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「配りたい企業ともらいたい人をマッチングするサンプル百貨店」Luke19 渡辺社長
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今回のゲストは、サンプル百貨店というサイトを運営するLuke19(ルークナインティーン)の渡辺明日香社長です。
敬虔(けいけん)なクリスチャンで知られる渡辺さんですが、取材した11月19日は、くしくもご本人の誕生日であり、会社設立の記念日でもあり、社名にもついている19が見事に重なりました。渡辺さんの持つ不思議な運の強さを象徴しているのかもしれません。社員もサイトの会員もほとんどが女性ということもあり、Enterprise Watchの読者にはあまり知られていない会社かもしれませんが、サンプル百貨店は月間2000万PVを稼いでおり、いま非常に注目が集まっている有力ベンチャーの一つです。
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渡辺 明日香
株式会社ルーク19 代表取締役社長
1969年、京都生まれ。高校卒業後、米カリフォルニア州立大学に留学。外資系企業の秘書を経て、93年、日本ブリタニカに入社。94年、英語教材の営業で世界142カ国のトップとなり、24歳で最年少管理職に。98年、リンガフォングループに組織ごとへッドハンティングされる。04年、独立して「ルーク19」を設立、代表取締役社長に。2児の母であり、敬虔なクリスチャンでもある。
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■ ブリタニカのトップセールスから聖書の一節をきっかけに起業
小川氏
簡単に会社とご自身の経歴を紹介いただけますか?
渡辺氏
インターネット上の会員制サイトのサンプル百貨店を運営している株式会社ルーク19の社長をしている渡辺です。サンプル百貨店の取り扱い商品は、クライアントである企業さまから提供いただいている各種サンプル品です。サンプル百貨店に登録された一般会員の皆さまにサンプル品をご提供し、使っていただいた感想などのアンケートや属性情報の分析などによる市場分析調査の結果を、企業さまに提供するというビジネスモデルを採用しています。
私自身は、もともとブリタニカの英語教材の営業で、142カ国、約2万人の中でトップセールスとして働いていました。24歳のときには最年少管理職にもなれました。
小川氏
それはすごい。待遇面でも何不自由ない生活だったと思いますけど、なぜ独立の道を選んだのでしょうか?
渡辺氏
確かに収入面では普通のサラリーマンにはあり得ないくらいいただいていましたし、車を3台持って、全身シャネルで着飾る、みたいな今思えば少しアホみたいな(笑)生活をしていました。ところが、お金があれば人間は満たされるわけではないんですね。お金はある、でも私にはほかに何かするべきことが、使命があるんではないか、と思うようになるわけです。私はクリスチャンなんですけど、それだけにそういう思いが強かったんです。
そんなおりに、ふと聖書を開いたら、そこがルカ福音書の19章で、それがルーク19という社名の由来にもなっているんですけど、あなたの能力を用いて自分の事業をしなさい、と言われたような気がしたんです。
小川氏
それで起業したと。
渡辺氏
そうです。ブリタニカにいたころからいろいろな人に起業した方がいいんじゃない?といわれたけど、そのときは何も心に響かなかったんですね。でも、その何気なく開いた聖書の一節で、何もかも捨てて会社を作ろうと決心しました。でも、一人じゃできないと思え、そのまま神様に祈りました。パートナーを与えてください、と。
小川氏
はい。
渡辺氏
すると、共同創業者である飯島淳代の顔が浮かんだんです。飯島はブリタニカのときの私の右腕で、私が退社したあとには世界一のセールスパーソンになっていたやり手の営業でした。彼女とならいいペアになれる、と思いました。
ところが彼女は寿退職をしていて当時は音信不通、ケータイも変えていたので連絡は取れない。それでは今度は、彼女と会わせてくださいと祈ったんですね。そうしたらその3日後に新宿の丸ノ内線のホームでばったり飯島と出会いました(笑)。
小川氏
すごい。
渡辺氏
そこまでして神様は会社をやらせたいんだと思ったんですね。
彼女は当時ティファニーにいて、そこでもトップセールスだったし、将来を嘱望されていましたが、紆余(うよ)曲折あって、結局私と一緒に企業の道を選んでくれました。
小川氏
飯島さんはつい先日退職されたと伺いましたが。
渡辺氏
そうです。会社が安定してきて、彼女も自分でほかにやりたい事業が出てきたんです。ただ、Luke19としては今の事業モデルにフォーカスしなければならない。それならば、ということで彼女と袂(たもと)を分かつことになりました。
■ 目の良い二人に配られたコンタクトレンズの試供品が生んだビジネスモデル
小川氏
サンプル百貨店の事業モデルを思いついたきっかけは?
