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「東アジアにも商圏を広げてライフスタイルを輸出する」オンラインセレクトショップのセレクトスクエア属社長
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本日のゲストは、総合商社の丸紅の一事業として生まれたファッション系ECサイトのセレクトスクエア属(さっか)社長です。
ファッションを取り扱うECサイトとしては珍しく男性客が多いというセレクトスクエアは、事業をスタートしてから8年という老舗です。そのセレクトスクエアを率いる属さんの言葉の端々には「リンクする」というフレーズが登場しますが、属さんのビジネスに関する基本的な感覚がよく現れていると思います。
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属 健太郎(さっか けんたろう)
株式会社セレクトスクエア 代表取締役社長
早稲田大学 政経学部卒、35歳。丸紅株式会社のリスクマネージメント部門でデューディリジェンス業務を担当後、情報部門でコンテンツビジネスにかかわりハリウッド映画のコンテンツビジネスや著作権ビジネスを行う。2004年4月より丸紅の事業であった「セレクトスクエア」の事業責任者となり、2007年7月に株式会社セレクトスクエアの代表取締役社長に就任。
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■ 総合商社からのスピンオフベンチャー
小川氏
もともとは丸紅からのスピンオフとお聞きしました。独立の経緯を教えてください。
属氏
セレクトスクエアは、2001年に丸紅のインキュベーション事業として立ち上がった会社です。僕は2004年4月に事業責任者に着任して、事業の成長に尽力してきました。商社の中でこそできることもあるわけですが、逆に大きな商社の中だとやりづらいこともあり、さらなる成長を目指したいと考え、2007年夏に株式会社化して、新たな事業を9月からスタートしました。
小川氏
セレクトスクエアの事業内容をひとことでいうと?
属氏
インターネットでのセレクトショップを中心としたモールの運営、ですね。セレクトショップを集めたファッションサイトといってもいいです。
小川氏
コンペティターはどのあたりになりますか?
属氏
セレクトショップのECサイトという意味ではZOZOさんでしょうね。ただ、サイト全体と考えるとターゲットユーザー層が違っていて、セレクトスクエアの方が多少年齢層が上かもしれません。
小川氏
セレクトショップとアパレルの違いはなんでしょう?
属氏
そうですね。まず一般的にファッション業界はピラミッド型をしているといわれています。その頂点にラグジュアリーブランドや主要コレクションブランドがあります。下にいくにしたがって、量販店などが入ってきますが、マーケットのボリュームが大きくなります。
小川氏
カッティングエッジとセレクトショップの違いは?
属氏
セレクトショップは元来自分たちのテーマに合う商品を仕入れて販売する業態です。アパレルは企画から製造販売までを一貫して行いますが、セレクトショップは仕入れて売るのが基本です。カッティングエッジはマーケティングサイズは小さいが、トレンドをおさえたアパレル。東京コレクションにでているブランドなどを指しますね。
■ 800ブランド・1万アイテムを取り扱うファッションショッピングモール
小川氏
ところでファッション業界の市場規模はどのくらいでしょう?
属氏
ファッション全体で10兆円くらいですね、そのうち量販店が半分くらいを占めています。ラグジュアリーブランドが7000億~8000億円じゃないですかね。米国ではEコマースによるシェアが全体の10%といわれていますけど、日本ではまだ2~3%の状態です。
小川氏
セレクトショップというと、例えばBEAMSとかユナイテッドアローズとか、SHIPSなどがあるじゃないですか。彼らは自分ではECをやらないんでしょうか?
属氏
一部ではやっていますよ、もちろん今後も考えてはいるんじゃないですかね。
小川氏
セレクトスクエアの特徴は?
属氏
セレクトスクエアはショッピングモールです。ショップで44店舗・800ブランドで約1万アイテムを扱っています。洋服が中心です。靴とかバッグもありますが、服飾が中心ですね。
小川氏
アマゾンなどのECは競合にはならないですか?
属氏
あまりならないですね。商材が違いますから。
それに見方にもよりますが、常日頃からコンペティターというように相手を意識はしないです。ECという点では同業者はいますが、僕らはライフスタイルチャンネルでありたい、と考えてやってきています。収益の柱として洋服を売ってはいますが、今後は企業のネイチャーによって進み方が違ってくると思うんですよ。
■ 東アジアへの進出を視野に入れたライフスタイルチャンネルへ
小川氏
客側の見方ではどうでしょう? セレクトスクエアで買うモチベーションはどこにありますか?
