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ケータイのシンクライアント化を次のトレンドに
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インデックス・ホールディングス大森取締役
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今回のゲストは、モバイル事業で知られる株式会社インデックス・ホールディングスの新規事業推進室担当取締役の大森洋三氏です。
モバイル関連で最近もっともインパクトのあったイベントは(人にもよるでしょうが)やはりiPhoneの発表でしょう。大森さんとも、このiPhone登場で受けた衝撃から波及した話で盛り上がることになりました。
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大森 洋三
株式会社インデックス・ホールディングス 取締役
1986年 ヤマハ株式会社入社
1996年 株式会社ジャパン・イメージ・コミュニケーション入社。
1997年 デジタルコンテンツ株式会社入社、取締役(営業担当)就任。
2000年 株式会社ウェザーニューズ入社、販売事業本部長就任。
2001年 同メディア系子会社 株式会社ダブリュエックス24 取締役
2003年 株式会社サイバード入社、メディア戦略部長・インキュベーション室室長を歴任。
2006年 株式会社インデックス入社、執行役員(メディア開発局局長)就任。
「ダイアモンドセールスマネージャー」日本の営業40人に選出。
NPO国際創造者連盟 理事。
11月 取締役(メディアソリューション局長)就任
6月 株式会社インデックス・ホールディングス 取締役就任(現 新規事業推進室 室長)
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■ iPhoneの登場は衝撃的
小川氏
インターネット総研の創立10周年記念パーティの会場でお会いして以来ですよね。
大森氏
年末でしたかね。ご無沙汰してすみません。
小川氏
こちらこそ。大森さんにとって2007年はどんなスタートですか?
大森氏
やはりPCからケータイへのシフトを強く意識した年になりましたね。アップルのiPhoneの発表は衝撃でしたけど、今年にはいって、PCからケータイを強く意識した年、iPhone、ジョブズだけではなく、CESにね、来る人がほんとに少なくなったんですよ。
小川氏
もはやPCの時代ではない?
大森氏
というかですね。iPhoneは他人事ではないと思うんですよ。状況はほんとに動いていますね。ケータイのビジネスもね、着メロや着うたフルに依存した個人向けのビジネスから、いよいよビジネスユースのケータイビジネスに着目するべき時期に来たと思うんです。
小川氏
iPhoneはそれだけ衝撃だった?
大森氏
というかですね、PCと違ってスタイルインができるのがMacというツールだったわけです。それがケータイにも移ってきたという驚きがありましたね。
小川氏
つまり、実用だけではなく、持ち歩く喜びみたいなものをおっしゃっているんでしょうか。
大森氏
例えば、BlackBerryはビジネス一辺倒で遊びの要素はないですよ。ところが、iPhoneはユーザビリティからして、これまでにない遊びがある新しい提案だと思いますね。しかも、それは日本のケータイのメインユーザーである若年層ではなく、ビジネスパーソンにも届く提案なんです。
■ iPhoneはPCサイドの人が作ったガジェット
小川氏
iPhoneは個人的にも非常に注目しているし、何より物欲をそそるプロダクトです。ただ、そこまで大森さんにショックを与えるとは(笑)…。
大森氏
iモードの公式サイトで初めて月間1億PVを実現したのは実は僕なんですけど、1億というのは大きな壁のようなもので、それを超えると超えないではコンテンツの量も質も、大きく変わってくるんですね。iPhoneはPCの発想から生まれた新しいケータイということで、いままでのケータイWebのあり方にも大きな衝撃を与えかねないという気がしてますね。
何が違うかというと、PCではページをめくるためのストレスがないですよ。クリックすればすぐに次のページを見ることができます。ところが、ケータイは同じ動作をするのに、実は4階層から7階層くらいあって、実に面倒です。だからケータイの1億PVは、PCのそれとはまったく質が違うんですね。1億割る4イコール目的数というか、目的の情報に達するまでにPCの4倍の労力がいるわけで、途中で挫折するユーザーも結構多いんです。
小川氏
僕も挫折組かもしれません。ケータイでWebをみることはほとんどしないですね。少なくともフルブラウザしか使わないです。
大森氏
そうでしょう? だから、PCサイドからケータイWebにくる会社がいるとしても、この感覚の差異をつかめるかどうか。たとえばね、着メロの担当者はラテ欄(ラジオ・テレビ番組欄)と向き合っているんですよ。
小川氏
どういうことでしょう?
大森氏
例えばね、テレビにキムタクが出た瞬間にトップページの曲を変えるなどの工夫をするんです。なぜかというと、小川さんは意外と思うんですけど、実はケータイのユーザーって外出先ではなくて、自宅で触ることが多いんですよ。僕なんか飲むとラーメンを食べてしまうのが癖になってるんですけど(笑)、家に帰るとケータイ触るのが癖になっているユーザーが多いんです。そういうユーザーにサービスを送るために、テレビの情報と連携させて、キムタクが出ていればSMAPの着メロをトップに表示するような工夫を常にやってるんです。
小川氏
なるほど。
大森氏
そんな感覚で仕事をしていると、iPhoneはPCサイドの人が作ったガジェットだなーという感じがするんですね。スペックを聞くとね、昔のFOMA前のネットワークであるGSM Edgeでネットにつながっているらしいんですよ。OSはよくて中はすごいのに、ネットにつなげるところはしょぼい(笑)。時間をかけて作った割に、そのあたりがバランスが悪い気がしますね。
小川氏
そうかもしれないですね(苦笑)。
■ 日本のケータイはシンクライアント化するべき?
