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情報の“偏食”が出る時代に新しい個人メディアを創りだす

ビデオジャーナリスト・神田氏

 今回のゲストは、ビデオジャーナリストという枠を超えてさまざまなジャンルで活躍される神田敏晶さんです。今夏の参院選立候補でも話題になりましたが、巨大な好奇心を武器にマルチな才能を発現する神田さんのお話は非常にユニークです。


ビデオジャーナリスト・神田氏 神田 敏晶(かんだ としあき)

1961年10月12日生まれ B型 金星人
万年27歳(+18年)

KandaNewsNetwork,Inc.
(有限会社カンダニュースネットワーク)

ビデオジャーナリスト。神戸市生まれ。ワインの企画・調査・販売などのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の企画編集とDTPに携わる。その後、CD-ROMの制作・販売などを経て、1995年よりビデオストリーミングによる個人放送局「KandaNewsNetwork」を運営開始。ビデオカメラ一台で、世界のIT企業や展示会取材に東奔西走中。
現在、impress.TVキャスター、早稲田大学非常勤講師、デジタルハリウッド特別講師。2002年4月1日より日本で法人化。世界で初めての“SNS”をテーマにしたIT-BARを渋谷で展開し、現在は世界で初めてのビデオ投稿スタジオを併設したBAR「BarTube」を展開中!2007年参議院議員選挙東京選挙区無所属で出馬。11200票で落選!


今夏に参院出馬

小川氏
 ご無沙汰してます。

 この間の選挙は驚きましたよ(笑)。なんでまた立候補しようという気になったんですか?


神田氏
 参議院立候補ね、最初はそんな気は全然、さらさらなかったんですよ(笑)。

 たまたまいろいろ参議院や衆議院のことなどを取材していたら、だんだんむかつくことがいろいろ出てきてね。で、実際に出てみたら、ますますいろいろおかしいなと思うことが多くでてきたけど(笑)。ご存知だと思いますけど、公職選挙法では立候補しますよ、という事前開示もだめなんですよ。でもね、立候補と言ってはいけないが、立候補検討中と言うのはいいんです。供託金もね、立候補の届けをしたらすぐ払えばいいわけじゃなくて、公示までに供託金を払えばいいんです。だから、立候補を検討してますよー、とみんなに言ってみて、公示まで様子をみればいいということも分かってきた(笑)。


小川氏
 なるほど(笑)。次も出る意思有り、とお聞きしましたが。


神田氏
 次の参議院までに1000日あるわけじゃないですか。供託金の300万円もね、毎日3000円ずつ貯めていけばちょうどたまるしね。

 神田敏晶後援事務所という事務所も作りましたよ。


小川氏
 僕が神田さんを初めて知ったのは、セグウェイ事件ですね(笑)。


神田氏
 ああ、セグウェイね。2002年だったかな。あれもね、なんで公道で走っていけないのか、なんでだめなの?というわけで自分で試してみたわけですよ。そしたら書類送検されましたけどね(笑)。


YouTubeがテレビに依存しないビデオジャーナリストを量産する?

小川氏
 神田さんってマルチな感じで、何が本業なのか分からなくなってきました(笑)。


神田氏
 最近は講演で食ってるようなものですね。企業の社員教育のお手伝いとか。原稿も最近書いてないけどまた書くつもりですよ。

 あとはセカンドライフの企業利用のコンサルをしたりもしています。本業はもちろんビデオジャーナリスト。


小川氏
 いわゆるビデオジャーナリストとは少し違いますよね?


神田氏
 フリーランスのテレビのビデオジャーナリストは多いですよ。普通はテレビに撮影したビデオコンテンツを売り込んでお金にしているわけですけど、ボクとビデオニュースドットコムの神保さん(http://www.jimbo.tv/)くらいかな、テレビに依存してないのは。ボクたちはMSNなどのネットや自前のメディアに流して食っているわけです。ある意味マイケル・ムーアも同じ。メディアはムービーだけど。映像をCGを使わずに、自分の主張に沿った映像ばかり使うのはなんだけどね。YouTubeがでてきて、状況は変わってきていますね。ボクたちと同じような感じの人も増えていくんでしょうね。


小川氏
 技術的なハードルを下げてくれるサービスが、今度は新しい職業を生むんですね。


神田氏
 あとは最近、自分でプログラムを書いてみようと思ってね。スカイプキャストでPHPの使い方を教えてくれ、とやったら、イスラエルやカナダの人が教えてくれて。今日初めてPHPでプログラム書いてみましたよ。プログラム言語も、もっとカンタンになったらいいのにね。たとえばキーボードではなくてWiiで、ドラッグ&ドロップでさっさと作れちゃうような。


自分の時間や知識、仕事を切り売りするための方法としてブログを書く

小川氏
 神田さんは好奇心旺盛でいつも楽しそうですよね。今年も残り少なくなってきましたけど、これから他に始めようということは?


