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「小川妄想を具現化して革新的なWebアプリを生み出す!」モディファイ松本CTO
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今回のゲストは、少々我田引水的ではありますが(苦笑)筆者が代表を務める株式会社モディファイのCTOである松本庄司氏です。
モディファイは、Webアプリケーションサービスの開発と提供を行うスタートアップです。モディファイではコアテクノロジーとしての「MOIDPHIエンジン」、そのエンジン上に作られた各種のアプリケーション群である「MODIPHI APPS」、MODIPHIとは異なる新しいアプリケーションとして開発したソーシャルアクティビティストリーミングサービス「SMART」の3つのプロダクトを抱えていますが、これらの開発、特にインターフェイス面の中核メンバーとしてチームを率いるのが松本です。
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松本 庄司(まつもと しょうじ)
株式会社モディファイ CTO ソフトウェアシステムアーキテクト
学生時代、JE、PJE、JF、Vine Linuxなどの日本のLinuxコミュニティにて、黎明(れいめい)期Linuxの日本語化活動に従事。また、Mozillaの日本語対応にも参加。1999年、京都大学大学院卒業後、野村総合研究所にて柔軟性・生産性の高いWebベース基幹フレームワークの基礎技術を考案・開発。
その後、サンブリッジテクノロジーズにてベンチャー企業インキュベート事業を通じてアンケートシステム、汎用イントラネットシステムの構築などを行う。2007年1月よりMODIPHIエンジンの開発に従事。2008年1月にモディファイ設立メンバーとして参加、CTO就任。
座右の銘は「楽するための苦労は惜しまない」。
著作略歴:Linuxびっくり箱(1998~UNIX USER誌にて連載)、プロフェッショナルJSP(訳)、Kylix Power Solution(監訳)など。
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■ 実はエンタープライズ市場にフォーカスしているモディファイ
小川氏
モディファイは2008年1月の設立なので、ちょうど1年が経過しました。設立当初から、事業会社としては法人事業を主体としていますが、B2C企業であるという印象がまだまだ強いのに驚くね(笑)。
松本氏
MODIPHIリーダー(Web型RSSリーダー)などの無償提供をしてますからね。
小川氏
数年来のつきあいのある、モディファイのiPhone関連事業の戦略アドバイザーであるNobiさん(林信行氏)でさえ、7月の就任時にちゃんと説明するまではモディファイ=RSSリーダーだと思っていたと言っていたし、個人的には親友であるエル・カミノ・リアルの木寺社長は「モディファイはRSS発行会社でしょ、RSSリーダー作ったりモバイルやるのは違うんじゃないの?」と僕に言ってたからね(笑)。iPhoneはモバイルだけど、プラットフォームとしてはPCでしょ、と答えたんだけど。まあ、確かにモディファイの知名度は、僕のブログ(Speed Feed)や著書の読者か、MODIPHIリーダーのユーザーに限られるからなあ。
松本氏
まあしょうがないんじゃないですか。まだまだスタートアップだから。
それに、アプリケーションを作っている僕ら自身がまだ分からないしね(笑)。小川妄想をどう実現しようかな、と考えて追っかけているだけだし。小川さんが言葉で吐き出すモノの裏側には、たとえ違うことを言っているようでも、一本通っている何かがある。小川さん自体も言葉で明確にできていないのかもしれないけど、その何かを僕らが理解しようとしてとにかく作ってみる。作ってみたら、あれ、こうじゃないなと分かる。で、またああだこうだと試行錯誤して作り直す。そういう繰り返しの中で見えてくることがありますからね。小川さんの思想の共感者も多いかと思うけど、そういう人たちも、まだ「そうじゃねえだろ」とモヤモヤしてることが多いかもしれませんね(笑)。
小川氏
僕にとっては常に同じことをしゃべってるつもりなんだけどね(苦笑)。
松本氏
小川さんはなまじ技術が分かるから、技術の細部に思考をひっぱられることがあるんじゃないですか? フィードとかマイクロフォーマットとか。MODIPHIエンジンというコアプロダクトも、オンデマンドで情報の入出力を行う一種の仮想データベースだから、そのデータベースを作りたかったというよりも、データベースを使って作るサービスそのものがほんとは欲しいんでしょ? UI(ユーザーインターフェイス)側、フロント側が小川さんの欲しい本質的なものなんだと思いますよ。MODIPHIエンジンそのものは道具にすぎないですからね。
小川氏
