|
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
|
マイクロソフト・ヒューストン社長、「デジタルライフスタイルは新たな段階に入った」
|
 |
|
|
マイクロソフトの3カ年中期経営計画「PLAN-J」が、最終年度に入った。その中核となるデジタルライフスタイルの推進に自ら陣頭指揮を振っているのが、ダレン・ヒューストン社長だ。そのデジタルライフスタイルが、いま革新の時期を迎えているとヒューストン社長は語る。PLAN-Jの進ちょく、そして、デジタルライフスタイルへの取り組みについて聞いた。

|
代表執行役社長兼米Microsoft コーポレートバイスプレジデント ダレン・ヒューストン氏
|
―3カ年の中期経営計画「PLAN-J」の2年目が終了し、いよいよ最終年度に入りました。これまでの進ちょく状況を自己採点すると何点ぐらいになりますか。
ヒューストン氏
現時点では、80点に達していると自己評価しています。
―かつての取材でも同様の質問をしましたが、1年目が終了した時点では70点、1年半の時点では75点。そして、今回、2年目が終了した時点では80点。着実に点数が上がっていますね(笑)。
ヒューストン氏
最終的には100点といえるようにしたいですね(笑)。PLAN-Jは、われわれが想定した正しい速度で、計画が進ちょくしています。今回、5点アップした理由は、組織体制が大幅に強化された点にあります。今年3月に、樋口泰行をCOOとして迎え入れ、彼がデジタルワークスタイルを担当することになった。これにあわせて、昇格した社員もいる。会社として一体感がとれ、さらに体質を強化できた。
そして、私は、デジタルライフスタイルにフォーカスし、PLAN-Jをより戦略的に推進していける体制が取れるようになった。体質の強化は内部的な話なので、メディアの人たちにはなかなか見えない領域かもしれないが、この強化は極めて大きい出来事です。そして、マイクロソフトの社員は気配りの利く人たちが多い。私は、IT業界のなかでももっとも強いチームを形成できていると自負しています。
―PLAN-Jのスタート以来、ヒューストン社長が担当するデジタルライフスタイルの推進は、大変重要な柱となっています。ここにきて、ヒューストン社長は、デジタルライフスタイルの「革新」という言葉を使いはじめましたね。革新とはなにを意味するのですか。
ヒューストン氏
マイクロソフトが.netを提唱し、それ以来、デジタルライフスタイルを、いかに現実のものにするのかといった作業が、業界全体で進んでいます。また、わずか数年前までは、ダイヤルアップが主流であったものが、ブロードバンドが主流となり、多くのものとコネクトするようになってきた。かつて、マイクロソフトが描いていた世界が、現実のものとなり、それを裏付ける多くの事例も出てきています。それが「ソフト+サービス」の世界であり、デジタルライフスタイルの革新だといえます。

|
パートナー企業向け戦略説明会「CONNECTED」での様子
|
―「ソフト+サービス」の世界をもう少しわかりやすく解説していただけますか。
ヒューストン氏
例えば、Windows Updateは、コネクトすることによって提供される「ソフト+サービス」の始まりだったといっていいでしょう。これは、ユーザーの利用環境に劇的な変化をもたらしました。シャットダウンして、次にPCを起動した時には、最新の環境になっているという状況が実現したわけですから。こうした「ソフト+サービス」の世界が、いま、次のフェーズに入ろうとしている。そこに私が革新という理由があります。
Windows Vistaを搭載したPCで、さまざまなコンテンツやメディア、人と接続することで、生産性は大きく進化し、コミュニケーションの仕方も大きく変化しはじめています。エンターテイメントひとつとっても、統合された環境のなかで、映像、音楽、写真が利用でき、しかも、それが著作権を保護され、利用者にとってもセキュアな環境で利用できるようになっている。次のフェーズに向けての地ならしが終わった段階にあるともいえるのではないでしょうか。
先ごろ、デジタルライフスタイルにおける新たなサービスがいくつか発表されました。これは、デジタルライフスタイルが次のフェーズに入ったことを示すものだといえます。ひとつは、日本テレビ放送網が発表したワンセグ・メディアセンター連携機能を活用したサービスです。ここでは、Vista搭載PC上のワンセグ放送視聴画面から、直接、Media Centerを起動させて、番組に関連するコンテンツをネット上で視聴できるようになった。また、東京放送(TBS)では、横浜ベイスターズ主催の試合を動画配信する「ハマスタWAVE」において、各イニングの終了時点で試合の動画を公開し、ハイライトシーンも自由に視聴することができます。こうしたサービスは、米国にはない日本ならではのサービスです。Windows Vistaで提供される新たな技術とインフラを利用して、これまでにないサービスが始まっている。
