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データコア・ソフトウェアに聞くストレージコスト大削減術 [中編]


 データコア・ソフトウェア(以下、データコア)の代表取締役社長であるピーター・トンプソン(Peter Thompson)氏と取締役副社長の佐藤宣行氏に、ストレージコストを削減する画期的な方法と同社の主力製品であるSANsymphonyとSANmelodyの特徴をお聞きした。中編では、ストレージコストを大幅に削減するデータコア独自の手法と、それを具現化するストレージ統合管理ソフトウェア「SANsymphony」の特徴を取り上げる。


データコア・ソフトウェア 代表取締役社長のピーター・トンプソン氏(左)と取締役副社長の佐藤宣行氏(右)

ストレージコストの大幅削減には抜本的なアプローチが不可欠

従来型ストレージの投資スタイル(出典:データコア・ソフトウェア)。従来型ストレージは、ソフトウェア込みのハードウェアとして販売されているため、減耗資産であるハードウェアとともにソフトウェアの価値も消えていってしまう。従って、従来型ストレージを毎年購入するとなると、ソフトウェアが持つ資産価値を毎年そのまま捨てる羽目に陥る。これでは、いつまで経ってもROI(Return On Investment:投資収益率)が改善されない。
 前編では、ストレージコストを削減するための基本的な考え方を説明したが、実はここまでの内容はその他のストレージベンダーにいってもそれなりに聞ける話だ。データコアが他社と大きく異なるのは、ストレージの中のハードウェアとソフトウェアを完全に切り離し、特にソフトウェアに対して大きな価値を見いだしているところにある。

 「ストレージの購入費用が、年々少しずつ安くなっていくのは当たり前のことです。重要なのは、コストを従来の3分の1や5分の1にしたいと考えたときに、既存のアプローチではもはや対応できないという事実です。disruptive(破壊的)ともいえる斬新なテクノロジをいち早く導入し、これまでとは根本的に異なるアプローチを採用しなければ、数分の1以下という大幅なコスト削減は決して実現されません(トンプソン氏)」

 データコアが、ハードウェアとソフトウェアを分離した理由は、それぞれの資産価値がまったく正反対の振る舞いを示すからだ。本来、日を追うごとに価値が減るのはハードウェアのみであり、ソフトウェアの価値は逆に高まっていくはずである。しかし、従来型のストレージは、ソフトウェアがハードウェアの中に含まれた形で出荷されるため、ハードウェアの価値減少とともにソフトウェアの価値も埋もれて消え去ってしまう。


データコアの新しいルールに基づく資産価値の推移(出典:データコア・ソフトウェア)。ハードウェアのコストは年々下がっていくが、ソフトウェアの価値は時間の経過に伴い増大していく。データコアは、こうした素性をうまくハンドリングするために、ハードウェアとソフトウェアを分離するアイディアを考案した。
 ストレージの購入費用のうち、20~25%がハードウェアのコストであるといわれており、例えば2500万円のディスクアレイを購入したとしたら、そのうち500万がハードウェア、残りの2000万円がソフトウェアにかかるコストとなる。もし、毎年ストレージを追加したとすると、ほぼ同一の機能が搭載されたハードウェアに対して毎年2000万円も余計に再投資することを意味している。

 この問題を解消するには、ハードウェアとソフトウェアを完全に切り離すしかない。新しいテクノロジに対応するためにもハードウェアは常に更新していく必要があるが、その上で動作するソフトウェアは、時間が経過することで資産価値が減少したりはしないので、新たなハードウェア上でそのまま利用すればいいのだ。こうすることで、例えば導入時には2500万円かかったディスクアレイ(ハードウェアとソフトウェア)も、次回からは新たなハードウェアのために500万円を再投資するだけで済む。ソフトウェアに新たな機能が追加されたとしても、バージョンアップやモジュールの追加などで対応できるため、一からソフトウェアを購入するよりはずっと安価だ。


 「ハードウェアとソフトウェアが分離するのは、まさしく自然の摂理です。これまで他の業界でも同じことをやってきました。例えば、CAD/CAMの世界では、もともとソフトウェア込みの専用マシンを使っていましたが、現在はCAD/CAMの機能が完全に独立したソフトウェアとなり、汎用的な高性能PCやワークステーション上で動作しています。データベースも同様で、Microsoft SQL ServerやOracle、IBM DB2などを見ても分かるように、やはり汎用的なサーバー上で動作する専用ソフトウェアとなっています。ですから、ストレージも同じ方向に流れるのは当然のことなのです(トンプソン氏)」


IAプラットフォームで動作するストレージソフトウェア「SANsymphony」

 このような新しい考えのもと、特にストレージ仮想化装置についてソフトウェアだけを切り出した製品が「SANsymphony」である。他社はストレージ仮想化を行う装置を“ソフトウェア込みのハードウェア”という形で販売しているが、データコアは、ベースとなるハードウェアにインテルのPentium 4やXeonプロセッサを搭載した汎用のIAサーバーを採用し、その上で動作するストレージソフトウェアのみを提供する。同社では、SANsymphonyが動作するサーバーをSDS(Storage Domain Server)と呼んでいる。

