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「200円の青Tシャツを2000円で売る、需要と供給をひもづけるアイデア」、鳥井晋吾氏
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今回のゲストは、これまでとは趣の異なる、非常に愉快な人物です。さまざまな肩書きを持ち、多種多様なアイデアで次から次へとユニークな商売をまとめていく、鳥井シンゴデザイン事務所の鳥井晋吾氏です。
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鳥井 晋吾
鳥井シンゴデザイン事務所
1973年 生まれ
グラフィックデザイナー、代理店、雑誌編集、印刷をへて鳥井シンゴデザイン事務所として独立。
広告における結果や、マーケティングについて考えながらより良い広告や、サービス、製品を実現するためアイデア構築支援から、デザイン、製品製造までのプロセス支援をしながら仕組みでお客様のニーズを実現。
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■ アイデア構築とマッチングで巨大な商談を成立させる
小川氏
今日は楽しみにしていました。まずは自己紹介をしていただけますか?
鳥井氏
なにからいきましょうか。
肩書きをまずいうと、コンサルタントあるいはデザイナー、またはその両方でしょうか。アイデア構築支援をしているという感じですね。
私の仕事はなにかというと、アライアンスみたいなもので、需要と供給をひもづけることです。
例えば開発者と消費者をつなげる仕事であれば、サービスと消費者をつなげるためならば、デザインを考えることが成果になるし、モノがあればマーケットを考えるのが成果になったりするわけです。
小川氏
ふむ。
鳥井氏
実例のほうが面白いでしょうから、なにかいい例を話しましょうか。そうですね、例えばですね、九州にある、ガラスに色を入れる仕事をしている某会社がありまして。旦那さんと奥さんで切り盛りしているような小さな会社だったんですけど、この旦那さんが研究ばかりやっていて実のところあまり儲かってなかったんですね。で、奥さんはパートで開発費を稼いでいるような状況だったわけです。
小川氏
はい(笑)。
鳥井氏
研究の成果を事業化したいけど、大手にもっていくと権利をとられそうだと、だから旦那さんはたまに東京に来ては直接営業に励んでいたわけですが、ほとんど売れなかった。
それを僕が聞いてですね、ドバイの海底ホテルの仕事を紹介したんです。どんな仕事かは言えないんですけど、700億円相当の事業になりまして、今お二人はドバイに住んでいます。
小川氏
へえー!
鳥井氏
白いスーツでドバイのビーチでワインを飲んでいるらしいですよ(笑)。
なにがいいたいかというと、製品がいくらすごくてもマーケットありきだということです。マーケットを探し出すのは大変なんです。作るべきモノを思いついてから、それを作るのはカネがあればなんとでもできる。でもマーケットがなければ売れないです。どんなによいものを作っても意味がない。
まずマーケットなんです。作ってから売れない、という悩む会社は多いけど、最初からマーケットに合うようにモノを作ることが肝心なんです。そこが私のアイデアの根底ですね。
他の分かりやすい例で言うと、日本で開催されたワールドカップのときに、ただの青いTシャツを大量に仕入れて会場の外で売ったんですよ。公式Tシャツは4~5000円。それを、私は200円の原価で2000円で売りました。一日に500万円の利益がとれるわけです。
■ 元手がかからず高価なモノを売るには? ユニークな経歴を作った独自の商売センス
小川氏
同感です、でも陥りやすい問題ですよね。
鳥井さんご自身は、もともとはなにをやられてたんでしたっけ?
