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「テクノロジーとビジネスの平衡点をキャッチして事業を拡大へ」エキサイト原永CTO
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今回のゲストはエキサイトの原永CTOです。2001年に米Excite@Homeが破産申請して以来、日本のエキサイトは独自の戦略と独自の進化を続けながら、IT業界のさまざまな厳しい環境変化を生き延びてきました。今年代表取締役の交代という大きな局面を迎えたエキサイトが、今後目指す方向とはなんでしょうか? 技術側のトップとしての任に着いたばかりの原永さんに伺いました。
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原永 宗一(はらなが むねかず)
エキサイト株式会社 執行役員CTO
兵庫県生まれ。1993年青山学院大学理工学部物理学科卒業後、日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社入社。
1998年8月、エキサイト株式会社入社し、エキサイトジャパンポータルサイトの拡充のため、エンジニアリングマネージャーとしてコンテンツ拡充における全システム構築。その後、携帯ポータルサイトの新規立上げ、企業へのWebソリューション提供等の事業を経て、2005年12月、同社メディア事業本部 アプリケーション開発部部長、2006年11月Webテクノロジー&サービス研究室室長、2008年6月、執行役員兼CTO(最高技術責任者)に就任。
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■ 技術的要件を経営に落とし込むのがCTOの仕事
小川氏
ごぶさたしております。エキサイト入社前はSKさん(日立ソフト)だったんですね。
原永氏
そうです。93年に大学を卒業して日立ソフトで5年強働きました。エキサイトには98年夏入社です。
小川氏
僕の記憶では現在百度の社長になられた井上(俊一)さんが初代のCTOですよね、エキサイトでは。
原永氏
そうですね。2004年に井上さんが退社されて以来、CTOのポジションは空席でした。
ただ、前回のCTO職は一時的で、役割に対する明確な目的が設定されていたわけではなくて、技術要件をとりまとめる部署のトップとして便宜上CTOという名目をつけていた感じです。その意味で、今回エキサイトとしては初めて正式なCTOのポジションを設置したといえます。
小川氏
いつ就任されたのでしたっけ? また、その明確な役割とは?
原永氏
2008年6月に執行役員兼CTOとなりました。
僕の役目は、経営戦略の会議の中で、技術的な知識を持って戦略を判断する役目ですね。技術的要件から意見を出し、意思決定を助ける。同時に、なされた意思決定を技術者が理解できるような形に落とし込むのも僕の役目です。
小川氏
就任されて半年くらいたったわけですけど、何か気づかれる点は?
原永氏
経営の意思決定にもう少し技術的なバックグラウンドの考えを効率的に落とし込めたらと常に思いますね。エキサイトはメディア的なサービスやコンテンツが多いですけど、それはすべて技術的なものを介して成立しているわけですからね。
そもそもネット企業であるかどうかは置いて、技術のカラーで会社を差別化するような風潮は、ここ近年薄れている気がしています。大手であればあるほど、自社独自技術のような特殊なものではなくて標準的な技術というか、オープンソースのようなものを多用していますから、もっと上位レイヤーの部分で差別化していかないとならなくなっています。そうでないとまねされるだけです。ビジネスのあり方や、展開の仕方で差別化しなくてはならないわけです。
小川氏
そうですね。
原永氏
GoogleやYahoo!はスケーラビリティというレイヤーで差別化していると思います。われわれも多くのユーザーを抱えるポータルという意味ではそうかもしれないですが、もっとエッジのたったサービスを複数展開して、それらにあった技術的手法を採用していきたいと思っています。そういう姿勢で経営に関与するべきだと思っています。
小川氏
エキサイトさんはあまりテクノロジー重視という感じはしないですよね。
原永氏
そうかもしれない、これまで技術的な打ち出しがなさ過ぎたかもしれないですね(苦笑)。雑誌的な打ち出しというかメディアの印象が強すぎたような気もします。
Googleがやっていることは、化学平衡というか、技術とビジネスの平衡をうまく見つけた感じですね。システムが落ち着くところをいち早く見つけ出してビジネスにしたところがすごい。ストリートビューなどはどうなるかわからないですけど、そこはやっぱりバランスで、テクノロジーでビジネスとの平衡点を見つけていくことが僕の仕事かな、と。
■ 広告、デジタルコミュニケーション、音楽、ゲームの4本の収益の柱
小川氏
エキサイトは上場して、山村さんから野田さんに社長が代わられて、いろいろ体制が変わっていく途中ですよね。
原永氏
ええ。社長が変わって数カ月ですが、野田自身がまず、エキサイトという会社がいったい何をやってるんだという疑問を持って全社を細かく見直している最中ですね。
ご存じの通りエキサイトは多種多様な事業をやっていますが、どのサービスが収益をあげて、どのサービスが将来の成長のキーになるのか、どこが効率的なサービスに落とし込めていて、どこができていないのか、などの全容を把握するために、就任以来3カ月半かけてきました。そこでようやく今後の戦略を立て始めたというところですね。
小川氏
現在の事業をかいつまんでいうと?
