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「一人一人に最適な“オススメ”を実現する」レコメンデーション専業のALBERT・山川会長
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本日のゲストはレコメンデーション専業企業のALBERT(アルベルト)の山川義介会長です。レコメンデーションとはいわゆるオススメサービスであり、ユーザーにとって価値があるだろうと思われる商品やコンテンツを提供するための仕組みです。
技術的には検索エンジンのアルゴリズムと似ていますが、検索と違って、ほしいモノやキーワードがわからないユーザーに対してプッシュするところが大きく違うサービスです。
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山川 義介
株式会社ALBERT 代表取締役会長
横浜国立大学工学部卒業。TDK株式会社記録メディア事業部門にて研究開発、商品企画に従事の後、株式会社マルマンに転じ常務取締役家電事業部長などを歴任。1995年株式会社エムアンドシーを設立し代表取締役に就任。2000年株式会社インタースコープを設立し、取締役副社長に就任。2001年6月株式会社インタースコープ代表取締役社長に就任。2002年「EOY JAPAN セミファイナリスト(スタートアップ部門)」。 2005年7月インタースコープ取締役会長に就任。2005年7月株式会社ALBERTを設立し、代表取締役会長に就任。2006年2月インタースコープをヤフー株式会社に売却。2007年4月より関東学院大学人間環境研究所客員研究員。2008年9月より明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科非常勤講師。
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■ レコメンデーション専業企業として
小川氏
今日はよろしくお願いいたします。大学は工学部とか。
山川氏
そうです。大学では化学を学びました。その後、TDKに入社して8年くらい磁気テープの開発をやって、そのあとミニディスクなどの商品開発に従事したあと、マルマンに移りました。起業したのは95年です。通販卸やインターネット通販をやったあと、2000年にインタースコープというネット調査の会社を設立しまして、そのときにレコメンデーションエンジンの開発をしたことがいまのアルベルトにつながっています。インタースコープ自体は一昨年Yahoo!に売却しました(現、ヤフーバリューインサイト)。
小川氏
レコメンデーションエンジンというと、アマゾンを想起する方が多いと思いますが、ECへの活用事例がやはり多いんでしょうね?
山川氏
そうですね…。われわれも通販大手の株式会社ニッセンホールディングスが株主の一つですから。アルベルトのデータマイニング技術を使ってニッセンの巨大な顧客データを分析しています。また、そうして開発したエンジンをヤマダ電機などにASP提供もしています。
小川氏
なるほど。業界のプレイヤーはほかにどんな会社がいますか?
山川氏
この連載にも登場されていたKBMJさんもそうですね。比較的簡易なシステムの販売が多いので、採用実績では100社くらいで業界トップといえるでしょう。うちは80社くらいですから数では2位になりますね。そのほかサイジニアとかホットリンク、ブレインパッド、東芝など、プレイヤーは非常に多いです。
小川氏
チームラボなどのベンチャーも参入してますしね。
山川氏
ただ、うちは専業という強みがありますね。だから幅広く、どんなレコメンデーションにも対応していけると思います。低コストで簡易なものからサイト全体のコンサルが必要なレベルまで、価格でいえば数万円から数千万円までそろえています。
■ レコメンデーションの仕組み
小川氏
アルゴリズムに違いはありますか?
