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マーキュリー石井社長、「CIOに選ばれる企業を目指す」


 マーキュリー・インタラクティブ・ジャパン株式会社の新社長に、10月1日付で石井幹氏が就任した。アドビシステムズジャパンの社長として、アドビ製品の日本における普及戦略に手腕を発揮した同氏が、新天地でいかにその力を生かすことができるかに業界内外から注目が集まる。そして、マーキュリー自身も、テストツールのトップベンダーから、BTO(Business Technology Optimization)ソリューションベンダーへと脱皮を図る、まさしく転換期にあり、新たな一歩を踏み出したばかりだ。果たして、マーキュリーは、石井新社長のもと、どんな事業を日本で進めることになるのだろうか。


マーキュリーの魅力に惹かれて社長就任

代表取締役社長 石井幹氏
─9月にアドビシステムズの社長を退任して、10月にマーキュリーの社長に就任。かなり素早い転身ですね。

石井氏
 いや、本当はもっとゆっくりするはずだったんですよ。ビジネスマンとして20年を経過し、ちょうどいい機会だったので、この正月は家族でのんびりするというプランを立てていましたから(笑)。それに、マーキュリーという会社についても、詳しく知っているわけではなかった。ですから、こんなに早く、しかも、マーキュリーの社長をしていることに私自身が驚いていますよ(笑)。


─なぜ、そんなに早く新天地での社長就任という形になったのですか。

石井氏
 ひとことでいえば、マーキュリーの魅力に惹かれたということです。アドビの社長を退任したあと、縁があって、知人を通じてマーキュリーのマネジメントの方にお会いする機会がありました。そこで、マーキュリーのお話をお伺いした。私が感じたのは、他社にはまねができないユニークな製品を持っている強みがあること、顧客寄りの考え方をする企業であること、そして、テストツールのベンダーといわれたフェーズから、BTOと呼ばれる新たな領域に出るタイミングにあり、マーキュリーのビジネスそのものに魅力を持ったことも大きな要素です。率直に面白い会社だなぁ、と思いましたよ。


─顧客寄りの考え方というのはどんな点を指しますか。

石井氏
 ITというのは、根本を支える技術とか、製品にいいものがないとだめなんです。その土台をしっかり作り上げるソリューションを提供しているのがマーキュリーだと思うんです。マーキュリーは、LoadRunnerという負荷テストツールが有名ですが、こうしたテストツールの製品群だけに留まらず、業務で利用するアプリケーションやシステムをしっかりと運用監視し、数々の導入前テストで導き出したパフォーマンスをしっかりと維持させること、そして、ITガバナンスのところにまで踏み込んでソリューションを提供することができる企業です。

 いまや、ITが一瞬でも止まったら、ビジネスが成り立たないという企業が多い。ITが、経営そのものに及ぼす影響が大きい。しかし、そこまでわかっていながらも、その大切なITを大手SIerに丸投げしてしまっているというユーザーが、日本にはあまりにも多い。また、IT部門の成功と、ビジネス面での成功とが、連動していないということも頻繁に起こっている。IT部門としては導入は成功し、問題なく動作していても、経営側から見れば、なにも価値が生まれていないということもある。両方が成功しなくてはならないんです。マーキュリーは、ユーザー企業を底辺で支えるパートナーとして、テスト、運用監視、ITガバナンスといった一連のソリューションをユーザー企業に提供することで、こうした問題も解決できると考えています。IT全体の質をより高いものへと引き上げ、経営層にとって、より効果的で信頼性の高いITシステムを提供できるお手伝いをする。そこにマーキュリーの役割がある。今年10月に、米国で開催されたマーキュリーワールドで、21種類の製品が発表されました。これらの製品によって、新たな価値をユーザー企業に提供できると考えています。


─会社の雰囲気はどんな感じですか。

石井氏
 非常に優秀なタレントが揃っている会社です。技術やコンサルタント、営業といった部門に優秀な人材がいますから、彼らが活躍できる場をもっと増やしたい。それと、45人程度の会社ですから、風通しもいい。会社もガラスが素通しで、私の席も、受付をちょっと入ればすぐに見える。私は、この雰囲気がすごく好きですよ。


認知度向上が大きな課題

─就任から2カ月の間に課題だと感じた部分はありますか。

石井氏
 北米や欧州に比べて、マーキュリー自身の認知度が低い。これは大きな課題です。その認知度という点でも、2つの要素があります。ひとつは、どれだけの人にマーキュリーの名前を知っていただいているのか、という点です。情報システム部門の方だけでなく、CIOをはじめとする経営層にもマーキュリーの名前を知っていただきたい。もうひとつは、マーキュリーという名前を知っている、あるいはマーキュリーの製品を使っているという人が、運用管理やガバナンスといったところまでをカバーしている企業としてマーキュリーを認知していただいているか、という点です。これもまだまだ認知度が低い。2006年は、この2つの認知度を高めていくことが、まずは大前提となりますね。


