Enterprise Watch
バックナンバー

NECフィールディング片山社長に聞く、創立50年目の成長戦略


 NECフィールディングが成長路線に転じようとしている。2006年度までは3期連続減収減益という厳しい業績を余儀なくされたが、2007年度から増収増益の事業計画を推進する考えだ。片山徹社長は、「ターンアラウンドをキーワードに積極策に打って出る」と語る。今年創業50周年を迎えたNECフィールディングは、果たして、どんな成長戦略を描くのか。就任2年目を迎えた片山徹社長に話を聞いた。


代表取締役社長の片山徹氏
―昨年6月の社長就任からちょうど1年。どんな自己評価をしていますか。

片山氏
 この1年は、NECフィールディングという会社の実力をしっかりと把握し、改革すべき改革は、いち早く実行に移すという期間でしたね。2006年度実績は、残念ながら3期連続となる減収減益になりました。ただ、2007年度以降の飛躍に向けた準備は整ってきた。


―NECフィールディングが抱える最大の課題とはなんでしょうか。

片山氏
 プロアクティブ・メンテナンスと呼ぶ保守領域においては、対象となるサーバーの台数が増加しても、単価そのものが下落していますから、それに伴う保守費用が減少していく。これは防ぎようがない。


―既存保守領域では、年間どれぐらいの売り上げ減少があるのですか。

片山氏
 2005年度には約100億円の減少、2006年度は約50億円の減少がありました。理由としては、オープン化の進展によるサーバー単価の減少を背景にした保守契約費用の下落、製品品質向上による保守およびサービスの減少があげられます。今年度も残念ながら、この分野では40数億円の減収になると予想しています。しばらくは、減収が避けられませんね。


―既存保守領域における打開策はあるのですか。

片山氏
 年々、減収額を縮小させており、これを、どこかのタイミングでイーブンには持っていきたい。そのためにはどうするか。いまの事業規模をそのまま維持するのは難しいですから、この減少分を別の事業で補っていかなくてはなりません。そのひとつがソフトまでを含めたシステム保守への拡大。そして、もうひとつがマルチベンダー対応です。

 システム対応という点では、アプリケーションまでをカバーするのは、当社ではまだ荷が重いが、OSやミドルウェアといった領域までは、十分カバーすることができる。これをより深い方向へと深化させていきたい。いわば、縦方向への戦略ともいえるものです。

 一方、マルチベンダーは、横方向への戦略といえるものであり、NECだけに特化するのではなく、他社の製品までカバーする、あるいは、直接カバーできなくても、当社がワンストップの窓口としてこれに対応するといったことを目指します。すでに、NECと提携関係にある日本ヒューレット・パッカードやサン・マイクロシステムズ、EMCなどは直接当社が対応できる体制を整えていますし、固有のユーザーからは、これ以外のベンダーのサポートまで当社が特別に請け負うという例も出ています。また、ワンストップ窓口といっても、単につなぐだけでなく、どこに問題が発生しているのか、なにが原因なのかといったことをきちっと切り分けることができなくてはならない。ここに、NECフィールディングとしての強みが発揮できると考えています。


―台数が増加しているのに、保守事業の売り上げ規模が縮小するというのは、保守を行うベンダーにとっては、頭の痛い問題ですね。もはや、この構造からは抜けられないのでしょうか。

片山氏
 それは難しいでしょうね。しかも、それ以外にも問題があるのです。例えば、メーカーの直販部門が、2000台単位でPCを導入したとしましょう。しかし、そのうち20%しか保守の契約をもらえないとする。この保守対象の比率をあげることで、保守事業の売り上げを確保するという考え方もあります。

 しかし、むしろ問題は、20%の保守契約をしたPCやサーバーが、果たしてどれなのかということが、明確ではない点なんです。営業段階や、運用段階で資産管理がしっかりとできていないため、適切な形で保守ができない。場合によっては、壊れたものから20%が対象ということにもなりかねないんです。まずは、ここをしっかりとやっていくということが必要です。


―ちなみに、保守契約比率はどの程度でしょうか。

片山氏
 PCは約2割、サーバーが約6割。メインフレームでは100%ですね。実は、保守対象以外の製品が壊れた時には、別途費用をいただけるわけですから、単に保守対象製品の比率をあげていくということだけがいいとも限らない。とはいえ、最近の製品は壊れなくなっていますし、ハード価格が安いですから壊れたら置き換えてしまうという例もある。やはり、少しでも保守対象比率をあげていくことは重要なことです。

 保守契約の比率をもっと高めてもらうために、営業メニューのなかで保守契約を明確化し、これを戦略的に展開することが必要です。また、サービスをテンプレート化し、それをベースにした展開も強化したい。当社には2事業部全国13拠点の体制があり、これらの拠点で蓄積した成果をテンプレート化して推進していくことも考えたい。NECクループは、コンペチターに比べてサービス、保守、そして運用の売り上げが低い。これは、グループ全体が抱える課題でもあります。


―メニュー化するだけでは、なかなか動きだしませんね。

片山氏
 当社の社員は、保守、サポートのエキスパートです。こうしたエキスパートを、NECの営業部門のなかに配備しました。NECでは、今年6月から、サポート・サーヒス部を新設し、営業活動のなかでサポート保守を重視する姿勢を打ち出しました。上期は準備をして、下期から本格的に稼働するということになると思いますが、単に保守契約を増やすという効果だけでなく、NECフィールディングが得意とするSMBに対して、NECやNECグループが持つSI力、営業力を生かしながら、事業を拡大していくということも視野に入れたい。まだ検討事項ではありますが、NECの営業部門から、NECフィールディングに出向してもらい、SMBにおける事業拡大に取り組むといったことも考えています。


