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「サイボウズから日本のビジネスパーソンの実態がみえる」cybozu.net椿COO


 今回のゲストはサイボウズとサイバーエージェント、ECナビの合弁会社であり、筆者も深い関係があるcybozu.net株式会社の取締役COOの椿奈緒子さんです。cybozu.netは名前こそサイボウズですが、実はサイバーエージェントの連結対象の会社です。

 椿さんはオンでもオフでもオンラインでもオフラインでも、ほとんど印象が変わらないはつらつな女性であり、話す相手にも元気を与える人です。サイボウズユーザーにとっては非常におなじみなメディアであるcybozu.netですが、一般的にはまだそれほど認知されてはいないかもしれません。しかし、既にサイバーエージェントグループの中でも成長株として注目を浴びている優良企業です。


cybozu.net椿COO 椿 奈緒子
cybozu.net株式会社(サイボウズ・ドットネット) 取締役COO

2002年4月: 上智大学外国語学部卒、総合商社入社
2003年11月:退社、ブラジルに渡る
2004年1月 :サイバーエージェント入社、広告営業
2004年7月 :社内事業プランコンテストで優勝
2004年8月 :新規事業立ち上げ開始。女性向けサンプリングサービス、トライアルネット事業責任者
2005年6月 :事業閉鎖。7月、グループ会社ECナビに出向
2005年9月 :サイバーエージェントに戻り、新会社立ち上げ準備
2005年11月:ビジネスポータルのcybozu.net(株)運営開始!
2008年5月 :取締役COOに就任


成長フェーズに入ったcybozu.net

小川氏
 まず自己紹介を簡単にお願いします。


椿氏
 椿です。えーと、29歳になりました。小川さんと誕生日近いんですよね(笑)。

 cybozu.netのCOOです。cybozu.netはサイバーエージェントとサイボウズとECナビの合弁会社で、cybozu.netというビジネスポータルの運営をしている会社です。

 私は、大学を卒業してすぐに総合商社のニチメン、今の双日に入社して、そのあとサイバーエージェントへ転職しました。そこでは広告代理店営業を半年やって、サイバーの新規事業プランコンテスト(ジギョつく:半年に1回の事業プランコンテスト。「事業をつくろう」の略)でグランプリをとり、24歳で女性向けのサンプリングサービスの事業責任者になりました。小川さんが以前インタビューされていたルーク19とほぼ同じですけど、まねはしてないですよ、時期は私の方が先でしたから(笑)。


小川氏
 はは(笑)。


椿氏
 1年やったんですけど残念ながらその事業を閉めて、サイバーに戻って、ECナビに出向しました。その2カ月後にcybozu.netに参画することになり、小川さんと密接になりました(笑)。


小川氏
 そうだね(笑)。椿さんと初めて会ったのはcybozu.netの設立の記者発表会のときでした。藤田さん(サイバーエージェント社長)と宇佐美さん(ECナビ社長)、そしてサイボウズの青野社長とわれわれで。


椿氏
 その前に会ってませんでしたっけ?


小川氏
 いや、それが最初ですよ。ところでcybozu.netは順調ですか?


椿氏
 順調ですよ。サイバーの中でJ1に昇格したんですよ、昨年の7月に。


小川氏
 それはすごい。


椿氏
 サイバーではご存じのように、CAJJプログラムという事業と人材の育成プログラムがあって、その中で継続的に成長できるレベルに達した事業だけがJ1に入れます。cybozu.netは黒字化は設立して5カ月目でできて、いまでは売上で2億円ちょい、営業利益でも2000万円ちょいまできました。


収益の99%をサイボウズユーザーからのトラフィックに依存

小川氏
 すごいよね。ところでcybozu.netのサイボウズ・ドットネットという呼び方は僕がサイボウズで最初にしたブランディングなんですけど、知ってました?