─認知度を高めるためにはどんな手を打ちますか。

石井氏
 奇策はありません。とにかく、マーキュリーからのメッセージをしっかりと発信していくことです。展示会やeメール、Webサイトを活用した手立ても必要でしょう。考えられることはどんどんやっていきたい。それと、CIOの方々とお話しする環境を整えたい。ユーザー企業の方に来ていただいて、ランチミーティングを開いて、お互いに情報交換するというのもひとつの手でしょう。もっと多くの人と接点をもてるような仕掛けが必要だと考えています。私自身もどんどんお客様のもとに出向きたいですね。私の仕事の時間を半分ぐらい、いや、できれば6割から7割は外に出ていって、ユーザー企業やパートナーの方と接点を持つようにしたい。


─米国本社からはどんなミッションが出ていますか。

石井氏
 もちろん、社長としてのターゲットはありますが、基本的には、「1から10までの細かいことは言わないから、日本のことは日本で考えて、ちゃんとやって欲しい」という感じですね。過去2年間、日本に常駐するトップはいなかったわけですから、やることはたくさんあります。また、日本法人の売り上げ比率は、外資系企業の日本法人で一般的に言われる1割というところまではいってませんから、まずは飛躍に向けた体制づくりからやっていかなくてはならない。マーキュリーのビジネスをワールドワイドで俯瞰(ふかん)すると、ここ数年、北米のビジネスが急速な成長を遂げている。そして、欧州がこれから一気に成長しようという段階に入ってきている。日本は、その後に、同じような成長が見られると思います。つまり、それだけのポテンシャルが日本の市場にあり、マーキュリーの日本法人にも成長のチャンスがあるということです。その成長に向けた準備が、この1年の取り組みということになります。


─マーキュリーが欧米で評価されているのはどんな点ですか。

石井氏
 ひとつあげるとすれば、運用管理の分野におけるマーキュリーの強みが認知されてきた点です。とくに、これをASPとして提供するMercury Managed Service(MMS)が高い評価を得ています。MMSでは、マーキュリーのインフラを利用して、実際の環境に対して、リモートでの運用管理が行えます。そのため、ユーザー自身への導入に比べて導入コストや導入期間を大幅に削減できる。日本でも、米国のマーキュリーのインフラリソースを利用して、同サービスを開始していますが、やはり反応はいいですね。日本語が話せるスタッフを米国側にも置いていますから、時差を活用した24時間のサービスが可能になる点も高い評価につながっています。


─BTOという言葉はユーザーの間に浸透していますか。

石井氏
 日本では、まったく浸透していませんね。また、Business Technology Optimizationといっても、なんだかわからないでしょうから(笑)、「ビジネスを支えるテクノロジーの最適化を支援すること」と言い換えています。マーキュリーが提供するBTOによって、テスト、運用、ITガバナンスを支援する製品を、企業の状況にあわせて提供し、ビジネスに最適化した形で提供できるようになる。もちろん、テスト、運用、ITガバナンスといったものを提供するベンダーはほかにもあります。当社の強みは、CIOをはじめとする経営層、運用管理を行うITプロ、そして、利用するユーザーが、それぞれに欲しい情報を、それぞれに的確に提示できるという点です。

 Mercury Business Availability Centerと呼ばれるアプリケーションの運用監視ソリューションでは、パフォーマンスを見たいといった場合に、マクロ的な情報を必要する人もいれば、ミクロの情報を重視する人もいるという、それぞれの要求に対して、エンドユーザー管理、システム可用性管理、サービスレベル管理といったかたちで必要な情報を提供できます。また、アプリケーションおよびインフラ環境をマッピングすることで、障害の影響度なども掌握することができる。そして、それらをひとつのダッシュボードから見ることができる。こうした、利用者の立場に立った運用管理を実現することが、マーキュリーの強みであり、ユーザーのビジネス価値を高めることにつながります。


─2006年は、マーキュリーの日本法人にとってなにがキーワードとなりますか。

石井氏
 信頼されるビジネスパートナーになることですね。マーキュリーには、「Vender of Choice for CIO」という言葉がありますが、その言葉通り、まずは、CIOに選んでいただけるパートナーになることを目指します。また、CIOとの関係強化のみならず、ITプロやエンドユーザーとも密接な関係を築き、マーキュリーの製品によって、技術的な観点、経営的な観点からも、プラスになったと言われる企業になりたい。それと、日本でのビジネス拡大には、これまで以上にスピード感が大切ですね。もともと機動力のある会社ですから、私もそれに負けないように、スピードと機動力を生かした経営をやっていきますよ。



URL
  マーキュリー・インタラクティブ・ジャパン株式会社
  http://www.mercury.com/jp/


( 大河原 克行 )
2005/12/16 00:02

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