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RSS Feedをメディアに変え、ビジネスにする

RSS広告社・田中社長

 RSS広告の市場は地道に拡大しており、さまざまな企業がさまざまな形で参入し始めていますが、広告配信システムの提供者は2007年現在、FeedBurner(GMOアドネットワークス)、Pheedo(トランス・コスモス)、そしてRSS広告社の三社に絞られてきているようです。RSS広告社は国内におけるRSS広告業者のパイオニアであり、唯一の純国産ベンチャーでもあります。2007年も残りあと2カ月あまり。成長し始めたRSS広告市場に対する想いをRSS広告社の田中社長に伺いました。


RSS広告社・田中社長 田中 弦(たなか ゆづる)
株式会社RSS広告社 代表取締役社長

1976年生まれ。千葉大学文学部卒業後、ソフトバンク株式会社入社。インターネット事業準備室にてブロードキャスト・コム (現Yahoo!動画) 立ち上げにかかわる。1999年ネットイヤーグループに入社し、米国のネットビジネスの調査・ブロードバンド市場調査などを手がける。2001年経営コンサルティング会社コーポレイトディレクションに入社し、主に新規事業立ち上げの戦略策定および実行支援に従事。2004年5月ネットエイジ入社。 2005年4月、株式会社RSS広告社代表取締役就任。Hotwired、CNET、インターネットマガジン等での執筆多数。
RSS広告社 [事業内容
主な著書:
「RSSマーケティング・ガイド 動き始めたWeb2.0ビジネス」共著(インプレス、2006)
「次世代広告テクノロジー」(ソフトバンク クリエイティブ、2007)


RSS広告市場は10億円程度?

小川氏
 創業してどのくらいになるんでしたっけ。


田中氏
 2年半ですね。2005年4月に立ち上げましたから。


小川氏
 思ったより大変だったんじゃないですか?


田中氏
 まあそうですね。この2年をふりかえると、RSS広告の市場自体をつくるという段階だったんじゃないですかね。広告配信システムを扱っているのは3社あるけど、われわれは先駆者だと思います。その後1年くらいして2社が入ってきたわけです。で、最近ようやく広告が売れ始めた、というところですね。なんでかというと、RSSの購読者も増えて、広告として認知されてきたからなんですが。


小川氏
 FBSの活動もだいぶ認知されてきましたからね。Feedリーダーの提供者も増えたし。いま、取引先はどのくらいになった?


田中氏
 300社くらいですね、延べで。常時70社ほどのクライアントに取引していただいています。


小川氏
 他の2社との競合をどうみていますか?


田中氏
 3社は立ち位置が違ってますんでね、ガチンコでやっているかというとそうでもない、競争しているようでしてない、という感じです。

 RSS広告市場の大きさはまだまだ小さいですからね、これから大きくなるわけで、まだパイを争うという状況じゃないですね。市場規模は、まだまだ10億円には届いてないと思います。


RSSは広告手法の変化をもたらすか

小川氏
 売上は順調ですか。


田中氏
 市場がそれでも伸びてきてますから。うちの売上も昨年の3倍になりました。ただ、急拡大はしているが、この市場が1000億円規模にいくかというとそうでもないかもしれないですね。ニッチトップを狙う市場なのかもと思っています。


小川氏
 そうかもしれないし、そうでないかもしれないですけどね。今のRSS広告のやり方とは別の方法があるのかもしれないし。Webでもバナーから検索連動型にシフトしているわけだし、FeedにはFeedに最適の広告があるんじゃないかな。現時点の広告手法をカンタンに説明してもらえますか。


田中氏
 RSS広告の種類ですか? 基本的には2種類あって、それぞれの配信方法が2つあるので、4つの形があるといっていいんじゃないですか。

 まずはインラインといって、記事に画像バナーを差し込むやり方。もう一つはスタンドアロンといって、記事そのものが広告、というやり方です。配信方法というのは、クリック課金でアドネットワーク(アドセンス型)によって、全体に広くだしていくやりかたが一つ。もう一つは、純広告でインプレッション売りのパターンで、特定メディアに出しますよ、という感じ。


小川氏
 組み合わせとしてどっちが多いとかはある?


田中氏
 ないですね。メディアさん次第。ただ、スタンドアロンのほうが掲載されるメディアが多くなるという面はあります。ティッカー型のRSSリーダーにも配信できるし、Feedのマッシュアップサイトでも掲載できますから。


小川氏
 なるほど。


田中氏
 アプローチとしては、クリック課金インライン型から入って、スタンドアロン作って、インプレッション純広告売りにいきましょう、という感じになりますね。ちょっと前は、10人しか読んでませんというようなFeedが多かったので、メディアとしては成り立ってない、だから純広告を出してよというのは無理だったんです。最近ようやくFeedの購読者が増えてきたので、純広告のほうを拡大できるようになってきたというのが現状です。


小川氏
 純広告のほうがいい理由は?


