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取締役全員がニューハーフのIT企業が、日本の文化を変える!

ニューゲージ如月社長

 今回のゲストは、筆者の個人的な友人でもあり、テレビ番組「おねえ★MANS」に出演中ということでも話題の如月音流氏です。ニューハーフでありながら、システム開発企業の株式会社ニューゲージの経営者である如月音流は、異色といえばこれ以上がないほど?異色な経営者です。しかし、その見かけとは関係なく、優秀なビジネスパーソンとしての、固定観念にとらわれない、このうえなくエッジな部分に注目してください。


ニューゲージ・如月社長 如月 音流(きさらぎ ねる)
株式会社ニューゲージ 代表
携帯絵文字(アスキーアート)作家

2月1日生まれ 北海道出身 A型。
趣味:バンド活動(ビジュアル系)
特技:料理(調理師免許あり、フグ取り扱い免許あり)、バレーボール、キックボクシング、バスケットボール、スノーボード、バトミントン、携帯絵文字(アスキーアート)
T:168cm、B:93cm、W:68cm、H:92cm
SEX: ニューハーフ


ラーメン屋の傍らで始めたメルマガがブレイク

小川氏
 たこやきパーティ以来でしたっけ。


如月氏
 いえ、この間ランチを一緒にしましたよ。


小川氏
 ああ、そうでした(笑)。読者のために、ちょっと自己紹介していただいてもいいですか。Enterprise Watchの読者はもしかすると音流さんを知らないかもしれないので。


如月氏
 話すことたくさんありすぎて、それだけで50分くらいいりますよ。


小川氏
 いや、そこはかいつまんで(笑)。


如月氏
 努力しますけど(笑)。えっと、ひょんなことからニューハーフになった如月音流です、ってかいつまみ過ぎですね(笑)。まあ確かにね、みかけは普通でないかもしれないですけど、やってることはまっとうですよ。株式会社ニューゲージは、ケータイに特化した開発や、PCのWebのシステム開発をやってるIT会社です。そこの社長をしています。


小川氏
 生まれは北海道でしたね。


如月氏
 稚内です。実家が最北にあるラーメン屋で、最初はそこを継ごうかとも思ってたんですよ。そのころはまだオトコでしたけど(笑)。でも、料理って意外にクリエイティブじゃなくて、毎日同じレシピを作るだけじゃないですか、それで飽きちゃってね。ケータイでメールマガジンを発行してみたんですよ。


小川氏
 なんでそこでメルマガ(笑)?


如月氏
 いや、ラーメン屋がひまでね(笑)。たまたま、あゆというハンドルネームで男の子とメールでのバーチャル恋愛を楽しんでたんですよ(笑)。そしたら、ケンタ君という子から、今でいうデコメールみたいなメールをもらったんですね。これはおもろい、と思って、やり方を教えてもらったんですよ。で、真似しているうちに技術が勝手に身に付き、ホームページを作り、メルマガを立ち上げ。メルマガを絵文字ぴかぴかにしてね、そしたら瞬く間に会員が30万人くらい集まって大ブレイクして。


小川氏
 改めて聞くと、やっぱりなんかすごいですね(笑)。


如月氏
 ラーメン屋で月に何十万円しか売り上げない状態だったのが、口座にどんどんお金が入ってくるようになって、これは東京行くしかないな、と。それで稚内から東京へきてね、最初はボクシングジムに通ったり、カッコいいからっていう単純な理由でバンド始めたりね。ところがバンドをやる人ってみんなお金無いじゃないですか。だったら、おまえらネットで稼げ!って。みんなで練習そっちのけでメルマガ発行し、そしたらまたすごくお金持ちのバンドが出来上がって。


小川氏
 うーん、コメントに困りますね(笑)。笑ってばっかりです。


如月氏
 そうこうしているとネットの仕事が増えてきて、いろんなところからシステムの面倒みてよと言われて、受けているうちに時間がなくなり、バンドやらなくなって、じゃあ、もうITの会社をやろうということになって。


小川氏
 それがニューゲージ?


如月氏
 いえ、アルファスタイルという会社をまず作りました。そうこうしているうちに、なぜかおかまになってしまい。金もあり、美容整形の先生にも出会い、俺を女にしてくれと頼んで、全取っ替えしちゃいましたね。で、男の子から女の子になったわけですけど、社長がいきなり女になったって話はなんか暗いじゃないですか。そんなカミングアウト物語はいやだな、と。

 だったら、社長がニューハーフになったというよりは、ニューハーフが社長になったというほうがキャッチーだよねと。それじゃあ、ということで新たに会社を作ったんです、それがニューゲージで。そして、ニューハーフを集めて、とにかく社員全員でニューハーフオンリーのIT会社ですよ、とブログを書きまくったら認知度があがって。だんだん取材を受けるようになったわけですよ、ニューハーフがIT、ということで話題にしやすかったんでしょうね。そんな感じで組織が出来上がりました。


ガールズウォーカーの副編集長へ

小川氏
 ニューゲージを作ったのはいつですか?


如月氏
 2005年の6月頃からシステム開発などはやり始めて、2005年12月に正式に登記しました。事業内容は、主にケータイやPCでのショッピングシステムの開発や、メルマガ配信などなどです。


小川氏
 ガールズウォーカーの副編集長ですよね、それはどういう経緯でしたっけ?


