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フォトライフ構想で人生のすべての節目を写真に

フォトクリエイト白砂社長

 今回のゲストは、前回のホライズン・デジタル・エンタープライズ小椋社長からのご紹介で、株式会社フォトクリエイトの白砂晃社長です。写真とはおのおのの人生の瞬間を切り取りその瞬間を未来に届けるもの、という理念を持つフォトクリエイトのユニークなビジネスモデルを伺いました。


フォトクリエイト・白砂社長 白砂 晃(しらまさ あきら)
株式会社フォトクリエイト 代表取締役

1974年7月16日生まれ 広島県出身。32歳。
1999年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、NTTに入社。およそ1年間の勤務を経て、株式会社サイバーエージェントへ移籍し、インターネット広告事業に携わる。その後、子会社となる株式会社CAモバイルの立ち上げに参画。
2002年1月に独立し、株式会社フォトクリエイトを設立。プロのフォトグラファーが撮影したアマチュアのスポーツ大会や各種イベントの写真をインターネット上に掲載し販売するという日本初の事業を展開し、急成長を遂げている。2007年2月に約3万人が参加した、第1回東京マラソンのオフィシャルフォトサービスとしても話題に。趣味は海釣り、バイク、マラソンなど多数。


インターネット写真業とは?

白砂氏
 小椋さんから電話ありましたよ(笑)。


小川氏
 あ、そうですか(笑)。高校の同級生なんだそうですね。桐朋学園とか。


白砂氏
 そうです。


小川氏
 小椋さんは大学卒業後すぐの起業とのことでしたが、白砂さんは就職されているんですよね。


白砂氏
 ええ。分割寸前のNTTに入社しました。NTTの分割後は、NTT東日本です。でも新入社員の年の2月には退職して、サイバーエージェントに移りました。そこでCAモバイルの立ち上げに携わって、2002年1月にはフォトクリエイトを作りました。2002年4月にGiftPhotoというサービスを開始しました。


小川氏
 ちょっとWebサイトを確認しただけでは事業モデルが分かりづらかったのですが。


白砂氏
 単純ですよ、プロのカメラマンの写真を載せて販売する、というインターネット写真業です(笑)。まずプロカメラマンを登録制で集めています。現在は300人登録で、実働200人ほどの規模です。そして、日本全国のイベントを探して、そのイベントと交渉して写真を撮らせてもらう権利を得ます。写真の撮影対象者はイベントの参加者で一般の人です。そして、撮った写真をWebに掲載して、欲しい人、まあ主に写っている本人や関係者ですが、その人たちに買っていただく、というものです。たとえば、小学校のサッカーや野球のようなイベントの写真を撮って販売します。販売する写真はデジタルではなく、ちゃんと印刷したものを郵送します。


小川氏
 なるほど。分かったような気がします(笑)。今回、東京マラソンの写真も撮影されたとか?


白砂氏
 ええ。実際に仕事とは別に僕も出走しましたよ。完走しました。


小川氏
 へえー。タイムはどうですか?


白砂氏
 (完走時の写真をみせながら)5時間8分です。


小川氏
 この写真は偶然撮られたものですか? それとも社長の完走を記念してのもの(笑)でしょうか?


白砂氏
 偶然です(笑)。というよりも、それだけ多くの写真を撮っているわけです。われわれは昨年1年で700万カットの写真を撮影しました。東京マラソンにいたっては、一つのイベントだけで30万枚もの写真を撮影しています。


小川氏
 そのうちの一枚、というわけですね。なるほど、それなら買いたくなる人は多そうですね。


白砂氏
 われわれは、イベントの主催者に対して協賛して撮影する権利を得ます。そして、その写真に写っていた人に買っていただきます。基本、参加者が買うわけですが、メディアもごくまれに買ってくれますね。


小川氏
 創業当時からこのビジネスモデルを志向されていたんですか?


白砂氏
 そうです。でも最初はビジネスにならなくて、別のことをして食いつないでました。最近はインターネットの普及と、プロの写真もデジタルカメラ化してきたことによって、事業の成長が促進されましたね。もともとは結婚式を狙ったんですけど、結婚式は権利関係がうるさくて営業してもなかなか市場に入れないんです。それでスポーツなどのイベントにターゲットを切り替えました。


年間2800イベントに協賛、今年は5000イベントに拡大

小川氏
 イベント種類はどのような感じです?


白砂氏
 マラソン、サッカー、自転車、モータースポーツ、アメフト、ダンス、とまあいろいろです。


小川氏
 購入単価はどのくらいですか?


