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「キャリアに縛られず提供できるのがjigブラウザのよいところ」、jig.jp岸氏
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今回のゲストは、携帯電話用のフルブラウザのプロバイダー 株式会社jig.jpの取締役COOの岸周平氏です。jig.jpは、OperaやACCESSとは異なるブラウザ提供方式を選択したことで、非常にユニークな存在となりました。
■ アクシブドットコムから独立・起業
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取締役COOの岸周平氏
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―自己紹介をお願いできますか。
岸氏
もともとはアクシブドットコム(現在のECナビ)に、インターンで仕事を手伝わせていただいたことがきっかけで、この世界に入りました。99年のことです。就職も決まっていたんですが、当時のアクシブドットコムの創業者である尾関さんや宇佐美さんの影響を強く受けて、そのまま2000年4月に同社に就職してしまいました。
もともと、プログラマではないのですが、モバイル事業部の立ち上げを宇佐美さんと一緒にやらせていただけたんですけどね。でも、その理由は僕しかiモードを持ってなかったから、というものでした(笑)。
―ははあ(笑)。
岸氏
そうこうして、2002年にモバイル事業のリーダーになりました。紆余(うよ)曲折の結果、利益が出るようになったんですけど、だんだん自分自身で事業をやりたくなって独立してしまった、という感じです。きっかけになったのは、アクシブドットコムに投資をしてくださっていた赤浦さん(インキュベイトキャピタルパートナーズ ゼネラルパートナー)から、福野(jig.jp社長)と事業を興すからこないか、という話があって、結局3人でjig.jpを設立することになりました。
―創業はいつでしたっけ?
岸氏
設立は2003年5月です。4年目にはいったところです。
―従業員数は?
岸氏
現在、30名になりました。
■ jigブラウザは余剰時間を作るツール
―事業モデルについて説明いただけますか?
岸氏
会社のコンセプトは、余剰時間を作るためのツールをつくることです。ケータイではエンタメ系のビジネスが盛り上がってきましたが、それは余剰時間を楽しむ方向です。jig.jpは、余剰時間を作るという方向で考えています。当初考えていたのは、パケット削減を可能とするWebブラウザがいいかな、と思ってjigアプリを作ったんですね。でも2003年暮れから、auを皮切りにパケットフリーになってしまって、これではだめだと。そこで2004年の9月末にjigブラウザを開発してリリースしました。
―jigアプリとjigブラウザの違いは?
岸氏
jigアプリはケータイコンテンツの閲覧用で、jigブラウザはPCと同じWebを閲覧するための、いわゆるフルブラウザです。
―jigブラウザが今の主力商品ですね? 課金モデルなんですよね?
岸氏
はい。jigブラウザのビジネスモデルは、ユーザーに年間に6000円か、月額630円という課金をしています。それと、2004年の12月にベータ版としてjigムービーを発表して、2006年の1月から販売していますが、これはB2Bアプリで20万円/本という価格です。jigムービーは動画をWebサーバーにアップすると、ケータイで見られるというサービスで、一種のエンコーダーですね。楽天の野球の配信や東証系の株価情報などが配信されています。
―B2B用はともかく、jigブラウザの利用料金は平均的なケータイ用サービスと比べると高いですよね?
岸氏
使う人も限られるので、高くても使ってくれるだろうと決断しました。最初は月額1000円だったんです(笑)。もともとはドコモとauの一部しかサポートしていなかったんですけど、2005年11月にウィルコムに、2006年2月にボーダフォンに対応して、フルブラウザとしては初めてキャリア横断ですべてを対応することになりました。
―最近新しいサービスも発表していましたね?
岸氏
jiglet VMという、プログラムの実行エンジンをjigブラウザに組み込みました。携帯電話上で動作するいろいろなアプリを作成、公開できるオープンなプラットフォームです。例を挙げると、メーラーやスケジューラ、あるいはテレビや、エアコンなどのリモコンアプリなどをjigではjigletで公開しています。今年の5月の提供開始時には30個のアプリでしたが、今はいろいろなプログラマが作ってくれて、3カ月で100個以上になりました。
―jigletのビジネスモデルは?
岸氏
ビジネスとしては、何もない状態です(笑)。普及しきれば、プラットフォームを貸しているという意味で、作者への小口課金もありかとも思いますけど、先の話ですね。無数の開発者を有しているGoogleとは違って、われわれはオープンな仕様で開発者を呼び込みたいと考えているわけです。
―jiglet VMは、jigブラウザの契約なしでは動かないんでしたっけ?
岸氏
インストールしてローカルでの利用はできます。通信するものはjigブラウザなしでは動きません。
■ ソフトウェアだけではなくサービスの提供
―ケータイ用フルブラウザとして他のメーカーとの差別化をどう考えていますか?
岸氏
ビジネスモデルそのものが違います。仕組みが違うといってもいいですね。ACCESSやOperaのWebブラウザは、HTMLの解析から表示まですべてをWebブラウザがやりますが、うちの場合はサーバー側で処理します。他社はWebブラウザのみの提供で、われわれはWebブラウザと自社サーバーとの連携によるサービスの提供です。サーバーを介して、コンテンツを圧縮したりするので速いわけです。
―なるほど。他社はアプリの提供、jigはサービスの提供ですね。
岸氏
はい。
―同じようなモデルで、携帯電話用のRSSリーダーを作っているエル・カミノ・リアルがありますが、意識しませんか?
