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サイオステクノロジー喜多社長、「日本だけでなく米国でも認知されるITベンダーを目指す」


 2006年はサイオステクノロジーにとって、大きな変革の年となった。米国のSteelEye Technology, Incを買収。さらに社名をテンアートニから、サイオステクノロジーへ変更した。

 社名変更の狙いについて喜多伸夫社長は、「日本でも米国でも、わかりやすい社名にすることを目指した」と話す。そして、買収した米国企業のスタッフと日本のスタッフを統合し、「来年度からは日米の垣根のないボーダーレスな組織とすることを目指す」と話す。

 ボーダーレス化した組織により、同社が目指す企業としての方向はどこにあるのか。喜多社長に聞いた。


海外でも通用するサイオステクノロジーに社名変更

代表取締役社長の喜多伸夫氏
―11月6日付けで、社名がテンアートニからサイオステクノロジーへ変更されました。なぜ、社名変更を行ったのですか。

喜多氏
 昨年、コンサルティング会社に当社のCI(コーポレート・アイデンティティ)に関する調査を行ってもらいました。社員をはじめ、ステークホルダー、アナリスト、メディア、取引先などを対象に会社のイメージ、長所、短所などについてヒアリングをしてもらったんです。そうしたら、その調査資料の最後に、「できることなら、社名を変えるという選択肢もあるのではないか」と控え目に書かれていたんです。それが妙に気になりまして(笑)。資料の最初の方に、「とにかく社名を変えなさい」と大きく書かれていたら、逆に反発したかもしれません。でも、資料の最後にそう書かれていたというのは、調査をされた方が真剣にそう思われたってことではないかと思いまして(笑)。

 それに今年5月、米国のSteelEye Technology, Incを買収したんですが、海外ではテンアートニという社名の英語表記「10art-ni」は、正確に読んでもらえないんです。社名に「-」が入ると海外では読みにくくなってしまうようです。社名が読めないと、海外での事業展開におけるブランディングにはマイナスになります。

 サイオステクノロジーという新しい社名の英語表記、「SIOS Technology, Inc」は間違いなく読んでもらうことができる社名です。


―1997年の設立から10年経って、ビジネスの転換期に入ったと判断して社名を変更したわけではないのですか? 設立当時はLinuxやJavaの専業企業はほとんどない時代でした。それから10年経って、LinuxやJavaは決して珍しいものではなくなった。もっといろいろな事業展開をしていこうという狙いを込めて社名を変更したのかと考えたのですが。

喜多氏
 そういう意図はありませんでした。

 ただ、今年発表した中期経営計画において、2009年に連結売上高90億円をあげるという目標を発表しました。昨年度(2005年度)の売上高が42億4700万円ですから、3年間で倍以上に伸ばしていかなければならない。90億円の売り上げを達成した後には、100億円という新しい目標ができるでしょうし、さらにもっと大きな売上高を目指していくことも必要です。

 新しい売り上げで考えると、Linuxのサポートビジネスに関しては、調査会社の調査でも当社が市場の約5割を獲得するナンバー1だという評価はもらっています。今後さらにLinuxのサポートビジネス市場は伸張していくでしょうが、それ以外の分野の事業を伸ばすことも必要になります。


OracleのLinuxサポート参入は市場拡大にプラス

―売り上げを伸張させるために、新たにどんな事業を強化していく計画ですか。

喜多氏
 Linuxは対情報システム向け事業ですが、Javaは情報システムに加え、エンドユーザー向けビジネスになります。このWebアプリケーションビジネスが新たに柱となるビジネスのひとつと考えています。

 オープンソースの情報インフラビジネス、Webアプリケーションビジネスの2つが事業拡大を期待できるビジネスになるのではないでしょうか。ただ、WebアプリケーションはLinuxのサポートビジネスなどとは違い、エンドユーザー自身が手にするものです。当社の製品を選択してもらうためには、企業やアプリケーションの知名度も必要です。

