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「アップorアウトの厳しい環境で投資実績を」サイバーエージェント佐藤氏
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女性ベンチャーキャピタリストインタビュー【後編】
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今回のゲストは、前回に引き続き、女性キャピタリスト特集の後半として、サイバーエージェントで活躍中の新進キャピタリスト 佐藤真希子さんをお迎えしています。
サイバーエージェントのプロパーとして入社し、広告営業のトップセールスパーソンとして活躍してきた彼女ならではの見方を伺いました。
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佐藤 真希子(さとう まきこ)
株式会社サイバーエージェント
ファイナンス事業本部
清泉女子大学文学部国文学科(現:日本語日本文学科)卒業。
2000年4月にサイバーエージェントへ新卒一期生として入社、インターネット広告事業本部へ配属。
2002年当時、Qで1.5億円以上の売上をあげ、ベストプレイヤー賞を受賞。その後、子会社を経て2006年10月より投資育成事業部へ異動。経営者のパートナーとなれるキャピタリストをめざし、現在奮闘中。担当している投資先は、現在6社。
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■ インターネット広告営業から投資業務へ
小川氏
サイバーエージェントに新卒で入ったんですよね。
佐藤氏
はい。2000年入社なので、もうすぐ9年目ですね。
小川氏
当時の部署は?
佐藤氏
インターネット広告事業本部の営業でした。3年半営業をやって、後の2年間は営業部門のマネージャーをしていました。サイバーエージェントの営業部門での女性マネージャーは私が初めてでした。
小川氏
さぞかし敏腕セールスだったんでしょう(笑)。
佐藤氏
いえいえ(笑)。でも、一応、四半期ごと(いまは半年ごと)に行われる社員総会でのベストプレイヤー賞をいただいたり、隔月で選ばれるMVPも何度かはいただきました。それより、新卒時代に新規で開拓したクライアントの担当者の方に「パートナー」と認めてもらったことがうれしくて、そう言っていただけることを目標にガムシャラに頑張っていたんです。今でも、その企業とはお取引をいただいており、インターネット広告事業本部のNO.1のクライアントになっているそうです。
小川氏
それでマネージャーに昇格したと。
佐藤氏
そうですね。マネージャーは2年間やらせていただいたのですが、人を動かして、1人の力を最大限に引き出すということを学びました。2年経って、当時のメンバーがMVPを取ったり、自分と同じポジションに昇進したのを見届けたので、そろそろ現場に戻って、今までの経験を生かして、新規事業をやってみたいなと思うようになり。
小川氏
はい。
佐藤氏
そこで、サイバーエージェントの子会社である、結婚式場のクチコミサイトを運営するウエディングパークに異動しました。当時はCGMという言葉が出始めブログも普及し始めたころで、ゼクシィが圧倒的な支持を得ている状況だったのですが、結婚式の情報は極端に不足していたんです。なので、ゼクシィとは別の形で、一生に一度の結婚式を最高の思い出にできるお手伝いができればと思い、ウエディングパークの新しい収益作りに携わることになりました。結果的に1年半でしたが、新規の収益源を小さいながらも作ることができました。
小川氏
で?
佐藤氏
そうこうしているうちに、弊社の取締役でもあり元上司の高村と話をしているときに「佐藤のいう“パートナー”というキーワードと、今までの経験をもっと生かせる仕事となると、ベンチャーキャピタリストがいいのでは?」と言っていただきまして…。まったく考えたことのない金融の仕事ということもあったのですが、さっそく社内で立ち上がったばかりの投資育成事業部の話を聞きに行き、異動することになりました。
■ サイバーの投資について
小川氏
サイバーエージェントの投資部隊はどういう構成?
佐藤氏
投資のチームは、2つに分かれていて、国内投資チームは私を含めて6名。中国などの海外投資チームは4名です。国内のベンチャー企業への出資は現在、サイバーエージェント本体から出資を行っており、海外のベンチャーについては、サイバーエージェント・インベストメントという子会社がJAICと組んでいる中国ファンドから出資をしています。投資先は、全部で60社ほど。ここ3年で9社の上場実績があります。
小川氏
投資先のジャンルは? ITだけですか?
佐藤氏
いえ、厳密にいうとITベンチャーのみということではありません。ただ、当社が「インターネットから軸足をぶらさない」というポリシーもありますし、事業会社としての強みやシナジーを活かせるのも重要なポイントとなるとどうしても、IT企業というのは外せないと思います。
小川氏
現在の自分の投資先は何件ですか?
佐藤氏
直接出資を担当した企業は、2社だけですが、担当しているベンチャー企業は6社あります。
小川氏
投資を検討する上で大事なことは?
佐藤氏
うーん…。まだ投資育成事業部に異動して1年半なので、投資する際の成功パターンというものを語れないのですが、やはりその企業の狙っている市場規模だったり、世の中にない事業の場合は、いかにその企業の成功シナリオを自分なりに描けるか、ということかと思っています。また、そのサービスのターゲットユーザーの気持ちや市場ニーズなどをいかに把握し理解できるか、サイバーエージェントグループの各事業とのシナジーをどのくらい生み出せるか、あとは、経営者の資質は当然重要かと思います。最近では、経営者だけではなく、経営チームがどのくらい強くバランスが取れているのか、という点も重要だと感じています。
小川氏
B2B(企業向けサービス)はあまり投資していないの?
