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「世界に通用するアスリートを“個人”が“消費”を通じて“支援”を」ブルータグ今矢社長


 今回のゲストはマイナーなスポーツのアスリートへの支援と、Webをうまく結びつけてビジネスを起こしたブルータグの今矢さんです。

 Eコマースの商品を購入する際に好きなアスリートへのカンパができる、という事業はロングテール型のスポーツ振興プロジェクトであると今矢さんは言います。そのユニークな発想はどこからくるのか、詳しく伺いました。


ブルータグ・今矢社長 今矢 賢一(いまや けんいち)
ブルータグ株式会社 代表取締役社長

スポーツ先進国であるオーストラリアで14歳より生活し、現地でさまざまなスポーツ、アウトドアレジャーを経験。学生時代はユース、セミプロサッカー選手としても活躍。ニューサウスウェールズ大学卒(スポーツ、レジャー専攻)
1999年大学卒業後、外資系ビジネスコンファレンス会社にシドニーにて就職、6カ月間の営業経験を経て、東京支社へ転勤。営業マネージャーとして日本市場急成長時期の売上に貢献。1999年転勤当初は、インターネットベンチャー草創期、インターネットによる産業革命が起こると感じ、起業を決意し2000年3月に株式会社を設立。
2002年3月にバリューコマース株式会社と株式交換にて売却、提携。提携後、バリューコマース株式会社営業部長、戦略事業開発部長を経て社長室シニアバイスプレジデントとして昨年7月末マザーズ上場に至る中核事業(アフィリエイトマーケティング事業)の拡大を推進する。
2004年アテネオリンピックでの日本勢の活躍の裏にあるアスリート支援環境やスポーツ振興活動の改革が必要であると感じ、社内プロジェクトとして、「BLUETAGプロジェクト」を発足。
アフィリエイトマーケティングを活用した全く新しいアスリート支援活動やスポーツを体育の延長線上ではなく文化として日本、そしてアジアに浸透させるべき事業活動に注力する。
2006年6月、ブルータグプロジェクト有限責任事業組合を設立し、Eコマースやアフィリエイトを通じて一般消費者が自ら選んだアスリート支援ができる仕組みを構築。さらなる事業拡大とビジョン実現のためにバリューコマース経営陣より賛同、支援を受け2007年1月に同社を退社、スポーツ振興事業(ブルータグ事業)のために株式会社設立を決意。
2007年3月にブルータグ株式会社を設立。同月末までは、ブルータグプロジェクト有限責任事業組合のプロジェクトリーダーとして初年度の活動を指揮。
2007年4月よりブルータグ株式会社代表取締役社長に就任。(ブルータグプロジェクト有限責任事業組合は、ブルータグ株式会社へ営業を引き継ぎ、(譲渡)をし、2007年3月末日にて解散いたしました)


スポーツ振興を事業モデルに組み込む

小川氏
 簡単に経歴を教えていただけますか?


今矢氏
 ブルータグ株式会社の社長をしております今矢です。生まれは大阪で、14歳から22歳までオーストラリアにおりました。高校も大学もオーストラリアで卒業しています。大学ではスポーツマーケティングの勉強しており、そのままシドニーで就職したのですが、99年にその会社の東京支社に転勤という形で帰国しました。

 イギリス系の会社だったんですが、40カ国くらいにまたがって、大企業の役職向けのビジネスセミナー企画をする会社でした。99年にはちょっと懐かしいですがY2K対応(2000年問題)がホットな時期で忙しかったですね。基本的にはITマネージメントやSCMなどのセミナーが多かったです。


小川氏
 帰国された99年はITバブル真っ盛りですね。


今矢氏
 ええ。ビットバレーの時期ですね。ネットによる第三次産業革命、と将来この時代を振り返ったらそうみえるんだろうなと感じましたね。ならばついていくより、作っていく側に立ちたいと思いがして、会社をやめて起業してしまいました。もっとも、会社を作るには資本金が1000万円必要と知ったのは会社をやめてからですから、むちゃをしたものだと思います。結局2000年3月にネットベンチャーを起こしたのですが、それほどうまくいかず、2002年バリューコマースに売却することで、バリューコマースに入社することになりました。

 そこでは営業、事業面の統括をしていました。その後Yahoo!と資本提携して、マザースに上場したことで、恩返しもできて区切りがいいと思い、退職して再び起業することにしました。


小川氏
 スポーツ振興というテーマに入っていった理由は?


今矢氏
 バリューコマースをやめる一年前ころには、社長室でM&Aなどをやっていたんですが、アフィリエイトの会社が増えていく様子をみていたら、スポーツ振興に役立てられるという思いが強くなりました。もともと学生時代にスポーツマーケティングを修め、自分でも積極的にスポーツを楽しんできたことから、この分野での起業は自分にとって自然なものでした。そこで、オンラインストアで商品を購入する際に、好きなスポーツのアスリートへの寄付を行う仕組みを考案しました。


自分はビジネスアスリートとしてスポーツアスリートを応援する

小川氏
 なぜアスリートへの支援をするのでしょう?


