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「モバイル業界がリセットされる今年こそチャンス」モバイルSEOのトップ企業フラクタリスト小川社長
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iPhone 3Gがついに日本上陸し、モバイル市場に大きな変革の波が訪れています。今回は、モバイルに特化したうえで、その範囲での総合化を図るフラクタリストの新社長に昨年10月に就任された、小川淳氏をゲストにお迎えしました。
「モバイルインターネットはビーチバレー。ルールは違えどバレーボール」と小川淳社長は表現しています。そのルールの違いをどのようにとらえ、どのようなビジネスチャンスを獲得しようとしているのでしょうか。
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小川 淳
株式会社フラクタリスト 代表取締役社長
昭和51年3月1日生
平成12年9月成蹊大学法学部法律学科卒業
平成12年10月(株)ネットエイジ(現ngi group(株))入社
平成17年9月(株)ネットエイジ執行役員
平成19年6月ngi group(株)執行役
平成19年7月ngi mobile(株)代表取締役社長
平成19年10月(株)フラクタリスト取締役
平成19年10月代表取締役社長
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■ ネットエイジからケータイ事業を手がける
小川(浩)氏
ごぶさたしてます。フラクタリストの社長に就任されてからまだお会いしていませんでした。
あらためてなんですけど、簡単に自己紹介をお願いしたいのですが。
小川(淳)氏
分かりました。もともと、1997~98年ごろに学生アルバイトでネットエイジ(現ngi)に入りまして、面白かったのでそのまま入社してしまいました。当時のネットエイジにはたくさんのビジネスモデルの持ち込みがあって、それをインキュベートするに値するかどうかのスクリーニングを担当していました。もちろん自分自身も独自の事業の立ち上げもやりました。最後にアサインされたのがネットマイルでしたが、ビジネスモデルや商品の設計、組織設計などを主にしていました。
小川(浩)氏
フラクタリストの社長就任までに、モバイルの仕事はしていましたか?
小川(淳)氏
ええ。もともと僕自身がケータイのビジネスを面白いと思っていました。2003~04年に、ケータイのアドネットワークをネットエイジの事業部として作ったことが直接的なきっかけですね。そこでケータイ事業に入ることになりました。
小川(浩)氏
はい。
小川(淳)氏
当時、ドコモのシェアが圧倒的で、その中で公式サイトと勝手サイトという区別がありました。今とは違って、勝手サイトはアダルト系で怪しいというイメージがついている時代です。ところが、ドコモのPDCというかMovaのケータイでは公式サイトのトラフィックが勝手サイトのトラフィックを圧しているのに対して、実はあのころ出たてのFOMAでは、勝手サイトのトラフィックのほうが圧倒的に多かったことに気がついたんですよ。
小川(浩)氏
へえー。
小川(淳)氏
モバイルも、ガラパゴス的に進化してしまったわけですけど、通信事業者側の決済プラットフォームなどの独自進化は悪いことではないんです。でも、PCのネットはオープンな中でエンドユーザーが独自のモチベーションで進化をうながしてきたわけじゃないですか。だからケータイの世界でも、遅かれ早かれそうなるだろうとは思います。
小川(浩)氏
同感です。ネットエイジでのケータイアドネットワーク事業をもう少し詳しくきかせてください。
小川(淳)氏
勝手サイトのトラフィックを整理してネットワーク化し、ケータイビジネス業者や広告主に提供するという事業です。
公式サイトは動きがあって、サイバードやインデックスなどを代表する専業企業は、公式サイトをできるだけたくさん扱う、そうすればユーザーが増えて課金ができる、という事業モデルで始めたと思いますが、そういうモデルは飽和するだろうと思ったわけです。モバイル事業は、着メロや着うたの進化や、デコメなどのリッチコンテンツ化が進んできました。これは事業者側の進化です。今後はユーザー側から創造的なものがうまれる、と思っています。事業者側がマスメディア的だった時代から、いまはCGM的な発展へとつながっていくと考えています。
小川(浩)氏
PCのWebがモバイルのWebを飲み込むというか、大きく影響を与えて生態系を変えますね。僕はこれを汽水湖現象とも言っています。淡水魚が繁栄していた閉ざされた湖に海水が流れ込んで、生態系を変えるので。
■ ネットエイジのアドネットワーク事業との合併で新生フラクタリスト誕生
小川(浩)氏
ところで、そのネットエイジのモバイルアドネットワーク事業がフラクタリストと合併したんですよね。
小川(淳)氏
そうです。
昨年の12月にアドネットワーク事業を会社化(=ngi モバイル)したものとフラクタリストと合併しました。フラクタリストは10期目を迎える、ケータイ業界では老舗のモバイル事業者で、主にモバイルサイトのSIやSEOサービスをしていました。合併により、モバイルマーケティング、アドネットワーク、メディアを統合的に提供する会社になりました。
小川(浩)氏
コンペティターはどこになりますか?