大森氏
そうはいっても、iPhoneはガジェットとしてもすごいし、なによりビジネスユースに遊び心を入れていて、脅威ではありますね。日本にはPHSも入れてだいたい1億台のケータイが動いていて、もはや持ってないと変人扱いされちゃいますよね。言い方には違和感ありますけど、日本のキャリアは1億回線、と表現します。
で、そのうちビジネスユースが6500万らしいです。いわゆる法人とビジネスコンシューマの数、ですけど。お父さんの名義でケータイを使っている子供も多いので明確には分けられないですが、日本のケータイWebのビジネスは、基本的に中高生向けであり、1億引く6500万として、3500万ユーザーを対象にしている、ということになります。逆に言えば、6500万ユーザーは手つかず、ということになるわけです。iPhoneは、このエリアに入ってくる。
小川氏
異質な考えで作られたiPhoneが、日本のケータイのビジネス市場を拓く可能性がある、ということですね。
大森氏
ただね、日本のサービサーは、iPhoneに対して1~2年のアドバンテージはあると思うんですよ。まず第一に、1億ユーザーという巨大なトラフィックに対するWebのサービスを提供するという経験をしたことがあるのは、今のところ日本の会社しかないわけです。
小川氏
確かに。
大森氏
そして、これが僕のアイデアなんですが、ケータイをシンクライアントにしたらどうか、と考えてるんです。
小川氏
というと?
大森氏
iPhoneは端末をハイスペック化するアイデアです。ハイスペックにして、そこに何でも入れておくという考えですね。逆に、われわれが対抗するならば、ケータイをシンクライアント化することによって、情報をWebに置くことを推進したらいい。iPhoneはビジネスユース、スマートフォンです。ケータイはビジネス系とコンシューマ系の使い方がファジーなことが、ある意味短所でもあります。日本版SOX法が今後施行されて、いっそう顧客管理にうるさくなるわけで、そんなおりにハイスペック化して情報がたくさん詰まったケータイを落としたらと思うと怖いじゃないですか。ケータイはPCとはちがって移動軸、時間軸があり、なくしたり取られたりするリスクは大きいですね。
小川氏
そこでシンクライアント化するべきだということですね。PCもセキュアPCのようにハードディスクレスのシンクライアントが大企業では普及し始めていますから、可能性はありますね。
大森氏
そうです。2008年にiPhoneが日本にもくるとして、シンクライアント型のケータイが防波堤になるのではないか? と僕は思っているわけです。
小川氏
そのストーリーはアリかと思いますが、ただ、法人としてのかたまりでケータイを使っているケースはそれほど多くないので、PC以上に困難は予想されます。それに、その方法で一気にグローバル化はできない気もします。となると、PHSの二の舞で、世界市場的には孤立するのではないでしょうか?
大森氏
そのリスクはありますね。ただ、ほとんどの人はグローバルローミングさえ使ってない状態です。そこはまだPCでカバーできるのでは? と思っています。まずは、ドメスティックなサービスで対応していけばいいのでは、と。
■ 変化に即した新しいサービスが必要な時期に
小川氏
ちなみに、ハード的なガジェットやプラットフォームではなくてサービスによって対抗するというアイデアであれば、例えばスカイプとの競合あるいは共存は考えなくてはならないのではないでしょうか。
大森氏
そうきましたね。JAJAHというWebベースのテレフォニーサービスにも注目していますが、電話機能そのもののWeb化も避けられないかもしれないと思っています。キャリアには難しい時代ですね。
小川氏
最近の化け物サイトとすればモバゲータウンもありますが、ビジネス向けに同様のキラーサービスを作っていくことはできると思いますか?
大森氏
モバゲーは確かにすごいです。基本的に日本のケータイのサービサーの事業は、ほとんどパーツ売りなんです。ゲーム、アバター、着うた/着うたフル、というようなパーツを売っています。総合サービスといえるのはモバゲーだけですね。われわれも、サービスサイドでフルターンでチャレンジするべきでしょうね。
小川氏
Second Lifeとモバゲーを比較するような話もよく聞きますね。
大森氏
Second Lifeもモバゲーも、空間提供的なサービスなんですね。そこがすごい。ただ、新商品を旧市場つまり中高生向けの市場に提供してみたのがモバゲーとすれば、僕らは新商品を新市場、つまりビジネス市場にいれていきたいですね。From PC to Mobileというわけで。
小川氏
ケータイのGREEは?
大森氏
GREEにしてもモバゲーにしてもビジネス向けではない、情報の価値のつけ方が今の状況に追いついてない気がします。ナンバーポータビリティ以降はキャリアではなく、ケータイのどのモデル、端末が欲しい、という感じに変わったと思いませんか。
小川氏
思います。僕もMOTORAZR欲しさにドコモにしましたし。
大森氏
ケータイもね、ルック&フィールについてはあまり変わってなくてね。サービス面でももう少し大きな変化を作る時期かと思っています。これまでのこの世界では大きな変化が3つあって、それはムーアの法則的な速度重視の世界から、デルに代表されるPCのコモディティ化によって価格破壊という変化が起きて、そして今、いわゆるあちらとこちらの世界的な、情報がWeb上に置かれるような時代になってきていると考えるわけです。そういう変化に即したインターフェイスを、ハードとしてのケータイにも、サービス自体にも作っていかなくてはならない時期なんですよ。
小川氏
なるほど。インデックス・ホールディングスの新規事業担当として、そういうサービスを生み出そうとしていると、いうわけですね(笑)。
大森氏
詳しくは今はいえないですけどね(笑)。エントリーしなければ傍観者ですからね。2008年までのタイムラグを十分に生かさないと。ジョブズもいいけどおれたちもいいぜ、というわけでね(笑)。
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小川 浩(おがわ ひろし) 株式会社サンブリッジ i-クリエイティブディレクター。
東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。
2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、現在サンブリッジにて起業準備中。
著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。 |
2007/03/05 00:00
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