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成長するモバイル広告市場の裏側を知る起業家-モバイルファクトリー宮嶌社長
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今回のゲストは、モバイルファクトリーの宮嶌社長です。携帯電話の公式サイトのコンテンツプロバイダーとして成長を続けるモバイルファクトリーですが、モバイルだけではなく、最近ではPCインターネットの世界にもさまざまなアプローチで進出しています。宮嶌さんの事業に対する情熱と、モバイル市場への冷静な分析をお伺いしました。
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宮嶌 裕二(みやじま ゆうじ)
株式会社モバイルファクトリー 代表取締役
1971年生まれ。ソフトバンクからサイバーエージェントに転職後、2001年10月モバイルファクトリーを設立。ブログを活用したクチコミ型プロモーションサービス「BloMotion」、3D仮想空間「Second Life」にてクチコミ広告サービス「Second Buzz!!」、成果報酬型の携帯電話広告システム事業、ポッドキャスティングサービスや着メロの制作等、新サービスを次々と生み出し、急成長を続ける。今年、『Japan Venture Awards 2007』の起業家部門にて特別賞を受賞。
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■ ケータイ向け公式サイトで順調に成長中
小川氏
まず自己紹介をお願いします。
宮嶌氏
1971年生まれの36歳です(笑)。
新卒でソフトバンクに入りまして、5年働いてからサイバーエージェントに転職しました。1999年なのでマザーズ上場前です。当時は12番目の社員で、サイバー自体がまだ創業7カ月目でした。2001年10月1日に独立して、今の会社を作りました。着信メロディのASPサービスをメインにしています。
小川氏
年商とか伺っていいですか?
宮嶌氏
昨年度の決算で11億円です。売上の7割は公式サイトからのものです。自社ブランドとして5サイト。他社さんとの共同で41サイト運営しています。
小川氏
共同運営されているサイトのパートナー数は?
宮嶌氏
17社ですね。基本は着うた/デコメールによる売上で、全体の7割を出しています。
小川氏
残りは?
宮嶌氏
ブログ広告とセカンドライフ関連サービスです。ブログ広告に関してはヤプログ!と提携して、90万人にリーチするメディアを作っています。セカンドライフのビジネスというのは、セカンドライフに参入したい企業さん向けの受託サービスで、進出支援とメディア開発をやっています。たとえばブックオフさんやパソナさん、パルコさんなどのクライアントのセカンドライフ支援ですね。名前を出すなと言われている企業もありますので全部は言えないですけど。
小川氏
なるほど。
■ セカンドライフのオリエンテーションランドの公式登録企業の強み
宮嶌氏
セカンドライフの支援事業には、オリエンテーションランドという仕組みがあるんです。ご存知ですか?
小川氏
知らないです。
宮嶌氏
セカンドライフに登録するときには、必ずどこかのオリエンテーションランドを経由するかを選ばなくてはならない、というルールなんです。このオリエンテーションランドは世界に26社しかなくて、日本では3社。そのうちのひとつがモバイルファクトリーなんです。
小川氏
へえ。
宮嶌氏
日本人なら、登録する際に、3社のどこかを選べといわれて、一つを選んでグループに入らなくてはならないんです。IEにおけるMSNのようなものかもしれないですね。最近だと一日あたり、300人くらいの登録者がいて、ざっと月間で1万人くらいはうちを経由してスタートしてくれています。だから、セカンドライフが盛り上がってくれば、うちを経由してくれる人が多くなるわけで、それがセカンドライフにおけるメディア事業につながると思っています。まだ収益化はできてないですけど、これからがんばっていこうかなと。ブログ広告の事業は競合が多いので、こちらにより期待している状況です。
小川氏
いま社員はどのくらいですか。
宮嶌氏
正社員で58人、バイトで70名くらいかな。もう少し増やしたいですね。今はケータイの公式サイトにおけるCP(コンテンツプロバイダー)事業が順調なので、それをキャッシュカウとして他の領域に進出中、という感じです。
■ 苦戦する勝手サイト提供企業と、強大化するモバゲー
小川氏
勝手サイトがどんどん増えていると思いますけど、影響はありますか?
宮嶌氏
あまりないですね。
小川氏
それは意外です。
宮嶌氏
昔は僕たちも勝手サイトを持っていましたけど、いまは公式サイトだけにしました。勝手サイトは儲からないんですよ。モバゲー(タウン)が強すぎて、アフィリエイトをやろうにも、彼らが圧倒的なボリュームで仕事をとってしまうんです。
小川氏
ふむ…。
宮嶌氏
mixiは純広告でやれるからいいですけどね。それ以外の参入者だと、メニュー以外は純広告では売れないですよ。金融の広告が規制されて激減したことのダメージも大きくて、普通の勝手サイトは純広告ではまったくもうけられなくなった。だから純広告からアフィリエイトにシフトしようとみんな考えるんです。でもモバゲーのDeNAが強すぎて。
小川氏
モバゲーでどのくらいの売上ですか?
