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IDF Fall 2005で見た最新のストレージ製品&技術


Intel Developer Forum Fall 2005の会場となったMosconeコンベンションセンター。
 8月23~25日、米国カリフォルニア州サンフランシスコのMosconeコンベンションセンターでインテルの開発者向けカンファレンス「Intel Developer Forum Fall 2005」が開催された。基調講演や記者向けブリーフィングで明かされた最新テクノロジの動向は、PC Watchで連日報道されているとおりだ。筆者は、特にストレージ技術に的を絞り、IDF Technology Showcaseで見たストレージ製品や試作品の中から特に興味深かったものを取り上げていく。


ストレージ製品にも“インテル入ってる”

 今回のIDF Technology Showcaseには、ストレージ製品の展示を一同に集めたStorage Communityが設けられた。ここでは、ようやく製品化の時期が見えたSerial Attached SCSI(SAS)に加え、次世代のSerial ATAに関する技術デモ、Intel I/O Processorを搭載したRAIDカード、Intel Network Processorを搭載したNAS(Network Attached Storage)などが披露された。

 まず注目したいのは、Intel I/O Processorを搭載したNASやRAIDカードが多数展示されていたことだ。Intel I/O Processorは、XscaleベースのRISC系プロセッサコアに加え、DDRメモリに対応したメモリコントローラ、PCI/PCI-Xバスインターフェイスなどを搭載した組み込み機器向けの統合型プロセッサである。その仕様の違いによって、IOP331、IOP332、IOP315という3種類の製品が用意されている。

 RAIDカードは、RAIDの演算処理向けとしてインテルのi960プロセッサを搭載した製品が多かった。新しいRAIDカードでは、これらがIntel I/O Processorに置き換わったと考えてよい。Intel I/O Processorは、RAID 5 XORの演算に加え、RAID 6 P+Qの演算を高速化するアクセラレータを装備する。これにより、Intel I/O Processorを搭載する最新のRAIDカードでは、RAID 6を標準的にサポートしている。RAID 6が持つ高いデータ保護性能については、本連載の「安価&大容量ディスクサブシステムに欠かせないデータ保護技術「RAID 6」」を参考にしていただきたい。

 なお、会場にはAreca TechnologyのARC-1160、Promise TechnologyのSuperTrak EX8350、LSI LogicのMegaRAID SAS 8408E PCI Express adapterが展示されていた。いずれもIntel I/O Processorを搭載したRAIDカードで、RAID 6を標準でサポートしている。


Areca TechnologyのARC-1160(写真上)とPromise TechnologyのSuperTrak EX8350(写真下)。ARC-1160は、SATA II×12ポートを装備したPCI-XタイプのRAIDカード、SuperTrak EX8350はSATA II×8ポートを装備したPCI ExpressタイプのRAIDカードだ。
写真上がLSI LogicのMegaRAID SAS 8408E PCI Express adapter。写真下はソフトウェアベースのSAS RAIDカードで、こちらにはIntel I/O Processorが搭載されていない(RAID 6にも非対応)。いずれの製品も今年後半に発表される予定だ。

 また、Intel Network Processorを搭載したNAS製品も増えつつある。従来は、組み込み機器向けのx86系プロセッサやRISC系プロセッサを搭載するケースが多かったが、これがIntel Network Processorに置き換わった形となる。Intel Network Processorは、XscaleベースのRISC系プロセッサコアに加え、ネットワーク機器に欠かせないEthernetコントローラなどを搭載した統合型プロセッサである。

 Intel Network Processorは、原則としてNASの基本機能(ファイルサービスの提供)を支えるエンジンとして使用するわけだが、中にはさらなる高機能化のためにIntel I/O Processorの処理能力をうまく活用している製品もある。たとえば、Lanner ElectronicsのNS04-4100には、クライアントPCのデータバックアップおよびリストア機能が搭載されている。ネットワークを通じたリモートブートをサポートすることで、データの復旧をスムーズに行えるのが大きな特徴だ。