佐藤氏
そんなことはないです。出資させていただいている企業もたくさんあります。ただ、当社が行っている事業はBtoCの事業が多いのでそちらの方が個人的にわかりやすいというのはありますが。
私が初めて出資をさせていただいた企業は、モバイルをツールにして店舗支援や覆面調査をしている会社なんですよ。今までは、スーパーバイザーの方がやっていた仕事を人件費削減のためアウトソースするケースも増えていますし、フランチャイズ本部が加盟店のクオリティ管理等を覆面リサーチするということで、コンプライアンスの点からも把握する必要があり需要が増えています。
ただ、技術的な側面が強い企業については、私自身テクノロジーに少し疎いので、どうしてもサービスの良さの理解や投資の可否を考える上で分からないことが多くなります。
小川氏
前回インタビューしたサンブリッジの祐川京子さんもそうですけど、女性だからということはないにせよ、比較論的にはどうしても女性キャピタリストはテクノロジーが分からない、というケースが多いみたいですね。
佐藤氏
それではだめなんですけどね。ただ、当社の投資育成事業部の中では、常に「成果を意識しろ」と、担当役員である専務取締役の西條より言われているんです。そのため、もちろんある程度の技術についての知識は勉強する必要はありますが、「成果を出す」ということを意識した場合、必ずしも自分自身がテクノロジーに強くなるということが、成果を出すということではないのかもしれないな、と考えています。
詳細な技術については、やっぱり「餅(もち)は餅屋」という言葉があるように専門の方に聞くのが一番正しいと思いますし。ですから、そういう際に的確な方にヒアリングできる人脈作りが重要かなと感じています。
小川氏
その通りですね。
佐藤氏
投資育成事業部のメンバーには、西條より「アップ or アウト(昇進するか、スピンアウトするか)」という成果を常に意識した行動をしろ、という環境なんですね。キャピタリストは高い専門的な知識を求められる職種ですから、プロにならないといけないと、常に思っています。
正直、ご存知の通り現在のベンチャー投資の環境は良いとはいえません。市況自体悪い上、上場する企業の数も減っています。とはいっても何もしないでいられるわけではありません。何もしなければあっという間に数カ月経ってしまいますから、「成果を意識する」のは重要なことかと思っています。
市場が悪いといっても、中にはとても良い企業もありますし、とにかくお会いしないと始まらないですしね。
■ ベンチャーの意義は世の中にないものをつくること
小川氏
女性キャピタリストとしての強みや弱みを意識する?
佐藤氏
特に感じたことはないですね。この仕事はたった1年半の経験ではありますが、「自分力」が必要だと感じているので、性別は関係ないかと思います。ただ、仕事自体は上場までという長いスパンで事業を見たり、経営者のパートナーとなることが求められているので、そういう意味で、出産や育児で戦列を離れなくてはならないことが女性はあるのかも、と思っています。そういう際に図らずも経営者や出資先にご迷惑をおかけするかもしれないですね。でも、そういう事情もかんがみたうえでパートナーとして認識していただけるようにがんばればいいことだと思います。
小川氏
確かにね。
佐藤氏
あと女性ならではの「強み」ということでいえば、「女性ならではの視点でアドバイスをできること」かもしれないです。女性ならではの細かな部分へのアドバイスができるといいですね。
小川氏
サトマキならではの(笑)強みは?
佐藤氏
うーん。元が営業ですからね、私の場合は女性ならではの細かいアドバイスというより、泥臭い仕事もできるのが売りですかね(笑)。子会社での経験もあるので、お金をほとんどかけずに、今ある資産を使って新たな収益を生み出す仕組みを考え、営業、業務フロー、売上までのサイクルを作るフルサポートができることでしょうか。意外と事業アドバイスができる方は多いと思うのですが、現場に落として実行させるまでが、ベンチャー企業は難しいので。また、前回取材された祐川さんには及びませんが、投資先の新人研修や、営業マンの研修もやらせていただいたことがあります。
あとは、自分自身がサイバーエージェントというベンチャー企業の成長の軌跡を見てきたことも強みだと思っています。社員数が2ケタの時からグループで1600人に、売上でも数億円から760億円までの成長の過程を見ていると、ベンチャー企業が成長する過程でぶつかるかもしれない課題が大体理解できることでしょうか。サイバーエージェントという会社がその課題をどう解決してきたかをお話すると、とても喜んでいただけます。
小川氏
なるほど。
佐藤氏
私はベンチャー企業が大好きなんです。オールドエコノミーの会社も良いところもたくさんありますし、尊敬しているところもありますが、どちらかというと、そういう会社を作りあげた先輩方に尊敬を感じています。
ベンチャー企業のいいところ、社会的な意義は、世の中に今はないことやモノ、サービスや文化を創りだす点だと思っています。ですから、ベンチャー企業が成功するということは、人のためになるし、世の中を豊かにしたり便利にすることにつながります。大企業だとなかなかできないことを、気がついた起業家がベンチャーという形で実現していく。それがいいですね。サイバーエージェントは、21世紀を代表する会社を創るというビジョンを掲げているので、当社と同じように21世紀を代表する会社になるだろう企業をこの仕事を通じて支援していければ、と思っています。
小川氏
分かりました。ぜひがんばってください。そして、僕のやっている事業もぜひ、支援してください(笑)。
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小川 浩(おがわ ひろし) 株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。 |
2008/03/11 00:00
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