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米Extreme スティットCEO、「有言実行で統合ネットワーク構想を推進」


 “Ethernet Everywhere”のビジョンのもと、EthernetとIPによるスイッチング技術で、オープンかつ汎用性をもたせたソリューションを提供する米Extreme Networks(以下、Extreme)の2005会計年度が6月で終了した。ワールドワイドでは、2003年7月~2004年6月が3億5184万8000ドルであったのに対し、2004年7月~2005年6月は3億8334万7000ドルと伸張、また新年度に入って2005年7月~9月も9792万2000ドルと7四半期連続でプラスを続けるという実績を確保した。今回は、日本の販社9社(一次代理店)に向けたパートナーカンファレンス開催のために来日した同社社長兼CEOのゴードン・リロイ・スティット氏に、この堅実なビジネス展開の背景を聞いた。


トリプルプレイ時代のネットワーク要件とは?

社長兼CEOのゴードン・リロイ・スティット氏
―売り上げは堅調に推移していますが、米国内外の比率はいかがでしょう。

スティット氏
 Extremeでは、米国外からの売り上げが50%以上を占めています。これは米国企業としてはきわめて珍しいケースといえるでしょう。しかも、そのうちの15%が日本で売り上げたもので、やはり高い比重を占めています。また、ユーザー層は2分野に大別されますが、まずエンタープライズ向けには音声とデータの統合、特にIPテレフォニーに、またキャリア向けにはトリプルプレイ、つまりデ-タ、音声、ビデオの統合、たとえばビデオ・オンデマンド配信などにフォーカスしています。これらの比率は、ワールドワイドでエンタープライズ向けが77%、キャリア向けが23%、また日本では50%対50%になっています。


―ユーザーはどのようなモチベーションをもってExtremeのソリューションを導入されますか?

スティット氏
 ネットワーク製品購入のきっかけは、2つあるでしょうね。第1が、現状のネットワークがユーザーの希望するアプリケーションに対応できない場合、第2が将来的な展望のもと、VoIPなどの新しいアプリケーションに対応させたい場合です。周知のように、今は後者が注目の的になっていますが、このためにはオープンで、しかも音声とデータを統合可能なネットワーク環境が必要です。また音声は遅延に対してきわめて敏感であるので、ネットワークがこれに対応できなければなりません。遅延の許容範囲を見ますと、たとえば携帯電話は0.8秒程度、またデータのネットワークは3~5秒程度、そして高速のSONETベースに至っては20ミリ秒なんですが、当社ではこのSONETに見られるような限界にチャレンジしています。


―そのようなネットワークを構築する上でのキーポイントは何でしょう。

スティット氏
 なんといっても高可用性ですね。現在ではネットワークのダウンは許されず、無停止は必須条件といえるでしょう。こうした高可用性はきわめて重要な要素なんです。


主力製品の1つである「BlackDiamond 10Kシリーズ」
―高可用性を実現させるソリューションは、具体的にどのような技術に基づいていますか?

スティット氏
 当社では、オープンコンバージドネットワークのリーダーをにらんでBlackDiamond 10Kシリーズスイッチに搭載したモジュラー型OS、「ExtremeWare XOS」が挙げられます。これは従来OSのようにモノリシック型ではなくモジュラー型であるために、たとえばソフトウェアモジュールを動的に停止/再起動/ロード/アンロードできるなど、高可用性に富んでいます。このXOSはその後、BlackDiamond 8800シリーズやSummit X450シリーズにも搭載させていきました。こうしてユーザーは、高可用性をもったネットワークを手にすることができたのです。現に、2006会計年度第1四半期の売り上げのうち20%を、XOS対応機種が占めるまでに至っています。まさに2006年に向けた戦略もこの延長線上にあるといえますね。