ここでちょっとモディファイの事業を整理すると、
・コンシューマ向けにWebアプリケーションの提供を原則無償で行っている
- MODIPHI APPS(RSSフィードを読んだり発行したりするためのアプリケーションスイートとAPI)
- SMART(iPhoneに最適化されたソーシャルコミュニケーションサービス)
・企業や大学、官公庁などのために、MODIPHIエンジンを使ったWebアプリの開発を受託。特にiPhoneなどのスマートフォン用。
・自社ブランドのWebアプリのSaaS提供
- MODIPHI APPSの有償版
- PC用SMARTの有償版(準備中)
という感じになるんだけど、実はすべて内製している、ほんとに技術ドリブンのベンチャーなんだよね。
■ 複数の情報ソースを一つにまとめる入口と、一つもしくは複数の出口に吐き出すストリーミングが本質
松本氏
MODIPHIエンジンでできることで一番分かりやすいのは、やっぱり情報大航海で作ったGreen RSSでしょうね。4000以上のWebサイトの更新情報を集めてきてポンと一つにする。ワンソースから出すんではなく、複数から一つにまとめ、さらにフィードとして複数に出す。プロジェクト自体の時間と予算の問題で、(情報の)出口のサービスという面では不十分のままで終わっているのが残念だけど、少なくとも大量の情報の入口としては機能してますからね。Yahoo! Pipesに近いでしょ? あとは集めた情報をちゃんとウィジェットとかで吐き出してあげたらもっといいんですけどね。あとはUIもね、大事ですからね。
小川氏
MODIPHIエンジンの説明をすると、それはMovable Typeでもできるんじゃない?とか、既存のサービスで置き換えがきくのでは?と聞かれることが多いよね。
松本氏
置き換えがきけば分かりやすくなるなら、それでもいいんじゃないですか。今のWebサイトはどんどんWebサービス化していって、RSSフィードやAPIをだしてきているじゃないですか。それが昔からやってくれていたんだったら、MODIPHIエンジンを作る必要もなかったと思うんですよ。最近はRESTでアクセスしたらRSS出してくれるけど、でも当時はね…。
例えばいま、SMARTのバックエンドでMODIPHIエンジンを使っていますが、実はGoogle使ってもいい。MODIPHIみたいなサービスが前はなかったけど、今ではネット全体がMODIPHIエンジンと同じことができるようになってきている。逆にSMARTみたいなサービスは、Web全体が情報を集めてためてくれるようになってきたからこそ、アプリのフロント側だけで処理してもよくなって初めてできたといってもイイと思います。
小川氏
メディアの関係者とお話しすると、情報の入口としてのMODIPHIエンジンと、出口としてのSMARTを対で説明すると関心を持っていただけることが多いかなあ。
松本氏
最近のツールはたいていRSSを出してますからね、でも、出すんだけど、その有効な使い方が分からない。だから出口側、フロントでよいアプリを用意するというのはアリだと思います。人と人、システムとシステムを効率的につなぐために、RSSさえ出してくれれば後はMODIPHI使ってなんでもできますよ、と。
それと、Movable TypeとMODIPHIエンジンは似ていると思いますけど、Movable Typeの入力側は自由度が少ないです、ユーザーの手書きが基本ですからね。同時に出力側はどうしてもブログビューで、サイトを作る、という概念じゃないですか。MODIPHIには枠がない。それが分かりづらさにもつながるんだけど、サイトではなく、ストリームを作るという概念ですからね。
■ FriendFeedの登場にショックを受ける
小川氏
そう、MODIPHIは、というより、そもそもフィードという概念はストリームなんだよね。実は今年の年初にFriendFeedというサービスが出てきたことがショックで。前職でブログエディタを作っていたじゃないですか。あれは、実はフィードエディタを作るためのワンステップだったんだけど、要は複数のソーシャルウェブサービスのIDを一カ所にまとめて、そこで書けば複数のソーシャルウェブサービスにエントリーをポストできるし、どのCGMに投稿したことでも一カ所で管理できる、というアップストリームを管理するためのツールだったんだよね。
松本氏
はい、そうですね。
小川氏
ところが米国でFriendFeedが出てきて。あれは、ブログエディタとは真逆で、複数のソーシャルサービスで行ったエントリーを一カ所で集めてみせる、ダウンストリームを管理するツール。結局ブログエディタは消えて、FriendFeedはトラフィックをそれなりに伸ばしている。同じ技術なのに、情報の入口にこだわったわれわれは失敗し、情報の出口にフォーカスしたFriendFeedは巨額の投資を集めていることにショックを受けてね。
松本氏
