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「ドロップシッピングは小売店オーナー、2万人が生計を立てられるのが目標」もしも実藤社長


 今回のゲストはドロップシッピングで急成長を続けるもしもの実藤さんです。テクノロジーというより、商売のノウハウそのもので勝負する実藤さんに、ドロップシッピングとアフィリエイトの違いや、業界をリードする秘訣(ひけつ)とともに、ピュアな起業家としての軌跡もお伺いしました。


もしも・実藤社長 実藤 裕史(じつとう ひろふみ)
株式会社もしも 代表取締役社長

1979年生まれ。一橋大学商学部在学中の2000年よりECベンチャー「オイシックス」でのインターンに従事。その経験を元に、自らブランド品のネットショップを立ち上げ、月間2000万の売上高を達成。ECに大きな可能性を見出し、2004年に有限会社ウェブデパを設立。代表取締役社長に就任。
2006年6月、社名を株式会社もしもに変更し、ドロップシッピングという個人の力を活かした新しいEC市場におけるイニシアチブの確立を目指す。


きっかけは『うわさのズッコケ株式会社』

小川氏
 起業のきっかけは?


実藤氏
 実は小学生から起業したいと思っていました。小学生が株式会社を作るという『うわさのズッコケ株式会社』、という本を読んだのがきっかけです。感化されたんですね。そのころは漠然とレストランのオーナーやりたいと思っていましたが。

 その後1998年に大学に入学したんですが、そのころ、ちょうどアマゾンなどのベンチャーが出てきていて、今度は起業するならネットがいいかなと漠然と思い始めました。


小川氏
 漠然と(笑)。そこからすぐ行動に?


実藤氏
 そのころ出来たばかりのオイシックスのチラシをみて、インターンにしてもらったんです。40人くらいの学生インターンと、社員5人くらいがマンションの一室に出入りしていました。最初はネットの知識がないので、提携先の農家のナス作りを手伝ったり(笑)。昼間はそこで、夜はオイシックスでページ作りの手伝いで、多いときは週に5回は会社に泊まり込みという生活でした。当時はそれだけ働いても月給8000円?みたいな(笑)。


小川氏
 好きじゃなければできないですね(笑)。


実藤氏
 ええ。でも、さすがにお金がないのには困りまして、オイシックスの人に聞いたら、じゃあ土日だけバイトしてもいいよと言われて(笑)。そこで質屋のバイトをしたんですね。体育館で商品の販売イベントみたいなことの手伝いをしたら、二日間で1000万円とか売れるのに驚いて。ネットでやったらもっと売れると質屋の社長に話したら、じゃあ君がやれよと言われて、分かりましたという具合で、ネットでの質流れの商品の販売をやってみたわけです。


小川氏
 なるほど。


実藤氏
 当初はオイシックスと並行してやっていましたが、やがてこっちがメインになりました。でも、最初は商品が欲しければメールをください、というような原始的な方法でやっていたうえに、メールチェックするのを忘れて1カ月も放置していてお客さまに怒鳴り込まれたりもしました。それでも1年半くらいすると、月商2000万円くらいになってきたんですけど、いろいろあって、その質屋さんとは、たもとを分かつことになりました。


ドロップシッピング業界は、30社超・数十億円規模

小川氏
 その後ドロップシッピングに?


実藤氏
 その前に、いったんアフィリエイトを手がけてみました。主婦でもできるなら、より知識がある自分のほうが売れるだろうと思って始めたんですけど、8月で月収が100万円を超えたので法人化しました。それが有限会社ウェブデパです。2004年の12月でした。


小川氏
 一人で食べていくには十分ですよね。それがなぜアフィリエイトをやめることに?


実藤氏
 一人でやっていたら、だんだん飽きてきたんです(笑)。アフィリエイトってお客さまの顔が見えないし、売っているという実感がないじゃないですか。


小川氏
 たしかにね。


実藤氏
 そのときドロップシッピングの話をきいたんですよ。2005年の12月だったかな。ぜひドロップシッピングをやりたいんだといろんなところで話しまくっていたら、ネットプライスの佐藤さんに会いまして、その1週間後には半分出資をしてくれたんですよ。それで株式会社もしもの設立ができました。


小川氏
 やっぱり、やりたかったら声高に言いまくることが大事ですよね。

 現在ドロップシッピング業界はどのくらいの規模になってるんでしょう。


実藤氏
 競合の数でいえば、ウェブシャーク、リアルコミュニケーションなど、だいた30社くらいありますね。市場的には数十億円くらいじゃないでしょうか。


小川氏
 けっこういるんですね。競合他社との違いは? システム上に何か違いがあるんでしょうか?


実藤氏
 サービス上の細かい違いはあっても、技術的に何かが違うということはあまりないかと思います。

 もしもが他社より優れていると自負できるのは、個人のほうを向いている、という姿勢ではないでしょうか。個人がどこでつまづくか、何をやれば売れるのかというノウハウを持っていて、それを提供できるのが強いと思っています。なにせ自分がアフィリエイターでしたから。

 同時に、商品力も強みです。ネットプライスで売った商品をうちでも売れるので、それが大きいですね。ネットプライスは1週間しかモノを売らないので、その後のロングテール的な売り方はうちが担当させていただいています。ドロップシッピングの業界では、どの会社もビジネスモデル的にはほとんど同じですから。

 流通の間に入って、売上の10%をもらう、という仕組み。もちろん課金代行サービスも提供しています。


もしものドロップシッピングにリスクはない

小川氏
 アフィリエイトとの根本的な違いはなんですか?


