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エンタープライズ2.0のひとつの形-企業の情報をメタデータ化
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メタデータ野村社長
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今回のゲストは、メタデータ株式会社の野村直之社長です。某学会で一緒にパネリストをやって知り合ったという、ちょっと珍しい出会い方でした。2年前から、XMLコンソーシアムをはじめ、さまざまな場でエンタープライズのためのWeb 2.0を考え、普及をうながす活動をしておられます。
情報のメタデータ化に関する想いを雄弁に表現する、アツい経営者の言葉はときに難解ですが、大きな可能性を秘めていると思います。結局Web 2.0もまたテクノロジートレンドです。野村さんの言葉に耳を傾けることで大きなヒントを得ることができるでしょう。
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野村 直之
メタデータ株式会社 代表取締役社長
1984-1996 NEC C&C研究所
1993-1994 マサチューセッツ工科大・人工知能研究所客員研究員、CICC近隣諸国機械翻訳プロジェクト兼務出向(1987-8)、EDR日本電子化辞書研究所出向(1991-2)
1997-2001 ジャストシステム開発本部
2001-2003 個人事業(IT Mentors)兼 法政大学エクステンションカレッジ・ディレクタ(IT実践講座担当)
2002-2004 法政大学大学院ITPC兼任講師
2003-2005 (株)リコー ソフトウェアGlobal MOT担当
2004- 法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科・客員教授
2005- 慶應大学SFC研究所上席所員
2006- 同志社大学ビジネススクール兼任講師
2005- メタデータ株式会社 代表取締役社長
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■ メタデータという言葉をもっと世に知らしめたい
野村氏
先日のXMLコンソーシアムではご協力ありがとうございました。
小川氏
こちらこそ、ありがとうございました。まずは、自己紹介をお願いしていいですか?
野村氏
そうですね、えぇと、メタデータ株式会社の代表の野村です(笑)。
社会人初経験はNEC C&C情報研究所(当時)です。機械翻訳プロジェクトなんかをやっていました。
80年代の後半で、インターネット以前だったし、バブル以前だったですね。概念辞書なんてものを作っていたりもしてましたね。
小川氏
概念辞書ですか。
野村氏
ニューラルネットが当時流行っていた時期でした。人間の子供はどうやって言葉の知識を得ていくのか、などの研究もしていましたね。ジャストシステムでは文書処理とか文書要約システムを担当してました。一太郎Ver.9にも採用された技術です。
小川氏
その後起業。
野村氏
そうです。私は、システムの仕掛けよりもデータが好きなんですね。データというか、情報自体の構造をとらえてその本質を明らかにするという仕事をしたいと考えています。
小川氏
メタデータ株式会社という名前は、シンプルで、なにをしたいのかは分かりやすいんですが、反面どういう業務をしているのかは分かりづらいですね。具体的に教えていただけますか?
野村氏
ベタな名前ですよね(笑)。メタデータのメタはギリシア語、データはラテン語なんですね。2000年以上前からある言葉なんですけど、データのためのデータ、というのは未来永劫(えいごう)必要なわけです。これだけ重要な言葉だから、もっと有名にしたいし、活用に対するコンサルやパッケージをだしていくことによって普及するのではないかと思ってつけてみました。目に見えない業務のモデリングをしている会社といったらいいでしょうか。企業メタデータ活用のコンサルティングを行っている会社ですね。
小川氏
メタデータとはデータのサマリーデータというか、データのためのデータですよね。データが持っている属性とか本質的なものを示すための付加的な情報かな。僕がmodiphiで扱おうとしているのはRSSで、RSSもまたWebサイトのメタデータですね。RSSはXMLで記述しているわけですが、野村さんがいうメタデータは、XMLと同義語ではないんですよね?