 SANsymphonyが提供する機能には、異機種のストレージを一つの仮想ストレージプールにまとめるストレージ仮想化機能、ストレージ仮想化に参加している各所のストレージを一カ所から集中的に管理する統合管理機能、SDS上の大容量メモリを活用してストレージアクセスを大きく高めるキャッシュ機能などがある。

 「SANsymphonyを使用すると、これまで35~40%だったストレージの使用効率を約90%にまで高められます。また、1人で管理できるストレージ容量も大幅に増大します。IDC Japanの調べによれば、だいたい1人で600GBのストレージ容量を管理できるといわれていますが、ある企業の例ですと、SANsymphonyの導入によって1人あたり約10倍もの容量を管理できるようになりました。管理可能な容量がこれほどまでに高まれば、ストレージの増大によって管理者の人数を増やすどころか、逆に減らすことさえできます(佐藤氏)」

 仮想ストレージプールは、各サーバーごとにNMV(Network Managed Volume)として割り当てられる。また、NMVに使用率のしきい値を設定できるため、ストレージ容量の使用率がしきい値に達したら管理者に警告を発することも可能だ。このとき、ストレージサービスを止めることなく、不足しているNMVに仮想ストレージプール内の空き領域を加えたり、物理的なディスクを増設することで簡単に対応できる。

 また、デュアルイニシエータによる冗長パスのサポートやSDS間のネットワークミラー機能、瞬時にバックアップボリュームを作成するスナップショット機能などによって、ストレージアクセスに対する高い可用性も得られる。さらに、AIM(Asynchronous IP Mirror:非同期IPミラーリング)のサポートによって、IPネットワーク経由で遠隔のストレージドメイン上に仮想ボリューム単位のミラーを作れる。これにより、遠距離のディザスタリカバリー(DR)も構築可能だ。

 「ある海外金融系のお客様の例ですが、従来は新しいストレージを導入するたびに4日ものダウンタイムを必要としていましたが、SANsymphonyの導入によってこの作業が1時間で済むようになりました。世界中に対してサービスを24時間提供しているような企業では、1分のダウンタイムでさえも大きな損失を生んでしまいます。このようなお客様にとって、SANsymphonyは強力な味方となってくれるでしょう(トンプソン氏)」


ストレージ仮想化の制御方式にはインバンド方式を採用

 SANsymphonyは、ストレージ仮想化の制御方式としてインバンド方式を採用している。インバンド方式とは、ストレージ仮想化に必要な制御情報とデータの両方がストレージ仮想化装置(SANsymphonyでいえばSDS)を通過するタイプを指す。かつては、制御情報のみをストレージ仮想化装置で扱い、データはサーバーとストレージ間で直接やり取りするアウトオブバンド方式のほうが高いパフォーマンスを得やすいといわれていたが、最近ではどのベンダーでもインバンド方式に定着しつつある。トンプソン氏は、インバンド方式とアウトオブバンド方式の長短を次のように説明する。

 「アウトオブバンド方式は、単なるストレージ仮想化という視点からは確かに高いパフォーマンスが得られます。しかし、サーバーにストレージ仮想化サービスのためのエージェントソフトウェアを導入する必要があるのが最大の欠点です。サーバーの台数が何百台にも膨れ上がったら、とても管理しきれませんし、もし1台でもエージェントソフトウェアをインストールし忘れると、そのサーバーからはストレージの全プールが見えてしまうため、ストレージ仮想化自体が破綻します」

 「一方のインバンド方式は、ストレージ仮想化装置だけでストレージ仮想化サービスを完結できますので、パフォーマンス面さえ解決できれば最も扱いやすい方式といえます。SANsymphonyは、IAサーバーの安価なメインメモリをキャッシュメモリとして使用する独自のキャッシングシステムによって、このパフォーマンス面の問題を完全に解消しています。弊社の秀逸なキャッシュテクノロジと増大を続けるIAサーバーのメインメモリ容量のおかげで、アウトオブバンド方式よりも高いパフォーマンスを実現しています」

 最終回となる後編では、ストレージ業界の常識を覆すストレージ制御ソフトウェア「SANmelody」とデータコア製品の実際のパフォーマンスについて取り上げる。



URL
  データコア・ソフトウェア
  http://japan.datacore.com/

関連記事
  ・ データコア・ソフトウェアに聞くストレージコスト大削減術 [前編](2003/12/15)
  ・ データコア・ソフトウェアに聞くストレージコスト大削減術 [後編](2003/12/17)


( 伊勢 雅英 )
2003/12/16 00:01

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