田中氏
 純広告は、ひとつは新着記事にインプレッション広告を出すというのがボリュームが多いのでいいんですよ。だが、実はこのFeed、芸能人のFeedとかセキュリティ関係のFeedというように指向性が強いFeedは、ボリュームは稼げないけど、純広告を出したいところです。

 広告を出す側からすれば、メディアとして成立していれば純広告の方が出しやすい。一社限定とか独占もできるし。メディアにとっていいわけです。われわれにとっても都合がいいのはいうまでもないですけど。


小川氏
 Pheedo(トランス・コスモス)が塚田さんところ(フィードフォース)と組んで、新しいRSS広告を発表しましたよね。広告手法は増えていくでしょう?


田中氏
 開発中なんでいいづらいですけど(笑)いまのRSS広告は、昔ながらのバナー広告の考えから抜けきれてないのかもしれないですね。コミュニケーション手段にRSSはなるし即時性があるんだから、イベントがあれば一斉に興味のある人にだせるというのは魅力的です。だから即時性を生かしてクライアントさんのニーズに応えるような広告手法を考えていくべきだと思います。年内くらいには新しいアプローチを見せられるのではないかな。


小川氏
 期待してますよ。でもちょっとヒントをください(笑)。


田中氏
 そうですね。バナーの広告配信ビジネスというよりは企業の情報を伝えるサービス、プレスリリースに近い配信サービスですかね。

 プロモーションなの? 電子チラシなの? あるいはマーケティングなの? 広告なの? という境界線があいまいなものかもしれないですけど、でもそれも広告だと思うんです。RSSを使うとこういうふうに変えられるというように世に問いたい。


小川氏
 2008年はいろいろな世界の境界線があいまいになる契機になると思いますよ。たとえばiPhoneやiPod touchの登場で、これまでのケータイによるモバイルネットとPCのネットの区別、ボーダーが徐々にですけど既に崩れてきています。


どこにあるか分からないツボやボタンを押せる柔軟な組織を作っていきたい

田中氏
 MODIPHIもそういうボーダーを崩すコンセプトとして期待してますよ(笑)。


小川氏
 先日、田中さんのところのRSS Feedの効果測定サービスであるFeedMetrixをMODIPHIとで共同開発していく、というリリースを出しましたし(笑)。

 FeedMetrixには期待してるんです。Feedの効果測定って、実は非常に難しいじゃないですか。


田中氏
 FeedMetrixは発行するFeedごとに、購読者数と、実際に記事を読んだというアクティブユーザー数、それとFeedリーダーの種類を算出することができますよ。開発には苦労しました。あとはMODIPHI側でよりよい機能をつけていってもらえれば(笑)。


小川氏
 もうそろそろ実装する予定です、ちょっと待っててください(笑)。

 実際のところ、RSS Feedを発行するのも、その効果測定をするのも原則無料ですから、多くの人に試してもらいたいなあ。RSS広告社もわれわれも、国産ベンチャーとしてもそうだし、ポータルやISPなどのメディアやトラフィックの支援がないわけで、それだけに共に頑張っていきたいという気持ちが強いですよ。


田中氏
 うちはCCIさんからの出資を受けているおかげで代理店さんのチャネルは頼れるというところはありますけどね。

 まあ、他社は関係会社に広告を扱う会社があるわけですし、技術力も高い。比べてもなんですけど、多少は恵まれているなとうらやましくも思いますけど。逆にわれわれは技術と営業を両方自前でやっていて、それが面白い、とも思っています。コストカッターとして徹底して経営に取り組んでますし。とにかく、自分で自分のサービスを世に問うことができるのがいいですよ。


小川氏
 同感ですね。自分で好きなものを作りたいという思いがあるからベンチャーをやろうという気持ちになるんだから。


田中氏
 最近は新規事業、ベンチャーはこうしなくてはうまくいかないということが分かってきましたよ。たとえば組織変更は四半期ごとくらいにやったほうがいい、という気になってきたし。


小川氏
 落ち着かなくないですか?(笑)。


田中氏
 ベンチャーってチャンスに対して柔軟に変化すべきだと思うんですよ。どこにツボ、ボタンがあるか分からないから、その都度押せるような組織にしなくてはならない気がするんです。事業部制にしたりフラットにしたり。いまはチーム制にしてますけど。

 給料で報いるのかヒエラルキーで報いるのか、とか。組織の職責で考えると組織変更は頻繁にならざるを得ないし。最近では積極的に新卒をとろうとも思ってますしね。




小川 浩(おがわ ひろし)
株式会社サンブリッジ i-クリエイティブディレクター。 東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。 2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、現在サンブリッジにて起業準備中。 著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。

2007/10/23 00:00

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