渡辺氏
普通は何をやるかをきめてから会社作りますよね(笑)。でも私たちは、会社を作ってインキュベーションオフィスを借りてから、4カ月間ずっとただ祈っていました(笑)。神様、何をするべきでしょうか、と。
そんなおり、飯島と二人で街を歩いていたら、コンタクトレンズのサンプルをもらったんですね。ところが私たちは二人とも目がいいから捨てた。そのとき、あれちょっと待って、コンタクトレンズは私たちには不要だけど、欲しい人はいるはずだ、欲しい人に配らなければ意味がないじゃない、と思ったんです。そこでビジネスモデルが浮かんできました。サンプルを配りたい企業ともらいたい人をマッチングすれば事業になる、そう思えたんです。
小川氏
確かに。
渡辺氏
そこでサンプル百貨店をオープンすることにしたんですけど、当然会員はゼロです。ならば会員集めが先?企業集めが先?と迷いました。でも私たちは営業には自信がある、ということで、二人で大手企業を回り始めて半年で100社にサンプル品を卸していただくことに成功しました。
また、このアイデアはテレビ的に映えるんじゃない?と思えたので、日経新聞にプレスリリースを送ったら、同じ系列のテレビ東京の『ワールドビジネスサテライト』からすぐに取材がきて、オープンして3日目にテレビで紹介していただきました。
小川氏
反応はすごかったでしょう?
渡辺氏
一気に5万人の会員が集まりました(笑)。そのときの二人の経験をまとめたのが『営業のバイブル』という本です。
小川氏
現在の会員数は?
渡辺氏
35万人になりました。700社の企業さまと取引させていただいています。
■ 87%が女性会員
小川氏
ビジネスモデル自体はそれほどユニークであるわけではないと思いますが、成功した要因は?
渡辺氏
商品のサンプリングには、私たち以前には、プッシュ型でしかなかった。ただやみくもに配るだけです。それをプル型に変えたことが大きいし、だからこそ注目を集めることができました。欲しくない人にも配るということは、費用対効果もないし、せっかくのサンプル品が捨てられているかもしれません。
そこを、私たちが作った仕組みは、サンプルを欲しい人に渡す、だから感想をいただける、そしてそのフィードバックを分析できる、どういう人に配ったかが分かるから分析も正しい、というように変えられたわけです。
小川氏
競合は?
渡辺氏
最初はいなかったですけど、すぐに大手が参入してきました。例えばエキサイトさんとか、ドゥ・ハウスさんなどですね。
先ほど話したように、始めて三カ月目でWBS(ワールドビジネスサテライト)が密着取材してくれて、それ以来新聞や雑誌、テレビには30回以上とりあげられましたけど、そのたびに競合が増えてきましたね(笑)。
小川氏
収益の流れを少し詳しく教えてください。
渡辺氏
私たちはサンプリングとかサンプル市場といわれる市場にいます。マーケティング調査がメインの事業です。サンプルをいただいたクライアントに、そのサンプルに関する調査データをお渡しするのがビジネスです。
詳しいマーケティングデータを取るにはユーザーの属性が必要です。ただメルアドがあるだけではだめですよね。例えば化粧品なら、性別、肌の質、などの20項目以上の属性を私たちは持っていますし、会員の家族構成や、興味のある食べ物など、さまざまな嗜好なども分かっています。それらの情報を抽出してセグメント別に整理します。さらに、トレーシングといって、サンプルを使い始めてから三カ月間の行動をフォローしていますし、実際に商品を買ったかどうかまでもトレースします。だから、サンプリングのあとのマーケティングデータを企業さまに渡すことも可能になります。競合他社の多くは商品のプロモーションがメインだと思いますが、われわれはプロモーション&マーケティングを行っています。
小川氏
サンプルの提供というと、やはり客層は女性が中心になりますね?