いまや、Media Onlineで提供されるコンテンツは22種類にのぼっています。日本はデジタルライフスタイルの発信基地であり、革新をリードしている市場です。そして、これを実現しているのが、パートナーとの「Connected」ということになります。
―ソフト+サービスの領域が拡大しているということですか。
ヒューストン氏
そうです。これまでマイクロソフトのパートナーといえば、IT業界の企業だけといっても過言ではなかった。しかし、これからは、さまざまな企業と、業界の枠を越えて連携することになる。
例えば、テレビ局や新聞社とのパートナーシップというのは、これまでには考えられなかったことです。ある新聞社とは10年以上前から、Windowsを搭載したPCやサーバーの導入というお付き合いがあったかもしれない。そして、5年前にはコンテンツをデジタル化するという点で当社の技術や製品を活用するという例があったかもしれない。しかし、これからは、それまでとは違う次元で、より深い関係を持つことになる。当社のプラットフォームの上でサービスを提供するという関係が生まれてくるからです。
Vistaによって実現されるデジタルライフスタイルの世界においては、コンテンツこそがキングになる。サービスが大変重要な役割を果たすことになる。マイクロソフトとしても、コンテンツ戦略を強力に推し進めていく必要がある。とはいえ、マイクロソフトが自らコンテンツを提供するビジネスに乗り出すわけではありません。
では、マイクロソフトはそこでどんな役割を果たすのか。それは、ひとことでいえばプラットフォームです。オープンなプラットフォームの上で、安心して、しかも低コストで、ビジネスやサービスを提供することができるツールや技術を提供していく。DRM(デジタル著作権管理)技術を提供しているのも、そのひとつの役割です。そして、Webに関するさまざまなツールの提供や、WPF(Windows Presentation Foundation)やSilverlightといった技術も同様です。コンテンツホルダーは、マイクロソフトは競合する会社ではなく、信頼して協業できる会社であるということに気がつき始めているはずです。そして、グローバル企業であるマイクロソフトと手を組むことで、世界に打って出られることに気がついている会社もあります。すばらしいコンテンツをもっている日本の人たちが、世界で戦うことを支援したい。そうした点でもパートナーシップの成果を楽しみにしたいですね。
―マイクロソフトのメッセージはどの程度届いていますか。
ヒューストン氏
当社が提唱していかなくてはならないものはまだまだあります。ツールも不十分だと思っています。Media Centerでは、必要なコンテンツに対して、4回もクリックしなくてはならないという問題点も私自身感じている。これも改善しなくてはならない。しかし、多くの企業がマイクロソフトとのパートナーシップに興味を持ち始めているのは事実です。
先日も、ある放送局の経営トップと会食する機会がありました。コンテンツをいかに新たなプラットフォームの上でサービスとして提供するのか、その上で、マイクロソフトとのパートナーシップがどれだけ重要であるか、ということを認識している。CEOがこうしたことを理解し、しかも、優先順位の1番目、2番目にあげて、なにをどうすべきか、どういうステップを踏んでやるのか、ということを考えている。これは大きな変化です。放送局や、雑誌、新聞、あるいは玩具業界などには、デジタルエンターテイメントの要素を持った素材が多い。それをPCとつなげていくための協業を模索したい。世界中の強力な人たちと、デジタルライフ戦略を実行していきたい。
先日、マイクロソフトでは、業界の枠を越えてパートナーシップを模索できるような場を提供しました。放送、出版、玩具、音楽といった業界の方々が集まり、お互いに情報交換をする場を設けた。もちろんIT業界の方々も参加している。参加した企業からは、「こうした場はこれまでにはなかった」という声をいただいています。こうしたところから新たなビジネスが生まれることになる。
世の中には、2つの選択肢がある。ひとつはなにもしないという選択肢。そして、もうひとつは、新たなものに挑戦していくという選択肢。私は、なにもしないことこそが問題だと思う。コンテンツホルダーにとっては、いまは動くことの重要性を認識してほしい。
ただ、残念ながら、いつまでになにが起こるのか、コンテンツホルダーはなにをすべきかという回答を私から提示できない。それは、予想を上回るようなことが世の中では起こるからです。デジタルライフスタイルの進化はその最たるものになる。コンテンツを所有するメディアの業界にいる人ならば、その変化の大きさは体感的に理解できるはずです。なにも手を打たないという戦略は間違っている。世間でなにが起こっているのかを理解しなくてはならない。そして、マイクロソフトも、それにあわせて変化していくことになります。
―ソフト+サービスの考え方のなかでは、今後、徐々にサービスの比重が高くなるということですか。
ヒューストン氏
