日本HPとシトリックスの協業で実現した「ハイブリッド型のクライアント仮想化」とは?


【左】日本HP 執行役員 パーソナルシステムズ事業統括 クライアントソリューション統括本部長の松本光吉氏【右】シトリックス 取締役会長の大古俊輔氏
ブレードPC方式と仮想PC方式の比較
ハイブリッド型の構成イメージ

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)とシトリックス・システムズ・ジャパン株式会社(以下、シトリックス)は4月24日、クライアント仮想化での協業に関して共同記者会見を開催。日本HP製ブレードPCへの「Citrix XenDesktop 3.0(XenDesktop 3.0)」バンドルを軸に、技術連携の検証や販売促進など協業範囲を拡大すると発表した。

 クライアントPCの導入台数が増えるに伴い、浮き彫りとなった運用・コストの問題。それを解決するとして注目を集めるのが、クライアント仮想化やシンクライアントである。クライアントPCが一カ所に集約されるため、管理コストが削減できるほか、ユーザー側でシンクライアント端末が故障しても、迅速復旧が可能となるソリューションだ。

 実現する方式としては、サーバー上に構築した複数の仮想PCを各従業員に割り当てる「仮想PC方式」や、複数のブレードPCを各従業員に割り当てる「ブレードPC方式」などいくつか存在するが、シトリックス 取締役会長の大古俊輔氏によれば「それぞれに良さがあり、組み合わせて利用することが望まれていた」という。

 そこで両社が仕掛けた施策が、ブレードPCにXenDesktop 3.0をバンドルするとした3月4日の発表である。「HP bc2200 Blade PC」「HP bc2800 Blade PC」に標準でXenDesktop 3.0ライセンスがバンドルされ、同製品を購入するだけで、ブレードPC方式と仮想PC方式のシンクライアントが両立できるというものだった。

 今回の記者会見では、このメリットをより詳細に紹介。

 クライアント仮想化という面から見たとき、ブレードPC方式にも仮想PC方式にもそれぞれにメリットとデメリットが存在する。例えば、前者では、ユーザーにブレードPCが割り当てられるため、どんなにユーザーが増えてもPC1台分のリソースを担保できるというメリットがある反面、性能はブレードPC1台に限定されるため、拡張性に劣ってしまう。一方の後者では、仮想マシンを増やしていくことで圧倒的な集約度が実現するが、その反面、導入時のサイジングをしっかり行っておかなければ、同時利用ユーザー数増加による性能低下などを引き起こす恐れがある。

 これに対してハイブリッド型では、「それぞれの方式の良さを適材適所で提供できるのがメリット」(日本HP 執行役員 パーソナルシステムズ事業統括 クライアントソリューション統括本部長の松本光吉氏)。

 シンクライアントでは、各ユーザーをどのリソースに振り分けるかを判断しなくてはならない。これを行うのが「ブローカー」という機能で、例えばブレードPC方式であれば、複数のブレードPCの中から空いているものを探し出して、自動的にユーザーへ割り当ててくれる。ハイブリッド型のメリットは、ユーザーの業務や状況に応じて、ブレードPC、仮想PCのどちらにでもユーザーを振り分けることが可能になる点だ。

 例えば、重い処理性能を必要とするユーザーは安定性に優れるブレードPCへ、軽い処理の一般業務を行うユーザーは仮想PCへ振り分けるといったことが実現。また、場合に応じて双方のスペックを使い分けたいユーザーは、アクセス時にブレードPC・仮想PCのどちらを利用するか選択させることも可能なので、両方式のデメリットを補いながら、柔軟なクライアント仮想化が実現するというわけだ。

重い処理性能を必要とするユーザーは安定性に優れるブレードPCへ軽い処理の一般業務を行うユーザーは仮想PCへアクセス時にブレードPC・仮想PCのどちらを利用するか選択させることも可能

 これが、日本HPのブレードPCにXenDesktop 3.0をバンドルした目的である。「バンドルブレードPCを購入すれば、仮想OS環境を実現するためのXenServerも、ブローカーのCitrix DDCも標準で利用可能」(大古氏)なため、ユーザーは両社の製品を別々にそろえるよりも格段に低価格で、柔軟なシンクライアントを始めることができる。

 両社はこの柔軟性により、シンクライアントのさらなる普及を進める方針だ。そのために今回、いくつかの新施策が発表された。まず、ハイブリッド型構成の検証環境を両社に設置して、デモンストレーションや周辺機器の接続検証、サイジングなどを実施するほか、イベントやセミナーなどの共同プロモーションも行う。さらに協業を記念して、日本HP製シンクライアント端末の割引キャンペーンも実施する方針で、「これらの施策でハイブリッド型を積極的に訴求し、クライアント仮想化の適用領域を拡大したい。そのために、ハードウェアとソフトウェアの両面から最適なプランを提案していくつもり」(松本氏)とした。

検証環境を両社に設置協業を記念したキャンペーン製品を販売





(川島 弘之)

2009/4/24 16:20