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「ブログ全盛時代に生まれたハイテク地域情報サービス」30min.谷郷社長


 今回のゲストはサンゼロミニッツの谷郷社長です。ブログから特定の地域のレストランや美容院などのお店情報を収集し、効率的に情報公開する新しい形のタウン情報サイト「30min.」はどのような発想で生まれたのか。どのようなビジネスモデルを追求していくのか。谷郷さんにお伺いしました。


サンゼロミニッツ谷郷社長 谷郷 元昭
株式会社サンゼロミニッツ 代表取締役社長

1973年12月10日生まれ 大阪府高槻市出身
慶應義塾大学理工学部機械工学科卒業
97年4月、ゲーム系ベンチャー企業イマジニア株式会社に入社し、家庭用ゲームソフトのプロデューサーとして4年、携帯公式サイト部門のマネージャーとして1年半従事。
03年6月、日本最大の化粧品クチコミサイト「@cosme」を運営する、株式会社アイスタイルへ転職し、EC部門の事業責任者として、EC事業「cosme.com」を立ち上げ。
05年7月、サイバーエージェント元副社長の早川氏が手がける、携帯広告メディア企業、株式会社インタースパイアの創業に参画、メディア部門の事業責任者に従事。
06年8月、株式会社インタースパイアを退職し、起業準備を開始。
07年4月、タウン情報サイト「30min.」のテストサービスを開始。
08年4月、株式会社サンゼロミニッツの代表取締役社長に就任し、タウン情報検索サイト「30min.」の正式サービスを開始。


30min.は地域情報を集めたタウン情報サイト

小川氏
 30min.と書いて、サンゼロミニッツ、と読むんですね。


谷郷氏
 はい。SEO的にはどうかなと思いましたが(笑)、自宅から30分の距離の情報を見せるという意味でつけました。


小川氏
 サンゼロミニッツとはどういう会社でしょう。


谷郷氏
 タウン情報サイト「30min.」の運営会社ですね。具体的に言うとブログなどの情報を収集して、その街に関係するだろう情報を抽出して仕分けして提供します。


小川氏
 谷郷さんの経歴も簡単に教えてください。


谷郷氏
 ゲーム会社でケータイビジネスを担当して、アットコスメでPC上のEC部門の責任者を務めてきました。つまり、PCとケータイの両方を把握できているという意味では、わりと珍しいタイプですね。PCのネット業界とケータイの業界は断絶した業界ですから、両方分かる人間はあまりいない。


小川氏
 確かに。


谷郷氏
 会社としてはクチコミ版の東京ウォーカー的サービスを作っている段階で、いまは第一フェーズみたいな状態です。販促の広告市場が新聞からネットに緩やかにシフトしていると思っていますので、そこに商機があると思って参入しました。

 ケータイのリッチコンテンツ化とGPS対応が進む中で、地域情報がどんどん重要になってきますから、そのプラットフォームになれるものとして考えています。


小川氏
 事業モデルは広告なんですよね。Craigslistあたりが近いですかね?


谷郷氏
 近いですがCraigslistは整然とした情報サイトですよね。e-まちタウンとか、東京限定ですけどLet's Enjoy Tokyoあたりが近いといえば近いですね。

 いずれにしても、彼らのサービスは広告主のプロフィールと広告がひもづいてないですが、うちは店の情報と広告をひもづけて提供することを考えています。


30min.は一種のRSSリーダー?

小川氏
 ちょっと技術的なことを伺いますが、基本的にはブログのRSSフィードを収集してるんですよね?


谷郷氏
 そうです。ブログのRSSフィードを集めて、その中からレジャーやショッピング、グルメなどに関係する情報を抽出しています。30min.は一種のRSSリーダーなんですよ。友達のフィードを収集して表示するFriendFeedに発想は近いですね。地域のお店の店員さんなどがブログを書いていたり、そのお店のことを書いているユーザーのブログを同じページに集約できるのが特徴です。さまざまなお店のブログからは決まった住所が分かります。ユーザーのブログは構文解析してどこの場所、どこの店に関するものかを判断して掲載します。ポストの中にお店の電話番号などがあれば、まず店にひもづけてから処理しています。


小川氏
 MODIPHIあるいはSMARTの発想に似てますね。特にMODIPHIの初期のサービスに近いものがあります。


谷郷氏
 小川さんの話は参考にさせていただいていますよ、Feed Summit Syndication(フィードパスやRSS広告社などが中核となって運営していたRSSフィード活用啓蒙団体。現在は活動休止)や小川さんのWBS2.0などのイベントで(笑)。


小川氏
 ありがとうございます。でも、あまり技術に関する説明はサイト内にないですよね。


谷郷氏
 タウン誌ですから、裏側の技術は見せないことにしています。個人的な意見として、技術がこれだけ発達したのだから、それをIT業界のヒトだけにみてもらってもしょうがないと思っています。


小川氏
 確かに。いまは全国の情報を持っているんでしたっけ?