白砂氏
 2L版で、1枚525円から1575円が標準価格です。協賛金の金額によって価格が異なる場合もあります。


小川氏
 東京マラソンで30万カットとのことですが、カメラマンは何人くらい投入したのですか?


白砂氏
 30人くらいですね。


小川氏
 協賛している年間のイベント数はどのくらいですか。


白砂氏
 昨年は年間2800イベントです。今期は5000イベント以上です。小さいものは幼稚園の豆まきからありますから。


小川氏
 テクニカルなことを聞きますけど、たくさんある写真から自分が写っているかどうかを確認したり、撮った写真をサイトに公開するのはどうやっているのですか?


白砂氏
 たとえばゼッケン番号を検索するソフトなどを自社で開発しています。掲載自体は人海戦術ですね。それと、主催者が基本的には告知してくれるんですよ。協賛金を払うかわりに参加者にあらかじめ告知してくれる契約をしています。


小川氏
 肖像権についてうるさくいう人はいないですか?


白砂氏
 Web上での掲載や主催者との交渉等の過程でクリアしています。仮に訴えられても問題ないですね。


小川氏
 なるほど。しかし、事業モデルそのものは参入障壁が低そうな気がするんですが、どうやって他社と差別化をしていくのでしょう?


白砂氏
 イベント全体の母数は増えている訳ではないんですが、取り扱えるイベントは増えています。われわれの優位点としては、まず登録してもらっているカメラマンの数や、それぞれの得意のジャンルですかね。ダンスだと彼、サッカーだと彼女みたいな。


小川氏
 そういう適材適所的なカメラマンの配し方をしていると。


白砂氏
 そうです。コーディネーターといいまして、カメラマンの選別、手配をする担当がいます。ただ、実はそれをいま数値化しています。カット数やお客の評価や購入率などを入れて、イベントごとの推薦システムをデータベース化しようと考えているわけです。それにプラスして、コーディネーターの微調整が入ればよりよい結果につながると思っています。


フォトライフ構想を基盤に事業を拡大

小川氏
 カメラマンからの写真の回収は?


白砂氏
 DVDで送付してもらいます。それからサムネイルと、(著作権保護のための)透かし入り拡大写真と、オリジナルをデータベース上に整理します。だいたい3営業日でアップします。東京マラソンのケースはあまりに数が多いので1週間くらいかかる見込みです。


小川氏
 オリジナルのデータは渡さないのですか?


白砂氏
 そもそも写っている本人と家族にしか写真は売りませんが、データもCD-R(カット:3765円)に入れてお譲りしています。それに、オリジナルデータはとってありますよ。子供が成人してからスライドショーにも使えるように。過去の写真の販売価格は1.5倍に設定してあるんですが、それはこの長期の保管料として考えていただいています。


小川氏
 動画はやらないんですね。


白砂氏
 編集するのが大変ですし、コピーされやすいですからね。それに実は瞬間を切り取っているから写真はかっこいい。動画だとあまりかっこよくないですよ(笑)。


小川氏
 そうかも(笑)。


白砂氏
 写真の用途はいろいろありますから。簡易スタジオを持ち込んで、普段撮れないような写真をとるサービスもあります、たとえば慶應大学の卒業式や謝恩会の写真を今度やります。まだ入れてないですが、甲子園や全国高校サッカーなどもやりたいですね。花園はもうやっているんですけど。


小川氏
 これからのビジョンを最後に聞かせてください。


白砂氏
 フォトライフ構想を描いていますね。人生の節目で、結婚、出産、入園卒園などのシーンを写真のプロが刻んで、Webアルバムにしていきます。それをプリントして実際に写真にするんです。ライフステージのありとあらゆるイベントを写真にしていくことを考えています。泥だらけの子供の写真をみてほほ笑まない親はいないじゃないですか。ユーザーの声もちゃんと見えるし。


小川氏
 そうですね。


白砂氏
 後は、Web 2.0的ないい方をしておきますとね(笑)、サイト内でユーザーの思い出を掲載させていただいてるんですよ。購入していただいたときにアンケートをさせていただいていますが、そこに写真にまつわる思い出などを書いてもらってます。それらを拾って、さらにスタッフが電話で取材したりしてコンテンツ化しています。スポーツ選手の瞬間を形にして写真に残そう、という事業理念に対して共感してくれる人も増えましたしね。まだまだ話題にならないマイナースポーツもたくさんあるので、これから対応するイベントは増えますよ。




小川 浩(おがわ ひろし)
株式会社サンブリッジ i-クリエイティブディレクター。 東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。 2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、現在サンブリッジにて起業準備中。 著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。

2007/03/16 00:01

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