NS04-4100本体。4台のSerial ATA HDDを搭載可能なNASユニット。RAIDレベルとして0、1、5、JBODをサポートする。ストレージ容量は搭載するHDDによって決まり、たとえば現在最大級の500GB HDD×4台でRAID 5ボリュームを構築したとすれば、ユーザーが使用できるストレージ容量は1.5TBということになる。
NS04-4100の管理画面にはWebベースのGUI、バックアップ/リストア機能には専用ソフトが用いられる。

今年の第4四半期に本格始動するSerial Attached SCSI

 SASの最新動向については、本連載の「今年夏に本格始動する次世代のSerial Attached SCSI」で3回にわたり取り上げてきたが、実際の製品が潤沢に市場に流れる時期については少々不透明なところがあった。今回のIDFでは、数多くの実働環境を目にすることができ、「ついにSASが始動する!」という確かな手応えを感じとることができた。

 会場内のブースでは、SASに対応したホストバスアダプタ(HBA)やRAIDカードがいくつか展示されていた。HBAは、LSI LogicのSAS3442X PCI-X SAS HBA、SAS3442E PCI Express SAS HBA、Adaptecの48300 SAS HBA、RAIDカードは、BroadcomのBC5550-8E、LSI LogicのMegaRAID SAS 8408E PCI Express adapter、Adaptecの4800SAS HW RAIDなどだ。

 現時点で製品化時期を発表していないのは、AdaptecとBroadcomだ。たまたまAdaptecとBroadcomのスタッフが談笑していたところに飛び込み、製品の出荷時期について質問してみたところ、「我々は競合他社同士の関係にあるのだが」という前置きをした上で、Broadcomは今年の第4四半期、Adaptecは競合他社であるBroadcomを意識してか、第4四半期の始めという回答が得られた。残念ながら今すぐに始動とはいえないのだが、立冬の時期に入ればパラレルSCSIからSASへと本格的に移行できることはほぼ確実となった。


BroadcomのBC5550-8E。まだ試作品の状況にあり、発表時期は今年の第4四半期を予定しているという。
LSI LogicのSAS3442X PCI-X SAS HBA。8つのSASポート(内部SAS 4i、外部SAS4xコネクタ)を搭載し、ホストインターフェイスには133MHz PCI-Xバスに対応している。

LSI LogicのSAS3442E PCI Express SAS HBA。8つのSASポート(内部SAS 4i、外部SAS4xコネクタ)を搭載し、ホストバスインターフェイスにはPCI Express x8に対応している。
Adaptecのデモ環境。サーバーには、同社の48300 SAS HBAと4800SAS HW RAIDが搭載されており、48300 SAS HBAには4台のSAS/SATA HDDを搭載可能なJBOD、4800SAS HW RAIDには12台のSAS/SATA HDDを搭載可能なJBODがそれぞれ接続されていた。同社のSAS製品の発表時期は第4四半期の始めを予定している。

 また、SAS/SATA HDDに対応したディスクサブシステムの展示も目立った。その中でも最も元気がよかったのが、ENlightのブースだ。同社のブースでは、ドライブベイにSAS HDDが内蔵されたラックマウントサーバーでIometerを走らせることにより、SASシステムの高いデータ転送速度を示すデモンストレーションが披露された。MaxtorのATLAS 15K IIを16台(RAIDカード上で冗長化を行っているため実質8台)、MegaRAID SAS 8408E PCI Express adapterを1枚搭載したシステムでは835MB/sec以上、富士通のMAV20xxRCを20台、MegaRAID SAS 8408E PCI Express adapterを3枚搭載したシステムでは2500MB/sec以上のデータ転送速度が得られていた。


ATLAS 15K II×16台でのデモ環境。8台ずつで冗長化を行っているため、Iometer上のスループット値は8台分ということになる。
MAV20xxRC×20台でのデモ環境。RAIDカードを3枚装着することで、全体で2500MB/sec以上のスループットが得られている。ラック内には多数のサーバーが格納されていたが、1台をのぞいてすべてのサーバーはダミー(HDDスロットがカラ)だ。

