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「MySpaceは情報を作るためのソーシャルメディア」、マイスペース大蘿社長
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今回のゲストはMySpaceの日本法人のCEOである大蘿淳司さんです。Facebookが日本上陸を果たし、mixiの成長にも若干かげりが見える中で、独自路線を貫いて音楽を始めとするクリエイティブなコンテンツやアーティストそのものにフォーカスを当てる同社の戦略について伺いました。
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大蘿 淳司(たいら あつし)
マイスペース株式会社 代表取締役
広島県生まれ。早稲田大学大学院卒業後、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)入社。
日本コカ・コーラ社のブランド・マネージャ、リシュモンジャパン ブランドCEO、ディールタイムドットコム副社長、ドコモAOL CMOなどを経てヤフー入社。PS本部長、マーケティング本部長を歴任。
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■ 情報を「流す」から「作る」メディアへ
小川氏
今日はよろしくお願いいたします。世界最大のSNSとして日本に上陸して以来、早くも3年経とうとしているわけですが、経過はいかがでしょうか?
大蘿氏
トラフィック数は言えないんですけど、私が社長に就任した今年の1月から比べてUU(ユニークユーザー数)が1.5倍くらいになっています。音楽や映像などのアーティストやクリエイター、およびそのファンを軸に登録数もデイリーに1.5倍くらいになってきてますので順調といえますね。アーティストにフォーカスすればファンも増えるというわけです。
小川氏
それはなによりです。ところで大蘿さんのご経歴をうかがってもいいですか?
大蘿氏
もともとベンチャーのshopping.comの副社長をやっていました。そのあとAOL、Yahoo!を経て現職です。
小川氏
エンジニア出身とお伺いしましたが。
大蘿氏
ええ、もとはプログラマーです。ソフトウェアの会社もやっていたりしていました。実はコカ・コーラにもいてマーケティングの勉強もさせてもらったり、アクセンチュアでコンサルもやっていました。
小川氏
へえ。その大蘿さんが米国発のSNSのトップにたって、考えておられるところを教えてください。
大蘿氏
そうですね。事業ビジョンという意味では、トラフィックや情報を「流す」から「作る」という時期にネットがきているという認識を持っています。Yahoo!に5年いて、Webの業界が1.0から2.0へと変わってきた10年で、流すだけから作るためのメディアになってきたのかなと。いわゆるソーシャルメディアですが、SNSやブログの登場で大きく変化してきた、と考えています。
小川氏
はい。
大蘿氏
つまり、アーティストやクリエーターがどんどん参加できるようになって、新しい才能が生まれる土壌ができたと。だから、日本でも「作る」ということにフォーカスして、新しいものや、新しい人に場所や道具を提供することができれば、ユーザーの増加にも、ビジネスの拡大にもつながると思うんです。それが会社にとっていいことなわけです。
小川氏
たしかに。
大蘿氏
それはインターネット全体にとってもいいことです。それが大枠になっていますね。アーティストやクリエイターを支援して、MySpaceで何か新しいことが生まれることを重視していけばいいし、同時にその新しいことを、いい形でエンドユーザーにみせて楽しませることも必要で、それがわれわれの事業の両輪になるかなと。
■ MySpace、mixi、Facebookを、同じSNSと一言で表すのは間違い
小川氏
よく分かりました。日本のMySpace、としての個別の展開はなにか考えておられますか?
大蘿氏
狙いたいのは、日本の魅力的なコンテンツを海外に出したいということですね。言語や流通の問題はありますが。
いまのところ、せっかくよいコンテンツを作ってもなかなか国境を飛び越えていってないのが少々残念で、今後は日本のコンテンツや才能を国を超えて世界に出したいと思っています。それが実現すれば、われわれのビジネスにもプラスになるはずだと考えています。そうすればマーケットが世界になりますから。
小川氏
逆の意味で、日本国内だとSNSという言い方をすればmixiやモバゲーなどの強敵があるわけですが、どのように意識をしていますか?
大蘿氏
SNSという言い方は分かりやすいからわれわれも使ってしまいますけど、カテゴリ的には変だと思うんですね。ひところ、全部のネット系の企業をインターネットカンパニーとひとくくりにしていたわけですけど、変だとは思いません? 人と人がつながる機能があれば、SNSとひとくくりにするのもおかしいと思うわけです。だってWebはそもそも人と人をリンクさせる仕組みがあるのが当たり前な世界です。YouTubeにしたって、SNSとはいわないけど、コンテンツをベースに人をつなげていますし、ブログもお気に入りや、トラックバックといった機能で、人と人がつながる構図になっています。だからSNSという言い方は意味がないと考えています。
小川氏
同感です。
大蘿氏
MySpaceも動画や音楽の配信などで人と人とをつなげます。SNSも多様化しているわけです。だからmixiは直接競合とは思ってはいません。
それに、クローズドなSNSとオープンなSNSという違いもありますし。
小川氏
MySpaceはニックネームでオープン、FacebookやLinkedInは実名でややクローズ、mixiは昔は実名が多かったけど最近はニックネームでクローズ。
大蘿氏
はい。そうするとですね、中での話題もSNSとしての性格も違ってくるものなんです。リアルネームでmixiを使っていた人が、たとえば学生時代の友人と会社の同僚を登録していたとします。友人には見せたい情報でも同僚には見せたくないということはありますよね。だから、思うんですけど、SNSというかソーシャルメディアは複数の場を持つのが当たり前になってくると思うんですよ。やはり話題でも混ざってはいけないものは多いわけで、例えばX Japanのライブの話で盛り上がるのはMySpaceで、(ビジネスSNSである)LinkedInには書かないはずなんです。ソーシャルメディアはキャラがはっきりしているほうが使いやすくて、日本でも使い分けするようになると思います。
小川氏
年齢によってもそうかもしれないですね。学生時代はFacebookで、卒業したらLinkedIn、プライベートではMySpace、みたいに。MySpaceは原則情報はIDを持っていなくても見えるんでしょう?
