまく、それこそ100%近いパフォーマンスで買収が事業戦略に生かされたのは胸が張れますね。

ケリー氏
 実は技術の世界では、買収後およそ80%近くが当初の思惑どおりになっていないといわれています。従ってCEOとして買収決断をするとき、それこそ自分の首をかけて取り組まなければなりません。買収で重要なのは、その会社の技術だけを買うのではなく、相手会社の心と魂を見極めねばならないのです。技術は6カ月の寿命しかないかもしれませんから、重要なのはむしろ人材の取り込みなのです。McDATAでは、これまでもこうした姿勢で取り組んできましたし、顧客の方たちにもそこを評価いただけていると確信しています。


―買収にあたっては、痛みも伴うといわれていますが?

ケリー氏
 当社でも、500程度の業務人員を削減する必要がありました。ウォールストリートの受けは悪くはありませんでしたが、社員にとりましては大きな痛みだったと思います。こうしたことを乗り越えて、McDATAでは、ビジョンまでを吸入しうるすぐれた人材を得ることができたのです。その結果業界の評価を得られ、強力な競合会社を含めて、さまざまな会社から優秀な人材が集結してくれました。


―コロラド州ブルームフィールドにおける2年前の本誌取材では、ケリーCEOから、McDATAはSANベンダからデータネットワーキングのベンダに変貌しつつあるというお話をいただきました。今後はどのような会社を目指されますか?

ケリー氏
 2年経ったいま、データネットワーキングのベンダには達したのではないかと自負しています。これまではあまり見られなかったのですが、最近は16/24ポートの小型スイッチであるSphereonシリーズの大量納入もみられるようになりました。これからも、パートナーシップや買収などを通じて新しい技術に向けたアクセスが重要ですね。たとえば、FC(ファイバチャネル)では、これまでの伝送速度1Gbpsや2Gbpsからさらに4Gbpsが注目されつつあります。日本でもリリースを発表していますがFCスイッチ「Sphereon 4400/4700」で4Gbpsをサポートします。これは、さらに高いスループットあるいはスイッチとサーバーのシンプルな管理環境を望む顧客の方たちにとってベストソリューションになるはずです。

 またQLogicとのパートナー関係により、同社がブレードを作ってMcDATAがソフトウェアを搭載させすでにDellへ供給しているなど、ブレードサーバー市場への参入を本格化させます。さらにGEDIに関してはWAFS(Wide Area File System)ソリューション関連も近々発表できると思います。今、どのような環境とも接続しうるネットワーク統合は、もはや他社の追随を許さないほどにMcDATAは完成度が高くなっています。次にお目にかかれるときはさらに成功し、それこそヨットで来日できるくらいになっていればいいですね(笑)。



URL
  米McDATA
  http://www.mcdata.com/

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( 真実井 宣崇 )
2005/11/25 09:00

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