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ヴイエムウェア三木社長、「仮想化はもはやメインストリーム技術、どう生かすかが重要」
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欧米に比べ、サーバー仮想化の利用が遅れていた日本。それが、2008年に登場したWindows Server 2008により大きく動き出した。マイクロソフトはサーバー仮想化ソフト「Hyper-V」をOSに標準添付することで、一気に普及を目指し始めた。サーバー仮想化で先行するVMwareは、データセンターそのものを仮想化するというVDC-OS(the Virtual Datacenter Operating System)を打ち出すことで、単純なハイパーバイザ競争から一歩抜け出る動きを見せている。
「日本市場でも仮想化がメインストリームの技術と認められたのが2008年。厳しい経済環境だからこそ、仮想化が企業インフラの効率化のキーテクノロジーになる」と、ヴイエムウェアの三木社長は語る。三木社長に、サーバー仮想化から、デスクトップの仮想化、クラウド対応など、同社の戦略などを伺った。
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代表取締役社長の三木泰雄氏
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―まず、2008年を振り返っていただけますか。
三木氏
2008年を振り返ると、会社としてのビジョンを打ち出せた年といえるのではないでしょうか。これまでは、新製品を発表したり、製品のバージョンアップによる強化ポイントを中心に説明していましたが、9月のVMworldにおいて、VDC-OS(the Virtual Datacenter Operating System)やvCloud、vClientといった将来のビジョンを明確に語ることができました。
―2008年は、マイクロソフトやシトリックスなど、サーバー仮想化製品が本格的に普及し始めた年という印象を受けました。
三木氏
日本の仮想化市場を見ると、仮想化がより一層認知された年といっていいでしょう。仮想化がメインストリームの技術であると認められた年といえます。最近行ったアンケートによると、今後12カ月以内に導入を予定している企業を含めて、仮想化を導入する企業が多数を占めていました。評価のフェーズは終わったといっていいでしょう。
他社製品が出てきたことも仮想化が認知されたきっかけにはなっています。といっても、VMwareは創業から10年以上経ており、多くの実績を積み重ねています。2008年も長い歴史の一部分でしかありません。それに加えて、他社が具体的な製品を出してくれたおかげで、正しく比較できるようになったのもありがたいことですね。それまでは、実際の製品がない状態で、他社とどう違うのかといった説明が求められましたが、今はそういった問い合わせはありません。実際に、お客さま自身で比較できるのですから。そのおかげで、VMwareの優位点を正しく理解していただけたとおもいます。
また、他社も仮想化に本格的に参入するというメッセージを出したことも市場活性化にはプラスに働きました。
―ビジネス面ではいかがでしたか? 後半になって経済状況が悪化しましたが。
三木氏
日本でのビジネス自体は、年初の予想どおりに成長しました。経済状況の悪化が与える影響については、楽観的な考えを持っています。
厳しい経済環境であるからこそ、TCOの削減やROIをシビアに見ることになります。お金があるときはビジネスアプリケーションの開発に投資しがちですが、そうでなくなるとインフラの効率化が行われます。そのときにキーになるテクノロジーが仮想化です。そういう意味では、プラスに働くでしょう。
―昨年発表されたVDC-OSですが、日本での受け止められ方はどうでしょうか?
三木氏
よく理解されている方々は、仮想化のインフラがクラウド化すると見ており、VDC-OSへの流れは当然と受け止められています。実際、ホスティング事業者が仮想基盤を導入し、SaaSやPaaS(Platform as a Services)のサービスを開始している例もあります。仮想マシンを貸し出すというレベルからスタートし、その上で動作するアプリケーションを含めてサービスを提供するという形態が今後生まれてくるでしょう。
今後、アプリケーションの運用を仮想化インフラ上でサービスとして提供することになった場合には、SLAをどう保証するかが課題になってきます。その時点でVDC-OSが提唱している技術レベルをサポートすることで、本格的な運用が可能になるといえます。
12月には「VMwareクラウドサービスプロバイダ協議会」を設立し、情報共有の促進と、最新技術のタイムリーな提供などにより、全体の底上げを図っていきたいと考えています。技術的には仮想環境のクラウド化は可能なレベルにありますが、課金体系はどうするか、データセンター同士の連携をどうするかなど、今後検討することになるでしょう。
―VMware Viewの発表など、デスクトップ仮想化を本格化したのも2008年だったようにおもいます。
三木氏
シンクライアントの導入を検討する企業にとって、仮想化のメリットはいまいち理解されていなかったとおもいます。それが、仮想化方式の利点に気づいていただいたという面と、シンクライアントといった使い方への関心が高まったことが背景にあるとおもいます。