小川(淳)氏
総合的な企業としては他にないので、競合他社はいないともいえますが、事業領域別にはそれそれコンペティターは存在します。フラクタリストの事業領域は、
・モバイルSEO
・モバイルマーケティング
・モバイルソリューション
・モバイルメディア
の4つになります。
たとえば、IMJはソリューション領域の競合、マーケティングの領域ではサイバーエージェントやオプトですかね。
小川(浩)氏
業界順位はどんな感じでしょう?
小川(淳)氏
SIとメディアの領域での市場地位を図るのはちょっと難しいです。公式な発表があるわけではないですし。
モバイルマーケティングではサイバーエージェント、オプトに続く3位くらいだと思います。あくまで推定ですけど。
モバイルSEOでは業界トップといっていいと思います。
小川(浩)氏
モバイルSEOという領域は新しい分野ですよね。
ページランクを始めとする、PCのWebでは当たり前のリンク構造依存の検索アルゴリズムがあまり意味をなさない世界でのSEOは、どういうことをやっているんでしょうか?
小川(淳)氏
4月にドコモがGoogleの検索を導入して以来、モバイルSEOを考える企業は増えました。おっしゃるとおりリンク数を増やすことによる施策はあまり意味がないので、基本はお客さまのサイトの内部構造を、先方のIPを開けていただいてチェックし、構造改善の施策を提供させていただいていますね。
■ モバイルSEOではトップ企業
小川(浩)氏
そうだとすると、PCの世界でのSEOサービス企業がモバイルSEOに踏み込んでくる可能性があるのでは?
小川(淳)氏
確かにそうです。
小川(浩)氏
フラクタリストではPCサイトのSEOはやってないんですよね。
小川(淳)氏
やっていないです。モバイルだけです。
小川(浩)氏
ちなみに公式サイトのSEOは?
小川(淳)氏
若干やってますが、基本は公式サイト向けだけですね。
小川(浩)氏
今後、PCのSEO企業が総合化して、モバイルSEOを提供する可能性がある。ではフラクタリストが逆にPC分野に参入して総合化することはしないのですか?
小川(淳)氏
PCのSEOとモバイルSEOの違いは、公式と勝手の検索結果のアルゴリズムがまず違うし、キャリアによっても違うということです。PCのSEO業者のアプローチでは必ずしも成功しないと思います。だから、いまのところはモバイルSEOでの優位性はあるし、当分はPCへの進出は考えてはいないですね。
小川(浩)氏
イーモバイルやiPhone向けのSEOはどうです?
小川(淳)氏
いまのところイーモバイル対応は商品の中にないのですが、対応はするつもりです。iPhoneプラットフォームも大きな商機と思っていますので、そのうちには。
■ 日本のケータイは増改築を繰り返してきた日本家屋
小川(浩)氏
もう少しモバイルSEOについてお話を伺います。この事業の特色というか面白みは?
