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アドビ・イルグ社長、「新生アドビは非常にエキサイティング」


 「非常にエキサイティングな時期に社長として活動できる」、1月にアドビシステムズ株式会社の代表取締役社長に就任したギャレット・イルグ氏はこう語る。イルグ氏の前職は、米BEA Systemsの上級副社長兼アジア太平洋地域代表。日本BEAの社長も務めており、日本のエンタープライズ市場を知る人物でもある。イルグ氏に、新生アドビの今後の展開などについて話を伺った。


「ワンカンパニー」「ワンチーム」でマクロメディアとの統合を推進

代表取締役社長 ギャレット・イルグ氏
―前職はBEAのアジア太平洋地域代表ですが、アドビとの接点は少ないようにみえます。今回日本法人の社長を引き受けることになったきっかけを教えてください。

イルグ氏
 元々、米Adobeのスティーブン・イーロップ氏(ワールドワイドフィールドオペレーション担当社長)と個人的な付き合いがあったんです。Adobeについては、Macromediaと統合するという発表もあり、個人的に非常にエキサイティングな企業という印象を持っていました。そうした中で、イーロップ氏が私の日本やアジア太平洋での経験を評価して、イーロップ氏とブルース・チゼン氏(米Adobe CEO)と話をし、日本法人の社長を引き受けました。また日本で仕事ができることをうれしくおもっています。


―日本法人を見ると、マクロメディアとの統合という大きな課題もありますね。

イルグ氏
 会社がひとつになるということは、パートナーとの関係など、問題もたくさんあることは理解しています。しかし、私自身は、入社したときから別々の会社という意識をせずに「ワンカンパニー」「ワンチーム」を信じて仕事をしています。

 別々の会社がひとつになることで、最も気をつけているのが社員の感情などです。なので、ワンカンパニー、ワンチームというメッセージを強く伝えるようにしているのです。部門レベルでも同様に、ワンチームというメッセージを強調しています。

 また、統合に際して人事・給与などさまざまなビジネスプロセスがありますが、社内的にはこれらのビジネスプロセスはliveCycleで統合しています。


―LiveCycleを正しく活用していますね(笑)。LiveCycleは企業合併にも有効ということですか?

イルグ氏
 そうですね。統合に際して人事・給与などさまざまなビジネスプロセスがありますが、PDFを中心とした文書管理面でLiveCycleは有効で、マクロメディアのビジネスプロセスをアドビに統合する際に役立ちました。


顧客を深く知ることがエンタープライズビジネスでの成功に欠かせない

―LiveCycleの話が出ましたので、エンタープライズ戦略についてお聞きします。日本BEAでの社長経験もありますが、そのときの経験を活かし、どのようなエンタープライズ戦略を立てていますか。

イルグ氏
 エンタープライズビジネスで成功するには、顧客を深く知ることが重要です。特定市場をきちんと熟知した活動がエンタープライズビジネスには不可欠です。特定市場にフォーカスした営業を持つこと、アクションが取れることが大切です。これについては、業種、業態、顧客の課題に即した営業チームにより対応します。

 もちろん、パートナー企業ときちんと協業することが重要です。あくまで、双方にいいメリットが提供できるように活動します。


―取り扱いパートナーも増えていますね。

 電子的な世界で文書を管理するという点で、LiveCycleは効果的なソリューションです。顧客企業に対し付加価値を与えられるので、パートナーにとってもソリューションとして提供するメリットは大きいとおもいます。


―アドビとマクロメディアとの統合により、非常に大きな基盤を手に入れました。今後、これをどう活用していくのでしょうか。

イルグ氏
 すでに両社の製品をバンドル化して提供したりしています。他社の製品の場合、複数社と話をしてやっと必要とするプラットフォームの要素を導入できますが、アドビなら一社で連続したフローを提供できます。これをエンゲージメントプラットフォームと呼んでいます。完全なソリューションを提供するためにも、これらを包括的に提供することが重要だと考えています。

 また、アドビは、PCだけでなく、TV、PDA、携帯電話などに対応するプラットフォームを持っており、情報のデジタル化という面で大きな意味を持っています。アドビの製品を使えば、クリエーターはPDFおよびFlashというプラットフォームに対して、1つのコンテンツを作るだけで容易に対応できるのです。利用者側から見ても、ハイユビキタスな環境を得られます。


―サーバー製品をより手軽に使えるよう、サービス化して提供する可能性はありますか。

イルグ氏
 一部、BreezeをASPで提供していますが、自社で提供する予定はありません。ただし、中小企業など予算がない環境に向けて、SIerやASPプロバイダと協業してサービスを提供する可能性はあります。

 Breezeの場合、トレーニングなどいろいろなソリューションに組み込んで展開するという構想はあります。日本のSIerの間で現在検討しています。


―CADなどの3Dコンテンツに対応したAcrobat 3Dも発売されました。

イルグ氏
 Acrobat 3Dは、ドラッグアンドドロップで手軽に3Dコンテンツを作成でき、イメージングの世界で大きな役割を果たすとおもいます。

 時代はPDFをだれが作るのかではなく、作られたPDFを何に使うのかに移っています。PDFのマーケットは非常に競争が激しい。われわれは、顧客に対して選択肢を与えることが重要だと考えています。



URL
  アドビシステムズ株式会社
  http://www.adobe.co.jp/


( 福浦 一広 )
2006/02/22 15:38

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