原永氏
収益は広告がメインですが、実際数字をみてみると課金のコミュニティビジネスも柱になってきています。われわれはデジタルコミュニケーションと呼んでいますが、広告とデジタルコミュニケーション、それに音楽とゲームというコンテンツ事業。これらが4本の柱となっています。
小川氏
エキサイトとは、一言でいうとなんでしょう?
原永氏
それを考え直しているところ、ですね(笑)。インターネットを広く考えると、データベースとしての検索があって、そのあと情報を検索してなにをするのというと、コミュニケーションや買い物などといった直接的な用途がでてきます。われわれとしては、そのコミュニケーションをとるという方法を広く提供するというのがエキサイトの役割だろうと思いますね。
小川氏
その領域での競合は?
原永氏
うーん…デジタルコミュニケーション分野に関しては、われわれはオリジナルのサービスをたくさん持っていて、自社で企画もシステム開発も全部やっているんですね。だから利益率は高いし、既存ユーザーも多い。当然ノウハウもたまってきています。競合を考えるというより、自社の強みを伸ばしていく方針ですね。
それにはコミュニケーションの種類を増やしていくことだと思います。エキサイトフレンズから始まって、より深いコミュニケーションを求める(笑)人たちのためのエキサイト恋愛結婚、と進化しているように、デジタルコミュニケーションの有料サービスも増やしています。
またコンテンツに関しても、例えば音楽なら、ただ楽曲を落とせますよ、というサービスを置いておけば昔はもうけられたかもしれないですが、そうはいかなくなっています。だから、われわれならアーティストに特化して色を出していくという戦略をとっています。公式のファンクラブサイトを作ったり、アーティストのブログを作るなどがそれです。子会社として、音楽レーベル会社「エキサイト・ミュージックエンタテインメント」を作って、アーティストの発掘やチケットの販売、エキサイトの公式サイトと連動させるなどの活動もやっています。
■ 今後は新規事業へのフォーカスを
小川氏
社長を始めとする体制変更の成果が来年に明確になってくると思うんですが、今の時点で何か新しいことを打ち出してることってありますか?
原永氏
ECの市場はちゃんとやっていくべきだろうと思いますね。食庫というサービスを始めていまして、今年の春から徐々に立ち上がっているんですけど、食材に特化したドロップシッピングをやっています。ただアフィリエイト色が強くて、純粋なドロップシッピングとは違うかもしれません。
自分たちで仕入れてモノを売る、小売り的なECもいいと思いますが、そもそもポータルサイトでやっていることは、仕組みを提供して便利に使ってもらうこと、つまりプラットフォーム提供じゃないですか。だからECをやるにも同じ手法をやったほうがいいだろうと考えたんですね。楽天もYahoo!も同じだと思います。
小川氏
そうですね。
原永氏
商流プラットフォーム、というべきかな。食庫はEC機能に加えてアフィリエイト機能も含んでいて、卸価格と販売価格とアフィリエイト価格を自由に設定できるようになっています。商流の上流、つまりメーカーに入ってもらってエキサイトで売ってもらうという戦略を考えています。そのために伊藤忠食品様とまず提携して直販を行うことにしました。特徴として商品を登録したら、しょくこストアーという直販サイトと食庫に同時に商品が出るようにしています。
小川氏
なるほど。
原永氏
ともかくリアルのビジネスとの親和性というか、Webとの相乗効果が今後は大事だと思うんですね。戦略が花開くというか、見えてくるのは2009年の3月末から4月、つまり来期になるのかな、と思っています。そのころには戦略をはっきりいえると思います。
小川氏
ひとまず原永さんというCTOの半年間の成果を一言でいうと?
原永氏
社内の技術者の活性化には役に立ったかなとは思います。小川さんもさっきいわれたようにエキサイトにはテクノロジー重視の印象はなかったかもしれませんが、技術者のトップが執行役員になることで、やっぱり士気が上がったと思います。
そもそも、僕はただ長い時間働けばいいという考えは好きではなくて、省力化というか無駄しないほうがいいと考えるタチです。効率的に無駄を省くのがITの役割のはず。仕組みを作ることですよね。クルマでいうとオンロードとオフロードでは全然セッティングの手法も方針も違いますよね。その調整をどうするのかが技術だと思います。バランスをとっていく、ということだと思うんですよ。
小川氏
同感です。僕たちモディファイでも、僕がテクノロジー偏重、クリエイティブ偏重(笑)の姿勢をとっているからこそ、開発チームには恵まれたかなと思っています。
来年度の新しい戦略発表のときには、またぜひお話を聞かせてください。今日はありがとうございました。
■ URL
創業当時のエキサイト
http://media.excite.co.jp/10th/archives/TopGallery.html
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小川 浩(おがわ ひろし) 株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。 |
2008/12/03 00:00
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