谷郷氏
 いまは関東と大阪だけです。今年の前半には全国に広げたいですね。年内は国内展開を優先しますが、そのうち海外展開も行います。海外の方が、というより英語のほうが構文解析とかやりやすいですから。日本語は表記の揺れや同じ地名が多くて面倒です。


小川氏
 なるほどね。


30min.はブログ登場以降のオープン型CGM

谷郷氏
 いまはブログからの情報収集にフォーカスしていますけど、今年の後半にはユーザーが情報を発信する機能を実装して、ブロガーだけではなく、ユーザーやお店から情報を発信してもらうと思っています。


小川氏
 そうなると、フォートラベルとかアットコスメに近い感じになりますかね?


谷郷氏
 構造的に似たサービスを列挙すると、例えば旅行サイトのフォートラベルや、グルメサイトの食べログ、コスメ情報のアットコスメがあると思うんですが、彼らはブログ登場以前に設計されたサービスで、われわれはブログ登場以降のサービスであることが相違点でしょう。


小川氏
 意味は分かります。が、説明をお願いします。


谷郷氏
 ブログ登場以前のCGMサイトの設計は、サイトにユーザーを集めて、そこで情報を書き込んでもらう方式です。しかしわれわれのサービスでは、われわれのサイトのためにブロガーにコンテンツを書いていただくようなことはしていません。グルメや旅行について書くブロガーは、特定のCGMサイトのために書きたいわけではなく自分のブログに感想を書きたいわけです。そうしたブロガーのコンテンツをわれわれは収集して利用させていただいています。つまり、オープン設計のCGMであると思っています。


小川氏
 はい。


谷郷氏
 設計が違えばサービスにも変化が出ます。例えば食べログであれば情報の質を重視するので、一人のユーザーは一つのお店に関する情報を一回しか投稿できないようです。われわれの場合はそうした制限がないので、同じ店の情報に何度でも同じユーザーの情報が鬼のようについてきます。その結果、新しい旬の情報というか、季節の違いによって内容が異なる投稿が集まるようになります。だから新聞とか雑誌のノリに近くて、新聞の折り込みやポスティング広告のように、地域の新しい情報を出すことで、そこに新しい広告が載っていく構造になっています。


iPhoneアプリは5万ダウンロード以上のヒットを記録

小川氏
 そうなると、モバイルは大事ですよね。


谷郷氏
 通常のケータイに対応はまだしてないんですよ。iPhoneだけに対応しています。

 ブログを収集して、タイトルしかみせてないので、クリックするとサイトに飛んでしまうじゃないですか。だから普通のケータイだと都合が悪い。iPhoneならその心配はないですからね。投稿する側からみても、iPhoneのアプリは写真を引用して投稿できるし、発信側も楽しく楽にできるじゃないですか。

 アプリ化し配布したところ、既に5万件以上ダウンロードしてもらっています。


小川氏
 ウチのスタッフも使ってるみたいですよ。


谷郷氏
 今後はiPhone版ももっと強化して、PCサイトと連携していきたいですね。いまは連動してないので。mixiのプラットフォームも開放されますし、いろいろと面白いこともできると思っています。


小川氏
 事業展開で障害になることは?


谷郷氏
 企業のRSS化がもっと進めばいいのに、と思っています。このあたりだと恵比寿ガーデンプレイスのサイトなどはRSS対応しているので情報をとれますけど。


小川氏
 そのあたりは同じ悩みですね(笑)。MODIPHI APPSを使っていただければサイトのRSS対応は簡単なんですけどね(笑)。

 最後に今後の展望として、どのような戦略を考えているかを聞かせてください。


谷郷氏
 そうですね。事業的には今年中に黒字化して、それから事業展開を加速化するために出資を集めたいですね。社員もいまはまだ二人なので、増やさなくてはならないですしね。それと、事業としては街の情報をもっと集めることで、不動産系のお客さまに喜んでいただくことで、より多くの広告主を集めたいと思っています。


小川氏
 受託はまったくしない?


谷郷氏
 しないですね。

 B2Cの事業で成功するには、受託をやってたら無理だと思います。昔とは違って、やるべきことにフォーカスしないと成功できないと考えています。


小川氏
 分かりました。今日はありがとうございました。




小川 浩(おがわ ひろし)
株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。

2009/02/17 00:00

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