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国産動画検索サービスFoooooで五大陸制覇を目指す

バンク・オブ・イノベーション樋口社長&田中取締役

 今回のゲストは、世界最大級の動画コンテンツの検索を可能とした、動画検索サービスFoooooの運営会社 株式会社バンク・オブ・イノベーションの樋口社長と田中取締役です。バンク・オブ・イノベーションは20代の3人の創業者が2006年に設立したまだ若いベンチャーです。動画検索自体が新しい分野のサービスですが、今後どのような見通しをもたれているのか、詳しく伺いました。


バンク・オブ・イノベーション樋口社長 樋口 智裕(ひぐち ともひろ)
株式会社バンク・オブ・イノベーション 代表取締役

1983年1月15日生。青山学院大学経営学部卒。在学中から創業メンバーとして学生ベンチャーに参加。その後独立し弊社を創業。Webシステム開発経験多数。主任開発者。


バンク・オブ・イノベーション田中取締役 田中 大介(たなか だいすけ)
株式会社バンク・オブ・イノベーション 取締役

1983年9月20日生。東京大学経済学部卒。在学中から創業メンバーとして学生ベンチャーに参加。その後独立しフリーでSE経験を積み、大学卒業後弊社に参加。Webシステム設計経験多数。開発・マーケティング担当者


オリジナルの動画検索エンジンを短期間で開発

小川氏
 創業はいつでしたっけ?


樋口氏
 2006年1月です。ちょうど2年になりました。


小川氏
 動画検索を最初からやっていたわけではないんですよね。


樋口氏
 最初はシステム開発をやっていました。受託をしながら、いろいろなモノを作っていて、たとえばFlashの検索などをやっていたりしたんです。その技術を応用して、動画検索をやることになったんですけど、受託は半年から一年つづけていて、いまはもうやめました。動画検索に集中しています。


小川氏
 そうか、動画検索の技術をもっていたわけではないんだ。なぜ動画検索をやろうと思ったんですか?


樋口氏
 アメーバビジョンやYouTubeが人気を集めだして、この市場が急拡大したと感じたのが理由です。動画サイト自体が増えてきているわけですから、それらを一括して検索できれば便利だなと。便利なものをできるということと、その市場がでかい、という2つの理由で参入しました。


小川氏
 開発はどのくらいかかりました?


樋口氏
 リリースまでに2カ月でした。まずはα版で、検索できるだけのサービスでしたけど。


田中氏
 もともとラボののりでいろいろ作ってましたから。クローラーやインデクサは前から持っていましたから、早く作れたと思います。


小川氏
 すべて自前の技術?


樋口氏
 クローラーは全部自前ですね。動画解析のモジュールや言語解析などはオープンソースを使っていますけど。


Foooooの意味は、五大陸にまたがる動画検索サービスへの意気込み

小川氏
 ちなみに、サービス名のFoooooって発音はどうすればいいのかいつも迷うんですけど(笑)。


樋口氏
 フー、と読んでください(笑)。意味もよく聞かれるんですけど、FはFind(みつける)で、5つのOは五大陸、つまり全世界の動画を全世界の人に検索してもらえるようなサービス、という意味です。


田中氏
 ぱっとみてFがあってOが何個かあるというのも覚えやすい、と思って。


小川氏
 認知学的には、まずWhoとFoooooが同じ発音で間違いやすいかもしれないですね。フー、というと、人名検索かなという感じがするし。


樋口氏
 ああ、なるほど。


小川氏
 ネーミングの理由を聞けばOが5つだと覚えるけど、打ち間違えやすいかも。まあ、MODIPHIも造語だからひとのこといえないですけどね(笑)。


田中氏
 発音からは、レイザーラモンHGが語源だといわれたこともあります(笑)。


小川氏
 まあ、いまはあまりドメイン名は関係なくなってきてますけどね。マーケティングや告知はどうしてるんですか?


樋口氏
 アドセンスには月に20万円くらい使っています。


田中氏
 広告はあれしかやってないですね。検索結果連動広告は出していなくて、アドセンスだけやっています。トラフィックを低コストで集められていいですね。

 いまは、動画+スポーツ、とか。動画と音楽、などのキーワードに広告を出すようにしています。動画検索、で検索すると、Googleだと1位、Yahoo!で2位にランクしています。


小川氏
 思うんですけど、Googleで普通にテキスト検索をやっていて、その結果の一つとしてYouTubeの動画のサムネイルが返ってくることが最近は増えてるんですけど、FoooooやTAGGYで検索したときの回答が、そのGoogleの検索結果の一つにみえるときがあるんですよね。それ自体がある意味、動画検索エンジンがSEO的に優れているといえますよね。


樋口氏
 そうですね。


小川氏
 つまり、検索結果の正確さで動画検索サイトのトップに人を集めるより、検索結果がさらにGoogleにひっかかりやすくするSEO的な対処が、PVを増やす決め手になる気がしています。


田中氏
 そうかもしれないです。


5TBを超えるデータを保存

小川氏
 ちなみに、開発上一番難しかったのはどういうところですか?


樋口氏
 どれも難しいですけど、個々のサービスを組み合わせることがもっとも難しいと言えますね。力を入れているのはクロールで、全工数の20~30%くらいかかっています。常に改善し続けていますし、メンテナンスにも時間を取られていますね。


小川氏
 蓄積しているデータ量は?