神田氏
 ボクは10月12日が誕生日なんでね、そこが自分の期のスタートと思っているんです。

 まずは、YouTubeをつかってボッドキャスト(Vodcast)、いわばデスクトップの放送局を本格的にやろうかな。いろいろなツールの紹介や教育、PRなどをひっくるめたメディア事業ができないかな、と。

 最近は大手メディアや大企業が、ブロガーお断り、からブロガー歓迎に変わってきたじゃないですか。で、せっかくブログに書いてもらったものを事前にチェックや赤入れするというのでは両者の関係としてはよくないので、新たな表現手法としてエディティング(編集)をできないかとも考えています。食うための職業ブロガーもありだとは思うんですよ。


小川氏
 それが明示されていればいいと思います。


神田氏
 自分としては無料のブログを書いてない、いつかお金になるためのブログを書いているつもりです。書いたものはたいてい本にしているので、原稿料として戻ってくるわけですよ。ちゃんとお金にしていくつもりで書くほうがいい。そうして自分の仕事を切り売りしていくほうが、日々の発見や自分のためにつながると思いますね。いつかブログが自分のお墓のようなものになるかもしれないしね。書いたものが死んだ後も検索エンジンに引っかかって、自分が死んでも子孫がみてくれて、時代背景、流行の曲、考現学になるみたいな?


小川氏
 ライフブログですかね。面白いですよね。


神田氏
 そう。あとはね、ボクが思うに最近は情報のソースの入り方や発信の仕方が変わっている。

 コンテンツでね、フィードを出して、それをみていると今度は検索する時間がない、となるとテレビも新聞も見る時間がない、ということになる。ボクの造語ですけど、『情報の偏食』みたいなことが起きるんですよ。ボクは複数のテレビモニタを置いて、全部のバラエティを音無しでみているんですね。たとえば朝青龍のニュースが多く出ていると世の中平和だなと思うわけですよ。視聴率とれなくなっている、仕事をしてない人しかテレビをみてないのかもしれないですね、家ではBGVとして見てるだけかもしれない。


小川氏
 視聴率で広告価値を決めていくのは無理がある。情報の取得方法に人それぞれの偏りがでてくる。


OSではなく、UIがユーザーを縛る時代

神田氏
 ボク自身が狙うのは、いろいろな人がMPEG4でiPodで配信していく世界。個人放送局。でかいテレビでも放映されることを意識して、広告も考えて作っていく、というモデルを考えているんです。ちゃんと言葉で発信することが大事じゃないですか。欧米、アジアはいまはこうです、とかテクノロジーニュースをちゃんと発信する専門的なメディアも必要です。ポッドキャストで絵を配信するようなカンタンなやり方でも最初はいいじゃないか、と思いますよ。ポッドキャストだと(テレビCMのような)15秒の尺は長過ぎ、6秒でもいい。新しいメディア、新しい広告などの形をいろいろと模索しているところですね。


小川氏
 いいじゃないですか。日本の市場は、たとえば広告業界をみてもほんとに特殊で、たとえばネットニュースでもアメリカでは無料広告モデルにどんどんシフトしているのに、日本は有料メディアをいまだに模索してたりする。携帯電話のサービスモデルも確かに今は優れているけど、世界的にみるとあまりに特殊な成長をしていて、いつかはグローバルな波にさらされて、これまで培った技術や仕組みが無駄になる可能性もある。僕はこれをガラパゴス現象(笑)と言ってます。

 もっと広く世界をみたうえで、面白い試みをしていかないと。


神田氏
 デジタルデバイドはね、実は楽をしたくて一生懸命に頑張る人とそうじゃない人の差に過ぎないんですよ。


小川氏
 同感です。


神田氏
 ナンバーポータビリティでケータイのキャリアは変えられても、携帯のメーカーというかブランドを変えることができなくなってきてますよね。メーカーによって使い勝手が大きく変わりますから。そういうひも付けってすごい。変換やUIのやり方でユーザーを縛る。


小川氏
 そうですね。iPodなんかはいい例ですね。MacとWindowsじゃなくて。


神田氏
 OSじゃなくてUIがロックオンしてる。前は友達もキャリアごとに派閥というか、auなのかドコモなのかによって友達が集まっていて、ナンバーポータビリティがそういう友達間の壁を消したけど、今度はメーカーのUI、使い勝手によって壁ができたりする。そういうことを考えていくと面白いですよ。検索なんかも、これからはWiiでいいじゃない、というようになるかもしれないですね。




小川 浩(おがわ ひろし)
株式会社サンブリッジ i-クリエイティブディレクター。 東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。 2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、現在サンブリッジにて起業準備中。 著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。

2007/10/16 00:00

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