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人間が配信するメールではないメール市場に賭ける
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ホライズン・デジタル・エンタープライズ小椋社長
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今日のゲストは、第一回ゲストのアレン・マイナーさんからの紹介で、株式会社ホライズン・デジタル・エンタープライズ(以下、HDE)の小椋社長です。ドクターペッパーをこよなく愛する小椋氏は一度も就職したことのないピュアな起業家です。
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小椋 一宏
株式会社ホライズン・デジタル・エンタープライズ 代表取締役社長
1975年3月米国ニューヨーク州生まれ。6歳の頃日本に移住し、同時期からプログラミングに親しむ。1996年、大学在学中にLinuxにフォーカスした法人向けパッケージソフトウェアベンダーであるホライズン・デジタル・エンタープライズ(HDE)を創業。1999年一橋大学経済学部卒。
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■ Linuxに特化したパッケージベンダーとして起業
小川氏
(サンブリッジの)アレンさんが取締役会におられるんですよね。
小椋氏
そうです。非常勤取締役になっていただいています。
小川氏
HDEは創業10周年を昨年迎えられたとか?
小椋氏
そうです。1996年に創業しました。もともとLinuxに特化したパッケージベンダーという位置づけで事業を開始しました。Linuxを管理するソフトの販売です。今は次のステップにいかなきゃな、という感じで、新たにサーバーマネジメント事業とメッセージング・プラットフォーム事業を行っています。
小川氏
メッセージング・プラットフォームというと、たとえばトライコーンのアウトバーンのような商品になるんでしょうか。
小椋氏
似てるかもしれないですけど、もちろん少し違います。この事業を開始する際に気がついたのは、メールに関するさまざまな用途・ニーズがあるということです。たとえば内部統制面からメールを保存したり、適切な人が適切な権限を持っているかどうか、フィッシング詐欺対策や、外からの迷惑メールがたくさん届いてしまうことに対する配慮など、いろいろな問題点があります。Eメールマーケティングというよりも、ケータイの普及にともなって日常をバックアップするような用途も増えてきているのも昨今の特長です。
小川氏
ケータイの普及に伴うバックアップとは?
小椋氏
たとえばATMでお金を下ろすと、スキミング防止の意味で、メールで出金したことの確認メールが来るような。そういうアラートのたぐいのことです。
小川氏
なるほど。
小椋氏
メールというインフラが変わりつつある気がしてますね。個人対個人のコミュニケーションツールから、さまざまな情報の伝達ツールになってきていると思います。企業がそのようなアンチウイルスやフィルタリングなど、複雑なメールソリューションを管理するのは難しいことです。だから、そこにビジネスのチャンスがあるのではないかと考えたわけです。特に、企業においてセキュリティは大事で、セキュリティ+メッセージングという広い分野で企業対個人へのソリューションを考えています。
小川氏
サービスはASPですか?
小椋氏
いえ違います。サーバーソフトの販売ですね。はなはだWeb 2.0的じゃないですね(笑)。
小川氏
いやいや(笑)。アプライアンスサーバーのような形式もやっていないんですか?
小椋氏
やってないですね。
■ メールフィルタリング市場は拡大
小椋氏
他社との違いをあえて考えてみると、人間が配信するメールではないメール市場というところにわれわれはポジショニングしているというところですね。というか、そういうメールの在り方を市場として定義している会社は少ないのではないかな。業務におけるメール配信市場??(笑)
小川氏
そうかもしれないですね。使われている量そのものはかなり多くなっている気はしますが。
小椋氏
市場規模はまだホントのところは分かりませんが、Eメールマーケティング市場と同じくらいあるのでは、と思っています。つまり数百億円くらいの市場です。
小川氏
その中でどうやってイニシアチブをとっていくんでしょう?