属氏
複数のセレクトショップやブランドがあるということだろうと思います。サイトも最近リニューアルしたんですが、今年はサスティナビリティ(継続性)をテーマにしているんですね。洋服は大量生産であり、その中で大小のトレンドがあると思いますが、産業のあり方、社会とのバランスなどをみつつ、自分たちなりの方向感をもっていたいと思います。商品のあり方、お客さまとのコミュニケーションのリンクの広げ方などを、会社として考えながらやってきたし、それが評価されていると思います。
小川氏
なるほど。現在のユーザー数はどのくらいですか?
属氏
ユニークユーザーは月間55万人で、男女比はほぼ均衡しています。たいていのファッション系ECだと女性が9割というところが多いと思いますが、うちの特色は男性が多いところですね。昔は7割が男性でしたから。
小川氏
7割ですか?
属氏
それに、ECの顧客層だとたいていは20代中盤となると思いますが、うちは30代中盤なんですよ。だから客単価はほかのサイトより高くて2万円くらいになりますね。狙ったわけではなくて、8年続けていることで当時20代だったお客さまがいま30代、ということなんですけれど。長く続けてきたおかげで信用もついてきたと思っています。ファッション系のECでもたくさんの会社が市場に入ってきましたけど、同時に多くの企業が市場から退場していきましたから。
リアルの商業施設も同じですけど、ブランドやテナントをどういれて差別化して、集客して、お客さまからみたときは買いやすくまたここで買いたいと思っていただけることが大事です。ECは直接お客さまとふれあうことがないだけに、多くの工夫が必要です。
小川氏
その一環としてサイトのリニューアルを行った?
属氏
そうです。フロントのイメージを変えたり、バックオフィス系、特にマーケティングをよりしやすい環境作りを意図して改装しました。お客さまとリンクをつくりたいんですね、お客さま同士もそうですし、われわれとの関係、あるいは商品や商品を提供してくださるお店、お客さまと、それぞれに有機的なリンクを作っていくことを考えています。次のステップとしては、ライフスタイルチャンネルとして新しいサービスを提供していきたいですね。
小川氏
今後の事業イメージをきかせてください。
属氏
そうですね。われわれは基本的に決済用のカートシステムの提供者なんです。日本の23歳から43歳の人口は3500万人くらいらしいんですが、そのうちの情報感度の高いといわれる600万~700万人にむけたライフスタイルチャンネルになりたいですね。それに、東アジアには既に数万ドルクラスの年収の人口が数億人に達しようとしていますから、その人たちにむけたユーザーIDと決済の提供者になりたいですね。
東アジアは政治的には統合しづらいのは否めませんが、ライフスタイルは似てきていると思いますので、魅力的な市場だと思っています。既にインターネット上には、カートシステムを始め、ブログ、SNS、オークション、レコメンデーションなど、あらゆる要素技術があります。あとはそれらをリンクさせたうえで、より洗練したインターフェイスやデザインを提供することが大事です。日本のカルチャーは、ジャパンクールなどといわれるようにアジアでも受け入れられると思います。
小川氏
そうですね。
属氏
後は、経営者としてはどうなの?といわれそうですけど、お金もうけも大事ながら、もっと新しいものを作っていくことが必要だと思っています。
ファッションは、コレクションや展示会から実際に市場に出るまでにざっくり半年です。でも科学の世界は大きな発見が実用化されるまで100年かかるのはざらでしょう。概念が生まれて、それが言語化されて、クリエイターの手によって形になるというプロセスの中で、言葉にできれば形は見えてくるはずなんです。僕たちは今、服飾品を売っていますが、それだけではだめなんだと思います。
小川氏
僕も似たようなことを考えたりします。経営そのものにはあまり余計なことを考えない方がいいのかもしれないですけどね(笑)。
属氏
コーヒー一杯で哲学的な事象をあれこれ話し込むことは楽しいですよ(笑)。森羅万象とリンクすることをいろいろと模索する。
セレクトスクエアはセレクトショップを集めたスクエア(広場)という意味です。セレクトというのは選択したということです。選択することでほかを選ぶことを閉じる、ということですが、反対にそのことで全体とつながる、リンクすると思っています。
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小川 浩(おがわ ひろし) 株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。 |
2009/01/27 00:00
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