今矢氏
 アテネオリンピックのときに、多くの場合、遠征費でさえも選手の自腹だと聞いたことがきっかけですね。日本ではメジャーでないスポーツだとたとえ日本代表になっても自腹でいかないといけないんですよ。


小川氏
 へえ。


今矢氏
 助成金があっても不十分なことが多いです。企業のスポンサーも、そもそも露出度が低いスポーツだとなかなか支援してくれません。だから、ファンや個人サポーターが直接選手を支援する仕組みを作ったらいいんではないかと思ったわけです。それが今の事業目的ですね。世界挑戦のアスリート支援とスポーツのあるライフスタイルを応援しよう、というのがテーマです。


小川氏
 なるほど。


今矢氏
 まだスポーツがライフスタイル、生活の中にしみ込んでいるとはいえないのが日本の現状です。それをもっと形にしたいと思いましたね。

 日本は豊かだけど、メタボ対策、いじめ、自殺、うつなど社会的な課題が重たくなっていますよね。スポーツはそういうものを軽くよくする力があると思っているんです。

 ルールがあるスポーツの中で勝ち負けがはっきりすることは、社会におけるルールを理解することでも有効だと思います。


小川氏
 最初の起業をしたときは、タイミング的には良くない時期でしたし、いまもまた金融危機でベンチャーにとっては大変な時期ですが、理想的な事業を行うために苦労しているなと思うことは?


今矢氏
 いまは良いものと悪いものが淘汰(とうた)されていく時代だと思っています。最初に作った会社は、バリューコマースという成長するビジネスモデルを持った会社に統合されて運が良かったです。ただ挑戦したことには価値があったと思っていて、その思いがなければブルータグはつくれなかったですね。自分をビジネスアスリートだと思っているんですけど、第二の起業に挑戦しているわけじゃないですか。スポーツを必死にやっているアスリートもはたからみたら単なるアホかもしれないですよ、だってひたむきに挑戦して、高い目標設定しても、お金にはなりづらいし苦労は多いし、大変ですよね。ビジネスアスリートもスポーツアスリートも、基本は同じかなと思います。


アスリート支援をアフィリエイト型のEコマースで

小川氏
 ブルータグの仕組みをもう少し詳しく教えてください。


今矢氏
 大きく分けると、世界に挑戦するアスリートを自薦他薦で応募してもらうのがまず最初です。書類選考と面接でブルータグアスリートとして認定をするかしないかを決めます。いま76名を認定しています。例えばセパタクローのように日本では一般的ではなくても、アジア大会で優勝できるくらいのレベルの選手を認定しています。トリノに出た選手もいます。

 そして、3つの事業を通じて支援を行います。

 まずはマーチャンダイジング事業で、簡単にいうとEコマースです。これはアスリートに経済的な支援を行っています。例えばミズノとかアディダスなどの有名スポーツブランドの、海外では売っているけど日本の小売りにまだ流れてないようなニッチな商品を探してWebで販売するのですが、お客さまが商品を買うときに応援するアスリートを選択するんですね。その購入金額の5%を支援金としてアスリートに渡します。


小川氏
 そうか。アフィリエイトからヒントを得たのはそこですね。アスリートがアフィリエイターのポジションにいるわけだ。


今矢氏
 そうです。1万円の売上でアスリートには500円を受け取ります。

 たかが500円、でも2000人いれば100万円になります。100万円出してくれるスポンサーを集めるのは大変なことですよ。つまり、ネットの販路を使って、スポーツアスリートを使ってマーケティングするというのがわれわれの事業です。


小川氏
 なるほど。


今矢氏
 二つ目はメディア事業です。つまり広告収益を狙います。媒体作りをして、例えばYahoo!のスポーツナビと組んで、アスリートブログなどを展開しています。

 映像はソニーのアイビオと組んでます。そもそもマイナーなスポーツだと、ルールどころか、いったいなにをしているかも分からない人も多いんですよ。そこでメディア露出の支援をしているわけです。従来のメディアだととりあげらえることがないスポーツでも、トップアスリートであれば本来メジャーもマイナーもないはずですから、うまくサポートしていきたいですね。

 結果として、ブログを積極的にしているアスリートの中には広告企画をいただいけるようになった人もいますし、スポーツバラエティの出演依頼が来たりするようにもなりました。

 三つ目はマーケティング事業で、グラスルーツ(草の根)な事業といえます。収益源はブルータグ法人サポート会員で、企業に年間24万円の支援金をいただいています。企業側からすると、企業PRの一環ですね。それを原資として競技普及支援をします。すそ野を広げるのは大事で、特定スポーツでのパイオニア、例えば野茂さんのような存在を作ることで次の世代へつなげていけるんですね。


小川氏
 そうですね。


今矢氏
 そもそもブルータグという社名は、(RED)にあやかっているんです。スポーツは世界共通、地球空海、で青。価値のあるものへの印のタグとタッグを組む、の組み合わせで命名しました。ネットのおかげで個人が消費を通じて支援ができるという仕組みを作ることができました。あとはわれわれのEコマースサービスを多くの人に知っていただくことです。それが経済的な競技活動を支援することになりますから。

 ブルータグで応援するアスリートに募金すると、そのアスリートが直接買った人にお礼をする仕組みも用意しているんですよ。お礼メッセージとデジタル署名をつけて商品を発送するので、購入した方も満足していただけます。安さだけでいったら楽天で買う方が安い商品もあると思いますけど、より希少価値のある商品のラインアップを充実させると同時に、そういうタッチを大事にしていくことで差別化します。例えばJobNoteというジョギング愛好家のSNSサイトと提携してデータフィードサービスを始めたんですけど、商品の基礎情報だけではなく、アスリートのコメントもお届けするようにしたんです。市民ランナーにとって、正しい商品をトップアスリートの推薦つきで買えるわけです。


小川氏
 なるほど。理想と現実をうまくリンクするというか、慈善事業ではなくちゃんとした収益モデルとしてスポーツ振興に貢献する、というのは大変だと思いますけど、そういう理想がないとベンチャーを起こすモチベーションは続かない気もします。

 僕も応援すると同時に自分の事業をもっと早く成長させて、Webとリアルのシームレスな使い勝手をもっとモディファイ(改善)できるよう頑張ります。今日はありがとうございました。





小川 浩(おがわ ひろし)
株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。

2008/11/04 00:00

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