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米FileMakerグピール社長、「データベースの利用を広げられるのがFileMaker」
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ファイルメーカー株式会社は1月6日、「FileMaker Pro 10」をはじめとするFileMaker 10シリーズを発表した。「既存のユーザー、これまでFileMakerを使ったことがない新たなユーザー、そして開発者の三者に満足してもらえる製品づくりを目指した」とする新製品は、画面上部に配置したステータスツールバーの採用をはじめ、直感的な新たなインターフェイスを実現するなど大きな進化を遂げた。FileMaker 10シリーズでファイルメーカーが目指したものは何か。そして、2009年はファイルメーカーにとって、どんな1年になるのだろうか。来日した米FileMaker社長のドミニーク P. グピール氏に話を聞いた。
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米FileMaker社長のドミニーク P. グピール氏
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―2008年はファイルメーカーにとって、どんな1年だったでしょうか。
グピール氏
振り返ってみますと、2008年は、ファイルメーカーにとって重要な1年でした。1998年に社名をクラリスからファイルメーカーに変更してから、ちょうど10年目の節目を迎えましたし、その10年間は、FileMakerというひとつのプロダクトで事業を推進していたものから、新たにBentoという2つめのプロダクトを投入することもできた。Bentoは、個人ユーザーをターゲットとした新たな製品ですから、当社製品のターゲットが広がったということもできます。
もともとFileMakerは、データベースを、簡単に、シンプルに利用してもらうための製品として開発されたもので、データベースとはなにかということを知らない数多くのユーザーを、データベースの世界に招き入れることができた製品です。Bentoは、その考え方を踏襲しながら、さらに個人が簡単に、シンプルに使えるようにした製品として開発した。これまでにない利用層を開拓できたと判断しています。
また、FileMaker 9では、OracleやMySQL、マイクロソフトのSQL Serverといったデータベースとのコネクティビティ機能を強化し、幅広いユーザーに、幅広い用途で使っていただけるように進化した。ほかのデータベースとの結合によって、エンタープライズ領域でもファイルメーカーを使える土壌が出来上がってきたともいえます。
そして、エンタープライズ領域での活用が増加するのに従い、日本でもボリュームライセンスによる購入が増加した。日本向けにも新たなアニュアルボリュームライセンス制度を導入し、1年ごとに購入してもらえるような仕組みも提供しました。
具体的な業績については言及できませんが、会社として確実な収益を計上でき、実にうまくいった1年だったといえます。
―Bentoに対する初年度の自己評価はどうですか。
グピール氏
ユーザーには非常に好意的に迎え入れられたプロダクトであり、初年度としては大きな成功を遂げたと判断しています。社内的に設定した目標値は達成していますし、プレス関係者からも高い評価を得ている。新たなユーザー層を獲得したという点でも評価できるものといえます。
―BentoのWindows対応については、どう考えていますか。今年はWindows 7の出荷も予定されていますから、それがいいきっかけになるのではないでしょうか(笑)。
グピール氏
FileMakerはクロスプラットフォームを前提とし、Mac OSとWindows環境の双方で利用できるようにしています。企業において、それぞれのプラットフォームで利用していても相互にデータを共有して、使うという狙いがあるからです。
しかし、Bentoは、異なった製品戦略をとっています。Bentoはパーソナルデータベースと位置づけられる製品ですから、個人個人が利用することを前提にしています。異なるプラットフォーム同士でデータを連携して利用するという使い方は想定していません。また、Bentoでは、Leopardの技術と密接に連動した機能が搭載されている。アップルの子会社であるという当社の強みを十分に生かして製品化したものともいえます。将来的にWindows対応をやらないと断言しているわけではありません。もしかしたら、Windows対応を考えることもあるでしょう。しかし、現時点では、Bentoならではの製品戦略の上で、Leopardの機能を生かし、アップルストアをはじめとするMac製品の販売チャネルを活用し、販売していくの最適だと考えています。
―1月6日からはいよいよFileMaker Pro 10をはじめとするFileMaker 10シリーズを発表しました。この製品にはどんな意図を込めましたか。
グピール氏
新たな製品を投入するときには、3つの顧客層を想定します。ひとつは、新たなユーザー層の獲得。そして、2つめは既存ユーザーに対する満足度向上。そして、3つめには、FileMakerを活用してソリューションを提供する開発者への価値の提供。この三者を満足させて初めて、新製品を投入した意味があります。
FileMaker 10における機能の進化は、三者に対して満足していただけるものになっています。日本では100点満点という言い方をしますが、私の出身国のフランスでは、0~10で評価することが一般的です。FileMaker 10は、10という数字がついていますから、その名の通り、10点満点の出来栄えです。だけど、それでは、ちょっとひいきしすぎているかもしれませんね(笑)。