―子会社化したNECインフロンティアシステムサービスは保守事業でどんな役割を担いますか。

片山氏
 POSシステムおよびネットワークシステムの設置工事、保守に関わる事業の体制強化を図れる。流通系の専門保守体制を構築できる強みは大きいといえます。


―もうひとつの事業の柱であるフィールディング・ソリューションに関してはどうですか。

片山氏
 注力領域である運用サポートの伸張や、大型案件受注やセキュリティ関連事業の拡大がプラス効果となっています。しかし、その一方で、付加価値が低い物品販売や工事案件を精査したことでの影響があった。このマイナス分が年間100億円規模もあり、これが減収要因となっています。とはいえ、この精査は、昨年度第2四半期から開始していますから、言い換えれば、対前年比という点では、今年度第2四半期以降にマイナス要因が消える。今後は大きな影響はないと考えています。


―データセンターなどによる運用サポートが徐々に成果になっているようですが。

片山氏
 北海道から九州までの10カ所にiSolution拠点を設置し、アウトソーシングサービスを行える体制が構築できた。まだまだ事業規模が小さいですから、これを積極的に展開していきたい。


―新たな事業として、サプライなどを直販する「い~るでぃんぐ」を開始しましたね。

片山氏
 NECフィールディングでは、過去からNECの純正製品を提供することを目的に、「EFショップ」という名称で、サプライ品などを販売する事業を行っていましたが、正直にいえば、実績はほとんどないという状況でした。「アスクル」や「たのめーる」は知っているけど、そんなの知らないよ、というのが実態です。

 そこで、2007年度からここを徹底的にやっていくことにした。4月からは、「い~るでぃんぐ」に名称を変更し、一気に1万7000点のオフィスサプライを取り扱う規模に拡大した。い~るでぃんぐの名称は、いる(必要な)ものがある、また、お客のそばにいる、という意味も込めています。4月はそれほど、契約数は伸びなかったのですが、5月から社員全員に対して、とにかく契約をとってくるようにと指示を出し、これまでに7000社と契約できました。「やればできるじゃないか」と言っているんです(笑)。これを年内には1万5000社にまで増やしたい。そして、大切なのは、これを使ってもらうことです。使ってもらって初めて売り上げが伸びますから。初年度は30億円の売り上げを目指します。


―いよいよ2007年度からは成長戦略に転じますね。

片山氏
 2007年度は、増収増益へのターンアラウンドと位置づけています。売上高では1.6%増の2160億円、営業利益で9.1%増の90億円、経常利益で5.5%増の90億円、最終利益で12.5%増の50億円の増収増益を目指します。来年度は、このままいけばプラスになるのは見えている。しかし、正直なところ、2007年度に増収増益を目指すのは、大きな挑戦だといえます。でも、それを成し遂げたい。今年度、増収増益を達成してこそ意味があるんです。

 実は、NECフィールディングは今年創立50周年を迎えます。正確にいうと、今年3月に50周年を迎えた。しかし、この業績では誇れることはできない。歴代の社長にも連絡し、今回はこういう事情で50周年は見送ります、と伝えた。だが、上期に増収増益を達成できれば、通期も増収増益の見通しが立つ。上期の実績を見て、増収増益ならば、秋には50周年をみんなで祝いたい。今年の間ならば、まだ50周年期間中ですからね(笑)。いまは、社員にも、「なんとかがんばろうよ」といっているんです。


―成長戦略における鍵はなんですか。

片山氏
 なんといっても、人が事業そのものを左右する業種ですから、やはり人材育成は大きな鍵ですね。もともとハードウェアの技術を持っている社員は多い。しかし、これがソフトまでわかる人材は、まだ十分に揃っているとは言い難い。当社には、約4500人のCEがいるが、そのうちソフトまでわかるアドバンスドCEは約500人。これを今後1年で1000人にまで増員したい。

 一方で、運用領域の事業拡大に向けて、7月に新設したフィールディングシステムテクノロジーにおいて、運用サポートに関する人材を一元的に採用して、必要な地域や支店に効率的に振り分けていくことを開始した。これまでは、拠点単位で人を採用してきましたが、それでは事業の進ちょくに地域格差が出てしまう。どの地域で人が足りないのか、どのエリアを戦略的に展開していくのかといった優先順位に応じて、人を配分できるようにした。また、給与体系も運用サポートという業種にあわせた形に変えていくつもりです。

 保守サポートの会社ですから、CS(カスタマ・サティスファクション)は大きな指標です。この評価を高めていくことは重要ですが、社長である私にとっては、ES(エンプロイー・サティスファクション、社員満足度)が大切です。正直なことをいえば、ほかの会社に比べてESが見劣りすると感じている部分はあります。社員が元気に仕事をしてくれることが、結果として、CS向上につながる。増収増益を達成できるかどうかは、社員次第だと思っていますよ。



URL
  NECフィールディング株式会社
  http://www.fielding.co.jp/


( 大河原 克行 )
2007/07/12 00:00

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.