渡辺氏
87%が女性ですね。社員も80%は女性です。
扱っている商品は食品、健康食品、化粧品がメインですが、パソコンや車、ホテルの部屋など多岐にわたります。テストマーケと考えたら消費財でなくてもいいわけですから。
■ 将来は教育事業への取り組みを目標に
小川氏
なるほど。
ところで、社長の一人であった飯島さんがお辞めになって、社内で変化はありますか?
渡辺氏
よく名選手は名監督になれないと言いますけど、私も長嶋監督と同じで、ああしたらいい、こうしたらいいという大事なことを感覚的にしかいえないところがあります。監督がいてコーチがいるように、私が足りないところを飯島がやっていてくれていたと思います。彼女が私が言いたいことをかみ砕いて社内に伝えてくれていたんですね。
小川氏
はい。
渡辺氏
でも、彼女が安心して会社を離れることができたということは、彼女の代わりになる優秀な人材が育ってきたということでもあります。チームをマネージして、営業を教えることができる人材が社内に育ってきた、それも一人や二人じゃない、だからこそ彼女も自分の好きな道へと進む決意ができたのでしょう。
小川氏
社内のコーチングは大切ですよね。頼もしいですね。
それで今度の展開に、どのような目標を持っていますか?
渡辺氏
いっぱいあるけど、サンプル百貨店の海外展開を一気に進めたいとは思っています。ビジネスモデルの海外特許も取得しましたし。
また、よいサンプルを配ることで、有料サンプルでも欲しい、というお客さまが増えてるんですね。だから、ほんとは自分たちでECそのものをやりたいという思いもあります。でも、倉庫や物流の確保や、人の工数を考えると、なかなかできないですね。
小川氏
そうですね。もう少し長期的なビジョンだとどうですか?
渡辺氏
最終的なビジョンという意味では、教育にかかわる仕事をしたいですね。
小川氏
教育、ですか?
渡辺氏
営業として13年教育事業にいたので、日本の教育のいいところも悪いところも熟知しています。10年に2万人のお客さまと会ってきたんですから。
そこで思うのは、日本という国には、不安しかないということです。夢を持てない社会というのかな。世界にはルアンダとか、ウガンダのように飢餓で苦しんでいる人がたくさんいるんですけど、それはエクスプロージョンというか、不安の元は外からの攻撃なんですよ。
小川氏
はい。
渡辺氏
でも日本では、年間何万人も自ら命を絶っているし、ネットカフェ難民やホームレス、ニートがあふれています。いわばインプルージョンというか、内側の戦争なんです。
だから、やる気を起こす教育、持っている能力を引き出す何かを始めて、教育をひっくり返したいと考えています。
小川氏
それをLuke19でやりたいと。
渡辺氏
ええ。直接なんでそっちにいかないの?とよくいわれるんですけど、これは非常に大きな計画なので、日本のお金を持っている人や財団などを巻き込まないとならないんですよ。企業とのパイプも必要です。
私たちは実は直営業していて、広告代理店を使っていないんですけど、近い将来私たちがうまく上場できれば、さらに多くの企業との連携もできるでしょう。そのうえで、教育事業への取り組みができたら、やりたいと思っています。
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小川 浩(おがわ ひろし) 株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。 |
2008/11/25 00:01
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