―その一方で「Sentriant」の投入など、セキュリティソリューションも着々と充実させていますね。

スティット氏
 データ伝送をベースとしたネットワークのセキュリティは、これまでワームやウイルスなど外部からの脅威に重きが置かれていました。これが音声も含めた統合ネットワークになりますと、その深刻さたるや、これまで以上になるに違いありません。音声トラフィックを止めてしまうようなセキュリティリスクに対するには、従来のようなシグネチャベースではなく、ビヘイビア(振る舞い)ベースの脅威検知も重要になってきます。つまり攻撃があったとき、シグネチャが存在しない新しい脅威までも検知できなくてはなりません。このためExtremeでは、セキュリティアプライアンスであるSentriantをこれからも強化していきたいと考えています。


着実に浸透してきたオープンな「統合ネットワーク」構想

―最近、ユニークなユーザー事例は何かありましたでしょうか。

スティット氏
 米国ではこの20~30年間に新設の大学はありませんでしたが、実は先ごろカリフォルニア州に登場しました。ここではコアからエッジまで、当社の機器を中核にキャンパスネットワークを構築しています。現在はデータ中心であり、かつ学部ごとに段階的に稼働開始しているという状況ですが、近い将来には、音声も同じネットワークにのせることも意識した上での導入でした。このようにエンドトゥエンドで当社製品を選択いただけたのは、やはりオープンな統合ネットワークという当社の構想を理解・支持してもらえたからだと自負しています。


―その“統合”というコンセプトは多くのベンダが提唱していると思いますが、その中でもExtremeならではの強みは何ですか。

スティット氏
 今、多くのベンダがなぜ統合ネットワークに取り組んでいるのかといいますと、まぎれもなく市場のニーズがそうさせている、といっていいでしょう。しかしそうしたベンダたちが、果たして有言実行であるか否かは別問題です。たとえば、統合ネットワークには高い可用性が求められるわけですが、当社製品が搭載する冗長スイッチファブリックなどを、同じような構想をうたっている他ベンダも搭載しているとは限らないんです。そうした面を見ても、当社製品は統合ネットワークに対応していることを実務レベルで証明している、といっていいのではないでしょうか。


―日本は井戸社長を擁した新体制になって3カ月になります。まだ短期間かもしれませんが、CEOはこれをどう評価されていますか。

スティット氏
 井戸新社長は、顧客のニーズや社員の主張をよく聞いてくれます。現実に彼らが抱えている問題を的確にとらえてくれていますね。結果、マーケティングと営業、そしてシステムエンジニアを含めて横のつながりができてきました。これが日本の強みと思います。また最近の成果の1つに、当社とNTTデータ先端技術や東京エレクトロンとの間で、エンタープライズVLAN検疫ソリューションを共同開発することで合意したことがあげられます。これは、社外から持ち込まれたPCの社内LAN接続の機会が増える中、懸念されるウイルス感染や情報漏えい対策のため、ユーザー単位での認証を行い、ユーザーごとに適切な検疫を施そうというもので、ますます進展するユビキタス社会で必ずご期待にそえるソリューションになるものと確信しています。


―そうしますともはや、悩みはありませんか?

スティット氏
 いや、いや。自分たちの手でコントロールできたり、変えたりできるものについてはなんら心配ありませんが、直接手をくだせない世界や各国の経済などについては、結構気になるものです。


―最後に、日本のユーザーやパートナーに向けたメッセージをお願いします。

スティット氏
 エンタープライズに向けては、全体レベルで「オープンな統合ネットワーク」が進んでいますので、ぜひこの視点をふまえて自社ネットワークを考えていただきたいですね。キャリアに向けては、次世代メトロイーサネットにおけるサービスが主力になりつつありますので、そこをお手伝いさせていただきたい。今後はセキュリティや(サービスレベル)保証型サービスが顕著になっていくと思われますが、そのときこそ当社が十分お役にたてるでしょう。また、ソリューションもラインアップしさらに充実させていきますので、ともに日本市場で是が非でも成功しましょう、というのがパートナー向けのメッセージです。今後の新ソリューションにも期待していただきたいですね。



URL
  米Extreme Networks
  http://www.extremenetworks.com/


( 真実井 宣崇 )
2005/12/07 09:00

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