野村氏
XMLは大事。でもシンタックスであり文法です。その上に、意味を定義するほうが重要です。われわれが企業のお客様に提供するのは、企業内のあらゆる情報をメタデータ化するためのお手伝いです。それがXMLであるべきなのか、それ以外の言語であるべきなのかはまちまちです。
HTMLにはメタタグというのがありますね。SEOをやるときに、ページに表示されないデータを考慮する。これは実はメタデータについて考慮するということです。Webサイトの本文の中からこうしたメタデータを抽出するか、5W1Hまでも考慮したメタデータを取り出すということを考えるわけです。
マッシュアップという流行の言葉でいえば、緯度と経度で場所を特定し、それらを持っている情報を垂直に串刺しにして地図情報にマッピングする。それによってGoogle Mapsとかを自分のサイトのサービスに簡単に組み込めるようになった。これは理解されやすい。これはすごいということでみんなが飛びついたわけです。
たとえばですが、mixiのあしあとってありますよね。
小川氏
はい。
野村氏
あれもメタデータです。mixi上で誰かが誰かのページを訪れた、ということを示すメタデータなんですね。つまり、ありとあらゆる文書の特徴を示しているものがメタデータであるわけです。文書をいつ誰が作った、という情報もメタデータです。
小川氏
そうですね。
■ 企業の情報のメタデータ化は事業になる
野村氏
人、モノ、金、すべてにメタデータはありますね。人であればHumanMLみたいなものがいろいろあります。欧州を中心とするOpen Travel Alliance(OTA)では、2000種にも及ぶ宿泊者のメタデータを標準化しているようです。たとえばお客様の人種と宗教の関係をみて、そのお客様が水曜に何かを食べたら、次の日は何を食べてはいけない、といった情報がメタデータで表現できます。あるいは、お金に関するメタデータとして、財務メタデータというのがあって、XBRLというんですが、こういうメタデータを使えば経営分析に役立つわけです。
小川氏
なるほど。XMLのような言語にこだわるのではなく、メタデータという概念そのものに着目させると。
野村氏
そうです。企業の皆様に、社内や顧客データなどをメタデータ化していくことによって、効率的な経営をする支援をすることをわれわれは事業にしています。
たとえば、つい最近までパッケージ化を目指して開発していたソフトウェアに、医療会計システムがあるのですが、医療行為や診療行為、つまり患者さんに対する一切の行為に関わる情報をメタデータ化するようなシステムを考えていたんです。医療行為や処方せんを出すと、それに応じて発行される点数があって、請求金額の計算に関わる点数なんですけど、その集計データをレセプト、というんですね。そのレセプトを簡単に算出するためのメタデータ化システムを開発しようとしていました。
小川氏
それは分かりやすいですね。
野村氏
残念ながら、いろいろあって当面お蔵入りさせちゃったんですけどね。でも、とにかくお客様の業態に合わせて、情報をメタデータ化して経営に役立つデータを作る、というお手伝いをわれわれはしているわけです。
小川氏
いまはメタデータ化のコンサルに集中しているわけですね。
野村氏
そうです。企業のメタデータのコンサルティングビジネスとは、別の言い方をするとメタデータを駆使したモデリング、ということになります。
小川氏
逆に分かりづらいかも(笑)。
野村氏
そうですね(笑)。モデリングというのは、業務や経営をモデル化すること、ですね。メタデータを抽出することで、それを実現しようということです。
例を挙げるとですね、あるグローバル企業があって、さまざまな国の市場に向けて製品のマニュアルを作るとします。そのマニュアルなどの一元管理をプロセス化してあげれば、いろいろな手間が省けるし、コスト減にもなります。使う言語はなんでもいいんです、たとえばRDFならセマンティックウェブの一番低いレイヤーでモデル化できるかもしれません。メタデータがあれば、なにか変更があったときに、マニュアル全体の改訂のトリガーになります。あとはメタデータの自動抽出をどうしていくかでしょう。
■ メタデータを使って関連性のある情報をつなぐ
小川氏
何をもってメタデータとするんでしょう?
野村氏
あるがままに構造をモデル化してます。特にメタデータの記述形式を決めているわけではないです、RDFは汎用だが、万能なわけではないですから。さきほども言いましたけど、たとえば財務ならXBRLがあるじゃないですか。だからその都度最適なメタデータの記述方式を採用するようにしています。
小川氏
メタデータ化することのメリットをもう一度噛み砕いてくれます?
野村氏
関連性をたどっていくピボット・ターン、というんですかね。ある情報と別の情報の関連性をメタデータが示すことができれば、それを軸として今度は別の情報にたどり着くことができます。
メタデータを作るということは、新しいサービスを生産するための基礎となる知識を創りだすということなんです。目の前のお客様向けのサービスを製造するための手段です。ビジネスプロセスをサービスに変えていく、ということになります。たとえばホテルや旅行業であれば、お客様に向かい合っている現場での知識を処理してメタデータ化していくべきです。そして、同時にその現場でよりよいサービスを製造していかなくてはならない。リアルタイムでなければ意味がないわけです。その支援をするためのメタデータ化とモデリングだと思っています。
小川氏
なかなか企業によっては理解されないかもしれないですね。僕はmodiphiで情報発信をしたい企業や個人にRSSベースのフィードで行うことを提案してますが、これもまたメタデータ発信の提案といってもいいと思います。でも、簡単には理解されないですね(苦笑)。
野村氏
そうですね。われわれの例でも、なんでもできるようなものを期待されても無理なわけで、万能の人工知能を作ろうとしても失敗しますよね。ある程度メタデータ化することで情報のマッピングをして、あとは運用でカバーしましょう、という感じで話をしています。何をIT化して、なにをしないのか、ある程度は制約があるよと。将来的には、メタデータとメタデータをつなぐところまでも規格化して、オントロジーを実用化にもっていきたいですけど。
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小川 浩(おがわ ひろし) 株式会社サンブリッジ i-クリエイティブディレクター。
東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。
2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、現在サンブリッジにて起業準備中。
著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。 |
2007/07/25 00:00
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