日本ではフィードといった瞬間にRSSリーダーしか思い浮かばないですからね。それに日本ではmixiを始めとして、RSSを発行するソーシャルメディアが少なかったから、FriendFeedみたいなことはできなかったでしょうね。だからこそMODIPHIエンジンを作ったわけだし。
小川氏
日本はブログでさえ、勝手に標準仕様を変えてしまうからね…。
松本氏
入口と出口の関係性において欧米はロジカルですよ。日本は独自拡張してしまいがちですね。標準から外れることが差別化だと思ってるんじゃないかな。後は、欧米に比べると技術屋とか芸術家が優遇されない社会かもしれないですよ。ジョブズとかGoogleの創業者みたいな人がでないのもそのせいでは? 最初に技術屋が頑張ってももうかりだすとそういう人たちが切られていって、管理とか金融畑の経営に変わっていく感じがする。それが文化なんですかね。
■ 社内アルファブロガーを発掘することで情報共有を加速
小川氏
行数も限られるので(笑)話題を変えましょう。
昨年、われわれは大きな方向転換を二回やりました。一つはiPhone 3G登場をきっかけに、モバイル、特にスマートフォンにフォーカスした事業を立ち上げたこと。PCとスマートフォンのどちらかしか選べないとしたら、われわれは決死の覚悟でスマートフォン市場にとどまろうと決意しました。
もう一つは、そのスマートフォンの最大のプラットフォームになるだろうiPhoneに特化したソーシャルウェブサービス、「SMART」をリリースしたことです。このSMARTを企業内のコミュニケーションツールとして売り込むのが今年のモディファイのメイン事業です。
CTOとして、そのあたりにコメントを(笑)。
松本氏
iPhoneは、ほかのスマートフォンはもちろん、日本のほかのケータイと比べてもスペック的には低いと思うし、機能も削ってあると思うんですよ。でも、それを感じさせないUIで一度使ったら離せないほどの愛着をユーザーにもたせることに成功している。そのiPhone上でサービスを作ることで、ほかのプラットフォームにも展開しやすいサービスを作れると思いますね。企業の生産を高めるためにも、PCより、いつでもどこでも使えるスマートフォンを使わせることは理にかなうと思うし。ネットブックもね、WebがみられてMicrosoft Officeが使えればそれでいいんだというユーザーのおもいがようやくPCベンダーにも分かったんじゃないですかね。日本のメーカーはすぐ機能を増やすことを考えちゃいますけどね。
それと、SMARTについては、基本的に企業内Twitterとして企業に売り込みたいわけじゃないですか。Twitterの良さはあの簡潔性で、ネットブックやiPhone同様、絞り込みがちゃんとなされてるんですよね。SMARTもその良さを保ったまま機能向上していけばいいと思いますよ。
小川氏
米国企業は新しいツールをベンチャーに平気で発注するけど、日本だと実績があるのかとか、ほかの企業は使っているのかなどと横並びが多いから苦労する。
松本氏
日本企業は押しつけが足りないですからね。だから世界標準になれない。おれがいいんだからお前ら使え、と言い切らないとね。ルールは変えるものなんだからと。
小川氏
まあね(笑)。
松本氏
でも大企業も、今のように社内の情報共有がなされてないことについては課題だとは思ってるんじゃないですかね。ツールはたくさんいれたのに、おかしいなと。ほんとは仕事ができる人は、ちゃんと自分なりの工夫をして効率をあげてるじゃないですか。SMARTを入れることで、優秀な人が集めた情報を隅々にまで共有できるようになると分かれば、前向きに検討してくださるんじゃないんですかね。タバコ部屋とか、ノミニケーションみたいなことでいままではやっていたことを、ネットワーク上でより簡単にできるようになるわけだし。
小川氏
心筋梗塞や脳梗塞は、動脈硬化によって血流が滞ることによって引き起こされるからね。企業も情報という栄養素や酸素を隅々に届ける仕組みとして、毛細血管みたいな機能を導入したらいいはずなんです。あまり高価だと腰が引けるだろうけど、リーズナブルな金額であれば。
松本氏
あとは、ブログが広まっていわゆるアルファブロガーが出てきて、みんなにマスメディアではないメディアとして情報の編集をしてくれたじゃないですか。社内でもそういう、社内アルファブロガーみたいな人がいるはずなんですよね。そういう人たちを可視化するツールとしても役立つんじゃないですかね。
小川氏
そのとおりですね。じゃあ、頑張って広めるので、これからも頑張って作ってください(笑)。
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小川 浩(おがわ ひろし) 株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。 |
2009/01/14 00:00
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