実藤氏
 そうですね。美容院のチラシを配るのがアフィリエイト、ドロップシッピングは実際に髪を切る人、という言い方をよくさせていただいています。

 マージンも、アフィリエイトは売上の平均3%くらいですが、ドロップシッピングは卸売りから直接商品を扱うので、小売店と同じ立場です。だから平均で20%くらい受け取れます。


小川氏
 参加者はどのくらいの人口になるんでしょう。


実藤氏
 アフィリエイター100万人、ドロップシッパーは20万人、というところでしょう。

 男女比だと、うちの場合は、男性が65%くらいで20代の後半が多いです。女性比率がだんだんあがってきていますが。


小川氏
 アフィリエイトに比べてドロップシッパーにはリスクがあるのでは? 返品リスクとか。


実藤氏
 もしもではリスクはないですね。もしもがリスクを引き受けています。まあ、ドロップシッパーご自身が、例えば著作権侵害みたいなことをブログに書いたりしてもめるケースはあったりしますけど。返品リスクはもしもが引き受けているので安心していただけると思います。

 そもそもシステム開発をする際に、アフィリエイターにヒアリングして、彼らが最も恐れていることが、そうした返品などのリスクやトラブルを恐れていることが分かっていましたから。


小川氏
 なるほど。


セブンイレブンの店舗数を目標に

実藤氏
 おかげで、いろいろなメディアで紹介いただけるようになりました。ドロップシッパーを集めるにはネットでの告知がメインですが、めざましテレビで紹介されたら数千人の申し込みがありました。


小川氏
 ドロップシッピングをするための審査はあるんですか?


実藤氏
 あります。半分くらい審査で落とさせていただいています。アダルト系とか、情報商材でひどいものなどはお断りしますし。


小川氏
 社員数は? 開発は社内で?


実藤氏
 36人です。開発メンバーは6人で内製しています。


小川氏
 アフィリエイトは飽きたろうけど、ドロップシッピングは飽きないですか?(笑)


実藤氏
 大丈夫です(笑)。ドロップシッピングはお客さまとコミュニケーションしていることが実感できますから。自分の商品に関する想いが買い手につながるんです、だから反応があって面白いはずです。

 僕自身も、もしもをやっていて、感謝されることが多いことが励みになっています。ドロップシッピングを始める人には、会社をなんらかの事情でやめられた人が多く、ドロップシッピングで生計をたてている人が結構多いんですよ。僕は性格分析をすると“献身家”の性向があるらしく(笑)、人のためになにかするのが喜びなんです。もしものおかげで暮らせるようになりましたと、ドロップシッパーの方に会社にきて泣かれたときは感動しました。


小川氏
 それは泣けますよ(笑)。

 今後このサービスをどういうように広げていきたいですか? 目標は?


実藤氏
 いま会員が18万人で、月1万人のペースで増えてますが、早く100万人を目指したいですね。そして、もしもを使って生計を立てている人の数を2万人にしたい。セブンイレブンのオーナーさんは2万人いるんだそうです。もしもで生活している人がそれ以上になったらうれしいです。


小川氏
 今は?


実藤氏
 生計たてられるレベルは数十人くらいかな。頑張ります。


小川氏
 ドロップシッパーは、複数のサービスを使うことはあるんですか?


実藤氏
 少ないですね。アフィリエイトだと自分のブログに広告を貼っている、というだけですが、ドロップシッパーは自分の店を運営していて、自分でECをやっているというキモチの人が多いですから、あれもこれもとサービスをわける人は少ないですね。


小川氏
 技術的にはあまり業界内で差がない、ということでしたが、もしもならではの機能はありますか?


実藤氏
 特徴としてはやはり他社より多くの商品があるということですが、もしも大学、という、月に一度のセミナーとWeb上でのノウハウ集の公開が良い評判をいただいていますね。

 技術面では、簡単に自分の店として決済機能付きのWebページを作ることができる「できすぎくん」というツールとテンプレート集を提供しています。自分でサイトを作り込んでいる人も多いですけど、会員の売上の半分は、「できすぎくん」をそのまま使ってらっしゃいますね。


小川氏
 わかりました。


実藤氏
 それと、他社に先駆けて海外展開はしていきたいです。ネットプライスでセカイモンというサービスがありまして、eBayの商品の購入を、物流から関税の処理もサポートするというものです。eBayから日本語で買えるというのが売り物です。海外取引のノウハウとインフラが整ってきているので、反対に日本の商品を世界に売り出すお手伝いもしたいと思っています。サブカルチャー、フィギア、アニメなどのグッズを中心に、日本の美術や家電などもやっていきたいですね。既にネットプライスはアメリカにオフィスを構えていますので、近いうちにそこを間借りして進出しようと思っています。


小川氏
 海外進出は日本のベンチャーの夢でもありますから成功を願っています。

 ところで、「できすぎくん」とMODIPHIをうまく組み合わせてフィードコマースも試してみませんか(笑)


実藤氏
 それはいいですね。ぜひ。




小川 浩(おがわ ひろし)
株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。

2008/07/08 00:00

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