小川(淳)氏
そうですね。たとえば、ケータイユーザーには若年層が多いわけですけど、ケータイでの検索とPCでの検索では調べものが違うんですよ。
ケータイだと、テレビで放送されているものとサーチに明らかに相関関係があります。もっと絞り込むとエンタメ系コンテンツとの相関性が高いですね。生活密着型端末であるケータイならではの検索傾向です。
小川(浩)氏
それはよく言われることですよね。
小川(淳)氏
モバイルSEOは新しい領域ですから、ほんとにこれからです。昔のモバイルのサイトはメタタグなんてもったいない、重くなる、と(笑)。そんなの入れるくらいならテキストでもいれとけという思考が強かったですから。着うたなど、情報のアーカイブをたくさんもっている企業はコンテンツの整理をしていくだけでも大きな効果があります。
小川(浩)氏
なるほど。
小川(淳)氏
iPhoneのSEOは具体的な話はないですが、これも面白い事業になりそうです。キャリア主導ではない、PC側の論理で動くことだけでも面白いと思います。ただ、通信回線はキャリア提供で、PC以上に生活に密着した端末ということを考えると、これまでの二元論とはちがう、新しいネットの使い方が生まれてくるのではないでしょうか。新しいものとしてとらえていくべきでしょうね。
従来型のケータイでも、プラダケータイのようなタッチパネルが出てきましたが、iPhoneはデュアルタッチもできるし、根本的にこれまでのものとは違うものとして考えるしかないですね。
小川(浩)氏
同感ですね。
小川(淳)氏
おそらく、増改築を繰り返してきた日本家屋が従来型のケータイといえるんでしょうね。iPhoneは別物です。
PCとは違う、ガラパゴス的進化をしてきたケータイでは、ドコモとauとソフトバンクという、民間企業の3社がネットのルールを決めてきたわけです。でも、総務省からのリクエストで何年かに一回リセットすることがありました。2~3年に一度のリセットボタンのようなものです。
小川(浩)氏
iPhoneもまたそのリセットボタンだと(笑)。
小川(淳)氏
その一つ、ですね。
たとえば、ドコモは掲示板やコミュニティをいれてなかったんですけど、昨年からmixiが入ってきた。これも変化です。
■ モバイルサイトは消費者と企業をより密接にコンタクトさせる
小川(浩)氏
2008年はさまざまなものが大きく変化していく時期ですね。
この変動期に社長に就任されて、どのような目的をもたれていますか?
小川(淳)氏
そうですねえ。具体的ではないかもしれませんが…。
簡単に想像していただきたいのですが、PCでWebサイトを開設したり誘導したりしているオーダーは、日本国内でも数十万とあるわけですが、モバイルはまだまだそこまでいっていません。ただ最終的にエンドユーザーとコミュニケートできると思うと、モバイルには大きな意味があります。つまり、モバイルでサービスを提供する人はどんどん増えていく。そこに対して、事業者とエンドユーザーの接点をきちんとアレンジできる会社になりたいと思っています。
小川(浩)氏
いいですね。
小川(淳)氏
インターネットにつながっているPCよりも、インターネットにつなげられるケータイの数は多いですから。
ざっと8000万~9000万のケータイがネットにつながっているのですから、楽しみが大きいです。モバイルサイトを開設している企業は全体の10パーセントもないわけですから、これからますます増えてきます。たとえば、Coca-Cola Parkというサイトは3カ月でユーザー300万人を集めています。
小川(浩)氏
すごい。
小川(淳)氏
これまで自動販売機かコンビニしかユーザーとコンタクトがなかった清涼飲料水のメーカーが、ケータイサイトによってユーザーと即時性を持つ関係を持つことができるのはすごいことです。
とにかく、PCとケータイは、バレーボールとビーチバレーみたいなもので、ローカルルールを理解することができれば、それほど違いがないものだと分かってくることだろうと思っています。
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小川 浩(おがわ ひろし) 株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。 |
2008/07/15 00:00
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