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ノーテル平松社長、「顧客の生の声をどう取り込むかがビジネス成功の鍵」


 ノーテルネットワークス(以下、ノーテル)に、久々に日本人社長が誕生した。それだけに、パートナー企業からも新生ノーテルに寄せる期待は大きいものがある。8月1日付けで新社長に就任した平松敏之氏自身も、競合ひしめく中でのサバイバル戦線を勝ち抜くために、5月に提唱したBON(Business Optimized Networking)を強力に推進すると同時に、これまで以上にエンドユーザーの真の声を聞くよう社内に大号令をかけたところだという。今回は、その意気込みを平松新社長に聞いた。


製品機能に加えソリューション&サービス重視志向へ

ノーテルの代表取締役社長、平松敏之氏
―日本での戦略は、具体的にどう展開しようとしておられますか。

平松氏
 私は長年、エンタープライズ分野のビジネスに携わってきましたが、5年ほど前からキャリア分野にも関わってきました。しかしこれらの分野は、いまや分離した戦略を立てるべきではありません。キャリア側もエンタープライズユーザーを抱えていますし、逆にエンタープライズ向け製品がキャリア側に導入されることもあります。またパートナービジネスを考えた場合、パートナーのお客様にはエンタープライズが多いですが、中にはキャリアがお客様になるケースもある。こうした背景から、今後は製品単体の提供ではなく、ソリューションやサービスの提供が望まれていると考えます。


―なるほど。ソリューションやサービスになると、コンサルティングも必要になってきませんか。

平松氏
 ネットワーク機器ではレイヤ2~4が対象ですが、ソリューションやサービスの場合にはレイヤ7までが含まれます。そこではROI(投資対効果)も要求されますから、確かにコンサルティングも重要でしょう。実はノーテルでも、海外ではコンサルティングビジネスの組織があり、ビジネスでの比重は高いものがあります。日本では、完全に独立したコンサルティングサービスでビジネスが成立するのかというと未知数かもしれません。ですが当社が掲げている今後のUC(Unified Communication)推進のためには、不可欠な要素ですね。


UC本格化への道標となるBON

―ノーテルが重要な柱に掲げる、BONあるいはUCを日本ではどう推進されていくのでしょう?

平松氏
 コミュニケーションから見た日本の企業カルチャーは、今変わりつつあります。従来のカルチャーは、キャラクターのまったく異なる音声系とデータ系に分かれていました。データ系はインターネットに代表されますし、音声系はわずかな時間の瞬断が許されない企業のライフラインともいえます。ここにPCや携帯電話が入ってきますと、電話自体がそれらと融合したカルチャーになります。つまり企業で個人がPCをはじめ携帯電話、スマートフォンなどでビジネスするなど、個人のカルチャー性が強くなってくるのです。

 そうなりますとネットワーク接続デバイス数やトラフィックが増大し、モバイルやリモートアクセスなど利用形態が多様化、さらにセキュリティ対策の強化も必要となり、複雑化を表すハイパーコネクテッド性がより強くなってくる。そこでのノーテルの役割は、コストパフォーマンスとオフィスの生産性はどれくらい向上するのかを明確にすることと、企業ネットワークをシンプルで最適な環境に進化させることであると考えます。結果、企業のリモートサイトやブランチオフィスで音声やデータ、映像などを統合化したUCを実現でき、その企業の生産性は向上するでしょう。


―先に、パートナー向けにBON啓発などを目的としたセミナーを開催されましたが、そこでの参加者の反応はいかがでしたか。

平松氏
 企業ネットワークにおける個人カルチャー性の本格的な浸透には、まだ時間を要するだろうという感じを受けました。ですが、携帯電話に関するキーノートスピーチなどにおいて、確かに自分たちのネットワーク環境は大きく変ぼうを遂げる、といった実感は深めていただけたようです。BONの柱としては、1)障害回復力の高いIP/Ethernet中心のスケーラブルなコア構築、2)リモートサイトやブランチオフィスに統合アクセスを拡張、ネットワークを簡素化、3)全ユーザーへのユビキタスアクセス実現のためのモバイル化、4)アプリケーション処理の加速化・最適化、5)ネットワークインフラの管理とセキュリティ確保、などが挙げられます。昨今の企業コンプライアンス重視の流れや日本版SOX法施行などに伴い、データセンターの仮想化や利用時のセキュリティなどが当然重要になってきますから、こうしたBONの目指すところをよりご理解いただけたのではないでしょうか。