鳥井氏
最初から話しましょう。
私の考え方では、商売の基本として、元手がかからなくてバジェットが高い、高く売れるものを商材にするのが一番なわけです。それはなにかというとデザインとアイデア、例えば特許などです。どれも元手はいらないですよね。それを思いついたのは小学校のときです。
小川氏
はい(笑)。
鳥井氏
そのころパソコンを始めて、プログラムをはじめたんですが、それも元手はかからないものです。プログラムがよければ売れる。そこでパソコンのコンテストに出すと賞金をもらえることも知った。親の肩揉んで小遣いもらうより稼げます。中学時代には、某ゲーム会社からバイトにこないかと誘われたりもしました。また、実は父もデザイナーだったんですけど、その影響か私も美大にいって、コンピュータと並行してデザインの勉強をしたわけです。
するとですね、あるときインターネットがでてきたんですね。いつのまにかデザインとコンピュータがくっついてWebデザインという分野がでてきたわけです。
小川氏
鳥井さんの興味が同一化した。
鳥井氏
当時はHTMLを書くと200万円くらい稼げたりしましたからね、ぼろ儲けの時代でした。それを増やそうかと思い、株に手を出したのもそのころです。世の中の仕組みを知るには株が一番ですから。
その後大学を卒業して広告代理店にはいってみましたが、広告の仕事は客と自分の距離があることに気づいて、外資のCI(コーポレートアイデンティティ)部門からオファーを受けて、英語は苦手と拒んだら、給料を50倍払うから、といわれたので一年半くらい海外で仕事をしてました。ただ、楽して大金もらうと自分の価値観が崩れそうに思い、日本に帰ってきてある印刷会社に入りました。給料も普通になりましたね。
小川氏
なんかもったいないような(笑)。
鳥井氏
そうこうしているうちに、独立することになって。
最初はデザインの仕事を中心にしてました。でも、売れない商品をいくら広告しても売れないじゃないですか、だから商品を作るところから入るべきと思った。だから今はほとんどコンサルの仕事ですね。Webも作ったりするけど、基本はどうしたらこのサイトにきてくれるのか、買うのかを考えながら作ることで、やはりコンサルが入ります。
小川氏
何人でやってらっしゃるんですか?
鳥井氏
基本一人みたいなものです。
人はあんまり雇わない、なるべく一人でやれるところを多く作ります。人を雇うということは元手がかかるということでしょ? 広告代理店と同じクオリティで値段は10分の1みたいなことをやれば誰でも喜んでくれるわけですから、顧客満足度を第一に考えて、ちゃんと代価をもらうにはどうしたらいいかを考えると自分でなるべくやったほうがいい。
学生を10人雇って作るより、すごい人ひとりに頼んで作ってもらった方がコスト削減になるじゃないですか。究極は一人で全部やるのが理想です。
小川氏
まあそうですね。数で勝負する分野もありますが、僕らの仕事も少人数でやるほうが効率もクオリティもいいです。
■ 仕事を作るためには、人と会うことと、何を言うべきかを思い出すこと
鳥井氏
もうひとつ。少ない人数で仕事を回すために大事なことはネットワークです。とにかく人と会うこと。そして思い出すこと。
小川氏
「思い出すこと」ですか?
鳥井氏
そうです。
人間と言うものは、だいたい誰かが誰かにつながっている。その中でビジネスにならないのは言うべきことを言わないから、そして思い出さないからです。例えば、リンゴがたくさん欲しいとして、たまたまIT社長の集まりに出かけたときにその話をしようとはしないでしょう。でもその中の社長の一人に、親がリンゴ農家の人がいるかもしれない。つまり、そこでリンゴの話をしさえすれば、なにかが始まったかもしれない。
小川氏
同感です。
鳥井さんの指摘は僕が思っていたことをイチイチ的確に表現してくれて、頭の中がすっきりします。やはり、アピールしなくては伝わらないし、伝わらなくては始まらないですよね。
その次のコツは?