実は、VMwareではシンクライアントという言い方はしてないんです。VMware View 3では、オンラインでもオフラインでも、いつでもどこでも同じデスクトップが使えるのが特長です。そのため、シンクライアントのようにオンラインでしか使えないソリューションとは言い切れないからです。企業内ではシンクライアントとして使えるし、外部で使いたいときは、ノートPCに仮想マシンをダウンロードして利用したりといったさまざまな使い方が可能です。
また安く使えるというのも利点です。通常のスタンドアロンPCと比べて高価というのでは使われません。VMware View 3のリンククローン方式を使うことで、仮想マシンの差分情報だけを保存することが可能なので、ストレージ容量をあまり使わずに多くのクライアント環境を構築できます。また、クアッドコアプロセッサの普及により、プロセッサあたり40~50の仮想マシンを集約できますので、コスト面でのメリットも高まります。ライセンス的には、6コアまで同じ価格で提供していますので、さらにメリットは高まります。
―とはいえ、他社からはVMwareのライセンス価格の高さを攻撃材料にされていますね。
三木氏
高い安いという議論をする場合、同じ機能で比較していただきたいですね。われわれの製品もVMware ESXiのように無償で提供しているものもありますし。正しく比較していただければ、決して高いという判断にはならないとおもいます。
もうひとつ、統合率も見ていただきたいですね。たとえば、他社製品が1:5の統合率だとすると、VMwareの場合は1:20という統合率となっています。集約率がこれだけ違うと、物理サーバーの数も削減できますし、必要なライセンス数も異なってきます。仮想マシンあたりの単価でみれば、決して高くないと自負しています。
―VMware ESXiが無償提供されているように、各社ともハイパーバイザを無償で提供しています。これから仮想化を導入する企業の多くが、こういった無償版を使って実験的にサーバー統合を行うとおもいますが、どこで差別化を図りますか?
三木氏
サーバー仮想化を導入するといっても、ハイパーバイザだけを使うことはあまりないでしょう。もちろん、ハイパーバイザだけを比べていただいても、統合率の高さという強みがありますが、最終的にはVMotionのようなツールもあわせて評価することになるとおもいます。実際、VMwareを購入された方々の多くが、VMotionを高く評価しています。また、SIerなどにサーバー統合の相談をした場合も、実際に紹介されるのはVMware製品がほとんどです。これが現状です。
―パートナー強化も打ち出されていますね。
三木氏
製品だけでなくソリューションも増えてきていますので、デスクトップに強いパートナー、データセンターを保有するパートナー、災害対策に強いパートナーなど、得意分野をさらに伸ばす形でのサポートを行っていきます。
重要なのは、ユーザーは仮想化を始めることが目的ではなく、自社が抱える課題を解決することが目的であるいう点です。データセンターが手狭になったという課題であれば、仮想化によるサーバー統合からスタートすればいいですし、災害対策をきちんと行いたいという課題であれば、本番環境では仮想化を無理して導入する必要はなく、待機系から仮想化を行ってもいいわけです。なにがやりたいかが先であり、それを実現するときに仮想化が有効なソリューションであるということです。仮想化がメインストリームの技術になっているというのはそういうことを表しています。
2009年はパートナーの数を増やすというよりも、それぞれの質を高めることが重要です。教育プログラムを充実するなど、パートナーに対して機会を与えていきます。
―2009年の話が出ましたので、今年の目標などありましたら教えていただけますか。
三木氏
厳しい経済環境を背景にTCOの削減や短期でのROIが求められているので、これらを強調した提案ができるようにしていきます。
また、効率的に仮想化を運用するには、サーバーやストレージ、ネットワークの各社との連携も重要です。セキュリティや上位のビジネスアプリケーションなど、ISVとの連携も同様です。こうしたパートナーとの連携強化も行います。
そのほか、ホスティング事業者をサポートすることでクラウドを強化したり、デスクトップ仮想化普及のためのトレーニングやパートナー作りも行っていきます。
あとは携帯端末の仮想化が2009年にどの程度進むかも注目ポイントですね。携帯電話での仮想化を実現すれば、端末ごとにアプリケーションを開発する手間が軽減できるなど、さまざまな使い方が可能になります。現在、端末メーカーとディスカッションを進めているところです。
―携帯電話を仮想化すると、かなり負荷がかかるのではないですか。
三木氏
ハイパーバイザそのものは非常に小さく、オーバーヘッドが少なくなっています。端末メーカーに話をした担当メンバーに聞くと、10年前にPCのハイパーバイザを作ったときと同じ反応だといってますね。そんなものが使えるのかって(笑)。
いずれにせよ、端末メーカーに採用していただく話ですので、スケジュールについてはわれわれからはしづらいのが現状です。期待してくださいとしていえませんね(笑)。
―わかりました。本日はありがとうございました。
■ URL
ヴィエムウェア株式会社
http://www.vmware.com/jp/
( 福浦 一広 )
2009/01/08 08:59
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