大蘿氏
はい。MySpaceはプライバシー設定をしないと情報を隠さない、オープンなソーシャルメディアです。リアルネームで使うクローズなソーシャルメディアは、親しい間のメールの代用がメインで、いわば家の中で好きな話題を語る場所ですけど、オープンなメディアはイベント会場でみんなで盛り上がる場所です。
われわれのアンケートの結果によると、領域ごとのSNS、音楽系と地域系、欲しいという人が多いんです。だからSNSという中で競合というよりは、さまざま業種で競合しているんじゃないですかね。同じようなものはいくつも必要ないし、mixiのようなクローズなものはいくつもいらない、かぶるようなものはいらないと思っています。
■ リアルとネットの連動こそに勝機
小川氏
業種ごとという言い方であれば、音楽や映像のコミュニティ化する可能性を考えるとiTunes Storeはどうでしょう?
大蘿氏
われわれは情報をシェアする場です。エンタメ系であればシェアしたり情報を発信したりする場です。だからmoraやiTunesは競合ではなく補う関係にあると思います。コードコピペは当たり前の文化で、YouTubeのリンクをMySpaceに貼ったからYouTubeも大きくなったわけですし、相互扶助の関係があると思いますよ。
いずれにしても閉じるのではなく、開いて自由度を高めてやるほうがユーザーも使うモチベーションになると思います。
小川氏
分かりました。
ちなみにケータイ上ではモバゲーがありますが、モバイルでの展開はどう考えてますか?
大蘿氏
MySpaceはケータイからも登録はできますよ。登録数の伸びという点ではケータイのほうが伸びています。ただ、リッチ系のものをみるという性格があるので、ムービーとか見るにはケータイではきついから、PCはPCで伸びていますけど。
ただ、ケータイはソーシャルメディアとしては大事なプラットフォームだけど、ケータイだけのサービスでは伸びが止まると思っていますよ。
小川氏
それはなぜ?
大蘿氏
たとえばですね、メール的な使い方を指向しているSNSは動きが止まってくると思うんです。たとえばメールもソーシャル化しているじゃないですか、だからソーシャルメールとの戦いになってくるはずです。そこを支えにしてしまうと泥沼にはまるんではないですかね。だから、ケータイだけでは楽しめない、リッチコンテンツを重要視していく必要があるかなと思います。
小川氏
なるほど。
大蘿氏
2011年以降、ネットコネクションがついたテレビが増えると思います、当然大画面で楽しめるコンテンツもでてきます。そこが大事かなと思っているんですね。モバイルはモバイルで激戦区になるでしょうから、われわれはむしろテレビ的なものを視野にしていて戦略を立てています。
小川氏
具体的には?
大蘿氏
テレビコンテンツとMySpaceのコンテンツをチャンネルを変えるようにして見ることができれば楽しいでしょう。MySpaceの中からアーティストを選んで、そのプロフィールからコンテンツを選べたら面白い。気軽にテレビのチャンネルを変えるようにMySpaceをみれるようになったら、ほんとうに面白いと思うんです。
小川氏
なるほど。YouTubeが目指すところに近い気もします。
大蘿氏
ともかく、一昔前のWebと今のWebがちがうところは、ネットとリアルの連動がちゃんと見えるようになってきたということだと思いませんか?
小川氏
思います。クルマやバイクに乗るようなリアルな楽しみも、ネットの情報を効果的に使うようになってきていますし。分かりやすくなってきました。
大蘿氏
そうです。何かが起こってなにかがうごいた、ということが昔はみえなかったんですけど、いまはみえます。ネットとリアルが連携して動くようになって、それも誰の目にも分かるように、見えるようになってきてます。しかも、それにお金もつくようになってきたわけです。だから、ケータイかPC、というようなことではなく、昔から想像してきたネットとリアルの連動をいかに体現するか、その効果を分かりやすく表現できたものが勝つ、と思います。
小川氏
同感です。
大蘿氏
MySpaceが有利だなと思うのは、コンサートやイベントというリアルの動きとくっつけやすい、というところですね。いずれにしても、ネットとリアルの連動を分かりやすく体現したプレイヤーが、大きな成功をつかむ時代になった、とつくづく思います。
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小川 浩(おがわ ひろし) 株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。 |
2008/06/17 00:00
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