椿氏
 あー、知らなかったです(笑)。


小川氏
 もともとは単にビジネス情報、とか、サイボウズネット、と呼ばれてました。


椿氏
 いまでもそう呼ぶヒトいます。


小川氏
 サイボウズといえばビジネスソフト、ですから。サイボウズ初のネットサービス、という印象を作るために、ドットネット、と呼ばせるように変えたんだよね。同時に、ロゴはサイボウズを印象づけるためにボウズマンの頭部分をうまくもじりました。

 ちなみに、cybozu.netは実は僕がサイボウズに移ってすぐに任されたプロジェクトで、最初はRSSリーダーを利用したビジネスニュースサービスを作ったんですけど、サイボウズではインターネット上でのWebアプリを作ったことがなくて、うまくいかなくてね。公開して2週間でクラッシュしたときは、死ぬほどへこんだな(苦笑)。そのうちにサイバーとの合弁話が動き始めて、今のcybozu.netの形になり。僕はcybozu.netにも機能提供するという大義名分で、もともとやりたかったRSSフィードを使ったWeアプリの開発プロジェクトを社内で立ち上げた。それがフィードパス設立へとつながってるんです。


椿氏
 知らなかったです。


小川氏
 まあ昔話ですね(笑)。cybozu.netの事業の話を詳しくしてください。


椿氏
 いまのcybozu.netの事業は、cybozu.netというビジネスポータルを運営するメディア事業です。

 もともとのサイボウズからのお話は、サイボウズのグループウェアであるサイボウズOfficeシリーズとガルーンシリーズからリンクして、ビジネスニュースとかいろいろなユーティリティを提供しているサイトがあって、それをもっとマネタイズしたい、ということだったんですね。サイボウズはソフト会社だから、メディアとして大きくするためにはサイバーのようなネットの会社との合弁がいいだろうと。

 そこでサイボウズからはグループウェアからのトラフィックとブランドを、サイバーは集客や販売、広告営業を提供しようというポートフォリオになりました。


小川氏
 そうね。いまだにグループウェアからのトラフィックに依存している?


椿氏
 そうですね。いまでもまだトラフィックの99%はサイボウズのグループウェア経由です。しかも全体でいうと、少しずつトラフィックが下がっています、わずかですけど。そこで売上の低下を防ぐために、例えばニュースのリンクをニュース提供先からの直接リンクではなく、cybozu.net経由にしてもらったり、グループウェアからのWeb検索をcybozu.netから提供させてもらったりしています。


小川氏
 なるほど。


未成熟な市場でもマネタイズハック的発想で収益改善

椿氏
 それでもcybozu.netはビジネスポータルという領域ではうまくいっているほうです。たまに取材を受けるんですけど、ビジネスポータル系はどこも苦しいらしく、調子良さそうなのはお宅くらいですよとよく言われます(笑)。


小川氏
 ビジネスポータル、というカテゴリは一般的ではないからね。


椿氏
 というより、ビジネス向けのメディアはあまり成功してないですね。属性的には大きなカテゴリなんですけど、まだまだ市場そのものを作るというフェーズなんだと思います。


小川氏
 競争相手は?


椿氏
 FIDELI(フィデリ)さんとかですかね。あるいはYahoo!を始めとするポータルのビジネス面。でもあまりぶつかりはしないんです。うちは基本的に、サイボウズユーザーのトラフィックに依存してますから。だから土日は平日の5分の1くらいのトラフィックしかなくて、最近は数えるのもやめようかと思うくらい。


小川氏
 cybozu.netを使うメリットは?


椿氏
 ビジネスパーソンに役立つ情報を集めているところですね。ホテル検索とか、企業の倒産情報なんかは好評です。検索はYahoo!のYSTを使っていますが、全体のPVの3分の1くらい、2100万PV/月くらいを稼いでくれているので主力サービスになっています。


小川氏
 営業はどうやっているの?