鳥井氏
点でつながるより面でつながるようにするんです。関連づけることも重要。
ただ、どうやって関連付ければいいかは、なかなか人は思いつかない。だから私がいるんですね、ひも付け人として。
具体的な例を挙げると、例えば某ファーストフードでパンのごまを二個減らすと4000万円コストが下がることを教えたりしました(笑)。
あと、私の仕事のほとんどは、誰に頼んでいいのか分からないことが多いんです。万博のアイデアを出してくれとか。たとえばですね、某コンサル会社から、石油コンビナートが売りに出てるんだけどという話をもらって、なんとなく探していたら相手がいまして。ものすごく大きな商談につながりました。
そういう形のない仕事をモノにするには、なんでもいってみるか、という相手になることが大事ですね。
小川氏
そのとおりですね。
鳥井氏
仕事は楽しくないとね。そのためのコツは、同じ仕事をやらない、飽きないことだと思います。
代理店時代にはコンビニのバイトをしてた。会社の後でね。家に帰るのは面倒で。仮眠がつくので問題なかったし、日中の仕事とは別のタイプの仕事をすることはキモチの切り替えになるのでまったく疲れなかったですね。
■ お金を稼ぐには休まないで仕事をすればいい
小川氏
そのバイタリティはどこからくるんでしょう?
鳥井氏
お金稼げないという人がよくいるが、働いてないんじゃない?と思いますね。
私は3時間くらいしか寝ない。なんでかというともったいないから。朝から晩まで働けば稼げるじゃないですか。週末も関係なく仕事します。
例えば、金曜に仕事を頼んで、月曜にできるとしたら、誰でも頼むと思いませんか? そういう仕事はいっぱいあるんですよ。でも、そういう仕事を受ける会社は少ない。それで私は仕事とれるわけです。たとえば日中は日本で開発して、夜はアメリカで開発するという具合もいい。理論上は半分の時間で開発できますから。
小川氏
そうですね。
鳥井氏
1000万円くらいの仕事なら二人でやります。人月は高いですけどね。
仕様書を紙でつくるのではなく、実際に作って見せる。時間も節約できます。仕様書を作る時間のロスやコミュニケーションロスも減ります。営業、ディレクター、デザイナーを全部一人でやれば、産地直送的になるから節約になります。
最近の大企業のSEはプログラム書いたことがない、と言い切る人も多いですよ、プロ意識がないですね。何を作っているのか分からない。何を伝えるのか分からずデザインする人も多いですね。頼まれたものを納得できる品質で納得できる金額でつくる。そこにサプライズがあるはずです。そうすると、またお願いしてもらえる。おのずと仕事が増えるわけです。プロとしてそういう仕事をしないと。
小川氏
納得です。
鳥井氏
それと最近は講演を頼まれることが多くなりましたね。これもコストかからない。デザイン、プログラム、講演、コンサル。全部コストがかからず、金額も自由に決められる仕事です。
小川氏
そうですね。徹底してますね(笑)。
最後に、なかなか鳥井さんの仕事術を真似することは難しいかもしれませんが、鳥井さん自身の仕事に対するモチベーションをきかせていただけませんか?
鳥井氏
仕事の対価をモノ換算してみることですね。この仕事を受けてあれ買おう、というのがモチベーションかな。
最近欲しいものがない、という子が多いじゃないですか。高いクルマは欲しくない、時計も欲しくないなどなど。
バイトして金貯めるのはいいけれど、ハングリーさがない子が多い感じがしますね。フェラーリがほしい、でも高いからマーチでイイや、と言う。マーチが悪いわけではないけれど、でもそれは違うシフトチェンジですよ。フェラーリが欲しいけど高いから買えない、ならば頑張って買える範囲でポルシェを狙おう、そういうのはいいと思うんです。でもフェラーリあきらめてマーチを買うというのは、努力をしないで買える範囲で手を打つということですよね。フェラーリは買えないかもしれないけど、ポルシェなら手が届くかもしれないから、そこに向かって頑張るというのが正しいシフトチェンジです。
小川氏
同感です。
鳥井氏
だから、私は常に、何か仕事をするときには、この仕事をしたらこのモノを買える、手に入れよう、と自分をモチベートして仕事をすることにしています。あとは繰り返しだけど、いろいろと違う仕事をすることでモチベーションを保つこと、ですね。
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小川 浩(おがわ ひろし) 株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。 |
2008/09/02 00:00
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