エコシステムに基づいた新たなパートナー戦略

Nortel Secure Router 4134
―今、アライアンス戦略も活発化させておられますね。

平松氏
 日本では、キャリア分野のアライアンスパートナー戦略を強化させています。最近では、たとえば東芝との間でWiMAXに関して製造販売を含めた提携を進めているほか、また沖電気との間でも光伝送装置分野での共同開発を進めています。エンタープライズ分野でもMicrosoft Office Communications Server 2007のテクノロジを、発表したばかりのNortel Secure Router 4134に搭載する計画を発表するなど、マイクロソフトとの協業を進めているほか、数件取り組んでいます。

 ここで重要なのはエコシステムの考え方です。単に製品の売り買いにとどまらず、さまざまなジョイントによる取り組み、またコンソーシアムによる相互互換性の展開を進めることが肝要で、そこでは新しいデファクトスタンダードも作れるかもしれません。つまり、多くの会社が持ち寄ったものをもとに新しいビジネス展開を目指すのです。加えて当社でももちろん、パートナーが精力的に取り組んでおられるSMB市場戦略も視野に入れています。


―これからは、具体的にどのあたりで収益向上を目指されますでしょう?

平松氏
 エンタープライズ分野では、まさにUCですね。それとデータセンター市場においては、インハウス、アウトソーシングのいずれでも、多くのエンドユーザーを取り込める仮想化が期待できますね。また、1カ所にデータを集めることになるのでセキュリティも有望です。そうなりますと、サーバーベンダーの方たちともアライアンスすることになるのかもしれません。


―そうした取り組みに向けての体制づくりも大変でしょうね。

平松氏
 そうでなくても、今は新卒などでの人材確保が大変といわれる時代ですからね。また技術分野では、複数分野の知識を必要とするようになったこともありますので、人材育成は容易ではありません。これまではデータをはじめ音声、ネットワークといったように、人材もそれぞれ独立したかたちで育成されていましたが、これからは複数の技術が分かる人間を養成しなければなりませんから。

 また、この業界では音声系の人材が不足しているんですよ。IP本格期とはいっても、電話を理解できなければIPフォンは理解できません。ですからIP-PBXやソフトフォンなどを取り扱うベンダーは困っているのではないでしょうか。ところがノーテルは、幸いなことに音声の老舗であり、こうした人材が豊富なんです。さらに、増大するIPベースのデータや、これからデータ込みで取り組むWiMAXなどワイヤレス分野にも十分対応できています。これは当社の強みでしょう。


より顧客に接近して生の声を聞く

―今、日本のネットワークに必要なものは何でしょうか。

平松氏
 まぎれもなく、すべてがIP化に向かっています。しかしオールIPでは必ずリスクは付きまとうものなんですよね、ルーティングを重ねていきますから。こうしたとき、IPの場合レイヤ3ですから、一歩下がってレイヤ2で対応するという手も考えられなくはありません。これから忘れてはならないのは、オールIPを前提としても、その補完技術を用意しておくことなんです。もちろんこうした補完技術についても、ノーテルにはこれまでの、信頼性の高いセキュアな環境作りをしてきた実績があり、強みとなっています。


―競合も含めたビジネスに、これからどうチャレンジされていかれますでしょう?

平松氏
 ネットワーク業界は変化し続けています。エンタープライズ分野を見ても、ガバナンスやコンプライアンス、内部統制、企業の効率化などの課題があります。ですから、さまざまな企業との協力関係に基づいたソリューション作りが必要です。大切なのは、限りなくお客様に近づくことなんです。これは今、全社に強くアピールし続けています。今はもう、すばらしい機器が発表されたからそれが売れていく、という時代ではありません。お客様の真実の声をお聞きすることこそ重要です。ソリューションやサービス志向のビジネスでは余計にそうですね。お客様の中にどこまで入り込めるか、これがビジネス成功のキーポイントです。


―最後に、これまでの平松社長の経歴の中で、このたび就任されたノーテルの社長というものには、どのような重みがあるとお考えかをお聞かせください。

平松氏
 最近、あるキャリアで「ノーテルはまだまだできるはず」といった激励のお言葉をいただけました。日本の場合、LANから始まってインターネットまで、すでにたどり着くところまでたどり着けたという感じはありますが、これからはグローバルな視野が重要です。グローバル展開するお客様は最近顕著で、当社はこうした観点からのネットワークバランスを考えなくてはなりません。そこではガバナンスやコスト削減のことも考えなくてはなりませんね。そこでノーテルは、将来的なトレンド、サービスやマネジメント、当社で実績豊富な標準化活動なども含めて対処することになります。ノーテルに向けた期待には大きなものがあり、重責を感じていますよ。

―ありがとうございました。



URL
  ノーテルネットワークス株式会社
  http://nortel.com/jp


( 真実井 宣崇 )
2007/10/26 00:00

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