岸氏
RSSリーダーですか? jigブラウザでも2004年11月からRSSリーダー機能をサポートしていますけど、あまり意識したりはしないですね。
―そうですか。では、フルブラウザとしての機能自体の、他社との差別化はどうでしょう?
岸氏
そうですね…。われわれは早くからカーソルをサポートしているし、吸着機能といって、リンクが近くにあったら自動的にジャンプして、そのリンクにカーソルを移動させるという、ケータイならではの機能をサポートしています。こういう細かさが特徴だと思います。
―PC上でのWebのサービスが携帯電話市場に進出してくるのも時間の問題と思いますが、迎え撃つ自信はありますか?
岸氏
PCのWebをケータイにそのまま持ち込んでもうまくいきません。相応のチューニングが必要になるので、けっこう大変だと思いますね。でも、他社が入ってくるのは市場が活性化するので歓迎します。
―逆にPCのWebのサービスあるいはWebブラウザ制作に進出することはないですか?
岸氏
ないですね。ケータイって、肌身離さず使うツールですよね。そういう使い方をする人が9000万人くらいいるわけですから、プラットフォームとして非常に魅力的です。
―そうですか。では、その市場でどのくらいの規模やシェアを目指していますか?
岸氏
いまのユーザー数はざくっと3万5000人ほどですが、これを早急に10万人にしたいですね。そのくらいいくと、プラットフォームとして成立すると思うんです。まあ、ほんとは100万人くらいいないといけないのかもしれないですけど、まずは10万人かな。それくらいだと、たとえばjigブラウザの契約ユーザーになんらかのサービスを提供して小口課金をするといえば、乗ってくるクライアントがいろいろ出てくると思います。多様なビジネスモデルを考える素地ができるはずです。
―なるほど。ユーザー数を増やすために、海外市場に展開することは考えますか?
岸氏
考えますよ。目標は持っています。なぜかというと、いまうちはJavaをベースにアプリを作っていますが、日本のキャリアの上で拡げていこうと思うと、auのBREW対応をするくらいしかない。だから海外のキャリアを攻めていくことで、もっと広いチャンスを得ることができるはずなんですね。ケータイであれば日本企業のほうがノウハウや経験があるので、海外市場に出ていくことに意味はあると思っています。日本のケータイにはカメラやGPSがついているのが当たり前で、これらを活かすビジネスがどんどんでてくれば、大きな市場が生まれてくるでしょう。
■ 携帯電話キャリアの仕様を吸収し、新しいプラットフォームの提供へ
―日本のケータイビジネスは今後どういう展開をみせるでしょうか。
岸氏
今年から来年にかけて一気に多様なサービスが生まれてくるはずですよ。GoogleやYahoo!をはじめとして、ケータイ上の検索エンジンがでてくると、ケータイに対する新しいトラフィックが生まれるんですね。そうするとPCのWebを対象にしていたベンチャーがケータイの市場にどっと参入してきます。
―そうですね。
岸氏
それと、これは個々のベンチャー企業次第でしょうけど、通信キャリアの数も増えることによってプラットフォームが増えて、どのプラットフォームに対応するか、全部していくのか、どれかを選ぶのかの選択に迫られてしまうと思います。すると、開発力や資金があるベンチャーに仕事が集中してしまうので、成長できるところとできないところがはっきりと分かれるでしょう。PCでいえば、Windows 95がでたころからOSの勝負が決まって、次にWebブラウザに焦点が移りました。ケータイはキャリアの力が強すぎで、OSの違いという壁よりもさらに高い壁がありますから。
―Lunascapeの近藤さんは、だからケータイのWebブラウザには手を出さないと話していました。
岸氏
その壁をjig.jpが解消したいと思っています。他社のアプローチはWebブラウザというアプリで解決しようというものですが、端末のスペックがまだまだ低いので複雑なことは難しいでしょうね。jiglet VMのようなJavaアプリでないと。各キャリアのアプリは、ドコモならiアプリ、auはEZアプリ、ボーダフォンならVアプリというように、呼び方が異なります。ただし、au以外は、Javaであり、基本的なところは同じです。ただ、各社で若干仕様が違うんです。その違いを、jiglet VMは吸収していて、一つのアプリですべてのJavaプラットフォームに対応できています。
―なるほど。2.0的ですね(笑)
岸氏
そうですね。もっとWeb 2.0ぽいことをいうと、先ほど話したjiglet VMのリモコンアプリのAPIは公開しています。たとえばPS2のリモコンとか。
―それはいいですね。
岸氏
MacBookも動かせますよ。
―それはほんとにいい(笑)。最後に、jig.jpのコアコンピタンスについてコメントしていただけますか?
岸氏
jig.jpの優位は、自由な発想ができる、というところだと思っています。さらにjigletによって身軽に、これまでのケータイサービスやアプリとは違って、キャリアの仕様に縛られることなく提供できるところがよいところ、と考えています。
―分かりました。今日はありがとうございました。
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小川 浩(おがわ ひろし) フィードパス株式会社 COO。1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業および在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業。1999年9月にアジアと日本をまたがるSNSを開始。その後日立製作所にてコラボレーションウェア「BOXER」を立ち上げたのち、ネットビジネス・プロデューサーとしてサイボウズにジョイン。ブロガーとして「Web2.0 BOOK」「ビジネスブログ」シリーズなどの著作がある。 |
2006/07/28 08:50
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