PCには2つの極端な見方があります。ひとつは、インターネット環境に接続せず、リッチクライアントによって運用される環境。PC本体には、ソフトがインストールされており、そこで完結するスタンドアロンの環境です。もうひとつは、端末にはハードドライブもなく、接続されたクラウドによって、すべての処理が行われている環境。私は、この両極端に振れるということはないと考えている。サービスが進化しても、10年、20年、50年という流れのなかでは、両極の中間に落ち着くのではないでしょうか。オンラインに価値を見いだす使い方もありますし、一方で、オフラインで活用することが大切な場合もある。
ただ、ここでの変化は、どちらの環境で利用していたとしても、ユーザーは、ソフトやサービスといったものを意識せずに利用できるという点です。インターネットにアクセスしても、実際にはキャッシュにもっていて、そこにアクセスするといった使い方もある。クライアントPCの世界から考えると、これまでは、クラウドと接続したようなサービスが少なかったこともあり、必然的にクラウドを活用したサービスの比重は増えていくことになるでしょう。ただ、ユーザーにとっては、欲しい時に、欲しい情報にアクセスできるということが重要なのです。
―Windows Vistaの発売から半年以上が経過していますが、依然としてVistaの特徴が市場に伝わりきれていない気がしますが。
ヒューストン氏
日本のコンシューマユーザーのなかで、Vistaのことを知っている人は9割以上に達します。企業においても、高い認知度がある。しかし、PC上でテレビを視聴しているユーザーは、約3分の1しかいない。また、Media Centerから、アーカイブされた映像データが提供されているサービスを知っている人は、約5%しかいない。その点では、まだ特徴が伝わりきれていないというのは事実です。これは大きな反省点です。コンテンツホルダーとのパートナーシップを広げていくのと同時に、それを利用するユーザー側にももっと働きかけていかなくてはならないでしょうね。
ただ、はっきりといえるのは、10年後には、家庭での生活の仕方、そのなかにおけるPCの利用は大きく変化しているということです。デジタルライフの中核を担うものとして、PCがもっと活躍していることになるでしょう。
この秋から、Vistaのバリュープロポジションを伝えるための施策を展開します。これには、ぜひ期待してほしい。マイクロソフトでは、写真やビデオなどの「デジタルメモリー」、Media Onlineやデジタル機器との接続による「デジタルエンターテイメント」、新たなWebの体験やマルチコミュニケーションによる「コミュニケーション」、そして、新たなインターフェイスなどによって提供される「より便利に、簡単に」といった4つの観点からデジタルライフスタイルの提案を行っていきます。このメッセージを、まずは業界のなかで共有し、さらに、マイクロソフトだけでなく、パートナー各社からも多くのユーザーに広めていけるようにしたい。
―いま、Windows XPを利用しているユーザー、あるいは、メールやWebブラウジングの利用にとどまっているユーザーに対して、なにかメッセージはありますか。
ヒューストン氏
いますぐに、パソコンショップに駆け込んでほしい。そして、そのなかからPCコーナーに行ってほしい。そこで、VistaとMedia Centerに長けている店員がいますから、ぜひ質問をしてください。この簡単な3つのステップを行うだけで、Vistaの良さを理解してもらえる。私には、それを断言できるだけの自信があるんです。
―Media Onlineのコンテンツが22というのはまだ少ない気がします。テレビ局から提供されるコンテンツも、もっと多くのコンテンツへと広がるといいのですが。
ヒューストン氏
現時点という意味では、私は満足しています。それはなぜか。新たなパートナーが、まずは、この分野に足を踏み入れてくれたということなんです。しかも、世界で類を見ない、新たなサービスが始まっている。これには、本当に感銘を受けた。私は本当に感動しているんですよ(笑)。この感動が、どれだけ熱いものなのかを多くの人に伝えたいくらいです(笑)。
当然、Media Onlineのサービスや、デジタルライフスタイルを実現する各種のサービスを増やしていくことには積極的に取り組んでいきます。マイクロソフトは、忍耐強く、努力する会社です。そして、コンテンツを保有している人たちが、新たなテクノロジーを使って、新たなサービスに乗り出したいと考えてくれている。
日本は創造力にあふれ、技術的に優れた人が多い。そうした人たちを、新しいテクノロジーに結びつけるとマジックが起こる。私は、マイクロソフト日本法人の社長として日本の企業の人たちと関わり、そこで多くのことを学んだ。ぜひ、日本の企業が世界で活躍する手助けをしていきたいと思っているんです。この気持ちはますます強くなっていますよ。
■ URL
マイクロソフト株式会社
http://www.microsoft.com/japan/
( 大河原 克行 )
2007/09/20 00:01
|
|
|

|
 |