マイクロソフト、Microsoft Online Servicesでのパートナー戦略を説明

「顧客のニーズに柔軟に応えるにはパートナーとの強調が必要」

マイクロソフトのインフォメーションワーカービジネス本部 ビジネスオンラインサービスグループ 磯貝直之部長

 マイクロソフト株式会社は6月3日、企業向けオンラインサービス「Microsoft Online Services(MOS)」のパートナーソリューションを紹介する説明会を開催した。

 MOSは、マイクロソフト自身が提供する企業向けオンラインサービス。Exchange Serverの機能をSaaS化したExchange Online、SharePoint Serverの機能をSaaS化したSharePoint Onlineなど4つのアプリケーションを用意しており、スイートパッケージ「Microsoft Business Productivity Online Suite(BPOS)」のほか、個別のアプリケーションごとに利用することもできる。その特徴は、単にアプリケーションをSaaSで提供するだけではなく、ソフトウェア+サービス戦略に基づいている点で、マイクロソフトのインフォメーションワーカービジネス本部 ビジネスオンラインサービスグループ 磯貝直之部長はそのメリットを、大きく3つ挙げて説明する。

 1つ目は、クライアントソフトとの連携によるメリットで、使い慣れたソフトを利用することで、ユーザービリティを落とさずにオンラインサービスの利用が可能になる。2つ目は、柔軟なサーバーシステムとの連携を行える点。例えば、本社ではオンプレミス型のシステムを、地方拠点ではオンラインサービスをそれぞれ利用する、といったケースでも、Active Directoryによるユーザー管理を共通して行うことができる。3つ目は、ビジネス向けで実績のある製品をベースにしている点だ。これによって、「今までSaaS利用に踏み出せなかったユーザーの不安を、実績ある製品をベースにオンライン化することで払しょくできる」(磯貝氏)という。

 しかし、ほかのSaaSと比べた際のメリットがあるとはいえ、それだけでユーザーのニーズをすべて満たすことはできない。磯貝氏は、モバイル対応、データ移行といった課題を挙げたほか、「複数拠点でシステムを運用する場合、遠隔地では物理的なものの受け渡しができない。デジタル化されていないものをいかにデジタル化し、見やすくしていくかという点は、MOSの付加ソリューションとして大きな価値がある」と、具体的な補完ソリューションの必要性について述べた。

他社のSaaSと比べたMOSの3つのメリット顧客のニーズに柔軟に対応するためには、モバイル対応をはじめとする3つの課題があるという

 こうした点を解決するソリューションとしては、PFUが自社スキャナを利用した電子化ソリューションを提供する予定。ドキュメントスキャナで読み取った文書を、簡単にSharePoint Onlineに登録できる機能を用意し、遠隔地間での情報共有ニーズを満たせるようにするという。これについて、PFUのイメージビジネス営業統括部 第一営業部 営業支援担当 鈴木章夫氏は「すでに、fiシリーズやScanSnap同梱のソフトがSharePoint 2007に対応しているが、2009年11月より、ScanSnapがSharePoint Onlineに対応する」と話す。また日本デジタルオフィスは、Silverlightを利用し、SharePoint Onlineに対応したWebカタログ自動作成ソフト「Do! BOOK」を6月3日より提供する。

PFUはドキュメントスキャナを活用した電子化ソリューションでSharePoint Onlineとの連携を図る日本デジタルオフィスはWebカタログ自動作成ソフトとSharePoint Onlineの連携を実現

 モバイル対応については、ビービーシステムが、Exchange Serverを携帯電話から活用するためのソフト「ExLook」の最新版「ExLook Infinity」でExchange Onlineをサポート。クエスト・ソフトウェアは、Lotus NotesからExchange Serverへデータを移行するソフト「Notes Migrator for Exchange」のExchange Online対応版を用意し、オンラインサービスへのデータ移行をサポートする。

ビービーシステムは、社内のサーバーを経由して、SaaS/オンプレミス両形式のExchange Serverを携帯電話から利用できる「ExLook Infinity」を提供クエスト・ソフトウェアは、さまざまな移行ソリューションを提供していくという

 Do! BOOKを除いたこれらのソリューションに共通しているのは、すでにオンプレミス型のマイクロソフト製品で実績のあるものを、オンラインサービスに対応させている点だ。磯貝氏は、パートナーソリューションとの連携を実現する技術として、Web APIに言及。「これは、Exchange 2007やSharePoint 2007が持っているAPIを踏襲しているので、パートナーが持つ既存のスキルを活用してソリューションを構築できる」と述べ、MOSの持つ優位性をここでもアピールした。

Web APIの提供により、システム連携を実現する

 なお、MOS連携ソリューションを提供している企業は、国内では現状5社だが、マイクロソフトでも、「お客さまのニーズを柔軟に満たすためには、さらなる推進が必要」(磯貝氏)との立場から、パートナーへの支援策を拡充する考え。本来は有償で提供しているパートナー向けの技術サポートを、マイクロソフトパートナープログラムの参加パートナーに対しては、ランクに応じて一定時間を無償で提供するほか、日本語での技術情報提供も積極的に行う。また、ソリューションパートナーと顧客のマッチングを推進する目的で、ソリューションサーチなどを提供し、「お客さまとパートナーをつないでいく」とした。「ソフトウェア+サービスを体現するMOSで、より広いパートナーとともに、より多くのお客さまのニーズを満たしたい」(磯貝氏)。




(石井 一志)

2009/6/3 16:33