シトリックス、ロードバランサー「NetScaler」のエントリー向けを拡充

XenServer向け仮想アプライアンスも提供予定

NetScaler MPX 5500(下)と、同 7500/9500(上)のハードウェア
シトリックス ビジネスディベロップメント シニアマネージャーの村上慎一氏

 シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社(以下、シトリックス)は6月8日、Webアプリケーションスイッチ「Citrix NetScaler MPX 5500/7500/9500」の3製品を発表した。レイヤ7スループット性能は500Mbpsから3Gbpsで、いずれもローエンドを拡充する位置付けの製品となる。価格は198万円(税別)からで、同日より順次提供される。また今回は同時に、NetScalerの仮想アプライアンス「Citrix NetScaler VPX」を2009年第3四半期より提供することも、あわせて発表されている。

 NetScalerは、Webアプリケーション配信の最適化を支援する、いわゆるロードバランサー製品。NetScaler MPXはマルチコアテクノロジー「nCore」に最適化された最新シリーズで、マルチコアCPUの各コアで処理エンジン「Packet Engine」を動作させることにより、高い処理性能とスケーラビリティを実現している。

 今回提供されるNetScaler MPX 5500/7500/9500の3製品は、ローエンドのラインアップを拡充する役割を担う。シトリックス ビジネスディベロップメント シニアマネージャーの村上慎一氏は、「企業向けアプリケーションのWeb化が進む中で、中小企業でもWebアプリケーションの活用が増えており、Web 2.0アプリケーションの高負荷も問題になっている」という昨今の状況を指摘。そこから生まれてきたニーズに応えるために、エントリー向け製品を強化したと説明する。

 下位の製品となるNetScaler MPX 5500は、500Mbpsのレイヤ7スループット、500MbpsのSSLスループットを備え、5万件/秒のHTTPリクエストを処理可能。3製品中もっとも上位のNetScaler MPX 9500では、3Gbpsのレイヤ7スループット、3GbpsのSSLスループット、20万件/秒のHTTPリクエスト性能を備えている。筐体は3製品とも1Uのラックマウント型で、インターフェイスは、NetScaler MPX 5500が1000BASE-T/100BASE-TX/10BASE-Tポート×4、同 7500/9500は1000BASE-T/100BASE-TX/10BASE-T×8を搭載した。

 また各製品について、「Platinum Edition」「Enterprise Edition」「Standard Edition」と、機能別に3つのエディションが用意されるのは従来製品と共通。Platinum Editionは全機能が標準で利用できるが、Enterprise Editionでは、WebコンテンツキャッシュやWAF(Webアプリケーションファイアウォール)、アプリケーションの可視化を提供する「EdgeSight」がオプションとなる。またStandard Editionは最小限の機能のみに絞られており、キャッシュやWAFの機能は利用できない。

 価格は、NetScaler MPX 5500が198万円(税別)から、同 7500が363万円からで、6月8日より出荷を開始する。また同 9500については、少し遅れて2009年第3四半期からの提供を予定している。

NetScaler VPXの概要

 一方、NetScaler VPXは、XenServer向けの仮想アプライアンスとして提供されるソフトウェアで、アプライアンスのNetScalerとほぼ同等の機能を備えている。インストールはXenServer上にイメージファイルをインポートするだけで完了。汎用アプリケーション向けの設定も推奨テンプレートで提供されることから、容易な導入が可能という。

 この製品は仮想サーバー上で稼働するため、適応できるシーンは広いが、村上氏は具体的な利用シーンとして、クラウドデータセンターや中小企業を挙げ、「オンデマンドサービスでの利用が見込めるほか、当社の提供するオーケストレーションツールとの連動で、自律型のデータセンターが実現する。また、ほかのアプリケーションと同一サーバー上に展開でき、容易な導入が可能なため、SMBでの利用も見込める。NetScaler VPXで新しい市場が作れるだろう」とした。

 さらに村上氏は、データセンターにおける具体的な利用シーンとして、2階層モデル「NetScaler Fabric」を提示。「グローバルサーバーロードバランシング(GSLB)やハードウェア暗号化チップを生かしたSSLオフロードなどは、アプライアンスを利用。その上で、よりアプリケーションに特化したロードバランスなどは、共通サーバー上でNetScaler VPXを利用する、といった利用法が可能。アプライアンスと組み合わせた、柔軟かつ拡張性の高いソリューションが提供できる」と述べている。

 なお、処理性能や価格、ライセンス形態については現時点で公表されていない。導入に必要な最小構成は、現在提供されているベータ版の場合、1GBのメモリと20GBのHDDとなっている。




(石井 一志)

2009/6/8 16:47