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シマンテック木村社長、「安心・安全を提供するインフラソフトベンダーのリーダーに」


 2005年7月のベリタスソフトウェアとの合併以降、シマンテックは、製品の統合、組織の統合などに取り組んできた。そして、2006年には、相次ぐ新製品投入とともに、年末には、Symantec Operational ServicesおよびSymantec Residency Servicesを発表。両社の特徴を生かした新たな統合製品や統合サービスによって、データ保護とセキュリティ対策の観点から、安心、安全なネット社会の創出を実現しようとしている。こうした地盤をもとに、2007年は、いよいよ事業を加速する1年になる。シマンテックの木村裕之社長に、2007年の同社の取り組みを聞いた。


代表取締役社長の木村裕之氏
―2006年はどんな1年でしたか。

木村氏
 日本においては、本社を移転し、パートナープログラムの統合を図り、さらにトータルソリューション型の製品をはじめ、数多くの製品を投入した1年でした。アンチウイルスの新製品投入をはじめとする個人向けソリューションに加え、法人向けのソリューションも数多く投入した。アーカイブ製品であるSymantec Enterprise Vaultと、ウイルスやワームから保護するSymantec Mail Security 8300シリーズとを組み合わせたエンタープライズメッセージングマネジメント(EMM)や、ITインフラを管理するソリューションであるSymantec LiveState Recovery(LSR)ファミリの強化、さらには、年末には、IT業務のアウトソーシングを実現するSymantec Operational Servicesおよび、シマンテックの専門家をユーザー企業に常駐させるSymantec Residency Servicesを発表し、エンタープライズ分野における製品およびサービス強化を図った。振り返ってみると、とにかく忙しい1年でしたね(笑)。


―日本版SOX法に関するソリューションにもかなり力を注いでいましたね。

木村氏
 日本版SOX法関連は、製品およびサービスの投入だけにとどまらず、体制も強化しました。日本版SOX法に対応するためのイニシアティブを社内に作り、コンサルティングビジネスを強化した。内部統制に関する書籍も発行し、ユーザーに対しても、わかりやすい提案を進めた。この日本版SOX法関連ソリューションでは、シマンテックの強みが発揮できる地盤ができたと思っています。2007年は、日本版SOX法に関するソリューションが大きな注目を集めますから、万全な準備をして取り組んでいきたい。


―パートナー戦略も加速していますね。

木村氏
 旧ベリタスパートナープログラムと、旧シマンテックパートナープログラムを統合して、新たなパートナー向けプログラムを用意しました。旧ベリタスのパートナーが、旧シマンテックのプロダクトを取り扱ったり、逆に旧シマンテックのパートナーが旧ベリタスの製品を扱うための支援を行っています。一方で、製品開発に当たっては、インテルやデル、ジュニパーネットワークスなどとの提携を進め、より戦略的な製品提供ができるようになった。この点でも、パートナー戦略の広がりが出ていると考えています。


―こうして見ると、2つの会社の統合は、スムーズにいっていますね。

木村氏
 私は、あの合併は、世の中の要請であったと思っているんですよ。IT社会やネット社会といわれるように、インターネットやITは、社会のインフラとして欠かすことができないものになってきている。インターネットやITは、生活のインフラになり、経営戦略の中核を担うようになっている。

 しかし、安心、安全な環境が整っているのかというと、多くの人が「ノー」と答えるはずです。ここにわれわれの役割がある。IT社会の安心、安全を実現するのはわれわれの役目であり、いまほど、われわれの役割が望まれている時代はない。いま、ここでIT社会、ネット社会にブレーキがかかってしまったらどうするんだ。いまこそスピード感をもって、この要請に応えていかなくてはならないだろう。私は、社内に対してそう言っているのです。

 シマンテックが、ネット社会、IT社会において、安心、安全を提供する役割を担っているのであれば、内部のことでゴタゴタしている暇はない(笑)、ということなんです。自分の使命は何か。それを知れば、おのずと社内のことに目がいくよりも、外のことに目がいきますよ。社員が、その意識を持ったことが、結果として、スムーズな統合につながったのではないでしょうか。


―2006年には、ベリタスとの統合の成果が早くも出てきた感じがしますが。

木村氏
 もともとシマンテックは、アンチウイルスソフトを提供する会社、あるいはユーティリティソフトを提供する会社という印象があったと思いますが、昨年1年間で、そのイメージが変わってきたのではないでしょうか。そのイメージが、IT社会やネット社会における安心や安全を、ひっくるめて提供する会社という形に変化していれば成功だと思います。2006年11月に国内で開催した「Symantec Vision 2006」では、「安心できるIT社会の実践に向けて」をテーマとして、シマンテックが提供するさまざまな安心、安全のためのソリューションを提示できた。シマンテックがどの方向に向かおうとしているのかをご理解いただけたのではないかと思っています。しかし、安心、安全なネット社会を構築するという観点でとらえれば、合格点といえるのはまだまだ先のことになりますね。