山川氏
うちではレコメンデーションのアルゴリズムを12種類に分類しています。お客さまのニーズに応じて最適なものをご提供するわけですが、簡単にいうと、「対象者を特定するか」「特定しないか」、という大きな分類がまずあります。対象者を特定しないということは、お客さまの個人的な嗜好などを考慮しないということです。つまり「データ不要」となります。対象者を特定する場合は対象者のデータが必要ですが、これは取得の方法から、「アクションデータ」「履歴データ」「申告データ」と呼んでいます。「データ不要」の場合を含めて4つのデータがあるわけです。
それらに対してさらに情報の分類を、商品属性からみた「モノ属性ベース」、消費者行動からみた「人ベース」、専門的な知識からみた「ナレッジベース」の3つと掛け合わせて、全部で12パターンのアルゴリズムを、アルベルトでは設定しています。
小川氏
かなり細かいですね。
山川氏
例えばKBMJの主力商品はわれわれでいうところのアクション・アソシエーション型で、人ベース×アクションデータの組み合わせになります。つまり、この商品を見たり、買った人へのオススメはこれです、という形です。アマゾンの手法もこれですね。データマイニングの技術としては比較的どこでもやっているものです。協調フィルタリングの簡易版ともいえますが、本来の協調フィルタリングはさらにお客さま個人の購買履歴などを考慮するもので、われわれであれば履歴アソシエーション型と呼ぶ、もう少し高度なものになると思います。アクション・アソシエーション型のレコメンデーションは誰に対してもほぼ同じ結果になります。ハンバーガー買う人はたいていポテトも買うよね、というものですから。
人ベースではなく商品ベース、つまり商品のデータに基づいて、アクションデータとの組み合わせを考えると、例えばチーズバーガーとハンバーガーは似てる、だからチーズバーガーがなければハンバーガーをオススメしよう、という具合になります。ただ、これは誰だろうが関係なくレコメンデーションですし、商品データをたくさんいれるのでシステムの負荷が高くなるので、あまりみんなやってないようですね。
小川氏
なるほど。
人ベースでの組み合わせは過去の履歴ありきで、モノ属性ベースは商品の定義付けと関連付けがあれば使えるということになりますね。
山川氏
そうです。ただ、どの組み合わせが最高、万能、ということはなく、お客さまの環境に応じて設計する必要があります。
簡単なものでいえばナレッジベースは簡単で、商品の提供側が独断で、お客さまの嗜好はこうであろう、と断定してしまえばそれで作れます。対象者を特定しないわけですから。要はお店のオススメメニューと一緒です。人気ランキングは人ベースであり、商品のスペックランキングならモノ属性ベースの最も簡単な形です。いずれにしてもリコメンデーションとしてはあまり価値がないものですね。もう少しいうと、アクションデータは、ハンバーガーがほしいと言ったからポテトをすすめる。履歴データによるものは、昨日はこれを買ったから今日はこれ。申告データはその都度質問する方法で、デジカメは好きですか嫌いですかとか、どの価格帯やスペックが欲しいですかと質問する方法です。
■ 今後はモバイルでのレコメンデーションにも積極的に進出
小川氏
なるほどね。分かります。
ところで、いまは何人でやってらっしゃるんでしょうか。
山川氏
正社員は13人です。アルゴリズムのベースは私と社長の2名で考案し、プログラミングは5人くらいでやってます。もともと統計とかリサーチの調査設計からの発展ですから、その答えから何を導くかを考えることがアルゴリズムを作るということになります。
だからSIerやソフトウェア開発からきたレコメンデーション会社とは違って、うちはマーケティングサイエンスを基本にとらえている会社だと思っています。ニーズからなにを導くか、というところに強みがあると思います。
小川氏
価格体系を教えてください。
山川氏
アクションアソシエーションの場合、初期費用は20万円。ランニングが月10万円。これがベースですね。サービスはASPです。
先ほども言いましたが、顧客側の要望に応じて金額は変わってきます。
小川氏
EC用の画像検索にも最近力を入れていますよね。Like.comと似た感じですが。
山川氏
そうですね。ただ、うちは背景除去もできるのでさらに進んでいますよ。
小川氏
モバイルのECも盛り上がっていますが、モバイルレコメンデーションの市場はどうなりますかね?
山川氏
大きな市場になるでしょうね。ただ表示が遅くて効率的に商品をお見せできないとか、クッキーがないからログがとりづらいのでデータを集めづらいなどの問題はまだありますね。実はまだモバイルEC専業の会社はほとんどない状態ですし。どう精度を上げていくかはこれからの課題ですね。
小川氏
最後に社名の由来を教えてください。
山川氏
アインシュタインの名前からです。マーケティングの発想を覆したいという思いからつけました。
小川氏
分かりました。今日はありがとうございました。
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小川 浩(おがわ ひろし) 株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。 |
2009/04/07 09:00
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