宮嶌氏
12億円/月、というところですね。市場2位のアドウェイズが月商2億程度だから、DeNAがぶっちぎりの状態です。だから勝手サイトの仕事はなりたたなくなってしまったといえますね。
DeNAが自分たちのメディア(=モバゲー)で広告を消化してしまうので、他がまったく成り立たないわけです。だから業界的にはモバイル広告が盛り上がるといいますけど、プレイヤーとしては公式サイトにいかないと生き残れないですね。モバゲーがあんなに巨大になるとは誰も思わなかったかもしれないですけど。
小川氏
公式サイト自体の市況は?
宮嶌氏
逆に公式サイトの事業はいいですよ。おそらく今後一番伸びるのはリスティングとコンテンツマッチなんだと思いますけど、でもコンテンツマッチはまだ精度がよくなくてだめですね。ザッパラスさんは賢くて、勝手サイトも持ってらっしゃるけど、純広告をとるという目標ではなくて自分の公式サイトへの誘導として使っていると思います。
とにかく、シーエー・モバイルでさえ、減益の状態ですから、勝手サイトの事業は難しいです。金融広告規制の影響がでかいし、とにかくDeNAがすごすぎ、なんです。
■ 拡大するモバイル市場と、公式サイトCPの堅調な成長
小川氏
モバイル広告市場自体は伸びる、とみていい?
宮嶌氏
はい。もちろん。
マーケットオール、という感覚では市場は拡大します。しかしモバイル広告をやっている多くのプレイヤーには受難の日々が続きますね。
マーケットだけを見ると検索連動やアフィリエイトが順調に広まって、Googleとオーバーチュアが市場を引っ張ります。検索連動広告は効果も高くて、例えば「着うた/浜崎あゆみ」というクエリがだいたい50円くらいからです。ただ人気のあるキーワードは結局単価が上がって1000円くらいになってしまうので、大手企業しか出せないですけどね。
SEOもいよいよ本格化しています。公式サイトのモバイルSEOもくると思いますね。
小川氏
PCの世界に接近しつつ、それでも独特ですね。
宮嶌氏
リスティング広告の場合でも、現状だと、あまりライバルがいない状態です。メニュー経由での訪問が多いから、多くのCPはいまだにそれを当てにしているんですよ。自分たちが損をしない程度でアフィリエイトを出しておけば、ケータイの場合はPCと違ってコンテンツのライフタイムバリューが長いので、ビジネスとして成立してしまいます。
小川氏
うーん。
宮嶌氏
とにかく、モバイル広告の世界はとんでもないくらい寡占状態ですよ。DeNAのパワーが大きすぎる。モバゲーで提供している仮想通貨であるモバゴールドには仕入れに充当するコストがないから、ダンピングも可能なんですね。他の企業だと、なんらかのマイルの換金のための仕入れコストが出るので、そういうことはできないです。
小川氏
DeNA、ひっくり返せないの(笑)?
宮嶌氏
(ウェブドゥジャパンの)プチゲーフレンズのような、いわゆるモバゲーのクローンがどんどんチャレンジしてはいるんですけどね。ただ純広告はさっきの状況でまったくだめなので、メディアとアフィリエイトの販売網を両方持っていないとね。DeNAは両方持っているんですよ、シェアは6割超えているだろうし。だからなかなかひっくり返せない。その点、公式サイトにはチャンスがあると思っています。実際、ジェイケンは着メロで純増しています。弊社も純増しています。ザッパラスも13億の利益を出してもっと成長できます。
上場している企業のなかで、CPは意外に堅調なんですよ。インデックスさんもフジメロのようなコンテンツ系のセグメントで見るとけっこういいし。なにげに成長している分野なんです。アクセルマークも上場しましたしね。
■ CP事業を軸に夢を追う
小川氏
他の領域への進出をあえて考える理由は?
宮嶌氏
公式サイトの事業には一種の成功の方程式があって、それなりの拡張が見込めるんですけど、それだけでは事業家としてはチャレンジングではないですから。
もちろん公式の事業は成長させます。勝手サイト的な分野ではPCのネットにいこう、と思っています。例えばTwitterなどに近いサービスのミニブログ、というのを作りました。最近英語版も出しています。
小川氏
なるほど。
宮嶌氏
事業体としてキャッシュカウは持っていないと夢を追えないですから。公式サイト事業はわれわれの中心事業ですけど、世界に通じるサービスをどんどん出していくという夢は実現していくつもりです。小さくまとまるつもりはないですよ。
小川氏
素晴らしい。上場自体は視野に入れてます?
宮嶌氏
事業規模だけをみれば、IPOできるレベルになってきたと思いますね。ただ、いまはマーケット悪いですからね。せっかく上場したとしても調達額が少ないなら意味がないですよね。
小川氏
確かに。最後に、何か強調しておきたいことはありますか?
宮嶌氏
CPとしての事業では、うちは共同運営先にもメリットをだせることが強みと思っていますから、その点は言っておきたいですね。
トラフィックを持っているのにマネタイズできない勝手サイト企業には、ぜひパートナーとして話をさせていただきたいと思っています。
小川氏
ザッパラスさんが自分でやっていること(勝手サイトを公式サイトへの誘導として使う)を、御社と組めばできるということですね。
宮嶌氏
公式サイトにユーザーを一部移しておくと、マネタイズするうえでいいはずです。
お困りの企業さんには、ぜひ、うちと組みましょう!とお伝えしたいです。
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小川 浩(おがわ ひろし) 株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。 |
2008/03/18 00:00
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