―2007年はどんな1年になりそうですか。

木村氏
 2007年は、「すそ野を広げること」、そして、「専門性を強化する」という2点になります。


―相反するように聞こえますが。

木村氏
 いや、これは相反するものではありません。個人向けには、個人向けクライアントPCに対するセキュリティの提供と、ISPを経由した形でのセキュリティ対策サービスの2つがあります。一方、企業向けには、企業内のクライアントPCをリモートで監視するオペレーションサービスや、企業のIT全体を管理するマネージドセキュリティサービスがある。こうした切り口で、より多くのユーザーを獲得していく。企業が必要するセキュリティソリューションにおいては、新たな製品、サービスを提供していく予定です。サービスに関しては、コンサルティングサービスの強化を含めて、人員を増やしています。コンサルティングは、2007年には大きく拡大していく部分になります。

 また、モバイル環境でのネットワークセキュリティソリューションの提供もこれからますます重要になってくる。日本では携帯電話のウイルス問題はそれほど騒がれていないが、これからも日本だけは安心だという状況が続くとは限らない。日本の携帯電話の利用形態は先進的ですから、この市場に対しても、安心、安全な環境をしっかりと提供していきたい。


―法人向けビジネスでは、どんな取り組みが新たに追加されますか。

木村氏
 法人向けビジネスにおいては、インダストリ別サービスの強化が鍵になります。当社では、これまでにも、金融、通信、電力というように業界別にコンサルティングサービスを行う体制を整えており、業界ごとの専門性を持たせて、セキュリティ全般に関するアドバイザリーコンサルティングを行っている。金融業界には金融業界ならではのノウハウが必要。ATMに関するセキュリティコンサルティングや、オーダープロセスに関するアドバイスには、やはりその業界ならではのノウハウが必要となります。こうした専門性はますます追求していきたい。

 そのなかで、2007年の最初の取り組みとなるのが、シマンテック総合研究所(SRI)の設立です。これは、中央省庁向けの専門部隊として別会社として立ち上げるものです。より専門的な知識をベースに、セキュリティコンサルティングを行う体制が整うことになります。


―2007年は、「Norton 360」が控えていますね。

木村氏
 Norton 360は、個人ユーザー、法人ユーザーを問わずに、幅広いユーザーに利用していただける製品となります。ウイルス対策や、オンライン取引における各種保護機能のほか、ネット上のディスクスペースへのバックアップ機能やPCのメンテナンス機能などを搭載した統合セキュリティサービスとなります。これは、旧シマンテックと、旧ベリタスとの統合によって、初めて実現されるソリューションといえます。

 一方、データセンターやエンタープライズ分野におけるアーカイブソリューションも2007年は重要な製品になる。さらに、日本のビジネスパートナーとは、日本版SOX法を視野に入れた日本独自のパートナーシップも出てくることになるでしょう。


―マイクロソフトが、セキュリティ分野に本格的に参入してきますね。

木村氏
 短期的な視点で見ると、Windows Vistaの発売にあわせて、お互いに市場を盛り上げていくというパートナーであるといえます。しかし、その一方で、マイクロソフトに対しては、もっと安全なOSを開発してほしいという要望がある。Windowsが安全であることが、IT社会の安全度を一気に引き上げることにつながるわけですから。われわれはその点での協力体制をとっていきたい。しかし、マイクロソフトが外部に提供する情報に制限がありすぎる。業界の構造や、IT社会そのものを、健全で、安全なものにするには、マイクロソフトはもっと情報公開をしていくべきでしょう。

 一方、セキュリティプロダクトにおける競合という点では、それほど心配はしていません。シマンテックは、セキュリティの専門会社としての優位性がある。全世界に4万を超えるセキュリティセンサーを張り巡らし、全世界で流通しているeメールの3分の1を管理できる。これを24時間365日体制で監視を行い、脅威を確認したときには、タイムリーに対策を行い、Live Updateで、ユーザーに最新のセキュリティ環境を提供できる。世界ナンバーワンの仕組みと実績は、すぐには追いつきません。また、シマンテックは、5歩ぐらい先までを読んで研究開発を行っている。その成果は、Norton Confidentialのなかで提供していくことになります。信頼を積み重ねてきた22年間の実績がありますから。セキュリティソリューション分野におけるリーダーとしての地位はそう簡単には譲りません。

 2007年1月末から、日本でも「Confidence in a connected world」を、新たなボイラープレートとして使います。セキュリティだけにとどまらず、アベイラビリティ、コンプライアンス、パフォーマンスに関わるリスクに対処し、顧客のインフラストラクチャ、インフォメーション、そしてインタラクションを保護する「インフラストラクチャソフトウェア」を提供する世界的リーダーへの成長を目指します。

 2007年のシマンテックは、さらに変化に変化が続き、それが躍進へとつながっていく年になりますよ。

 より安全、安心なネット社会、IT社会を構築することに寄与することをお約束します。



URL
  株式会社シマンテック
  http://www.symantec.co.jp/


( 大河原 克行 )
2007/01/19 09:00

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