―FileMaker 10では、画面上部にステータスツールバーを配置し、新たなインターフェイスを採用しましたね。どうしてもここに目がいってしまうのですが、これは、むしろ新たなユーザーを獲得するための仕掛けとみていいですか。
グピール氏
いえ、そうではありません。新たなユーザーに対しても、既存のユーザーに対してもメリットがある新たなインターフェイスだといえます。新たなユーザーに対しては、直感的な使いやすさを提示できるわけですから比較的わかりやすいし、容易に満足させることができる。しかし、既存のユーザーを新たなインターフェイスで満足させるのは難しい。既存のユーザーにとっては、慣れ親しんだインターフェイスから変わるわけですから、最初は使いにくいと感じるかもしれません。しかし、すぐに慣れていただけるはずです。メニューベースの操作に慣れている人には、それができるようにしましたし、FileMakerはどんな機能を持っているのかを視覚的に理解できるようにした。先行導入したユーザーからは、迅速に新たなインターフェイスに移行できたという声があがっています。
―グピール社長自身、このインターフェイスを最初に見たときの印象はどうでしたか。
グピール氏
すぐに気に入りましたよ。使い慣れていたものが大きく変わっていたらどうしようかと思いましたが、そうした心配はありませんでした。見栄えは大きな変更ですが、このなかでは、何百、何千というような改良が行われています。そうした積み重ねの結果が、新たなインターフェイスの実現につながっています。
社内にキッチンと呼ばれる部屋があるのですが、そこに開発者たちが情報を持って入り、ユーザーからのフィードバックをひとつひとつ検討して、改良を加えていきました。FileMakerを利用するのは、技術に詳しいエンジニアではなく、現場のマネージャーや秘書といった人たちですから、そうした人たちにとって使いやすいものでなくてはならない。われわれが目指しているのはシンプルさです。シンプルさをより進化することができたと自己評価しています。
もちろん、今回のFileMaker 10の特徴は、インターフェイスの改良だけが特徴ではありません。大きな進化の例としては、スクリプトトリガーの採用があります。これは、主に開発者向けの機能といえますが、社内のプロジェクトを管理するといった場合にも、これを利用することで、誰がどんなプロジェクトにかかわり、余力がある人員は誰かといったことも掌握できるような設定が可能になる。さらに、自動的にeメールで配信して、指示を行うこともできる。また、モードを切り替えることなく変更がすぐに反映されるダイナミックレポート機能の採用も大きな進化です。スプレッドシートを多用しているユーザーはレポーティングの難しさに困っている。FileMaker 10では、スプレッドシートのようにデータを扱いながら、レポーティングまで対応することができます。FileMaker 10の進化のポイントは、明確だったといえます。モダンなインターフェイスを採用し、3つの顧客の満足させられるような機能強化を図った。それを実現した進化だといえます。
―FileMaker 10の成功はどこで推し量りますか。
グピール氏
数値的な目標達成がひとつです。実際にどの程度売れたかという指標もあるでしょうが、どれだけ新たなユーザーに使ってもらえたかという指標も重要です。一方で、フォーラムでどの程度評価されたか、優秀と評価されるアワードをどれぐらい受賞できたか、ユーザーや開発者からどれだけ感謝のコメントを得られたかということも重要です。ユーザーや開発者には、FileMaker 10を使って、ぜひビジネスの成長につなげていただきたい。
―2009年は、ファイルメーカーにとってどんな1年になりますか。
グピール氏
データベース市場におけるリーダーでありたいという気持ちはこれまでと変わりません。そのためには、これまでデータベースを使うことを想定していなかった人たちにも、データベースを使ってもらいたい。これまではExcelを使っていたが、FileMakerを使うとこんなことができるんだ、ということを知っていただきたいし、企業IT部門においても、FileMakerのパワフルさをぜひご理解いただきたい。FileMaker 10やBento2は、新たなユーザー層に、データベースの利用を広げることができるプロダクトだと思っています。そのための活動をやっていきたい。企業におけるIT投資の低迷、個人消費抑制といった動きはあるが、経済環境が良いときでも悪いときでも、利用者にとって最適な製品を届けたい。FileMaker Proは、3万8000円と安価ですし(笑)、20年間にわたり販売してきた実績と、改良の蓄積がある。成長著しいアップルの子会社であるという強みもある。安心して使っていただきたいと考えています。
―ところで、長年にわたり日本法人社長を務めていた宮本高誠氏が、昨年11月30日に社長を退任しました。日本法人はどうなっていきますか。
グピール氏
日本法人は、全世界の20%の売り上げを稼ぎ出している重要な市場です。宮本さんには、15年以上という長年にわたり、日本法人を率いていただいたことに大変感謝しています。いまは、ウィリアム・エプリングという私の右腕が、上席副社長、CFOとの兼務で日本法人社長を務めていますが、やはり日本人による経営が望ましいと思っています。今日はここまでしかお話しできませんが、近いうちに、日本の新たな体制について、あらためてお話ができると思います。
■ URL
ファイルメーカー株式会社
http://www.filemaker.co.jp/
( 大河原 克行 )
2009/01/15 00:09
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