第三世代となる6Gbps Serial ATAの実働デモが披露される

 Silicon Imageのブースでは、第三世代(6Gbps)のSATAに関するデモンストレーションが披露された。ただし、6Gbpsに対応したSATAデバイスはまだ存在しないことから、現行の3Gbpsに対応した日立グローバルストレージテクノロジ(HGST)のSATA HDDを4台使用し、仮想的な高速デバイスを作り上げていた。この仮想デバイスとやりとりするホスト間との接続に6Gbpsの通信路が用いられたわけだが、当然のことながら6Gbpsに対応したコントローラはホスト側もデバイス側も存在しない。そこで、同社のデモ環境ではXilinksのFPGAを利用してPHYチップを構成した。また、ホストとデバイスに直接つながる部分には3Gbps PHY×4チャネルを使用している。

 Iometerによるデータ速度の表示も行われ、その数値は480MB/sec以上に達した。6Gbpsであれば少なくとも1割落ちの540MB/sec以上に到達してもよさそうなものだが、480MB/secで頭打ちになったのは、単純に仮想デバイス側の性能不足によるところが大きい。もし、ホスト側とデバイス側を3Gbps×5チャネル以上に拡張し、5台以上のHDDを同時に接続すれば6Gbpsの通信路をうまく飽和させられたと考えられる。

 ただし、これは裏を返せば、6Gbpsがそれだけ十分な高速性を備えているということにもなる。HDDのデータ転送速度は年率で約40%の伸びを示しているが、1~2台のHDDしか搭載されない家庭用のPCで6Gbpsをフルに活用できる時代は少なくともあと5年はかかる。従って、6Gbpsの最初のターゲットは間違いなくエンタープライズ向けのストレージである。6Gbpsに対応した次世代のSAS-2が2008年に登場すると予想されており、この時期にSAS/SATA混在のソリューションで第三世代のSATAが威力を発揮するだろう。


Silicon Imageの6Gbps SATAデモ環境。ホストとデバイスに直結する部分には3Gbps×4チャネル、仮想ホストと仮想デバイス間の接続には6Gbpsの通信路が用いられている。
データ転送速度は480MB/sec以上という結果になった。6Gbpsの帯域幅を飽和させるには、あと1台のHDDを同時に接続する必要がありそうだ。

今年が飛躍の年となる4Gbps Fibre Channel

 FCIA(Fibre Channel Industry Association)のブースでは、4Gbps Fibre Channel(以下、4G FC)製品のデモンストレーションが行われた。このデモ環境は、QLogic、LSI Logic、Emulex、Agilentのホストバスアダプタ、BrocadeとQLogicのスイッチ、XyrantexのSBOD(Switched Bunch Of Disks)ディスクサブシステムなどから構成された、いわゆるヘテロジニアスな環境だ。BrocadeとQLogicのスイッチは相互に4G ISL(Inter-Switch Link)で接続されていたが、もちろん問題なくリンクしていた。

 このデモ環境でとりわけ興味深かったのは、1台のサーバーに4枚のホストアダプタを装着し、これらを同時に使用してデータアクセスを行っていたことだ。こうしたマルチイニシエータ構成は、データアクセス性能と可用性の向上につながるが、ここではデータ転送速度の高さを強くアピールしていた。それぞれのホストバスアダプタでは、4G FCの理論最大にほぼ近い370~380MB/secのデータ転送速度が出ており、サーバー全体で実に1500MB/sec以上にも達していた。これほどの速度が得られるのも、サーバー、スイッチ、ストレージをすべて4G FCで接続したからに他ならない。

 FCIAによれば、今年はFibre Channelが2Gbpsから4Gbpsへと飛躍する年になるという。今回のデモを通じて、FC FCが従来の1G FCや2G FCと変わらない高い相互接続性を持ち、多くのユーザーが“安心して使える”ことを強くアピールしていた。


4G FCのデモ環境。複数ベンダのホストバスアダプタを同時に装着したサーバー、スイッチ、外部ストレージが搭載されていた。
データ転送速度は1500MB/sec以上に達している。従来の2G FCでこのレベルに到達させるには、少なくとも8チャネルのFCポートをトランキングする必要がある。ホスト側では4ポート程度の装備が現実的なので、やはり4G FCを使用するメリットは大きい。


URL
  IDF Fall 2005
  http://www.intel.com/idf/us/fall2005/


( 伊勢 雅英 )
2005/08/26 09:21

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