田中氏
 少し古いデータですけど、テキスト情報で50GBくらい、サムネイルの画像データが5TBくらいですね。


小川氏
 すごい。Foooooのサムネイルが動くところは、見た目上、他の競合サービスとの差別化になっているかもしれないですね。


田中氏
 そうですね。競合という話がでましたけど、海外だとTruveo(AOLの傘下)がトラフィックを伸ばしていて、簡単には追いつかないですね。他にはblinkxというのもあるんですけど、blinkxにはだいぶ接近しています。国内ではACCESSPORTさんのWoopieなどがありますね。ただ、国内の場合、微妙に軸が違うと思っています。たとえばTAGGYはタグでつなげるという点を前面に出しますし、メタキャストさんのSAGURIもTAGIRIというツールを使っているユーザーの動画視聴状況だけを使っているという点でわれわれとはちがいます。


小川氏
 他の動画検索サイトは直接競合ではない?


田中氏
 むしろ、動画情報のまとめサイトが競合かもしれないです。面白い動画を紹介するブログとか。ディレクトリ型のサービスですね。そういうサイトがけっこうあって、一日20万PVあったりするんですね。そこのトラフィックもとっていかないと。

 動画の場合は、見たい動画があって探すというよりも、何か面白い動画がないかな、と思う受動的なユーザーが多いように思うんですね。そういうユーザーの期待に応えることに技術開発している状態ですね。クロールはしなくてはならないからやるんですけど、一般的な検索とユーザーへのリコメンドをどうつなげるかがキーになる気がします。


既存の動画コンテンツ事業との連携による多様な可能性

小川氏
 収益源は?


樋口氏
 三本で考えています。APIをポータルなどに提供することによって、各サイトやWebブラウザの検索窓に動画検索をつけてもらうこと。それから広告。もう一つは、動画プラットフォームを作ろうとしていて、YouTubeやニコニコ動画など複数の動画サイトに一括アップロードできるようにすることを考えていますが、そのときに広告を挟んだり、いろいろなことができるようになればお金になるかなと思っています。


小川氏
 アップロードする画面に広告を出すということですね。動画サイトのアップロード画面でのPVを奪う?


樋口氏
 国内については正式にアップロードの口をあけてもらって、提携しようという動きにしてます。海外はなかなか進まないので。


田中氏
 礼儀としてメールで一報したりはしていますけど。日本は動画大国、というイメージを持たれているようで、彼らのトラフィックを向上させる方向になるからということで、ウィンウィンの関係を作れたらいいかと思います。


小川氏
 収益バランスの目標は?


樋口氏
 API関連事業で5%、広告で80~90%、一括アップロードサービスで5~10%をイメージしています。API提供では、ニフティのトップページでの動画検索もスタートしました。



小川氏
 他社と比べた上での優位性をどう考えてますか。


田中氏
 動画を見る場合、動画をみるという行為の文脈が大事と弊社では考えています。再生回数が多いだけではノイズが多くなりますし、ブログで紹介している動画の場合、エントリーの中の文脈の中では面白くても、動画そのものだけをみるとその面白さがまったく伝わらないケースが多いんです。動画の外側の情報の文脈を収集して、考えていくことが大事かな。Foooooの中に情報を書き込んでもらうこともありかもしれないですし。テキスト検索にしてもGoogleの検索結果がいいかというと、それはあまり変わらなくて、実は最初の検索結果10件にどれだけユーザーの気分に合う情報を出せるかが勝負なんですよ、動画も同じと思っています。どういう用途で何を検索するかで、検索サービスの棲み分けがある、なにを探したいか分からないというユーザーにどう対応していくかが勝負だと思います。


小川氏
 なるほど。


田中氏
 動画に関しては有料の動画が売れるのかどうか、ということが重要になるのではないですかね。DVDであろうが、関連グッズだろうが、動画コンテンツや派生商品が売れてくれないと、われわれ自体のビジネスも収益化されないと思います。


樋口氏
 でもそこは楽観視しています。YouTubeでみて面白ければDVDを買おうという気になると思うんですね。


田中氏
 1000万人にリーチしたいときには、ネットの動画サービスよりもテレビの方が上。数百万程度ならコスト面でもネットの方が安いし、コアなユーザーも多いから見込み有り、となるんではないでしょうか。ニコ動などでは著作権の問題があるかもしれませんが、制作会社の方がプロモーションに使おうという気になるのではないかと考えています。


小川氏
 動画サイトにプロモーションビデオを出してみたり、広告ありきでコンテンツを出していこうという動きはありますね。(注:2008年1月25日、角川グループが YouTube内に角川グループの公式ページを開設。「涼宮ハルヒの憂鬱」に代表されるアニメ作品や映画の予告編などを配信することが決定)


田中氏
 アニメやドラマは、原作がある場合は別だけど、オリジナルの場合、実際に放映されている部分の裏側に、実はものすごく細かな設定があるんですね。登場人物や世界観を相当作り込みます。そういうコストまでも制作コストになっていて、そういうコストの回収はテレビや映画の収入だけではできなくて、DVDを売ったり派生商品を売ったりすることで回収するんですけど、オプションとして今後はもっとネットに依存することはあると思います。

 ニコ動で人気のバンブーブレードというアニメがあるんですけど、あまりお金かけて作っている作品じゃないんです。だから制作サイドがかけているみえないコストを、ニコ動の人気がDVD売れ行きに直結すればいいな、と関心持って見ています。


樋口氏
 いろいろな可能性がある市場ですよ。やりがいがあります。動画のインデックス数も近々1億を突破する見込ですし。今年末にはもっと海外にも出たいと思っています。


田中氏
 Foooooのα版は、全部樋口が一人で作ったんですよ。テクノロジーや彼のすごさにもぜひもっと注目してもらいたいなと思っています。


小川氏
 それはユーザーにも伝わると思いますよ。今日は、ありがとうございました。




小川 浩(おがわ ひろし)
株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。

2008/01/29 00:00

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