如月氏
 あゆとしてメルマガやっていた時代にゼイヴェルの大浜史太郎さんからメールをもらって。あゆってことでメールして、実際会ったら男で(笑)、ちょっとひかれたかもしれないですけど、大浜さんはオトナなので顔には出さず(笑)。それがきっかけで絵文字の公式マガジンを手伝ったりもして。そうこうしてたらガールズウォーカーが大きくなって、関わることが大きくなって、試作品使ってよ、ここをこうしたらどうかなーとか、どこそこを面倒見てよ、というようなことが増え。いきなりガールズウォーカーの副編集長の名刺をもらい。で、そのうちニューゲージでも仕事をもらうようになったと。


小川氏
 運があるんですよね、音流さんは。


如月氏
 出会いの運があるんでしょうね。


小川氏
 オフィスは西麻布のままですよね。


如月氏
 はい。いま社員は17人ですね。


小川氏
 われわれの出会いも偶然でしたね。


如月氏
 ラジオ番組でご一緒したことがきっかけですよね。


小川氏
 なんて番組でしたっけ。

如月氏
 J-WaveのCandy Bandyですね、高城剛さん司会の。あの番組って前半がCandy、後半がBandyという構成で、普通は前半はドラッグクイーンとか、ちょっとアングラな人を呼んで、後半はまともな男性の話を聞く、という番組なんですよ、あれ。でも私が呼ばれたときはそれをよく分かってなくて。ちょうどテーマがWeb 2.0で、ニューハーフにWeb 2.0について質問して、トンチンカンなことをしゃべらせようと考えていたらしいんですけど、私はそもそも小川さんの「Web2.0 Book」も読破してたしね。


小川氏
 どんどんまともに切り返していった(笑)。


如月氏
 そう。横にはルチアーノさんとかいう有名なドラッグクイーンがいて、私はなんであなたがそこにいるの?と思っていたんだけど、実は逆で、なんでこのニューハーフはこんなにWebに詳しいんだ!って顔を高城さんはじめ、スタッフ全員がしていて。なんかけんか売ってる?って思うほどだったんだけど、趣旨が分かってないのは私の方だったという。


小川氏
 (爆笑)


如月氏
 そのあと小川さんが来るというので、せっかくだから会いたいと思って待ってたんですよ。


小川氏
 ありがとうございます(笑)。


ケータイSNSで「女の子に楽しく遊んでもらいたい」

小川氏
 音流さんの持論のニューハーフ2.0について、ちょっと話してください。


如月氏
 1.0は、カルーセル麻紀さんみたいな一人が突出して頑張って、売上を上げる状態ですね。ところがいまはニューハーフ全体にブランドがついてきて、センスがいいとか美容にくわしいとか。コスメのプロデュースなどの情報発信をするような役割をニューハーフ全体が与えられて、売上の積み重ねがロングテールみたいになってるんですね。それをニューハーフ2.0と呼んだりしてますね。ところが、最近は“おねえ”という呼び方に、ニューハーフやおかまなんかが、全部くくられてきてしまって。おねえ2.0のほうがキャッチーかもしれないです。


小川氏
 (笑)。ちょっと違うかもしれないけど、僕はRSSの普及に努めてるんですけど、Web 2.0というキーワードが一気にブレイクしたおかげで、RSSという用語の認知がちょっと遅れた感があるんです。キーワードとして食われてしまった、と。


如月氏
 ああ、それ似てますねー。でも、おねえと呼ばれる層って、ほんとに情報発信者としてのレベルも高いし、学歴が高い人も多いんですよ。


小川氏
 音流さんもフットワーク軽いしね。


如月氏
 ジェット機クラスのフットワークの軽さ(笑)。


小川氏
 ニューゲージの仕事内容を整理すると、どんな感じ?


如月氏
 そうですね、まず会社としては取締役全員、ニューハーフ。やってることは、システム開発、受託開発。それからコンサルもやりますよ。システム開発と運用のサポート、デザインなんかもやってます。それとWillPort(http://wp.st/)というケータイのSNSを始めたんですけど、このメディア化をしたいですね。ケータイでできることはすべてできるようにしたいし、やってます。


小川氏
 自社開発なんですよね。モバゲータウンとか意識する?


如月氏
 似てると思うけど、アバターはあんまりメインに考えないですね。女の子がたくさん遊んでくれればいいし、セレクトショップ的、コマース寄りですね。


小川氏
 いつまでも聞いてたいですけど、そろそろまとめに(笑)。最後に何かアピールをどうぞ。


如月氏
 うちの子たちはみんなかわいいです(笑)。というか、日本の会社はなかなかニューハーフや、そういうカルチャーにはまだまだ欧米ほどオープンではないですね。だから、今の仕事を成功させて、同じような性向を持っている人たちが単に戸籍変えたりするだけではなく、社会になじめるようにしたいですね。文化を浸透させて、社会を変えていきたい、そういう文化を創ることが会社の使命と思っています。実際、ニューハーフはITやデザインに向いていたり、スキルの高い、頭のいい子が多いんです。そういう認識というか、文化や体制を作っていきたいですね。




小川 浩(おがわ ひろし)
株式会社サンブリッジ i-クリエイティブディレクター。 東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。 2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、現在サンブリッジにて起業準備中。 著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。

2007/04/03 00:00

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