「非機能要求」を顧客とSIerで確認し合うツール群が公開


 システム基盤の発注者要求を見える化する非機能要求グレード検討会(以下、非機能要求グレード検討会)は5月26日、情報システムの発注者(顧客)と受注者(ベンダー)が非機能要求に対して、共通の認識を得るためのツール群「非機能要求グレード」を発表した。同日から公式Webサイトにて公開する。

 非機能要求グレード検討会は、システム応答速度などの性能や障害時の耐性といった目には見えない「非機能要求」について、発注者と受注者との間で確認する方法を検討するため、2008年4月にNTTデータ、富士通、NEC、日立、MDIS、OKIの6社で発足された団体。

 2008年9月には第1弾成果物として、「システム基盤の非機能要求に関する項目一覧(以下、要求項目一覧)」を公開。非機能要求で特に重要な「可用性(システムの耐性)」「性能・拡張性(システムの応答速度や増設のしやすさ)」「運用・保守性(システムの維持のしやすさ)」「移行性(システムの更改のしやすさ)」「セキュリティ(データの安全の度合い)」「環境・エコロジー(環境への配慮)」について分類し、体系化・詳細化を行っている。

 今回の非機能要求グレードは、この要求項目一覧に「システム基盤の非機能要求に関するグレード表(以下、グレード表)」「システム基盤の非機能要求に関する樹形図(以下、樹形図)」「『非機能要求グレード』利用ガイド(以下、利用ガイド)」を追加したもの。これらのツール群を利用することで、発注者と受注者で確認が難しい非機能要求を段階的に抑えていくことが可能になるという。

 活用方法としてはまず、利用ガイドの中から、開発するシステムのイメージに最も近いシステム例を1つ選択する。ここで選択したモデルシステムについて、最適な要求レベルの設定例を記したのがグレード表で、要求レベルの設定例や選択時の条件から個別の要求を調整し、重要な非機能要求を確認できるようになっている。

 例えば、利用ガイドから「社会的影響が限定されるシステム」を選択した場合、障害発生時のRTO(目標復旧時間)は「12時間以内」となるが、「社会的影響が大きなシステム」を選択した場合は「6時間以内」といったような調整が行える。

 さらに、6分類245項目の非機能要求項目について、0~3の4段階でレベル設定を行った要求項目一覧により、詳細な非機能要求まで確認を行うことが可能。それぞれの非機能要求項目について、発注者の要求がどのレベルに近いか判断の基準とすることで、発注者と受注者の間で上流工程での確認漏れや、認識の違いを少なくすることができるという。

 同検討会では今後、非機能要求グレードを実際のプロジェクトで利用可能とするために、5月26日から6月30日までパブリックコメントを募集する。寄せられたコメントを成果物に反映することで、さらなる改善・改良を図り、2009年度下半期をめどに最終成果物として公開する予定。




(川島 弘之)

2009/5/26 15:32