 社名をサイオステクノロジー株式会社に変更したのは、日本でも覚えやすい社名が必要だと考えたからです。本当は短い社名の方がわかりやすいので、「サイオス」にする案もあったのですが、サイオスだけではどんなことをしている会社なのかすぐに理解できない。証券会社の方から、「社名を聞いて、どんな分野の事業をしている会社なのか、すぐにわかる社名が一番です」といわれたこともあって、サイオスにテクノロジーをつけたんですよ。ゆくゆくはもっと有名になって、テクノロジーをとって、「サイオス」という社名だけでもすぐにわかってもらえるような会社になっていきたいんです。

 誰にでも知ってもらうといっても、本来の事業とは関係のないプロ野球の球団買収を行うことは考えていません(笑)。しかし、売上高100億円を実現するためには、ビジネスと直結する分野ではナンバー1になっていきたい。


―具体的にはどんなWebアプリケーションの投入を計画しているのですか。

喜多氏
 現段階では詳細を申し上げることはできないのですが、いろいろとアイデアはあがってきています。


―Linuxビジネスについてはどんなことを計画しているのでしょうか。

喜多氏
 LinuxはOSですから、これからますますコモディティ化していく。その上にどういった付加価値をつけていくことができるのかが、ビジネスの大きな分かれ目となるでしょう。仮想化、セキュリティといった付加価値をつけていくことで、爆発的にユーザーが増えるというわけにはいかないでしょうが、着実にユーザーを増やしていくことができると思っています。


―Linuxのサポートビジネスについては、米OracleもRed Hat Linuxに対してエンタープライズ級のサポートを行うことを正式発表しました。Oracleの動きのビジネスへの影響は?

喜多氏
 Oracleの日本法人である日本オラクルはわれわれの株主でもあります。市場の拡大という点ではプラスになるのではないかと前向きに考えています。


社内の公用語を英語にすることも検討中

―今年5月に、米国のSteelEye Technology, Incを買収しました。買収の狙いは?

喜多氏
 SteelEyeはITの信頼性を向上するためのソフトウェア、ハイアベイラビリティクラスタソフトを提供しています。これらのソフトは、米国で施行されたSOX法のための内部統制に活用することができます。内部統制は米国だけでなく、日本をはじめグローバルに必要性が増しているものです。

 10月19日付けで、SteelEyeのクラスタソリューション「LifeKeeper Protection Suite for Microsoft Exchange」が、英国の大手資産運用会社New Star Asset Managementのメールやグループウェア機能の障害復旧対策として導入されたことを発表しました。こうした事例をもっとアピールして、新しいビジネスにつなげていきたいと考えています。


―障害復旧対策ソリューションは、大手ITベンダーも提供していますね。

喜多氏
 大手ベンダーと比較すると、低価格でソリューションを提供できるのがわれわれの強みです。コアな技術をもっているからこそ、そういう展開が可能になるんです。


―海外での事業展開を指向する日本のITベンダーは多いですが、いろいろな障害があり実現が難しい。海外ベンダーの買収は、海外進出には有効な手段となると思います。SteelEyeだけでなく、これからも企業買収を行っていく予定はありますか?

喜多氏
 すぐに次の企業を買収しようとは思ってはいません。SteelEyeのコア技術をきちんと社内に取り込んでいくというのがわれわれがやらなければならないことだと思っています。

 ただし、1月から新年度になるのですが、そこで体制の見直しは行い、ボーダーレスな組織体制を作りたいと考えています。


―日本と米国の敷居をなくすということですか?

喜多氏
 はい。日本人だけれど、米国人の部下をもっているスタッフも出てくるでしょう。バジェット、マーケティングについてはボーダーレス化をはかり、組織については来年度からは日米融合体制にしてしまいます。

 実は今、社内の公用語を日本語から英語にするタイミングをいつにするか見計らっているところなんですよ。


―日本法人も公用語が英語になるわけですね?

喜多氏
 日産自動車のように、ある日突然、公用語が英語にしてしまうということを考えているんですが(笑)。



URL
  サイオステクノロジー株式会社
  http://www.sios.com/


( 三浦 優子 )
2006/12/01 00:00

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