小椋氏
システムそのものを標準化することも考えていたりします。郵便番号がn個以上メールに書いてあったら個人情報としてみなしましょうなどのルール付けをするなどの工夫もしていますね。
小川氏
小椋さんはさっき、市場自体を認識している企業が少ないともおっしゃっていましたが、ということはお客様への説明もかなり難しいと思うんですが。
小椋氏
セキュアメールとか、暗号化などの説明は説明コストがかかりますね。理解してもらえるまでに3年くらいかかるんではないでしょうか。でも、メールフィルターはピンとくるらしいです。ライブドアの問題や日本版SOX法などが背景にあるので。
小川氏
なるほど。
小椋氏
いま社員は55人ほどになっています。基本的にアンチウイルス系のソフト等の一部を除いて自社開発をしています。まあ、オープンソースによる開発なので本来の意味とは違うかもしれませんが。メールフィルタリングというカテゴリでいうと、いまはキヤノンシステムソリューションズさんがトップにいますが、法人のメールに関するシステムを(セキュリティ面の配慮もいれて)ワンストップで提供できる会社は少ないので、われわれのチャンスは大きいと思っています。そのために受託もまったくやっていません。もちろんパッケージソフトなので、できる範囲は限られますから、多少SIを伴う販売はあり得るわけですけど。
小川氏
RSSフィードなどの活用やブログマーケティングなどの台頭で、メールマーケティング市場自体は縮小してます。メールフィルタリング市場の今後はどうでしょう?
小椋氏
法人メール市場自体は拡大していると思ってます。さっきの例の出金通知メールなどは、通常の郵便では代替できないですよね。そういう付加価値があるし、付加価値が増大しているとみています。
RSSの使い方はしきい値をそろそろ超えるかもしれないですね。確かにメールは飽和していて、スパムなどの問題もありますし。ただ、RSSは、いままでは認証とかワントゥワンの領域は不得意です。そのあたりをどう解決していくのかが普及の鍵ですね。HDEで作るかもしれないですよ(笑)。いずれにしても、メールマーケティング用のメールより業務メールのほうが既に多いんですけど、届いた・届いてないという問題がメールでは起こりえて、仕組み的には超えられない問題になっています。RSSでは、認証やセキュリティさえなんとかすれば、そのあたりは解決できるわけですから、使い道はありますよ。
小川氏
同感ですね。
小椋氏
メールとRSSは通知技術としては近いです。ただ、今はメールしかないのでみんながメールを使っている状態でしょう。
小川氏
今後GPSとからめたりするといいソリューションができるかもしれませんね。メッセンジャー(IM)はどうです?
小椋氏
Unified IM(企業ごとの仕様の違いを吸収できるIM)のようなものがないですかね。標準主導の技術とベンダー主導で進む技術の差異の問題だと思うんですけど、仕様の標準化が主導する開発は進歩が遅いのが欠点です。技術の進歩はある意味、標準を破ることじゃないですか。Webブラウザ戦争はいい例です。IMはベンダー主導ですよね。ケータイもそう。
小川氏
オープンソースによる開発というHDEの立場的にはどうです?(笑)。
小椋氏
心情的には標準派ですね。でもオープンソースは標準主導のようで、実は開発者の勝手でどんどん進化してきたと思います。それが面白いところですね。
小川氏
確かにそうかもしれないですね。さて、ずいぶん長い時間をいただいてしまいました。できれば、お友達を何人かご紹介いただけるとうれしいです。この連載は、本来は友達紹介によるインタビュー連載なので(笑)。
小椋氏
ビービットの遠藤さんはどうかな。それと、実は高校の同級生でもあるんですけど、フォトクリエイトの白砂さんは面白いですよ。連絡しておきます。
小川氏
分かりました、よろしくお願いします。今日はどうもありがとうございました。
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小川 浩(おがわ ひろし) 株式会社サンブリッジ i-クリエイティブディレクター。
東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。
2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、現在サンブリッジにて起業準備中。
著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。 |
2007/03/13 00:00
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