椿氏
 あまりしていないですね。2~3年前は広告やタイアップを売るみたいなことを一生懸命やっていましたが、昨年くらいからは広告ではあまりもうからなくなってきていますから。それよりは検索を使ってもらって入ってくるYahoo!からの収入が大きいですね。だから検索のチューニングを一生懸命やっています。検索キーワードに対する検索結果は本家のYahoo!と同じですけど、そこに関連ワードをつけたり、デザインを凝ったりして、少しずつでも使いやすく作っています。マネタイズハックみたいな?(笑)ほんの数パーセントでも多くトラフィックを稼ぐことができれば大きく利益につながりますから。


小川氏
 なるほどね。


椿氏
 事業責任者とすると、例えばトラフィックのサイボウズ依存はいいんですよ。頼らない必要はないし。でもそれでは成長がないじゃないですか。だから、自社でデータベースをたくさん作って、ほかの検索エンジンからもトラフィックが入ってくるようにしたいですね。

 PDCA(Plan-Do-Check-Action)の繰り返しですよぉ。広告は自転車操業なんで、受注がなくては回らないわけじゃないですか。検索ならばそうそうぶれないですから、ほんとに0.1%の改善でも地道に行えば結果がついてきます。


ビジネスパーソンの平均的実像に向けてのビジネスと、ソーシャルウェブ事業の双方に参画

小川氏
 立派だなぁ。

 ほかには、例えば新しいトラフィックを作るという意味でモバイル展開は考えない? iPhoneとか(笑)。


椿氏
 iPhone対応とかはしてみたいですけどね、でも当分やらないですね。ケータイには一応リンク集程度の情報は載せてますけど、ほとんどがグループウェアからのトラフィックだからケータイにはあまりアクセスがないんですね。だからてこ入れしても今はしょうがないですね。

 それに、サイボウズのグループウェアのユーザーは日本のビジネスパーソンの実態を見せてくれると思うんですよ。ほとんどのユーザーはTwitterも知らないし、YouTubeってなに?というヒトもまだまだ多いです。毎日アンケートもしてるんですけど、SEOとかブログがやっと知られてきたかな、という感じです。


小川氏
 そのとおりでしょうね。それが大多数でしょう。そしてトラフィックをお金にするならそういう層に最適なサービスをしていくべきですよね。僕には無理だけど(苦笑)。


椿氏
 ところで私、最近ほかにもいろいろ始めたんですよ。ECナビグループの会社で、リスティング広告(検索連動型、コンテンツ連動型)の導入支援会社のADINGOの海外担当にもなったんです。それで昨年末にサンフランシスコにいっていろいろ回ってきました。


小川氏
 へえ。

 そういえば、青野さん(サイボウズ社長)と椿さんと、一緒にサンフランシスコ行ったよね。


椿氏
 行きましたねぇ。


小川氏
 あのとき参加したSyndicateというイベントのセッションで、椿さんが一生懸命質問をしていたのが印象的でした。

 しかし、あのイベントはもうなくなっちゃったけど、あのあたりから急にWebが面白くなって、面白いサービスがどんどんでてきたんだよなぁ。あのときの感覚がきっかけでフィードパスも作ったし、MODIPHIも作った気がする。


椿氏
 楽しかったですよね、あのときは。

 そう、いまはBuzzurlのディレクターでもあるんです。ソーシャルメディアにやっと近づけた感じです(笑)。


小川氏
 椿さん自身がソーシャルな感じだし(笑)。最後に椿さんの思うところを教えてください、cybozu.netというかメディア事業の行く先みたいなものを。


椿氏
 広告事業は不振ですよね。元に戻るのは、意味としては前年度比較で何十パーセント成長みたいなことですけど、そうなるには最低でも2年くらいかかるかなという気がしてます。

 代理店も苦しいでしょうけど、メディアもきついですよ。アドネットワークを入れたとしても売上3分の1くらいになってしまうかもしれないし。でも、それでもやらざるをえなくなるくらい厳しくなるでしょうね。米国みたいにAd Exchange(オンライン広告取引所)みたいなものが本格的に出てくるかもしれないですね、個人的な憶測ですけど。




小川 浩(おがわ ひろし)
株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。

2009/02/03 00:00

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